絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~ 作:ゼロん
……四分の一くらいは、思い出せただろうか。
『そういえば〇〇ちゃんと、▲▲ちゃんは!? あの二人は!?』
『あの二人なら、とっくに逃げ出している。もう一人はともかく……まぁ、さすがは『超高校級の軍人』と言ったところだ』
だけど……まだ全ては明らかになっていない。
特に朝日奈さんと十神くんが言っていた二人の名前……クラスメイトの二人の名前だけがどうしても思い出せない。
「……あれ?」
モニタールームの監視カメラの上に、キラリと光る何かがある。
「重要だとは思いますが……今はとりあえず、わたくし達の記憶に関しては無理に思い出す必要はないでしょう。命……いえ、わたくし達の存在の確保が最優先です」
「うむ……では、クロを探す手がかりを見つけねばな」
「あっ、大神さん。そこにある脚立を撮ってもらえませんか?」
舞園は大神のすぐ横に立てかけてあった脚立を指す。
「よいが……何に使うのだ?」
「監視カメラの上に何かが……あれ……和樹くん?」
舞園は先程から黙ったままの彼に顔を向けると、彼の顔は。
「…………ぅ……っ……?」
……真っ青だった。
「和樹くん!!」
「……!!」
口元を手で抑え、和樹は部屋を飛び出していった。舞園はカメラの上にあった何かを掴み、急いで脚立をかけ降りた。
***
急いで部屋を出ると、彼は今にも倒れそうな足どりで廊下を走っていた。
「和樹くん! 一体どうしたんですか!! かずき────」
「────寄るなっ!!! 『僕』に……『僕』に近寄るなぁぁぁぁっ!!!」
舞園が近づいたことでかなりショックを受けたのか、彼は半狂乱で叫ぶ。
身体を小刻みに震わし、彼女が一歩を踏み出すたびに、彼もおぼつかない足取りで一歩下がる。間違ったら転んでしまいそうな、足取りで。
────彼が私に向ける目は。
彼が舞園に向ける視線は、他でもない、舞園自身がよく知っているものだった。
……恐怖と不信。
それは、舞園がモノクマに脅迫映像を見せられた時に、彼に、苗木誠に見せた彼女自身の目と。
同じものだったからだ。
荒い息遣いと共に、髪を手で隠し、その場にうずくまる。
「……頼むよ。あっちに行ってくれ。頼むからさ……は、は」
少しすれば……良くなるから、と普段の様子に戻りきれていない口調で喋る。
「……なにか、思い出したんですか?」
「……」
和樹は無言でその場にうずくまり続ける。
……その間に距離を詰めようとした瞬間。
「……部屋に戻る」
「えっ……」
彼は起き上がり、居住区に足を向けようとするが、ふらふらでとても立っていられるような状態ではなかった。
……精神的に負った傷が大きすぎる。
「ダメです。私もついていきます。今の和樹くんじゃあ、階段から落ちてしまいます」
「────必要ない」
手を貸そうとするも、突っぱねられる。
だが、その目に映っていたのは、鬱陶しいという不快の感情ではない。
────憂いだった。
懇願が含まれていた。
「頼むから……今だけは、一人にしてほしい」
そう言い残して、和樹は舞園を置いて立ち去る。
「これは、『僕』一人の問題だ」
先ほどと変わらない憔悴しきった様子で。
「……ぁ」
自然と、手が伸びていたことに気がつく。
戸惑っている間にも、彼との距離は離れたいく。
……どうすればいいのだろう。
彼の要望通り、一人にするべきなのではないか。いや、あの状態で放っておくことなんて。
でも……
「余計なお世話……ですよね」
あえて……一人にするのも時には人のためになるのではないか?
彼は、そう望んでいるのだ。
和樹は……一人であることを望んでいる。
たしかに彼はそう言ったのだ。一人にしてほしいって。
舞園は和樹に伸ばした手を下げ、彼女も、彼に背を向け、
『────それは違うよ』
「……?」
声がした。
振り返っても、誰もいない。
あるのはゆっくりと遠ざかっていく和樹の背中だけだ。
『真実から目を背けるのは、違うと思う』
「……」
……真実?
