絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~ 作:ゼロん
もう、おせち食う日付じゃねぇよって?
……色々とごめんなさい。遅れたのには深いわけが……あるわけでもないです
(なめとんのか)。
オリジナル小説を書いてみようかなぁって……(まだ他のシリーズ終わってねぇよ)
いや、だって全部のシリーズのオチとか、全部構成考えてあるから……
(飽きて書くのがめんどくなってただけ。あ、もちろん終わらせる気ではいたよ?)
こんなふうにゼロんは、なんとなくで、マイペースに生きております。
書き終えないまま終える予定はないですので、ご安心を!
「ふぅ……サウナはいいなぁ、なんつーか……こう、心安らぐつーか……」
昼食を済ませた大和田はプールサイドにあったサウナでリラックスタイム。
以前『超高校級の風紀委員』石丸清多夏と勝負した時とは違い、今回大和田は裸一貫でゆっくりとサウナを楽しんでいる。
「しかし、隣に女子サウナも連結させるってのはどうかと思うんだがなぁ……」
すぐ左上を向けば見える天井と壁の隙間。壁一枚を隔てたその先には女子サウナもある。
「しっかし、大神のやつ、軽く泳ぐだけで爆弾みてぇな水しぶきあげやがって。アイツの足には爆弾でもついてんのか? その横で泳げる悠太もどうかと思うがよォ……」
大和田は背もたれになり、外の景色をじっと見る。少し通路を横切ったところにはもうプールがある。ドアを隔てたこの部屋でも水しぶきがあがる音がするとはどんな水泳をしているのか逆に気になるところだ。
「本当ね。船に下手なエンジンを積ませるよりも、あの筋肉オバケをエンジン代わりに搭載した方が旅費が安く済みそう」
「そーだな……って、おわっ!?」
大和田は驚きその場でエビのように床を蹴って飛び跳ねる。
「た、高里っ!? オメーいつからそこにいたっ!?」
「今さっきよ。私がサウナに入ってなにか悪いことでもあるの?」
「い、いや別にいいけどよー……」
大和田は羞恥心で後頭部をかき、高里の声が聞こえる方とは反対の方を向く。
「別に……壁で仕切られてるし、アタシもタオル巻いてるし。もしもなんてことは———あぁ~……まぁ、あんたが壁をぶち破ってこない限りありえないわ」
壁の向こうにいるであろう高里が少しためらいがちに言う。本当に失礼なやつだ。
「しねぇよ。できてもしねぇよ」
「ならいいけど」
だれがのぞき見なんてダセー真似するかよ、と言って大和田は少し壁から離れたところに座る。ほんの少しでも距離を開けておきたい。でないとなんか恥ずかしい。
「……。お、大和田っ!」
高里は一瞬、彼を呼ぶのを止めようかと迷ったか、大きく息を吸ってのどから声を絞り出す。
「……あんだよ?」
向こうから話しかけてくるなんて裏でもあるのではないか、と大和田は疑うが、その疑問は次の瞬間晴れることになった。
「さ、裁判の時は……その、ありがと」
ただ彼女は———お礼を言いたかったのだと。
「お、おう……」
変な想像をした自分に恥を覚え、これ以上口を開くことをためらう大和田。だがお礼を言った方である高里も、虫が良すぎたかと悪い方に想像を働かせているのか、大和田に特別何かを言う様子はない。
しばらくふたりの間で沈黙が流れる。
——やばい、キマズイッ……!!
正直お礼をわざわざ言いに来てくれたのはうれしい。素直にうれしい。
けど、何もこんな所じゃなくたってよくねーかぁ……!?
