絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~   作:ゼロん

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*今回、舞園さんの過去の自己解釈が含まれます。

出来るだけ本作と辻褄を合わせたり、原作にも出てきた設定に準拠させていますが、

なにせ舞園さんの情報が少ないため、所々、彼女が中学または高校生と、早くも国民的アイドルになれた理由、

アイドル仲間の中で判明している人以外の名前、クラスで元々美人で有名だったがアイドル業界大成功で超有名になった時期(舞園が中学二年と想定)、

家族構成

(父親と二人暮らしは公式設定。

アイドルに仕事の後、いつも家に帰って誰も居ない……だと、いつまでも舞園さんのメンタルがもつとは考えられないため、

中学・高校時代は、夕方によく一人暮らしの従弟が、舞園が帰るよりも早く来てくれて、留守番・家事をしてくれていたということに)、

通う小学校が舞園宅から遠いため、妹は普段は叔父と叔母の家にいて舞園宅に帰ってくることは少ない(ダンガンロンパ 原作ボツの都合)。

路上ライブ時代……元々所属していた事務所……移転など。


所々補完・補正しているところがございます。
ご容赦ください。







第三十三話 元・超高校級のアイドルの切望

 モノクマから『プレゼント』を受け取った後、各自、各々の部屋に戻っていった。

 

「不二崎くんはノートパソコン……悠太くんは朝日奈さんと両親の写真……私は……」

 

 数枚の写真を取り出す。

 するとノックの音が響く。いま平気か、と和樹の声が聞こえたので、大丈夫ですよと返す。鍵は開けたままだ。

 

「……無用心だな」

 

「閉めても、あまり変わらないと思いましたから」

 

「今、不二崎はいるか?」

 

「いいえ、さっきお手洗いに行きましたから」

 

 にこっと笑って舞園は答える。和樹は自分の白髪を恥ずかしそうに撫でて、

 

「……いや本当に今さらだけど、大神さんはともかく、男女一緒の二人部屋って……色々と問題があるような気がするんだが……」

 

 ……考えもしていなかったことだった。

 

「……あ、あぁ〜……たしかに。そうといえばそうですね」

 

 舞園はすっかり忘れていたと、少し距離を置く。

 

 ──いつもはずっと意識していたのに、どうしてだろう。

 

「和樹くんは、大丈夫でした? 中身はなくした記憶につながるものだった……とか」

 

「……いや。特にそういうものじゃなかった」

 

 和樹はポケットからスマホを取り出す。

 

「支給されたガラケーじゃないですね。もしかして……」

 

「あぁ、おそらく生前に俺が持っていたものだろう。中身はすっからかんだが」

 

「それは……。残念でしたね」

 

 舞園はしゅんと頭を下げるが、和樹は小さく笑って、

 

「ほんとだね。ゲームアプリも何もなかったよ」

 

「──自分の記憶よりゲームですか!?」

 

「……ん? 色々大事だろ? もしゲームアプリを入れててデータとか消えたら戻らないし」

 

「やっぱり和樹くんって、どこか変ですよ」

 

「そうか?」

 

「……探索中にアイスは食べるわ」

 

「いや、小腹が空いたな……と思って」

 

「自分の事より他のことばっかり気にして」

 

「……? そうか、それって変なことなのか。これでもオレなりに本気なんだが……」

 

「自覚なしのすごいマイペース……!」

 

 ……なんだか調子狂う。

 

「……変って言えばさ」

 

 和樹は玄関から出て、少し歩いてからその場に座ると、

 

「舞園って……なんだか変わったよな」

 

「えっ……ど、どこがですか?」

 

 ……気になった。純粋に。この人から見て、他の人から見て、今の私はどう映っているのか。

 

「最初に見た時よりも、だいぶ表情が豊かになったなって」

 

 和樹はニコッと太陽のように笑った。大人びてる彼が、まるで子供のように無邪気に。……その柔和な笑みは、私の大好きな人にどこかそっくりで。

 

「私……そんなにおかしかったですか?」

 

