ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか 作:ひまじんホーム
段々キャラが壊れていくなぁ。
~豊穣の女主人亭~
「すみませんでした!先日はお金も払わず飛び出していってしまって!これ、お勘定です!」ペコペコペッコリン
昨日は明け方に帰宅し、倒れ込むように眠りについたベル。怪我の回復もしなければならず、そのまま一日絶対安静を主神より言い渡され、神様が何処からか貰ってきたというコタツとやらに入ってじゃが丸君をかじりながらその日を過ごした。
それからまた一夜明け、すっかり体も回復し、目覚めた頭で冷静に一昨日の出来事を思い出していたベル・クラネル。そこで一昨日のいざこざで酒場の代金を払わずに飛び出してしまっていたことに気が付いて真っ青になった。
何はともあれやるべきことは謝罪と支払い。昼間、開店前の豊穣の女主人亭を訪れ、店主ミア・グランドに向かってキツツキのように何度も何度も頭を下げる。
「ん~?あぁ、あんた一昨日の坊やかい。その金は要らないよ。」
「えっ?」
「アンタと一緒にいた子達がいただろう?その子がアンタの分も払ってくれたんだよ。よ~く感謝しておくことだね!この店で食い逃げなんかしてたらこっちからケジメをつけに行く所だったよ?」ジロリ
「えぇ!?」
金は要らないと言われて驚き、それをポッコちゃん達が支払ってくれたと聞いて二度驚く。ベルは自分の情けなさにその小さな肩を更に縮こまらせておずおずと聞く。
「あの・・・ポッコちゃん達のホームの場所なんてご存知ないですよねぇ・・・?」
居たたまれなくなったベルは直ぐにでも謝罪とお礼をしに行こう、と思ったのだが彼女達の住まいを知らないことを思い出す。手がかりは何もなく、ダメ元でミアにも聞いてみる。
「ほう、受けた恩はきっちり返そうってのかい!その心意気は嫌いじゃあないね。しかし、残念だ。私にゃあそんなことは分からないよ。シルも昨日一緒に話してただろう?何か聞いてないかい?」
「ん~・・・ホームの場所までは私も・・・あっ、でもたしかあの子、神ヘスティア様とお知り合いのような事を言っていたような?」
「えっ?あっ、そういえば!」
「なんだい。自分とこの神様の知り合いなんじゃないか。そっちに聞いた方が早いんじゃないか?」
「そうで・・・あっ、でも今朝神様ホーム出るときに数日帰らないって言ってたな・・・。どうしよう。」
「まあ、分からないなら仕方ないんじゃないですか?またウチのお店に来てくれるかもしれませんし、お互い冒険者していればダンジョンで会うこともあるでかもしれません。私も知り合いに聞いてみますよ。そんなことよりも、今日もダンジョンに行かれるんでしょう?コレ、お弁当です。」ハイ
「えっ、いやぁ、そんな。」アセ
「貰ってください。ダメ・・・ですか?」ウワメヅカイ
「すみません。頂きます。」デレッ
「ありがとうございます!」フフッ
「ボウズ、冒険者なんてかっこつけるだけ無駄な職業さ。最初のうちは生きることに必死になっていればいい。惨めだろうが生きて帰ってきたヤツが勝ち組なのさ。」
「はい!冒険を続ける為には死ぬわけにはいきませんからね!」
「ほう、わかってるみたいじゃないか。さて、アタシにここまで言わせたんだ。簡単にくたばったら許さないからね!さあ、行った行った!店の邪魔になるよ!」パシィ
「ぁ、はいっ!行ってきます!」
「行ってらっしゃい。ベルさん。」
ミア母さんとシルからの声援を背にベルは今日もダンジョンへ向かった。
―――――――――――――――――
~冒険者ギルド~
「はあぁ?15階層まで踏破したですってぇ!?」
最近新しく担当になったポッコファミリアの冒険者ローズマリーからの報告にエイナは思わず声をあげた。
立ち上げたばかりだというポッコファミリアの冒険者達は女子供ばかりで、一見すると冒険者に見えすらしない。しかし、いざダンジョンに潜らせてみれば、初日にいきなり10階層を踏破し、その翌日には15階層まで降りたという。外の世界でそれなりに鍛えていたと言うが、それでも登録上はレベル1の初級冒険者ばかりのパーティが中層に足を踏み入れているのである。
そんな無茶をやらかす冒険者を諌めるのもギルド職員の仕事だ。エイナは眉を吊り上げて厳重注意を言い放つ。
「いいですか!?偶々生きて帰れたことを実力と勘違いして命を落とした冒険者は数えきれないんですよ!最低でもどなたかがレベル2になるまで中層への進出は厳禁です!」
「えぇ~そんなぁ~。」
「いいですね!」
「はい・・・。」
エイナの迫力に押され、ローズマリーもそれを了解する。まぁいずれにしろポッコからも階層制限を言い渡されているのだが、さすがに主神とギルドから二重に縛られると今後動きにくくなるのは確かだろう。さっさとレベルを上げるか、同行してくれる高レベルの冒険者と知り合うかする必要があるなぁとローズマリーは思案する。
そして怒られながらも報告を済ませたローズマリーは今日ギルドを訪ねた目的を切り出す。
「ところでエイナさん。」