「……ねぇ」
「あ、あぁ! なんだよ?」
声しか聞こえないが、なんとなく声の調子から彼女も戸惑っていることがわかる。
「どうして……アタシなんか、助けたの?」
「……」
残念だけど、と高里が言葉をつなげる。
「……ここじゃあ、いくら財閥の後ろ盾がある私でも、なにもできることはないわよ? 私のあなたに対する信用だって……生前あなたがしたことを考えれば、そう簡単に勝ち取れるものじゃないって。アンタでもわかっているでしょ?」
大和田は少し目を見開く。
——ー高里を助けたことに深い意味なんてない。
首を壁に寄りかからせて、深呼吸をする。
自分は『超高校級の御曹司』十神白夜のように頭の回転が速いわけでもなく、彼のように裏があって何かをする
「わかるかよォ、……ただあの時は無我夢中だっただけだ」
元々自分は口より腕が出る。考えてからじゃなくて動いてから考えるタイプだ。
いろいろ考えがあってやったことなど人生で数えられるくらいだろう。
「正直……信じらんねぇって思ってたんだ」
大和田は談話室で彼女と悠太たちとゲームで遊んだ時を思い出した。
たしかに彼女に負けて、挑発されて、腹はたった。
……だがその感情もほんの一時のものであり、彼女と過ごしたほんの一時のもの。暴力だって振るわなかった。
そう思った自分を、
「……あんな無邪気に笑ってたおめーが。人を殺せるやつじゃねぇって思って……ただ、ただ単に。俺は、俺の勘に従ったんだよ」
勘だ。彼女が犯人ではない———そう思ったのは大和田自身の勘なのだ。
自分でも馬鹿らしいと思っている。周りの言葉よりも、証拠は自分の勘より信用ならないなんて。自分の存在をかけているあんな土壇場で。
———『兄弟はやっていない!! 絶対なにかの間違いだ!! そうだ、間違いだ! 今の推理はどこか決定的に間違っている!!』
生前、自分を学級裁判で最後まで庇ってくれた……
「……ダチの影響、かもな」
「なによ、それ」
半ば呆れのこもった声が壁の向こうから聞こえる。
だが不思議と最初の頃よりは、彼女の言葉に不快感はなかった。
「あんだよ、もっとロマンティックな理由期待してたっつーのか? そりゃあ、残念だな」
「そうね、アンタみたいなバカにそんな期待した私が馬鹿ね」
「おぉ、わかりゃ……って、誰が馬鹿だゴラァ!?」
「他に誰がいるのよ、単細胞。まぁ、あの時アタシを有罪にしてたら、飛ぶのはアンタたちの首だったろうけど」
『おめーなぁ……!』と言って、大和田はぐぐっと右手に握りこぶしを作る。
「けど……アンタが馬鹿みたいにアタシを信じてくれたからこそ、よね」
今の彼女の声色からは、以前までのつんけんな態度はない。
「ど、どうしたんだよ。急にしおらしくなりやがって……」
「……別に。アタシだって、うれしい時はうれしいって言うわ。———信じてくれて、ありがとう」
『それよりも』と高里は言葉を続ける。
「……あんたは大丈夫なの?」
「俺?」
「————
大和田は眉をひそめて黙る。よくない雰囲気を感じ取ったのか、失言だったと察したのか、高里の方も無理に尋ねるそぶりはない。
「……ごめん」
「なんでオメーが謝んだよ」
彼女は何かをしたわけでも、桑田をたきつけたわけでもない。大和田には彼女を責める理由はなかった。
「……忘れたかった、よね」
……高里。
「高里。オメーは、桑田のこと……憎いか?」
高里はしばらく黙ると、数秒後にやっと答えを壁を挟んで返してきた。
「……死んだ今じゃ、どうともできないけど」
重々しく、どこかに闇を秘めたようなその声に、大和田の全身の毛が逆立った。
言外に———認めているようなものだ。
そう言葉を残した後、サウナの床板がきしむ音と共に、高里は扉を開けて出て行った。
板を挟んだ反対の部屋から人が消え、サウナルームには大和田一人が残された。
「……」
消えてしまったものは、もう元には戻らない。
いくら頭が良くなくても、そんなことわかっている。
「はぁ……」
「———となり、いいかな?」
いつもどおりのハスキーボイス。
しかし、以前とは違いその声には芯の強さがうかがえる。
罪を隠そうとした自分とは違う。間違いに背中を向ける自分とは違う。
……自分とは違う強さを持った目の前の人物の出現に大和田は大きく動揺する。
「———不二咲」
「こんにちは。大和田くん」
久しぶりでもないのに、不二咲の声はひどく懐かしいものに感じた。
それと同時に———罪悪感も。
「悪い」
大和田はその場から立ち上がりサウナをあとにしようとする。
「ま、まってよ!」
不二咲は立ち去ろうとする大和田の腕を、女性かと見間違うくらいに細い手でつかむ。
「———っ……!!」
会っていいはずがない。顔を合わせることも、自分には許されない。
———約束だって。
『……悪かったな。もう二度と急に怒鳴らねぇからさ』
『オメーが男だって秘密は誰にもバラさねぇ。これは———男同士の約束だ』
男同士の約束をし、友情を反故にし、果てにはその約束さえ守れない。
「……オメーと正面切って向き合えねぇよ」
———恥ずかしさ? もうそんな次元の話ではない。
『秘密』に怯え逃げ続ける自分と、『秘密』と向き合い正面から戦おうとする不二咲。
どちらが正しいか、どちらが人間としてできているなんて言うまでもなかった。
あげくにその秘密から逃げようと、勝手に不二咲に嫉妬し、裏切り殺してしまった。
———それでも彼との約束を守りたい?
