絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~   作:ゼロん

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第三十一話 超高校級のポーカー

「セレスさん……? どうして」

 

「すこし和樹くんをお借りできませんか?」

 

 セレスはニコニコと敵意のない笑みを見せるが、舞園は大神にセレスは警戒しろと、言われていたことを思い出し、警戒の色を表情に混ぜる。

 

「──安心してください。別に殺したりはしませんので。ただいっしょにポーカーでもと思いまして」

 

 セレスは自らの発言を証明するようにスッとトランプをポケットから出す。

 しかし、和樹は首を横に振る。

 

「……行く理由がないな」

 

「信用がないのも当たり前ですわね。──舞園さん」

 

「……? はい」

 

「よろしければ、あなたも来ていただけませんか? ディーラー役になっていただけると嬉しいですわ」

 

 舞園はセレスの発言を意外に思い、開いた唇に指で触れる。てっきり、セレスは一人にさせたところで意表を突き犯行を実行するものかと思っていた。だが、それを実行するにしてもあからさますぎる。

 クロが殺せるのは最大二人まで。その点を考えても、和樹がいる前では舞園は殺せない。

 

「待て。だれが行くって言った?」

 

「……来ていただけませんの?」

 

 当たり前だ、と和樹は目を細める。

 

「『超高校級のギャンブラー』のお前と賭けをするなんて、自殺行為もいいところだ。そこまでしてまで欲しいものはない」

 

「あら……それはどうでしょうか?」

 

「……どういう意味だ」

 

 セレスはクスクスと笑う。魚がようやく釣り餌にかかったと言いたげな表情で。

 

「たとえ、私があなた達の知りたい情報を……そうですね。あの部屋、鉄の扉の部屋についての情報を私がもっていたとしても、ですか?」

 

『……!?』

 

 セレスを除いた二人は驚嘆に両眉を上げる。

 

「どこからそんな情報を……」

 

 セレス「モノクマからあっさり聞けましたわ。わたくしのこと、随分と期待しているみたいですわね」

 

 あの部屋はモノクマにとって都合の悪い部屋ではないのか、だからカギがかけられ、なんの説明もないのだと和樹は予想していた。だがここまであっさり聞き出せたということは、

 

「……クロ予備軍ってか」

 

「かもしれませんね」

 

 考えられるケースは三つ。

 モノクマがセレスの巧みな話術によってうっかり口を滑らせたか、モノクマにとっては施錠しているだけのどうでもいい部屋なのか。

 

 あるいは———仲間同士の殺し合いと絶望を望むモノクマにとっては()()()()()()()

 

 セレスはふふっ、と楽し気な笑みをもらす。別に乗らなくてもいいと選択権を与えたうえでも、舞園たちがセレスの思うがままの答えを出すことをわかっているからだ。

 

「……」

 

「……和樹くん」

 

「やらないというならお気になさらず。もちろんその場合、この話はなかったこととさせていただきますが……」

 

「……だが生憎オレは賭けるような物は何も持っていない」

 

「あら、今日の昼食にワンタンがありましたね。それにいたしましょう」

 

「なんでもありか……」

 

「賭けは物と勝負があれば何でも成立する物ですのよ。では、談話室でお待ちしておりますわ」

 

 そう言うと、セレスは二人に背を向けて歩き去ろうとする。

 

「あっ……セレスさん!」

 

 舞園は急ぎ、セレスを呼び止める。聞きたいことが一つだけあるのだ。

 

「なにか?」

 

「その……いいんですか? もしかしたら私、和樹くんが勝つようなイカサマをしてしまうかもしれませんよ?」

 

 悪戯気な笑みを浮かべる舞園に、セレスは呆れたと目を細めて言う。

 

「それを勝負前に言う方もどうかと思いますけど。……それに」

 

 舞園の笑みを退けるように、セレスは彼女のあごをくいっと、指で持ち上げる。

 

「──ディーラーのイカサマを見破れないほど、堕ちていなくってよ?」

 

 

 ***

 

 

 イカサマ確認。

 もとい、和樹のトランプチェックは終了。

 やっと終わったかと、セレスは人生ゲームの偽札束で作った扇を広げる。

 

「本来、わたくしと賭けをするなら百万が最低金額ですが」

 

「昼食のワンタンでいいって言ったのはお前だろうが」

 

「そういえばそうでしたね」

 

 クスリと、余裕のある表情を見せる。流れを制す者は勝負を制す。

 その流れを狂わせることが得意なのも彼女だ。相手にしていて調子が狂う、というのが和樹の正直な感想だった。

 