「なんですか?」
「私達、今日はクエストを請けてみようと思って来たんですけど、ダンジョンに入らなくても実入りの良いクエストなんてないですか?」
「クエスト・・・ですか?どうしてまた?」ハテ
エイナは首を傾げる。クエストといえば、商業系のファミリアからの採集依頼、人員不足のパーティによるサポーター募集、あとは要人警備やら城塞の建設要員など、色々とあるにはある。しかし、彼女達のようにダンジョンで活動できる戦力があるならば、たとえ上層でも半端な依頼を請けるよりは稼ぎは良いはずなのである。
「ええ、収入を得る手段は多い方がいいと思いまして。その為にも今のうちに簡単な依頼でも色々とこなして経験しておこうかと。」
「ふむ、皆さん真面目なんですね。まぁ比較的安全なクエストをこなして確実に経験を積んで頂ければ私も安心です。丁度、今は4日後の怪物祭〈モンスターフィリア〉に向けた準備と当日の警備スタッフの募集がわりと厚待遇でありますのでオススメですよ。」
「?怪物祭〈モンスターフィリア〉とは何ですか?」
「ご存知ないんですか?ガネーシャファミリアが主催するお祭りで、ダンジョンでテイムしたモンスターを闘技場で調教するイベントですよ。」
「モンスターを街に入れるんですか!?それって危なくないんですか?」
「勿論、モンスターの扱いはそれはもう厳重にされていますよ?それだけでなく、更に念を押してこうして警備スタッフを厚待遇で雇って配置するわけですし。」
「成る程・・・。まぁ確かにそれでもダンジョンに潜るよりは安全な仕事ではありそうですね。ちなみにお給金はいくらになるんですか?」
「準備の方では日給で5万ヴァリス、当日の警備は10万ヴァリスですね。ダンジョンで上層のモンスターを倒すよりは安全で割りがいい仕事だと思いますよ。」
「ふむ・・・。」
10階層までの探索で集めた魔石の交換額が40万ヴァリス。一人頭の日給が5万ヴァリスならば効率はあまり変わらない。ダンジョン探索の戦力には余裕があるから、当然手数が多い方が稼ぎは良いだろう。何より依頼元がギルドならば信用もある。
ローズマリーは少し思案したが、すぐに結論を出した。
「ふむ、確かに割りは良さそうですね。その仕事請けさせてください。」
「かしこまりました。ただ、募集枠はあと4名なので、皆さんの中から請ける方を4名選んでください。」
「わかりました。それじゃあ私と、え~と・・・。」
ローズマリーはメンバーを見回す。参謀が出来るのがローズマリーとミアラージュしかいないので、まず二人は別れる。また、仕事の内容から警備隊長の資質を持っているメンバーが向いているだろう。となれば後の3人は決まる。
「デーリッチ、ルフレ、柚葉でこの依頼を請けよう。ミアちん、ヘルちん、ヅッチー、マオちゃんは通常通りダンジョン探索に向かってくれ。」
「「「はーい。」」」
そうして、その日のうちにクエストを請けるチームとダンジョン探索のチームに別れて行動することになった。
―――――――――――――――――
~ガネーシャファミリアホーム 大広間~
今宵、ガネーシャファミリアのホーム『アイアム・ガネーシャ』の大広間では神の宴〈デナトゥス〉が開かれている。年に一回の祭典、怪物祭〈モンスターフィリア〉を直前に控え、ガネーシャファミリアも今回の開催には特に力を入れている。酒も食事も豪華なものが用意され、暇潰しと情報収拾を目的に参列した神々も、その料理の出来に舌鼓を打つ。
そんな中、ポッコはタケミカヅチに連れられて知神への挨拶廻りをしていた。
「こやつはヘルメス。女たらしのロクデナシだ。」
「おいこら。」
見た目からしてチャラい感じの神ヘルメスは雑な紹介にツッコミは入れるが本気で怒っているわけではないようだ。二人が気の置けない関係なのと察せられる。
「初めまして、ポッコです。」
「ん?もしかして、ポッコちゃんて福の神様のところの?」
「えぇ、福の神様のことをご存知なんですか?」
「ふ~ん、君がねぇ・・・。」フムフム
「あの、福の神様が何か?」
ヘルメスはポッコの名を聞いて、なにか含みのある反応を見せる。ポッコも意図が解らず聞き返すことしか出来ない。
「いやなに、色々と(、、、)大変なこともあるだろうけど頑張ってくれたまえ。」ポンッ
ヘルメスはポッコの頭に手を置いてその場を離れていった。
――――――――――――――――
それから宴も中盤に差し掛かり、酒に酔う神、意中の女神を口説く神、ドンチャン騒ぎに興ずる神、会場は一層の喧騒に包まれていた。
何人かの神をタケミカヅチから紹介され、やや気疲れをしたポッコは、オレンジジュースを啜りながらふと会場に目を送った。送ってしまった。
「げっ、あれは・・・。」
そして、それはいた。明らかに場違いな物体が会場内を闊歩している。布団と一体になったテーブルに、そこから手足が生えた、一見すると亀のようにも見えるその物体。場内を這いずり回りながら目当てのテーブルに近づくと、ヌゥッと頭を出して狙いを定めては、素早く料理を回収してタッパーに詰めていく。
ヒソヒソ
ナニアレ?カメ?
