時刻は丁度十二時頃。人里の広場でアリスが人形劇を始める時間だ。アリスが遠くで腰掛けている此方の存在に気づき、手を大きく振ってきたので此方も振り返す。
幻想郷に戻ってきてまだ一週間くらいだが、此処の少女達は警戒心という物が余り無いらしい。と言うのも紅魔館のメンバーを始め、霊夢に魔理沙それに鈴仙とアリス。
人に懐くのが早いと言うか、何と言うか。とにかく、なんだか上手くやっていけそうな気がしてくる。紫にこんな事を話すと面倒な事になりそうだから言わないが。
しかし、アリスの人形劇は子供向けだが意外にも大人が見てもしっかり楽しめる内容になっていて十分に面白い作品へとなっている。子供に人気が出来る理由も分かる。
「どうだった?」
「すごく楽しめたよ。全部自分で考えているのか?」
「えぇ。最初の方は魔理沙に手伝って貰ってたんだけど・・・」
「あぁ、なるほど・・・」
アリスの言おうとしている事は何となく理解できた。あの非常識の塊みたいな魔理沙だ。どうせ無茶苦茶な話を考えて喧嘩でもしたのだろう。それを想像すると日頃のアリスの苦労を考えると涙が出そうだった。
「苦労してるんだな」
「貰ってくれても良いわよ?」
「いや、遠慮しておこう」
今の自分には魔理沙の相手をする余裕はまだ無いので丁重にお断りしておく。
「白夜さんはこれからどうするの?」
「そうだね・・・」
自分の中では紅魔館に行くか、紫の所に行くか迷っている。正直どちらも家が出来てから顔を出したいのだが、紫の方が我慢出来なさそうだ。よし、紫と藍に会いに行こう。
「紫の所に行くよ」
「そう、じゃあ此処でお別れね」
「あぁ、魔理沙に会ったらよろしく言っといてくれ」
「えぇ、わかったわ。またうちに遊びに来てくれても良いわよ?白夜さんだったら勝手に来てくれても良いわ。お菓子も用意しておくわよ」
「あぁ、また近くに寄ったら顔を出すよ」
アリスと別れて八雲邸に向かう。そうだ何かお菓子でも買って行った方が良いかな。
妖怪という物は基本的には欲望に忠実に生きている。
それはどの妖怪でも変わらないものだ。だからこそ妖怪の賢者や博麗の巫女という、いわゆるストッパーが存在している。
そう、だからこそ目の前の化け猫も自分の欲望に素直になって、売り物の魚を涎を垂らしながら凝視しているのだ。
「じぃ〜...」
「.........」
よほどこの魚が食べたいのだろうか二十分程の時間をビクともしない。正直、どいて欲しい。別に隅っこの店でそれをする分には構わないのだが、曲がり角の狭い道で居られると通れない。
「お嬢さん、お嬢さん?」
「じぃ〜...」
ポンっと肩を叩いてみる。
「フギャァッー!」
「お、やっと気づいてくれた」
「び、びっくりしたぁ〜」
「や、すまないね。ちょっとここを通りたいんだ。どいてくれるかい?」
「あ...す、すいません!!すぐに退きますんで!」
かなり慌てふためいている。顔が紅くなってきている。かなり恥ずかしかったらしい。と、その時。
「ぐぅぅぅぅぅぅ〜」
「...ここで会ったのも何かの縁だ、一緒に食事でもどうだ?」
「...はい\\\」
彼女は帽子を抑え、真っ赤っかになった顔を伏せた。
紫の所にはもう暫く行けそうにない。