舞園はもう一度、彼の背を見つめる。
────どこか、見覚えがある。
だが、その時は、『彼』もいた。
自分が不安に押しつぶされそうになった時。
怖くて、どうしようもなくなったとき。彼はいつも側にいてくれていた。
『舞園さん、もう大丈夫?』
自分のことで手一杯なのに、心配までしてくれた。
「……苗木くん」
…………彼ならどうするだろう。
かつて自分が抑えきれず、吐き出した絶望も。最終的には、取り返しのつかないことにしてしまったけれど。
彼は……どうした?
それでも、一緒にいてくれたじゃないか。
真っ先に駆けつけて、話を聞いてくれたじゃないか。案じてくれたじゃないか。
『けど一人になっちゃダメですよ。一人で解決できないことに一人で立ち向かっても結果は同じです』
『だ、だけど、これは私個人の問題で……』
『────だったらそんな姿にならないでください。わたしも……黙って見ていられませんよ』
田上さんも、私にそう言った。
彼は、和樹は本当に一人にしてほしいのか?
あれが、
「……っ」
あの倒れそうな背中が、一人でなんとかできるものなのか?
あれはただの強がりだ。内の殻に……閉じこもろうとしているだけではないのか?
いよいよ和樹の足が崩れ、肩が斜めになる。
「────ぅぁ」
彼は、真実は、
「和樹くん。あなたは────」
本当は────助けてほしかったんですよね?
舞園は倒れる和樹の方に滑り込んで、身体を持ち上げる。思ったよりも軽かったのには、正直びっくりした。
「…………どうして」
「────エスパーですから。それくらいの嘘は見破れますよ」
へへ、と舞園は表情を和らげて笑った顔を彼に見せる。
和樹は脳を揺さぶられたかのように目を見開いていた。
「────────」
「さぁ、部屋まで運びますからね。……今日の私は、探偵助手兼、看護婦です。よいしょっと」
勝手なことをして怒っていないか心配になって、確認がてらもう一度彼の顔を見る。
「……」
彼の顔は……母親に抱きかかえられる子供のように、安らかだった。敵わないと、そう言いたげな顔で。
ずっと後悔ばかりしてた私だけど、
「……これで、よかったんですよね」
苗木くん。田上さん。
私はようやく、一歩前に進めた気がします。
「……って、やっぱり重い。さすが男の子」
意識が無くなったことでかかる彼の体重に、舞園は苦笑するしかなかった。
***
赤く灯る火の中で、4つの影が揺らめいていた。
4つのうち、2つの影は、動くことをしなかった。
残る一つの影は、動かなくなった小さな影の一つから後退り、
もう一つは────赤く染まった刃物を手に抱えていた。
残った影は、刃物を持った影から逃げ回った。
守ってくれる影は────もういない。
とうとう壁に追い詰められ、2つの影は重なろうとする。
『いやだ……! いやだ……ぁ……!! こんな……こんな……ぁ……』
死にたくないと一つの影が悲鳴をあげた瞬間、
『……ぇ、ぁ……?』
あろうことか、刃物を持った『女性』は、
『この方が───『』くんは絶望してくれるよね────?』
『少年』に突き立たせる形で────包丁を自らの心臓に突き刺した。
『────ぅぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!』
最後に、影が一つだけになって、『少年』のいた建物は崩落した。
────そして、『少年』の意識は覚醒する。
***
「…………っ!! ……はぁ、はぁ……!!」
和樹は息も整わぬまま身を起こし、周囲を確認する。
「……だ、大丈夫ですか……? や、やっぱりまだ安静にしてないと……」
「ここは……?」
「か、和樹くんの部屋です。急に倒れてしまったので、大神さんに運ぶのを手伝ってもらいました」
舞園は和樹の額についた汗をタオルで拭う。
かぁっと和樹の顔が赤くなり、タオルを舞園の手から取り上げようとする。
「い、いい。自分で拭く」
「ダメです。和樹くんはじっとしていてください」
伸ばした手は舞園に悪戯げにいなされる。
あぁっ、と和樹は空を切った手に驚く。
「……和樹くん。一体何があったんですか」
「……別に、何もない」
「嘘です。あんなに取り乱して、何もなかったはずがありません。寝ている間も……ずっと、苦しそうに……うなされていました」
「……」
和樹は舞園から顔を背ける。さっき伸ばした右手はともかく、左手は……本人も無意識なのか、ずっとベッドのシーツを掴んで離そうとしない。