「初対面からしばらくは泣いてばっかりだったじゃないか」

 

「……言わないでください」

 

 自分でもわかるくらい、カァーッと顔が赤くなる。冷静になって考えると今でも恥ずかしい。

 

「でも今はだいぶ自然になったなぁって」

 

「好きな時に笑って、怒って、驚いて。悲しいことがあったら泣いて。嬉しい時に思いっきり笑う。──それが一番自然で、いいことだと思う」

 

 少し笑ってた。

 正直、驚きだった。和樹に初めて会った時は、人に全く興味がなさそうな感じだったのに。

 

 本当はすごくマイペースで、

 

『────オレからすれば、お前の方が『ふざけるな』なんだよ』

 

 ──友人のことも大切に思っていて。

 たまに疎いところもあって、けれども鋭いところもあって。的確で鋭い指摘をされてドキッとすることもある。

 

 やっぱり、彼はどこか苗木くんに似てて、けどやっぱり違くて、それでも……どこか懐かしくて。

 

「まぁ、あんまり笑うのが得意じゃないオレに言われてもなんだけどな」

 

「そ、そんなことないですよ!」

 

「お、そうだ。そういえば」

 

 和樹は舞園の箱の中身はどうだった、と聞き返す。

 

「私のは……」

 

 ポケットをまさぐって、モノクマから受け取った『プレゼント』を出す。

 

「あった、これ。私のアイドルグループの集合写真なんです」

 

 苗木達と撮ったクラス写真。それと……かつてのアイドルグループの仲間達と、海で撮った写真。

 

 和樹には悪いが……もう二枚別の写真を持っている。

 

 今の自分には……その写真でさえも、まだ向き合えない。箱から取り出して見えた瞬間に視界から逸らすほどのもので。

 

 写真には舞園を中心に、彼女を囲むほぼ同年代と思われる四人の少女と、

 

 四人の少女の中の一人──茶髪のポニーテールの少女に、ガッチリと首に腕を回され、特徴的な仮面を被った少年が写っていた。

 

 ちなみに、黒スーツ姿の仮面少年以外はみんな水着の上にそれぞれ色違いのパーカーを着ている。

 

 そして彼女たちの背後には、太陽に照らされ輝く青々とした海と、砂浜に転がるビーチボールが写し出されていた。

 

 みんな、舞園を含め、笑っている。

 

 ──心の底から楽しそうに。

 

 そのせいか、一見読み取れないはずの仮面少年の表情は、困りつつもどこか嬉しそうに見えた。

 

 

 ***

 

 

「写真集用の水着写真を撮る際に、謝罪としてプロデューサーの方が自由時間をくれたんです。みんなで目一杯遊んだんですよ?」

 

「……嬉しそうに話すんだな」

 

「すっすみません。つまらなかったですか?」

 

 話しすぎたかと舞園は不安げな様子を見せる。

 

「……いや、聞いてるこっちも楽しくなるなって」

 

 よかった、と舞園は胸を撫で下ろす。

 

「あの頃は大変でしたけど、みんながいてくれたから楽しかったです。……そういえばあの時、間違ってプロデューサーの服に水をかけてしまったんですよね……」

 

「うわ〜……怒ったんじゃないか、それ」

 

 舞園は少しと言って苦笑。

 

「けどすぐに『やったな』って言って水のかけあいっこに発展しました」

 

「なんていうか……やんちゃ、なんだな。そのプロデューサー」

 

 舞園は楽しそうに笑顔を浮かべ、一人ずつ自分の仲間を紹介していく。

 

「この栗色の短髪の人が、逢坂(あいさか)めぐみさん」

 

「しっかりしてそうな人だな。副リーダーみたいだ」

 

「はい。すごくしっかり者でグループの中では一番年上です」

 

 それから、と彼女は指をポニーテールの凛々しい女の子に動かして。

 

「この人が粟国(あぐに)りつか、通称リッカさん」

 

「へぇ……かわいいね。やっぱり舞園みたく、おしとやかなのか?」

 

 わずかにほころんだ和樹。すると舞園は悪戯げに微笑んで、

 

