絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~   作:ゼロん

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第四十話 和樹の過去のかけら、そして────開廷。

「は、母親を……? い、いったいどうして……」

 

「…………。前に、信晶や高里が言っていたこと……覚えているか? 外は、希望ヶ峰学園の外は地獄そのものだって」

 

「……は、はい」

 

 正直言って自分には想像できない。いや、したくない。

 

「舞園たちが見たあの映像……あれと同じような光景が辺りに広がってた」

 

 和樹は顔を手で覆い、淡々と話す。

 

「オレは一人暮らしだったから、親と別れて生活してたんだ。けど外で突然暴動が起きて……家族がどうなったか心配になって、オレは実家に戻ったんだ」

 

 舞園は息を呑む。

 

「そしたら……母さんが。……お、おかしくなって……うっ……!?」

 

「か、和樹くん!!」

 

 ストレスからの貧血だ。顔から血の気が急に失せて真っ青になっている。

 

「だ、大丈夫。ちょっと、ちょっとくらっとしただけだ」

 

「……」

 

 やはり、これ以上掘り返すべきではないのかもしれない。迷う舞園を待たずに和樹は話を続けた。

 

「ドアを開けて、母さんに話しかけたら……明らかに様子が変になってた。刃物を持って、オレに急に襲いかかってきて。父さんがなんとか食い止めてくれて……」

 

「和樹くん、落ち着いて。ゆっくりでいいですから」

 

 舞園はなだめようとするが、和樹は歯止めが利かなくなったように口を閉じない。

 

「なんとか、年下の従妹だけは助けようとしたんだ。中学の立地の関係で、うちの実家に泊まってたから。父さんが無事だったから、きっとまだって。だから……」

 

 だんだん冷静だった彼の声が震えてくる。

 待て。

 

 舞園は察する。

 

 その年下の従妹がいたとして。もし……彼女が無事だったら、彼がここまで取り乱したりするだろうか。

 

 

「まさか……うそ……」

 

 

 話の先が見えた舞園はショックで口を抑える。

 

「従妹は……2階の廊下で倒れてた……」

 

「……!」

 

 

 

 ***

 

 

 

 首と腹を刃物で突かれた従妹の身体は冷たく、意識もなかった。

 

「家に火が放たれて……その場でろくな応急処置もできなかった」

 

 ハンカチで簡単に傷口を巻いた彼女を抱え、急いで一階に戻った。

 

 だが、思ったよりも火の手はかなり回っていて乱心した母を食い止めていた父は遺体となって床を転がっていた。

 

「外に出ようとしたら、狂った母さんが意表を突いて襲いかかってきた……」

 

 そして、首にめがけて振り下ろされた包丁を防ごうと手を前に出した。

 

 そしたら……

 

 

 母は包丁をあえて自分の向きに刃先を向け、和樹が防ごうと前に出した手は──────

 

 

「母さんの首へ……包丁を突き刺す形になった」

 

「──────」

 

 

 舞園は絶句する。

 

「きっと……オレが絶望するように仕向けたかったんだろうな……。今思えば……父親も庇うふりをしてたのかも疑わしい」

 

「そんな……そんなこと」

 

 あの映像といい、希望ヶ峰学園の生徒の暴動といい。一体なぜあのような惨事が起こってしまったのか。

 

「……でも目論見どおり、その時のオレはもう、なにもかもどうでもよくなってた。あたりは火の海。父さんも母さんも死んで、従妹も……もう助かる状態じゃなかった」

 

 そのまま、家族と共に火の中に消えようと思ったその時に、

 

 

 

 ──────もう動かないはずの従妹の身体が、急に動いて和樹を抱きしめたのだと。

 

 

 

「最後に微笑んで、『愛してる』って……!『だいすき』だって……! それだけで。それだけで、オレは……オレは……。死にたくないって思った」

 

 

 最後に笑って、従妹は腕の中で逝った。

 

 

「かっこ、悪いだろ……。数秒前まで死ぬ覚悟だったっていうのに……あそこで一緒に死ぬべきだったのに」

 

 

「……和樹くん」

 

 

「あいつが動いたのは……それが最期だった。それで必死になって……オレは大火傷は負ったけど……なんとか、脱出できた」

 

 

 

 ***

 

 

 その後の記憶はない、と彼は顔を隠したままベッドに頭を下ろした。

 

「その後のことは……思い出せなかったんですか?」

 

「その後は……わからない。ただ気がついたら豪邸のベッドで寝かされてたことしか……イデが横でずっと看病してて……う」

 

「────和樹くん!」

 

 うずくまる彼を舞園は支える。

 

「……無理しないでください。ただでさえ、記憶が戻りかけて混乱してるのに」

 

 ────思い出した内容を教えてなんて、私が言い出したから。

 

「和樹くん……ごめんなさい。けど、ありがとう。話してくれて」

 

「……胸糞の悪い話でよかったなら」

 

 和樹は枕に頭を下ろす。

 

「……あの、和樹くん。お母さんのことですけど……」

 

「……。最低だよ、オレは」

 

「そ、そんなことは、ないです! わ、私は……」

 

 

 誰かに殺される恐怖は、身をもって知っている。

 

 

「私は……和樹くんは、悪くないと思います」

 

 

 私だったら、きっと恐ろしくて、その場から何もかも置いて逃げ出してしまうかもしれない。

 

