ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか   作:ひまじんホーム

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 にゃにゃーにゃの日に間に合わなかったよ・・・。
 あっ、今更ですがダンまちのストーリーは基本アニメ沿いです。


第11話 冒険者心得その2

~ダンジョン 5階層~

 

「ふぃ~やっとここまで戻ってこれたでち~。もう少しで地上に出れるでちね。」

 

「まさかダンジョン内ではキーオブパンドラが使えないとはね~。」

 

 さて一方、ダンジョン探索組はと言うと、ようやく5階層まで戻って来ていた。

 予定通り15階層まで進んだまでは良かった。マッピングも終えて、ここでさあ帰ろうかとデーリッチがキーオブパンドラを構えたところで事は起きた。なぜかキーオブパンドラが反応しなかったのだ。

 

「いやはや、面目ない。マナが薄いのに気付いた時点でその可能性に至るべきだったのに、皆、すまない。」

 

「何言ってるの、ローズマリー。そんなの皆お互い様じゃないの。」

 

 実はこの事態は初めてではない。トゲチーク山や水晶洞窟、時計塔、わりと危機的な状況でキーオブパンドラが使用不可能になる状況は何度か経験している。そしてその原因は共通しており、大気中のマナ不足である。

 昨日の探索時にダンジョン内のマナが薄いことは解っていたのにこうした事態を招いてしまったのは、ひとえに油断というものだろう。あまり敵が強くないからと、金を稼ぐことを急いてしまい、安全確認を疎かにしてしまっていた。

 

「責任はともかく、危機感が薄くなっていたことには違いない。結果的には早い段階でキーオブパンドラが使えないことに気付けてよかったけどね。今後は安全確保を怠らないようにしないとね。ん?」

 

「っくしょうっ!」ズバッ

 

 ローズマリーが気を引き締めていると、7体ものウォーシャドウに囲まれて短剣を振るう冒険者が目にはいった。

 

「ちくしょうっ!くそっ!う゛わぁぁあ!」ズバッバシュ

 

「おや、あの白髪の冒険者は・・・?」

 

 特徴的な白髪から思い起こされるのは、今朝、瀕死のところを助けた少年、ベル。何やら鬼気迫る気迫でモンスターを葬っている。

 

「お~い!キミは、ベル君?だよね?帰っていなかったの?」

 

「僕はぁ!ちっくしょおお!」バシュザシュ

 

「おーい?」

 

 どうも尋常でない様子でモンスターを葬っているが、周りが見えていないのか、ローズマリーの呼び掛けにも応えがない。

 

「なんだか取り込み中みたいでちね?」

 

「う~ん、私達に気付かない程魔物に集中してるみたいだね。下手に近づくと私達にも攻撃が飛んできそうだ。今のところはなんとか対処は出来てるみたいだけど、消耗も激しそうだし。このままだと不味いね。」

 

「どうするでち?」

 

「ほっとくわけにはいかないだろう。ルフレ、お願い。」

 

「わかったぴょん。」

ヽ( ´ー‘)ノ⌒▼ポイッ

 

パッコーン!

 

「!?」ドサッ

 

 ルフレはローズマリーに軽く応えると、鞄から愛用の人参手裏剣を取り出し、適当に加減して白髪頭めがけて投げつけた。人参手裏剣はベル君の後頭部に軽い音を立てて命中し、不意打ちを食らったベル君はそのまま倒れ込む。

 

「容赦ないのぅ。」ヒソヒソ

「あの人が悪魔すら恐怖するという王国の鬼畜参謀さん?」ヒソヒソ

「えっ!?殺した敵兵の首を投石機に詰めて!?」ヒソヒソ

 

「お~いキミたち?聞こえてるからね~?」ニコー

「「「ごめんなさ~い!」」」

 

 半分本当で半分冗談。ローズマリーは敵対する相手にはあまり容赦しない。悪魔族の間ではブラッディマリーの通名で評され、絶対に敵に回してはならない相手だと冥王姫イリスからのお達しも下っている程だ。

 

「デーリッチ、回復をお願い。マオちゃんと柚葉はモンスターを片付けちゃって。」

 

「おうでち。ヒール!」パァッ

「まかされたわい。」シュババ!

「おかのした」キキン!