「元不良娘です」

 

「………え」

 

「元不良です」

 

「……まじですか」

 

 あ、でもでもと舞園は訂正する。

 

「ちょっと男勝りですけど、すっっごく頑張り屋さんなんです。抜けてるところはあるんですけど……とにかくスッゴイ頑張り屋さんなんです。一生懸命、言葉遣いを『オレ』から『ワタシ』に切り替えようとしたり……!」

 

「とりあえず、がんばる子だってことはわかった」

 

 舞園は今は亡き良き思い出を掘り起こしているかのように悲しげで、それでいて嬉しそうで、遠い日々を見るような目をしていた。

 

「それに……いざって時はすごく頼りになる人なんです。みんなが言いたいことを、いつも最初にハッキリ言ってくれて……頼れるお姉さんという感じでした」

 

「……たぶん、みんなから愛されるような人柄だったんだな」

 

 ……一言で言うと、アネゴ気質なんだろうな。と和樹は呟いて。

 

「……! はいっ!」

 

 かつての仲間に嫌な印象を抱いて欲しくないと不安だったけれど、どうやらわかってくれたようだ。舞園は写真に残る二人を指差す。

 

「左にいる子が青葉(あおば)さとみさん。黒髪の子が羽山(はやま)あやかさんです」

 

 羽山さんはちょっと内気で、自分の妹や昔の自分と似ているからか下手に放っておけないと。

 

 青葉さんは普段はニコニコっとしてますけど、たまに結構ブスッとくること言うんですよ、と楽しそうに話す舞園。

 

「ええと……シャイな子に、たまに毒舌系ね……」

 

「羽山さんはシャイですけど……本当は影で努力してるんです。青葉さんも、普段は温和な人なんですよ?」

 

「……なるほど」

 

 キャラ……濃いな。

 

 それにしても、舞園は本当に彼女たちを大切に思っているのだろう。彼女たちに向けた温かみが会話からにじみ出ていた。

 

「じゃあ……この写真に写ってるこの人は? スタッフの方?」

 

「……。プロデューサーです」

 

 この時の彼女の顔は、和樹には見えなかった。けれど、とても悲しい顔をしているのは明らかだった。

 

「……え!?」

 

「プロデューサーです」

 

「この仮面の人が……? いや、どう考えても不審者だろ、これ」

 

 一見、星の○ービィに出てくるメタナ○トの仮面を被った男だけど。

 美少女の端にいるだけでもかなりの存在感を放っている。

 和樹の正直な感想に舞園はくすっと笑う。

 

「……ふふっ。たしかに変わった人ですけど、とってもいい人なんですよ? それに私のアイドルグループをここまで人気にできたのも、彼のおかげなんです」

 

「希望ヶ峰学園の生徒といい、この人といい、どうして能力のある人は変人ばっかりなんだ……?」

 

「さぁ……? なんででしょうね?」

 

 小さく笑った後、また悲しそうな顔に戻る。

 

「……プロデューサー、仮面Pって呼ばれてたんですけど……アイドルの仲間の中で一番謝りたいのは、彼なんです」

 

「プロデューサーに……?」

 

 彼女はコクリと頷く。

 

「私たちは元々、別の大型アイドルグループに所属していたんです」

 

 先ほど紹介した四人のアイドル仲間を見る。

 

「彼女たち四人とは、同じ時期の研修生でした。辛かったけど……無事全員で正式メンバーになれたんです」

 

 舞園や他の四人は研修生の中でも、ファンからベスト5の人気を集めていたという。彼女達とは競争をしつつも、互いを高める良い関係を築けていたという。

 

「────けど、待っていたのは想像を超える地獄でした」

 

 舞園はわずかに震える肩を掴んで言った。

 

「徒党を組んだ先輩たちの壮絶な嫌がらせで何度も恥をかかされて……一人、一人と仲間はいなくなって……最後は、私一人になったんです」

 

 今まで五人に向いた矛先が一人に集中する。最悪、社会的生命を潰されかもしれない危機感を抱えながらもファンに笑顔を振りまく。

 