「お願いです。たぶん……今私が聞こうとしてるのは、和樹くんの記憶に大きく関わることなのかもしれません。すごく……デリケートで、プライベートなことなのかもしれません」
舞園は遠慮がちに目を伏せる。
「でも……放って置けないんです。あんなに苦しんで、絶対に普通じゃないんです。それに、もしかしたら、今回の事件に関係があるかもしれないんです。お願いです。教えて、ください。一人で……抱え込まないでください」
顔を上げて、舞園はじっと和樹の方を見つめる。
「…………。軽率だな」
小声で和樹は口を開く。
「どうしてそれを、お前一人の時に聞く?」
和樹は舞園を睨みつける。
「もしオレが事件の黒幕で、動揺して殺しにかかってきたら……どうするつもりだ。錯乱した人間の側にたった一人でいるなんて……危険もいいところだぞ?」
口調が元に戻っている。いつもの彼だ。
舞園は安堵の息を吐いて、胸を撫で下ろす。
「そう言うってことは、和樹くんはクロじゃないんですね。……よかった」
「……オレが疑わしいとは思わないのか。あの怪しい部屋から一目散に逃げたんだぞ?」
「和樹くんが急におかしくなったのは、あの映像を見てからでしたから。薄々事件とは関係ないんだろうなって思いました。それに……和樹を、信じてますから」
「……」
「私、エスパーですから。わかるんです。信じていい人と、信じちゃいけない人の区別」
和樹は黙って顔をうつむかせる。話すかを迷っているのだろうか。
「あと念のため、この部屋にいることはみんなに言ってあるので。仮に、和樹くんがクロだとしても、賢い和樹くんが軽率に私を殺して下手に疑念を集めるようなことはしないだろうなって。その辺も信頼したんです」
「……そんな信頼のされ方、嫌だな」
「冗談。ちょっとした保険ですよ。クロじゃないだろうなって思ってるのは本当ですし」
「……ほんとかよ」
信じてくださいよぉ、と冗談混じりにいって空気を和ませる。
「……仮に話すとして、それが本当じゃない可能性だってあるんだぞ。それでもやっぱり聞くのか?」
「大丈夫。私、そういうの見破るの得意ですから。嘘でも本当でも聞きたい。それに、和樹くんを信じてますから」
和樹はため息をついて、観念するそぶりを見せる。
「……わかった。話すよ。まず……オレが部屋と、うなされてた夢に関しては……事件に特に関係はない」
「……そ、そうなんですか」
嘘は言っていない。期待は半々だったので、あまり落ち込みはしなかった。
「じゃ、じゃあ。和樹くんの記憶に関わることなんですね?」
「……あぁ。けど……」
少しでも彼の記憶が戻ったのなら良かった、と安堵すると、和樹は皮肉げに笑った。
「けどきっと────この話を聞いたら、きっとお前はオレを信じる気が失せるぞ。 それでもか?」
「……。和樹くんは、私を信じてくれますか?」
和樹は迷わず首を縦に振る。
「じゃあ。私も和樹くんを信じます。だって……不二崎くんもそうですけど、私みたいな……」
意中の相手、と言いかけた口を一旦閉じる。苗木くんにその言葉を言う資格は自分にはない。
「……仲間を騙す女のことを、なんの損得も無しに信じてくれて……それだけでも、嬉しいんです。そのおかげで、私は今でも……」
「……舞園」
「ですから……私、ちょっとのことで驚いたりしません。私だって……人、殺そうとしましたから」
無理やり罪悪感を隠したのが無意識のうちに表情に出ていたのであろうか。和樹はハッとした表情で舞園を見ている。
「……わかった。正直に話すよ」
苦笑しつつ、和樹は置いてあったタオルで顔を拭う。しかし拭いた後も彼の額にはすぐに汗が滲む。
「────オレは、この手で……実の母親を殺している」
皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?
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初代まで。アニメも含む。
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2まで。3やV3は知らん。
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絶対絶望少女まで。
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v3まで。全部やったお!!
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1のアニメor3のアニメのみ。