「急な話だが、お前達のテレビ出演が決まった」
始まりの鐘は帰宅した国王、総一朗の鶴の一声だった。
そして番組企画名は、
『危機一髪ダンディー君を救え!』
貸し切ったデパートの屋上に、取り残された人々に見立てたダンディー君(人形)を、制限時間内により多く回収し、下に用意された自分の籠に入れる。
「皆、惜しみなく力を発揮し、国民の皆様に自分達の事をよく知ってもらうように頑張ってほしい。
1番成績の悪かった者には城のトイレ掃除をしてもらう」
最後に悪ふざけなのか罰ゲームが追加されながらも、至ってシンプルなルールの競技、それ故に王族にのみ備わる各自の特殊能力、それの使い所が光る。
「僕はこのビル、登ります!」
真っ先に動いたのは輝、橙色に体を光らせ能力・怪力超人(リミットオーバー)で、大人顔負けの力を引き出し、手掴みでよじ登ってゆく。
「よし。私だって」
輝に感化され光が手近な木に登り、黄色に体を光らせ能力・生命操作(ゴッドハンド)で、樹木の成長を操り屋上に一番乗りしようとするが、間違えて通り越してしまう。24時間は持続しもう手を加えれないのに。
「光ー!!乗せてくれるなら助けるぞーー」
「うぇーん、助けて零くんーー!」
しっかり確認してから成長した大樹に触れ、黒色に体を光らせ能力・時空回帰(クロノクロック)で、体力を消費して成長前まで戻し、2人で再スタートを切る。
「よく考えたら自分で登るなんて効率悪いですわね」
開幕組を見送った奏が冷静に思考し、緑色に体を光らせ能力・物質生成(ヘブンズゲート)で、ドローン5機を出現させ取りに行かせる。但し等価の金額分通帳からお金が減る。
「私も頑張らなきゃ」
そう言って桃色に体を光らせ能力・感情分裂(オールフォーワン)で、傲慢・憤怒・嫉妬・怠惰・強欲・暴食・色欲の岬を生み出し、8人に人手を増やしてビルに駆け込む。
「そうなの。ごめんなさい、ちょっと分からない」
「栞、何話してるの」
紫に体を光らせ能力・物体会話(ソウルメイト)で、備え付けてある消火栓と会話し、栞は近道を教わるも分からず終いだったが、葵の能力・完全学習(インビジブルワーク)で、記憶してあった内部経路に照らし合わせ、2人でルートを進む。
「じゃあ俺も」
マイペースに頃合いとみた修も、体を水色に光らせ能力・瞬間移動(トランスポーター)で、一瞬にして屋上に難なく到着しダンディー君を回収し出す。
「(僕がビリになる確率は…)」
ここまで静観を貫いていた遥が、突如菫色に体を光らせ能力・確立予知(ロッツオブネクスト)で、どう立ち回るのが良いか確率を見て判断する。
「はっ、どっどっどどうしよう遥。わっわっ私何すればいい!?」
人が居なくなり隠れる者がいないせいで、半ばパニックになった茜が助けを求める。
「とりあえず落ち着いて。
このまま何もしないとビリになる確率は100%、同じく僕も87%、でも2人で協力すれば、その確率は25%まで下がるって僕の予知にも出てる」
「別にビリだっていいよ、だってこれ以上目立つの嫌だし。
トイレ掃除くらいなら…」
「姉さん…お城のトイレ幾つか知ってるの。
僕も詳しくは知らないけどあの大きさだからね、細かい所も数えたら…、それにお城に行けば色んな人に会うかもだよ」
「…ぁ…ぁ…。
やるわ私。絶対9位になってみせる!」
顔面蒼白になった後直ぐさま目的の順位を狙いに、赤色に体を光らせ能力・重力制御(グラビティコア)で、重力を感じさせない大ジャンプで、遥共々屋上に跳ね上がっていく。