 社会に出たとはいえ、まだ中学二年生の少女に降りかかるその苦難は、とても軽々しく言葉にできるものではない。

 

「……我慢しました。必死に。仲間がいなくても、いつか帰ってきてくれるって……そうでなくてもいつか私も陽の目を見る日がくるんだって……ずっと一人で居場所を守ってきて。でも……それも限界がきてしまったんです」

 

 ──そしてついに「蹴落とし」を行なった。

 

 いじめの筆頭だった先輩の不祥事をネットに暴露し社会的地位を奪った、と。

 

 彼女は自らを罰するように、血を吐くように語った。

 

「もう自分でも自分がわからなくて……それからは誤魔化すように仕事をし続けました。それで……とうとう私もおかしくなって、家で妹の代わりに、いつも待っててくれる従弟にまで八つ当たりをしてしまったんです」

 

 舞園の話によると、彼女の双子の妹は家からは遠い進学校に通っていて、従弟も中学は舞園の家の近くだったらしい。

 

 そこで叔父と父が協力し、叔父と叔母の家に妹のアヤメを。

 

「……」

 

 まるで懺悔をするような舞園の罪の暴露に、和樹はじっと黙って話を聞いていた。

 

「そんな時に現れたのが……仮面Pだったんです」

 

 正体不明、神出鬼没、あらゆるサブカルチャーの企画を打ち立て、名作を作り成功させてきた天才プロデューサーと当時注目を集め……『超中学校級のプロデューサー』と呼ばれてたという。

 

 彼曰く、路上ライブ時代から見にきてくれていたのだと。舞園の路上ライブ時代、仮面Pも小学生であったし、同年代の人もそこそこ来ていたので、正体を特定するのは困難だった。

 

「彼は新しく展開するアイドルユニットに、私や、かつて辞めていった四人の仲間を引き入れてくれたんです」

 

 路上ライブで人気が出はじめた時期に、仮面Pはスカウトする予定だったのだが、他のプロデューサーに先を越されてしまったらしい。

 

 蹴落としを行なった後も、舞園はアイドルは続けるつもりではいたが……周りの環境の悪化には悩んでいた。仮面Pが現れたのはそんな時だったという。

 

 研修生の段階でトップクラスの実力を持ちながら、芽を出さずに消えていくのは、もったいないと。

 

「なるほど……恩人な。けど、あまりにも都合が良すぎないか? 見かけだけでも、怪しいんだが」

 

 オレはそいつが何かしら仕組んだんじゃないかと疑うが、と和樹は苦言する。

 

「最初は私も疑っていました。けど……付き合いが長くなっていくうちに、わかったんです。────彼はただ、『みんなが感動するような素晴らしいものを作りたい』。……彼は純粋にそれだけだったんです」

 

「……」

 

「そうでなければ……いつもあんなに私たちに親身になってくれるわけがありません。私、エスパーですから、そういうのわかるんです」

 

 エスパーなのは冗談ですけど、わかりますから。と舞園は語った。和樹から見ても、舞園の勘が鋭いのは明らかだった。

 

「せっかく……私のワガママで、みんなと一緒にアイドルにしてもらったのに……それなのに……」

 

 ────裏切った。

 

 全ての信頼を、仲間も、恩人が自分に抱いてくれた信用を全て。全て我が身可愛さに知らぬ間に裏切り、破り捨てた。

 

 彼女達と、作ってきた夢を。誰でもない自分の手で。

 

「……舞園は、どうしたいんだ?」

 

 舞園は……生き返りたいのか。救いもない、夢もない。絶望しかないどうしようもない未来に。

 

 ……それとも。

 

「話からすると……もう君の夢は」

 

 もう、どうしようもないと諦めて。

 

 ……ここで転生の時を待つのか。

 

「……自分でもわからないんです」

 

 舞園はそう複雑そうな顔で答えた。

 

「和樹くんの思うとおり、無事に生き返れたとしても……私の帰る場所はありません」

 

 ケータイには赤い画面と、

 