 

 デーリッチのヒールで淡い緑色の光がベル君を包み込み、ケガを癒していく。4体残っていたウォーシャドウはマオちゃんの上段蹴りと柚葉の一刀で切り捨てられた。

 

―――――――――――――――――

 

「う~ん・・・。む?」コウトウブガイタイ

 

「お、起きたみたいでちね?」

「あ・・・れ?皆さんは朝助けてくれた・・・?」

 

 時間にして10数秒、ベル少年は鈍い痛みが走る後頭部を押さえながら目を覚ます。

 

「キミは、また随分な無茶をしたようだね?」

 

「・・・はい。」シュン

 

 ベルは悪事がバレてしまった子供のように小さくうずくまってしおらしく答える。先程までの気迫も我に戻って霧散してしまったようだ。

 

「何だか様子がおかしかったから、お節介は承知で強引に止めさせてもらったよ。お節介ついでに差し支えなければでいいけど、何があったかくらいは聞いてもいいかな?」

 

 ローズマリーはベルの無茶な行動に憤りを覚えながらも、なるべく落ち着いた口調で問いかける。

 

「僕のことは、放っておいてください・・・。」

 

 しかし、ベルの言葉はそれを拒絶する。情けない自分を見られるのが堪らなく嫌だった。酒場でせっかく知り合った友人と、何よりも憧れの人に蔑まれてしまう事が嫌で逃げ出した。嫌な場所から逃げて逃げて、嫌いな自分から逃げて逃げて、ここに来てしまった。でもどんなに逃げても自分は自分。所詮は上層で死にかけてるレベル1の初級冒険者だと思い知らされて。このままじゃダメだと思っているのに、でもそんな力も根性なくて。なんとかなるなんて思ってた自分をいっそ壊してしまいたくて。

 本当は全て吐き出して楽になりたいのに。なんだか一度言葉にしてしまうと止まらなくなりそうで。ベルはその差し出された手からも逃げる。

 

「そう・・・話したくない事情もあるんだろうね。今助けたのはただのお節介だから気にしなくていいよ。」

 

「・・・。」

 

「まぁでも、このままだと朝助けたときの薬代と治療費の請求くらいはすることになるかもしれないなぁ?私達も死にかけの全く見ず知らずの冒険者を助けて何のお礼もないのは癪だし。」

 

「・・・え゛?」

 

「まぁ?私達が助けたのが悩みを打ち明けてくれる友人だったなら、お金を請求することなんてしないけどね?」

 

「えぇ・・・。」

 

「容赦ないのぅ。」ヒソヒソ

「逃げ道を塞ぐ巧妙な交渉術。悪魔にすら恐れられるわけだ。」ヒソヒソ

「えっ!?捕虜を一人ずつ拷問に!?」ヒソヒソ

 

「お~いキミたち?聞こえてるからね~?」ニッコリー

「「「ごめんなさ~い!」」」

 

 大魔王からは逃げられない。悪魔すら恐れるハグレ王国の参謀からは逃げることなど許されないのだ。

 治療費なんてチラつかされては、日々の食費にすら気を回さないといけないベルにはもう逃げ道は残されていなかった。

 

「はぁ、本当に、お節介・・・なんですねぇ。」

 

 なんとか溜め息混じりに吐き出した言葉。ベルは相手の善意を汲み取れない程の無神経でもないし、助けてくれた相手を無視するほど恩知らずでもない。ベルは逃げ出した自分に差し出された手を掴むことにした。

 

「ん?そうだね。私達はお節介でお人好しなのがモットーなんだ。だから偶々出会った少年の悩み相談を聞くくらいならワケないよ?でもちょっぴり意地悪でもあるからね、キミが放っておいてほしくても、キミの言う通りになんかしてあげないんだ。」ニコッ

 

「アハハ・・・。それは、凄く意地悪ですねぇ。」

 

 妙に迫力のあるローズマリーの笑顔には逆らえないと察したベルは観念して胸の内を語ることにした。

 

「あの・・・どうしたら強くなれるんでしょうか?」

 

「強く?キミは朝もそう言っていたね。それはキミにとって命よりも優先される事なのかい?」

 

「憧れている人がいるんです・・・。でもその人と並ぶ為にはその人と同じくらい強くならないとダメなんです。」

 

「その為にキミの周りの人達を悲しませるようなことがあっても?」

 

「う・・・。」

 

 思い浮かぶのはダメダメな自分を拾って家族にしてくれた神様の顔。きっと自分に何かあれば悲しませてきっと泣かせてしまうだろう。神様がそれほど優しいのは誰よりも自分が知っている。

 

「なーんみゃ?おみゃーさん、誰かの為に冒険してるのかみゃ?これはみゃーの見込み違いだったかもしれないぴょんねぇ。」

 