 舞園は無言でトランプの束をシャッフルし、二人に配る。緊張しているのか、すこし顔が強張っている。

 和樹も真剣な表情でセレスを見つめる。

 

「……」

 

「わたくしの顔になにか面白いものでもついているのですか?」

 

 腹芸など無駄だと悟る。セレスの吸血鬼のように赤い瞳は、目の水晶に映る和樹の心を見透かしているかのよう……いや、実際に見透かしているのだろう。

 

 

「何を企んでいるんだろうなって」

 

 だから和樹は正直に答えた。こういう手合いに一番効くのは、嘘なしの正直な言葉と本能的に悟って。

 

「特に考えていませんよ。ただの腕慣らし……もとい暇つぶしですわ」

 

「暇つぶし、ね」

 

 あからさまな嘘。裏なしに条件を取り付けてくるような女ではないと見た。

 でも、言ってやることにした。

 

「──悪いが、こっちは暇じゃない」

 

 ———やるからには本気でやると。

 

「ふふ……では、コインはここにあるのを使いましょう」

 

 ボードゲームのプラスチック製のコイン。

 

「ほんのお遊びのようなものですから。勝敗は、どちらがここにあるコインを多く持っていた方の勝ちですわ」

 

「……待て、こちらの手持ちの方がお前より一枚多くないか」

 

 渡されたコインの山を数え、首を傾げる。

 

「フェアではありませんもの。ちょっとしたハンデですわ」

 

 手持ちの一枚を念入りにチェックする。案外、このハンデの一枚に小型カメラが仕掛けていたり、なにかしらのカラクリが仕掛けてあるかもしれない。

 

 だが当然その一枚だけでなく、相手方の手持ちのコイン全て、自分の手持ちのコインも余すところなくイカサマがないか確認する。

 

 全ての確認を終え、和樹は配られた手札に手を伸ばす。

 

「……後悔するなよ」

 

「全く」

 

 和樹の勝負の姿勢に応えるように、セレスは余裕をもって勝負に臨んだ。

 

 

 

 ***

 

 

 サウナでのぼせた大和田と不二崎の帰還とともに、生存者九人は昼食のため食堂へ向かうことになった。

 

「で、どうだ? 探偵さんと助手さんよぉ。なんか手がかりは見つかったのか?」

 

 大和田は機嫌良さげに舞園の横にいた和樹の肩を小突く。それを受け、少し痛かったのか和樹は一瞬顔をしかめる。

 

「……特に目立った手がかりはなしだ。そっちは?」

 

「プールサイドの方も異常なしだ。やっぱあんなとこで脱出の手がかりなんて見つかるはずもねぇか……」

 

 はぁと肩を下ろす大和田に、いたずらな笑みを浮かべた高里が突っかかる。

 

「そりゃそーよねー。サウナで不二崎さんと二人で()()()()だったアンタらなんかに、手がかりなんて見つかるはずもないわよねー」

 

「はぁっ!? 高里ぉてめぇ!!」

 

 ふざけた事を抜かすなと高里に食いかかる大和田だが、彼女は動じずキシシと笑っている。

 

 ちなみに大神が大和田と不二崎をサウナルームから運び込む時に、高里も彼らが大の字で力尽きていた所を目撃していた。

 

「お楽しみって……オイ! 俺にはそういう性癖はねぇよ!」

 

「まぁ、不二崎さんって結構華奢な方だし……女性には近い方よね……」

 

 思慮深げに高里は首を傾げる。

 

「聞けよ!! 勝手に俺を同性愛者にしてんじゃねぇ!」

 

 そもそも不二咲も不二咲だ。格好だけじゃなく仕草までほとんど女性のそれなのだ。男だと知らなければ、たとえ同性愛者でなくとも、全国の男性が盛大な勘違いを抱いてしまうことは間違いないだろう。ホモやゲイの方なら漏れなく大絶賛だろう。

 

 ……いや、ちょっと待て。と大和田は思考を一旦中断。

 

「高里。オメー、不二崎が男だって知ってやがったな?」

 

「ふふ、甘いわねぇ大和田。アタシね、人を見る目には結構な自信があるの」

 

 高里はチッチッチッと指を振りながら不二崎の方にビシッと指を指す。

 

「だって——————不二崎さんには胸が全くと言っていいほどないもの!」

 

 素晴らしく的確な指摘だろうとでも言うかのように、高里はそれほど無い胸を張る。

 

