ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか   作:ひまじんホーム

1 / 20
 シリアスな話ばかり書いてると筆が進まなくてヤバい。


プロローグ

~迷宮都市オラリオ~

 

 ここは世界の中心とも呼ばれる迷宮都市オラリオ。その代名詞とも言われるダンジョンの上に聳え立つのはバベルの塔。そしてそこから少し離れた郊外に、ひっそり佇む雑木林。その中で一番大きな木の上に、まるで秘密基地の様にそのホーム〈拠点〉は建てられていた。

 

「さあ、お前たち!今日も力一杯稼いでくるのですよ~!」

 

「「「は~い!」」」

 

 〈創造と芸術〉を司る神サルバトール・ジャッコメディ・ポッコが主宰する、ポッコファミリアが所有するホームでは、今日も子供達の元気な声が飛び交う。

 暇潰しに下界に降りてきた神々がもたらすファルナ〈恩恵〉によって、永劫の繁栄を約束されたかのようなこの街では、人も物も金も名誉も、そこに集う人々の夢も欲望でさえも、等しく混じり合う。

 そんなオラリオにあって酷く場違いなその光景に、事情を知らない者ならば自らの目を疑うだろう。

 しかしそんな彼らもまた、この街で一旗揚げようと目論む冒険者達と、何ら変わらぬ野心を胸に秘めた者達であった。

 神ポッコは、自分にこの街でファミリアを運営するよう命じた親神の無茶振りを思い出す。

 

 

 ~ハグレ王国 会議室~

 

「失礼します、福の神様。お話とはなんでしょう?」

 

 神々が住まう神界において、和の国の最大派閥を治める福の神一派。ポッコは若くして神様中納言の地位を与えられ、派閥の中でも将来を期待された優秀な神なのである。

 

「そんなに畏まらなくていいのよ、ポッコちゃん。はい、温かいお茶とお煎餅でもかじりながら聞いてちょうだい。」

 

「はぁ。ありがとうございます。いただきます。」ボリボリ

 

「どう?美味しい?」

 

「はい、美味しいです。」ズズッー

 

 本当は年相応にジュースとチョコのような甘いお菓子が大好きなのだけれど、組織の中で上司にあたる福の神様から、期待のこもったようなニコニコ顔で聞かれたらそう答えるしかない。夏休みに祖母の家に遊びに行った、小学生とおばあちゃんみたいなやり取りに、笑顔がぎこちないものになってしまうのも仕方ないだろう。

 

「今、おばあちゃんみたいとか考えなかった?」

 

「滅相もございませぬ。」

 

 福の神様に対して年齢についての話題は神界においてタブー中のタブーとされている。それに触れたら最期、光輝く黄金の鈍器で、お仕置きという名の粛清が行われる。神様なのに地獄耳なこのお方の洞察力は時として心を読んでくる程だ。気を付けなければならない。

 

「そう?じゃあ本題に移るのだけれど、ポッコちゃんは、神がその位を上げるには相応の功績や栄誉がなくてはならないことは知ってるわね?」

 

「はい勿論。中納言位になるまでも世界樹の繁栄と信仰の獲得に、様々な功績を積み上げた結果と思っています。」

 

 まだまだ修行中とはいえ、神界では新しい世界に分類されるこの世界で世界樹の繁栄とそれにより多くの信仰を集めたことは高く評価されており、更に、絵に描いた物を実体化させる神界でも珍しい特殊能力と相まって、ポッコは中納言という高い地位に就いている。

 

「そう。でもね、その世界樹で起きたあの一件。先日の邪神復活騒動にあのマクスウェルが絡んでいたことで、あの件を問題視する動きが神界で再燃しているのよ。」

 

「それは・・・、ドーラのことは確かに私の責任です。言い逃れはできません。もし、処分ということならば、甘んじて受け入れる所存です。」

 

 かつて、世界樹に入り込んだ魔物を掃討する為に、ポッコの従者ドーラが雇った帝都の騎士団はろくでもなかった。その士気の低さだけではなく、彼らが招き入れた召喚士マクスウェルによって、装備者の命を吸いとる危険なバイオ鎧兵器の実験場と化し、多くの死傷者を出す凄惨な事件となった。

 従者ドーラもこの事件で命に関わる重傷を負ったが、現在では日常生活に支障がない程度には回復している。

 

「あ、責めている訳ではないのよ?そこは誤解しないで頂戴。どうせ敵対派閥が福の神一派に嫌がらせしてきてるだけですし、相手も目星はついてますから潰すのは簡単なのよ。」

 

「は、はあ・・・。」

 

 わりと恐ろしいことを事も無げにさらっと言ってのける上司の開かないその目に、ポッコは背筋にうすら寒いものを感じ、その神が絶対に敵に回してはいけない存在だと改めて認識する。

 

「まぁ、でもね、丁度いい機会かな~って思って。」

 

「丁度いい機会・・・ですか?」

 

 福の神様が何を意図しているのか全く想像つかず、そのまま聞き返してしまう。

 

「ポッコちゃんの、昇進試験。」

 

「!!!」

 

「外野でワイワイ喚いているコバエもポッコちゃんが有無を言わさない功績をあげてしまえば黙るわ。そしてそれは勿論、昇進事由にもなる。でも、それでも現状もう一つ問題があってね。」

 

「問題といいますと?」

 

「世界樹の管理者、というだけでは今以上の功績を上げるのは難しいでしょうし、ハグレ王国内で活動しても、その功績はハグレ王国のモノなのよ。今の環境でポッコちゃんが功績を上げてもあまり評価をされない可能性が高いの。」

 

「え~と、つまり・・・?」

 

「ポッコちゃん、あなた異世界で修行してきなさい。」

 

「はい。って、はぁ~!?」

 

 優しくも厳しい上司によって神ポッコはオラリオに放り込まれることになったのであった。




 メインキャラはポッコちゃんと子供たちとその保護者になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。