 そこへルフレが口を挟む。

 

「ルフレ、キミはまた・・・。」

 

「まぁまぁローズマリー、ここはみゃーが先輩冒険者としてビシッと言ってやるぴょん。」

 

「もうしょうがないなぁ・・・。」

 

 多少勢い任せで無茶苦茶なところがあるルフレだが、冒険者としては確かな一家言を持っている。ローズマリーも同じ冒険者からの言葉の方が響くこともあるか、とこの場は引き下がる。

 

「おい少年!冒険は楽しいかみゃ?」

 

「えっ?楽しい・・・のかな。よく、わかりません。」

 

「それじゃあダメダメ。冒険は楽しいんだぴょん。未知の世界を己の力で切り開く。冒険てのはいつだってドキドキワクワクの連続なんだぴょん。」

 

「はあ・・・?」

 

「だ・か・ら、さっきのおみゃーさんは冒険者としてダメダメだみゃ。最低の最悪の味噌っかすのゴミくずもいいとこだぴょん。あんなのが冒険者なんて言われたらヘドが出るね!」ペッ

 

「ゴ・・・えぇ。」ソコマデイワンデモ・・・

 

「何かに追われるように、逃げるように冒険して何が楽しいみゃ?追い求めることを止めたら冒険者は生きてはいけない。でも、それは誰かに強制されるものじゃダメ。それじゃ楽しくない。」

「!」

 

「強くなりたかったら、何よりも冒険を楽しむの。あんな怖い顔しないで笑うの。そしたら、きっといつまでもいつまでも冒険を続けたいって思うようになる。死ぬなんて勿体ないって思えて簡単には死ねないぴょん。」

 

「冒険を楽しむ・・・!」

 

 俯いていたベルの顔に色が戻り、その瞳には光が宿る。そして、迷いが晴れたその心からは自然と笑顔がこぼれていた。

 

「そう、その顔みゃ。もう、大丈夫みたいみゃね。」ウンウン

 

 その様子を見たルフレは満足げに頷く。

 

「はい!ありがとうございます!僕、何だか悩んでいたのが嘘みたいにスッキリしました!」

 

「おみゃーの冒険はおみゃーのもの!さあ!行ってくるんだぴょん!」ビシィッ!

 

「はいっ!!!」 ダダッ!

 

「「「頑張るんだよ~ベル君!」」」

 

 ルフレが指を差し、合図とともに駆け出す冒険者ベル。向かう先は6階層へ続く階段。

 まるで演説のようなルフレの冒険者講座に聞き入っていたハグレ王国のメンバーもそのアツい冒険者魂にあてられて、声援とともにそれを見送った。

 

「ふむ、また一人で行かせてもよいものか?」

 

 柚葉が冷静に率直な疑問を告げ、ローズマリーもそこでふと我に返る。

 

「あれ!?行かせちゃダメじゃん!?」

 

 その後、慌ててベルを追いかけ引き留めようとするも、「せっかくだからちょっと鍛えてから帰ります。無茶はしないので安心してください。」と、言うので手持ちのポーションを渡してハグレ王国のメンバーは先に出口へ向かった。

 

――――――――――――――――

 

~バベル エントランス~

 

「魔石の交換とドロップアイテムの引き取り合わせて70万ヴァリスだ。」

 

 真の冒険者となったベル君を見送ったハグレ王国。ようやく長い探索行を終えバベルのエントランスまで戻って来れた。

 ローズマリーは換金を済ませ、皆に合流するとふぅ、と息をつく。

 

「すっかり深夜になってしまったね。」フゥ

 

「ポッコちゃん達には心配かけちゃったでちね~。」

 

「今日はだいぶ遅くなっちゃったからね。ホームに戻ったらみんなゆっくり休んでくれ。明日は一日お休みで自由行動にしよう。ハメ外さないようにね。」

 

「「「イヤッホーイ!!」」」

 

 明日はお休み。各々自由行動の許可に歓声が上がる。

 そうして、ハイテンションでホームに帰ったら、心配して帰りを待っていたポッコちゃんにめっちゃ怒られてダンジョン探索の制限を言い渡された。仕方ない。

 

 

―その頃、ダンジョン7階層にて―

 

「あー!!またあの人達の名前聞き忘れたー!」

 

 ベル君、またもや恩人の名前を聞き忘れる痛恨のミス。

 




 この後ベル君は結局それなりにボロボロになった上、朝帰りして神様に介抱されてます。コタツで。
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