 

「……家族を、ただ助けたかっただけなんですよね。その気持ちに嘘がないなら……ただ不幸が重なってしまっただけなんだと思います」

 

「……」

 

 

 きっと彼の髪が白くなったのも。表情の動きが乏しいのも……きっと家族の死が直結しているのだ。

 

 

「それに……そんな危ない状況で従妹のことを考えられるなんて……きっと、和樹くんは彼女にとって────カッコいい従兄さんだと思います」

 

 

 助けに来てくれて、彼の従妹は絶対にうれしかったんだと思う。彼女は愛してると、死の寸前に言ったのだ。……愛されていたに決まっている。

 

 彼は家が火に囲まれても殺されそうになっても愛する家族の手を離さなかった。

 

 

 自分で刃物をとって反撃をすることもしなかったのだろう。

 

 ひどく辛そうな顔をしているからわかる。きっと彼は……最後まで母が正気に戻ることを願っていただろう。

 

「……」

 

 なんだか胸が痛い。苗木くんも私が裏切ったと知った時、和樹くんと同じ気持ちだったのだろうか。

 

 それほどまで自分の家族を愛していて、助けたいと、足掻いて。どうして最後に愛する者に裏切られなければならないのだろう。

 

 愛する親に殺されなければならないのだろう。悪夢……不幸としか言いようがない。

 

「それに、死にたくないって思ったのも、従妹さんの遺言を汲もうとしたからなんですよね?」

 

 無言で彼は頷く。

 

「和樹くん。和樹くんは……自分を殺そうとした母親が憎いですか?」

 

「────違う!! オレは……」

 

「ですよね。……そうですよね」

 

 舞園は思った通りの答えが返ってきて嬉しく微笑む。

 

「あなたの母親も、本当は息子であるあなたを殺したくなかったはずです。だから……」

 

 彼の母親の自害は、最後まで『自分』ではない何かに抗った結果なのかもしれない。

 

 

「和樹くんは、いい人ですよ。苗木くんと同じくらいの……お人好しです」

 

「──────」

 

 

 なるほど……妙に彼に肩入れをするのも、それが理由なのかもしれない、と舞園は言葉に出して納得した。

 

 

「………………ありがと」

 

 

 ***

 

 

 

「本当に大丈夫ですか? やっぱり部屋に戻っていた方が……」

 

「平気だ。舞園のおかげで……少し軽くなった」

 

 数分だけ横になった後、和樹は舞園を連れて部屋を出た。

 

「和樹くん、そういえば……あった。こんなものをモニタールームで見つけたんです」

 

 舞園はスカートのポケットから針金を取り出す。両端が巻かれているところから、なにかを留めていたようだ。

 

「……はりがね? 部屋のどこで見つけたんだ?」

 

「モニタールームにあった監視カメラの上に。ちょうど脚立があったので、ふつうに届きました」

 

「……」

 

 和樹はまじまじと針金を見つめる。

 

「何かをとめていたのか……? 意味があるかもしれない。そのまま持っててくれ」

 

「あ、はい! で、和樹くん。これからどこへ行くんですか?」

 

「被害者が見つかった部屋だ。あの拷問部屋で気になるものが映像に写っていた」

 

 今からそれを確かめに行く、と彼は足を進める。

 

 

「霧切さんもそうだけど……なんでそういう細かいところに気がつくんだろう……」

 

 

 

 ***

 

 

 その後モノクマの放送で全員が1階のホールに集められ、再び裁判上へと続くエレベーターへと歩くことになった。

 

「……また、ここに来るなんて」

 

 信晶くんが命をとした言葉は、もう意味をなさないのだろうか……

 

 

 

「──────じゃあ、学級裁判、開廷〜っ!」

 

 

 

 ***

 

 

エレベーターで降りる際、高里は和樹の方へ近づく。

 

 

「ねぇ和樹」

 

「……ん。高里か。珍しいな」

 

 

「……変なことを聞くかもしれないけど──」

 

 

 

 私とあなた、ここで会うのは『初めて』よね?

 

 

 

 

 ***

 

 

『あらあら……たまたまヘリで通りかかったのに……珍妙なやつもいたものね』

 

 遺体となった少女の遺体を抱きかかえ、大火傷を負った少年を、令嬢が見下ろす。

 

『────ちさと。周りに敵影はない?』

 

『う〜ん。特に無いよ、レミ!』

 

 特徴的なヘッドホンをした少女が、偵察から戻ってきたハヤブサに『ありがとう』とエサをあげる。

 

『そう……ありがとう。頼りにしてるわ』

 

 すでに少年に意識は無いようだった。

 

『まぁ、あなたのことは噂に聞いているし……なかなか使えそうだから、助けてあげる』

 

 手下と思わしき黒服の男たちが担架を持って少年を連れて行く。

 

『高里グループ令嬢、そして今はグループ総帥である──────この高里レミが、ね』

 

 

 ***

 

 

 

「……どうしたのよ。ボーッとして」

 

 

「いや。ちょっとな。思い出した記憶に覚えはないかと思って」

 

 

「……で? 返答は?」

 

 

 

「────お前と会うのはここが初めてだよ」

 






次回、学級裁判────二度目の開廷。

皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?

  • 初代まで。アニメも含む。
  • 2まで。3やV3は知らん。
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  • v3まで。全部やったお!!
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