それがどれだけ自分勝手なことか。
約束した相手を殺しておいて守りたいとは、めちゃくちゃな話もあったものだ。
そんなのは義理でも人情でもなんでもない。
———そんなの、ただのクズじゃないか。
また新たな罪とも向き合えず、変わろうとしている奴を目の前にしても一歩踏み出せなかった。
どこまでも最低で、愚かな。
———偉大な兄とは真逆の人種じゃないか。
「元から、立ってる土俵がちげぇんだ。俺は所詮、どこまでいっても人殺しのクズで……それを保身のために隠し続ける———最低のクズ野郎だよ」
「大和田くん、それは———」
「———間違ってねぇよ」
そして、偉大な兄も、
「だって俺は……『自分の兄貴を殺した』って秘密を守るために。自分だけのためにお前を———殺したんだ」
———俺が殺した。死なせてしまった。
大和田は顔を下に向けて、世界一きたない言い訳を言うように言葉を吐いた。
「変わらねぇ……兄貴のことと何も変わっちゃいねぇ。俺はオメーのように変わることができねぇ人間なんだよ」
世の中には……ダメだって気づいても変われる人と、変われない人がいるんだ。
不二咲、お前は変われる人間で……俺は言うまでもなく後者なんだ。
「いいんだ。オメーはもう、俺に関わるな。オメーは俺なんかよりもずっと強くてすごい奴なんだ。俺には……変わるなんて無理なことだ。俺はバカだから……またモノクマに踊らされて、きっとまた———殺しちまう」
桑田でさえ———その運命からは逃れられなかった。
ならまた自分も、同じことをしてしまうかもしれない。
そんな恐怖が、桑田の起こした殺人事件から続いていた。
大和田は不二咲の腕を振り払い、サウナルームのドアに手を伸ばす。
これでいい。これでいいんだ、と。
わかっているんだ。また俺は適当な理由をつけて不二咲への罪悪感から逃げ出そうとしている。
でもこれでいい。どうせまた自分は……変われないのだから。
「———どうして」
不二咲が言葉をかけるのにも関わらず、大和田は目をつぶって戸に力を込める。
わかっている。どうして『話を聞いてくれないのか』、それか『変わろうとしないのか』だろう?
「どうして大和田くんは、お兄さんを殺したの? ……話してよ」
ドアを引っ張ろうとした手から力が抜ける。
「……なんでっ……なんで、んなこと聞きたがんだよ?」
「信じられないから」
不二咲はきっぱりとそう言い切った。
「しんじらんねぇ……だと……!? なにを根拠に言ってやがる!!」
「だって大和田くんはそんなことを平気で出来る人じゃない」
振り返った大和田をまっすぐに不二咲は見つめてくる。
平気で兄貴を殺せないだと……!? お前を殺した相手に一体何を言っているんだ?
「———っざっけんな‼ 俺はオメーみてーなダチにまで手にかけちまうようなクズなんだぞ⁉」
「あれは大和田くんのふれちゃいけない部分に、ボクが触れたからだよ!」
「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇ!! だまれだまれだまれ、だぁまれぇっっ!!」
大和田に負けじと不二咲も大声を出す。
しかし、その後に出た不二咲の声は、おどろくほど静かだった。
「……本当は何があったのか、話してよ」
「しつけぇんだよ、てめぇは!!」
「言ってくれなきゃ、ボクもわからないよ!! 本当は何があったの!?」
大和田は不二咲をにらみつけ、威嚇するようにサウナルームの壁に拳を叩きつける。
彼の拳が当たると同時に部屋の壁にヒビが入る。
「話したからってどーなんだよ⁉ オメーはそれで信じんのか? あぁ?」
大和田は顔を不二咲の方に近づけメンチをきるも、彼は一切動じていなかった。
彼は自分の意思を確認するように首を縦に振った。
「信じるよ。それがどんなくだらない理由でも」
「……っ」
大の大人でさえ震え上がらせた視線を向けても動じない不二咲に、大和田は戦慄した。
顔をゆっくりと彼の顔から離し顔をしかめ、口を閉ざす。
———俺には、無理だ。
どうやっても。どうしても、これだけは話せない。絶対にだれも信じない。
だれもが、俺のせいと言うだろう。当たり前だ。兄貴を殺したのは他でもない。
『俺の、
「臆病者」
静かに、不二咲は確かにそう言った。
だがそれは不二咲が言うとは思わなかった答えで。
誰もが、口に出すであろうと予想した答えと遥かに違っていて。
———だから一瞬、あっけにとられた。
我に返った大和田は顔を怒りに歪ませ、拳を握る。
「……いま、なんつった?」
自分をそう呼んだ奴は、誰一人としていなかったというのに。
「臆病者って言ったんだよ! 弱虫! グズ! 男ならこういう時にこそ堂々と言えよ、どうしようもない馬鹿野郎!!」
不二咲の口から飛び出したのは———罵声。普段の彼なら、『絶対に』口にしないであろう糾弾の言葉だった。
それは『超高校級の暴走族』大和田紋土をも凌ぐほどの迫力で……
「くやしいなら、臆病者じゃないなら、ボクを殺してみろよ!」
「———な……! っんだと……ぉ!!」
「できないのか!! この、兄殺し!!」
その時、スッと大和田の手が———不二咲の首に伸びた。
次回は、明日の十二時に更新予定です。
皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?
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初代まで。アニメも含む。
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2まで。3やV3は知らん。
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絶対絶望少女まで。
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v3まで。全部やったお!!
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1のアニメor3のアニメのみ。