 ──先ほどまで笑顔で舞園と写っていた……ステージの上に倒れた四人の遺体がありありと映し出されていた。

 

「……またモノクマに送られたのか」

 

 舞園は無言で和樹の発言を肯定する。

 

「────私は桑田くんを刺そうとしましたから。

 

 

 私の唯一の居場所は──私自身が壊してしまったから」

 

 泣くのをこらえるように震えた笑顔で。

 

「私の夢も、あの人の信念も、仲間たちの想いも、何もかも、私が台無しにしたんです」

 

 舞園の腕から和樹の足元に三枚の写真が落ちる。

 

「でも……いいんです。私なんかの居場所がなくても、もういいんです」

 

 一枚はアイドルの仲間達の。

 

「私には『あそこ』に帰る資格なんて無い。

 ──けど、どんなに悪印象でも、みんなと、一生懸命がんばって作ったアイドルグループだけは……。いつも応援してくれた人達の中からは……せめて忘れられないでいてほしいんです」

 

 ぐすっと鼻水をすすって舞園は泣く。

 

 落ちていた二枚目は苗木と隣に写った希望ヶ峰学園のクラス写真。

 

「……もし……もし神さまがやり直しの機会をくれるとしたら……苗木くんや桑田くん。もし生き残っていたら……彼女たちにも、一目会って謝りたい、です」

 

 苦しそうに、とめどなく出る涙を拭って、彼女は。

 

 三枚目は……どこかの公園か、ベンチに座る……苗木と舞園。

 

 ────二人きりで撮った、きっと彼女にとって最も大切な写真で。

 

「……おこがましいですよね、私。あれだけのことをしておいて。許されるわけないのに」

 

 今にもはち切れそうな、乾いた笑みをこぼして、彼女は呟いた。

 

 そんな彼女が見ていられなくて三枚目の……二人の写真を床から拾う。

 

「この人が、苗木くんか?」

 

「……はい。私の、たった一つの希望です」

 

 この人が……。なんだか、どこかで会ったような。そんな気がする。

 

「思った通り、いや……イデが言った通り優しそうな人だな」

 

「……とても。私が彼に甘えてしまうのも、きっと……そのせいかもしれません」

 

 記憶を失っているはずの和樹にとって、どこか奇妙な感覚だった。前にあった記憶のない人に、会ったことがある気がするというのは。

 

「オレ……別に、さ。舞園だけが悪いわけじゃないと思うんだ」

 

「──?」

 

「まぁ……殺そうとしたのはダメだけどさ。……そもそも、モノクマがこんな事を仕組まなかったら、こうはならなかったんだ。……変に気にしすぎんな」

 

 本当は……もっと責めるべきなのかもしれない。己が身可愛さに信じてくれる他人を利用しようとしたのだ。殺人を実行して自分の身と居場所を守るために。

 

「それに……居場所なら、まだあるじゃないか」

 

 和樹は希望ヶ峰学園のクラス写真と、苗木と舞園の写真を舞園に手渡す。

 

「彼らや、苗木くんの隣にも……きっと」

 

 舞園は大きく見開いた目で写真に雫をぽつぽつ、ぽつぴつと落として。自分の胸に寄せてうずくまって。

 

「……ぁ、ぁぁ……!」

 

「だからさ……がんばろう。やれること、全部やってからでも、何も遅くない。また……舞園ならやり直せるさ」

 

「……ぅあ。ぅぅっ……!!」

 

 彼女はこれだけ苦しんでいる。自分を省みて変わろうとしている。そんな舞園を……和樹は責める気にはなれなかった。

 

「……ごめんなさい。ごめんなさいっ……! ……ごめんなさ……ごめんなさい……! …………。ありが……ありがとう、ございます」

 

 ……我ながら、甘い。甘すぎる……気がする。馬鹿みたいだ。

 

「んや。またなんかあったら話せ。……いくらでも力になるから」

 

 微笑する舞園。

 

「……和樹くんって、不思議です」

 

「……?」

 

「なんだか……お兄さんみたいで」

 