さすがにその目立ちすぎる出で立ちは周辺の神達の目にも留まり、次第に注目を集めていく。
「ふっふっふ。」
視線を感じる。まぁそれも仕方ないだろう。コタツと一体化した今のボクはまさに完・全・体。パーフェクトヘスティアとでも呼んでくれたまえ。しかし、同志こドラから譲り受けた彼女が愛用していたというこのコタツのなんと素晴らしいことか。強度を落とさずに極限までの軽量化が図られ、脚周りにも改造が施され、高い小回り性をも実現している。なるほど、これならば1日中こたつを背負う生活でも不自由は少ないだろう。
と、ヘスティアがコタツに身を潜めてドヤッていると、後ろから声がかかる。
「ヘスティア・・・だよな?お主は一体何をしてるんだ?」
「あなたは一体何を考えてやがるんですか?」
本当はあまり関わり合いになりたくなかったが、根が善神のタケミカヅチもポッコも神友のその哀しい後ろ姿に声をかけずにはいられなかった。
「やぁタケ・・・とポッコじゃないか!キミたちも来ていたのかい!」
「やあじゃないですよ。その格好は何なんですか?」
「こドラ君から譲り受けたコタツを早速着てみたんだ。これさえあれば何時でも何処でもコタツでみかんが食べられる。これは良いものだよ!」
コタツは着るもの。コタツ同盟の副席パーフェクトヘスティアは、まるでカレーは飲み物と言わんばかりに斯くのたまう。
「おなごの趣味に疎い私でもそれは何か違うとわかるぞ?悩みがあるなら聞いてやろう。申してみよ。」
変わり果てた神友の姿に本気で心配を口にするタケミカヅチ。
「失敬だな。タケにはコタツの魅力が分からないのかい?」
「いや、コタツくらいならウチのホームにもあるぞ?」
「え?そうなのかい?」
「あぁ、そういえばコタツはそもそも和の国の文化でしたね。」
「じゃあタケもコタツ同盟に入らないといけないな。」
「おいやめろ。」
と、コタツ談義に花を咲かせていると別方向から会場がザワついてきた。
ザワザワ
ゲカイデモウツクシイ・・・
ザワザワ
フレイヤサマァ
そしてそのざわめきの中心はヘスティア達の方へ向かって行った。
「こんばんは。ヘスティア、タケミカヅチ。・・・と、そちらの子は初めましてかしら?」
「フレイヤ・・・。」
「あら、お邪魔だったかしら?」
「ボクはキミのことが苦手なんだ・・・。」
「貴女のそういうところ、私は好きよ?」クスッ
無遠慮に軽口を言い合い、微笑みながらも決して隙は見せない。ポッコには神フレイヤに福の神様が重なって見え、彼女が一筋縄ではいかない相手だと悟る。
「此方のお方は?」
「神フレイヤだ。ここオラリオでも有数の勢力を誇るファミリアを運営している。」
「左様でしたか。私はポッコ。此方に来て日も浅い新参者ですが、どうかお見知り置きを。」
「あらあら、ご丁寧に。私はフレイヤよ。よろしくね。」
ポッコは経験上、この手合いに敵対するのは得策ではないと知っている。特別丁寧に挨拶を交わした。
「ところでヘスティア?」
「・・・なんだい?」
「その格好は何なの?」
「む?これかい?これはコタツと言うんだ。オシャレだろう?」
「う~ん・・・、前衛的過ぎて私の美的感覚が許容できる範囲を越えているわねぇ。」
「前衛的だなんて照れるなぁ。」
「決して褒めているわけではないのだけれど。」
おっとりとした口調ながら中々に強烈な毒を吐くフレイヤ。しかし、コタツに盲目なヘスティアには毒を毒と感じることもなく、コタツを褒めてくれたフレイヤへの好感度がちょっぴり上がってしまうのであった。
ドドドドドド
そんな雑談を交わしていると階段を駆け降りてくる笑いの神の姿が。
「お~い!フレイヤ~・・・と、ドチビ~!」