「……それを基準にすると、貴方の断崖絶壁もグレーゾーンだと思うのですが」

 

 セレスの静かなツッコミに高里の額にわずかながら青筋が浮かぶ。

 

「……。ケンカ売ってんのゴスロリ中二病患者」

 

「なんとでも」

 

 高里のわりとドスの聞いた怒声に、セレスは冷ややかに返した。

 

「……絶壁」

 

「中二!」

 

「……断崖」

 

「ゴスロリィ!」

 

「あら、光栄ですわ。この格好、誇りを持っておりますもの」

 

「ホコリの間違いじゃないの?」

 

 言葉のないにらみ合いはしばらくの間続いた。たまに小声で悪口を言い合い、それからのにらめっこの無限ループだ。

 

「だいぶ打ち解けてきたのかな……?」

 

「かもな」

 

「にしてもセレスさん、なんであんなにイラついてんだ? 平静っぽく見えて今日はやけに感情的じゃん」

 

「それがですね……セレスさん、賭け事で勝ち逃げされたんです」

 

 こっそりと悠太に耳打ちする舞園だったが、どうやらセレスには聞こえていたらしく、ギロリとにらまれる。そうとうな地獄耳か。

 

「……屈辱ですわ」

 

 

 ***

 

 

「……」

 

 息を呑むセレスの前に並べられたのは三枚のスペードの(キング)

 

K(キング)のスリーカード。これでまたふりだしだ」

 

「……っ」

 

 セレスの出したカードは……ダイヤのQ(クイーン)のツーペア。

 

 舞園は唖然とした。

 

 セレスが持つコインは6枚。

 

「さて、一枚差。昼まであと数分。そろそろ終わろう」

 

 そして、和樹が持つコインは──最初と同じ7枚だった。

 

「……っ」

 

 セレスの自慢のポーカーフェイスが少し崩れ、握った手をほどき席を立つ。

 セレスに勝った。彼女自身、油断も隙もあったのかもしれない。いや、手をあえて抜いたのかもしれない。

 けれども舞園は、和樹がセレスに勝ったという目の前の事実がどうしても飲み込めなかった。

 

 そして、セレスはゆっくりと噛み締めていた唇を開いた。

 

「…………拷問部屋」

 

「……!?」

 

「……まさか」

 

「鉄の扉の部屋。その中は拷問部屋ですわ。たとえ一枚でも──赤字は、わたくしにとっては敗北も同然ですから」

 

 セレスはすっと、自分の手元にあった六枚のコインをテーブルの端に寄せ、フランスの貴婦人のようにつまんで別れの挨拶をした。

 

「それでは、ごきげんよう」

 

 セレスはにこりと愛想よく微笑んで部屋を出ていった。

 

 

 

 *****************

 

 

「……やはり」

 

 勝負どころでさり気なく織り交ぜたイカサマを瞬時に見抜き、時には負けつつも、和樹は終盤以降はこちらの心理を彼にとって有利な方へ誘導してきた。

 

 ──まるでこちらの心を手玉にとるかのように。

 

「信晶くんの開いた集会の時に言っていた彼の言葉……どうも嘘の匂いがしますわ」

 

 ———自分には特にこれといった才能はない。

 

 そう和樹は言っていた。

 ……が、どうも本当だとは思えない。

 あれほどまでに人の心を動かし、見透かす彼に『何も無い』はずがない。

 

「……嘘をついているか、あるいは自分でもわかっていないのか……どちらにしても、わたくしにとっては厄介極まりないですわね」

 

 やはり計画を変更すべきだろうか。この状況で事を起こすのはリスクが大きすぎる。起こすにしても、彼が勝手に消えた後で行うべきだろう。

 

「たまたま手に入れた情報をエサに、彼に関する情報を得られただけでも、収穫でしょうか……プライドはひどく傷つけられましたけども」

 

 すこし不満げにセレスは天を仰ぐ。見えるのはいつもと変わらない赤い天井。

 偵察のためにすこし手を抜いてやったことは確かだ。ここで彼らの歩みを止めたら、プランBの存続すら危うい。

 

 だが、やはり。

 

「……気にくわない」

 

 許される敗北であっても屈辱的なものだと、大きく息をこぼして食堂へ向かう。

 

 カツン、カツンとヒールが床にあたる音を静かに響かせて。

 

 

皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?

  • 初代まで。アニメも含む。
  • 2まで。3やV3は知らん。
  • 絶対絶望少女まで。
  • v3まで。全部やったお!!
  • 1のアニメor3のアニメのみ。
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