「よせよ。オレはアンタより二歳年下だ」

 

 そうでしたね、とようやく止まった涙を拭いて、舞園は再び和樹にお礼を言った。

 

「──よしっ! 明日の探索も頑張りましょう!」

 

「あぁ、おやすみ舞園」

 

「おやすみなさい」

 

 

 ***

 

 

 和樹が出ていった後、舞園は再びベッドの上に腰掛け、再び写真と向かい合う。苗木と自分の二人が写った写真と……和樹には見えなかった『四枚目の写真』を。

 

「ごめんね……苗木くん。許してくれなくても……生き返ったら……せめて一言、ごめんなさいって、言わせてください……」

 

 四枚目の写真に写っていたのは……舞園の家族の写真。

 

 父と、笑う自分と、双子の五歳下の妹と、二歳歳下の従弟。

 

 仕事で帰りが遅いが、たまに早く帰ってきてくれる優しい父。

 

 通う小学校の立地上、叔父と叔母の家に住んでいる、自分に瓜二つの可愛い妹。

 

 妹に代わり、中学高校になって、家で自分の帰りを一人待っていた……世話焼きの従弟。

 

 自分と同じ髪の色を持ち、無条件に慕ってくれる、幼い顔立ちを残した愛おしい笑みで彼は。

 

『あっ、お帰り、従姉ちゃん。今日の夕食は僕だけじゃなくて……』

 

 たまに彼が誕生日に、みんなを集めてくれて。

 

『お姉ちゃん、おかえりなさい!』

 

『さやか、いつも帰り遅くてごめんな。今日もお疲れ様』

 

 みんな……その先の幸せを信じて笑っていたんだ。

 

「アヤメ、お父さん……! ユウくん……! ごめん、なさい……! 私、私……みんなを……みんなを……殺そうとした……!! それに……それにわたし……! 勝手に死んで、アヤメや、お父さんを一人にして……! ユウくんも……ずっと家で待っててくれたのに……もう帰れない。ずっと家に帰ってないよぉ……!!」

 

 母もいない、娘である私だけの父はもう一人だ。いや、もしかしたら私が死んだせいで、あとを追って死んでしまっているのかもしれない。

 

 父の代わりに家で待っていた従弟も、妹も、きっと絶望したに違いない。自分に失望したに違いない。

 

 

 仲間も家族も、愛する人も、夢のためなら裏切れた酷い人。

 

 もしこのことを苗木くんに話したら、彼はなんて言うんだろう。自分を忘れないでいてくれるのか。それでも信じてくれるのか。

 

 この頃はそんな不安ばかりが頭をよぎる。

 

「嫌われ……ちゃうだろうなぁ……うん」

 

 枕に頭を乗せて、両目を腕で覆う。なぜか唇がひくひくと動く。

 

 けど……一度もう死んだ身でも、やっぱりこう思わずにはいられない。

 

 …………こんな所で消えたくない、って

 

 私がここで死んだら、みんなが私にかけた信頼も愛情も、全て裏切ることになってしまう。本当に……なにもかも無くなってしまう。

 

 みんなで作った夢も思い出も────絶対に消したくないから。

 

 許されないかもしれない……けど願わくば、またみんなと。

 

 淡い願いを抱いて舞園は毎夜を過ごす。

 




舞園さんのアイドル仲間は、(以下の画像) 本編でもチラッと出てた二人を元にしたものです。

(羽山あやめ・青葉さとみ以外のキャラ・名前等は作者のオリジナルです。ご容赦を)


【挿絵表示】


公式で他の二人も名前が出てたらごめんね!
(調べたら結構出てたので、本文を修正・加筆しました!)

もしかしたらコアなファンもいるだろうな、と思って舞園妹も出したよ、コノヤロウ!

おかげで、めっちゃ悩んだわい。

皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?

  • 初代まで。アニメも含む。
  • 2まで。3やV3は知らん。
  • 絶対絶望少女まで。
  • v3まで。全部やったお!!
  • 1のアニメor3のアニメのみ。
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