喧嘩を売る気満々に、悪意たっぷりでヘスティアに絡んできたのはロキ。
「何をしに来たんだい?キミは?」
「ドレスも買えない貧乏神を笑たろ思て来てみたんや。何や珍妙な格好しとるな~。正直反応に困るわ。その格好は何やねん?」
「キミも気になるのかい?」フフン(´ー`)
先程から、出会う神出会う神がコタツのことを聞いてくる。やはり気になってしまうらしい。まぁ仕方ないよね。コタツは素晴らしいからね。
「いや別に。」
「ガーン。」
「それはそうと、そっちはポッコやないか。こないだはすまんかったなぁ!あの青髪の獣人の男の子、ベルやっけ?も元気にしとるか?」
「!」
青髪の獣人の男の子、と聞いてフレイヤの目の色が変わった。しかし、それに気付いた者はこの場にはいない。
「ん?キミ達は知り合いなのかい?」
「えぇ、まぁ。あ、そうそう。そのことでヘスティアに聞きたいことがあったんです。一昨日の夜、貴女の所のベル・クラネル君はちゃんと帰ってきましたか?」
「ん?ベル君が?その日はダンジョンで無茶したらしくて早朝にボロボロになって帰ってきたよ。何か知ってるのかい?」
「あぁよかった。帰っていたんですね。ええとですね―――。」
ポッコはあの夜のあらましを話す。
「――というわけなんです。こドラがクラネル君を追っかけたんですが見つからなくて心配していたんです。」
「ベル・クラネルってよう見えへんかったけど、白髪に赤目のあの子のことやろ?なんや、ドチビのとこの子やったんか。」
「!」
再び、フレイヤの表情が変わる。
「おい、ロキ。今回はコタツ同盟同志のポッコに免じて許してやるけど、今度ウチのベル君にちょっかい出したら例えキミでも許さないからな?」
「誰がコタツ同盟ですか、誰が。」
「おお~怖いなぁ。って、イタタタやめんかい!このドチビ!」
ヘスティアはロキの反省を感じさせない態度に怒り、ロキの頬をつねる。
そうこうしていると、フレイヤのお付きの黒服がフレイヤに耳打ちをする。
「盛り上がっているところ悪いけど、私はおいとまさせてもらうわ。調べたいこともあったのだけれど、その必要も無くなったみたいだし。」
そう言ってフレイヤは白銀の髪を優雅にたなびかせて去っていった。
「それじゃあ私も、門限がありますのでそろそろホームに戻らないと。タケミカヅチ様はどうしますか?」
「ん?もう帰るのか?まぁ子供に夜更かしはさせられんからな。私はもう少し宴を楽しんでゆくよ。」
「あ、もう帰るのかい?またね、ポッコ!」
「そっちの子らにもよろしくな~。」
一通り挨拶もし終えて用事は済んだ。あまり帰りが遅いとローズマリーに叱られてしまう。ポッコもキリがいいところでこの場を辞した。
コノムネナシ!
ウッサイワドチビ!
サワルナヒンニュウガウツル!
ウツランワ!
背後から聞こえてくる低次元な言い争いに振り返ることはしなかった。
酒場のシーンでベル君の正拳突きがレベル6でも見えないってこいつらどんだけ強いんだよ!と思われた方も多いかと。
今さらですが、このSSの強さ基準はおよそ下記のイメージで書いてます。あくまでもおおよそなので、都合に合わせてコロコロ変わります。
アナンタさん、アリウープ様:孫悟空(神様修行後)
マオちゃん:ピッコロ大魔王(若)
マリオンちゃん:孫悟空(超神水飲んだ後)
ハグレ王国戦闘タイプ:ピッコロ大魔王(老)
オッタル:天津飯
ハグレ王国非戦闘タイプ:孫悟空(超神水飲む前)
レベル6:桃白白
レベル5:クリリン
レベル4:ミイラ君
レベル3:ボラ
レベル2:チャパ王
天下一武闘会では悟空の超高速の動きにクリリンがその姿を見失う場面がありましたが、酒場のシーンはあんな感じをイメージしてもらえたらいいんじゃないかな。