ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか   作:ひまじんホーム

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 スプリングハズカム!
 やっぱバトルシーンはダメだわ~。みんな見せ場作ろうとすると大味になっちゃうし文字数ばっか増えちゃう。
 はむすたさんのブログで追加イベント制作日記が始まりましたね。この尽きることのない制作熱、尊敬します。ってかスライミーズ参戦てマジですか!?


第15話 モンスター大祭り(後編)

~商店街前広場~

 

「ふぃ~この辺は片付きまちたね。」

 

「お疲れさま。デーリッチ。」

 

 闘技場から飛び出したデーリッチとローズマリーは、なるべく人が多く被害が出やすそうな場所の守りに向かった。

 特に屋台が建ち並ぶ商店街前広場は土地勘がなく避難が遅れた観光客も多い場所だ。パニックになった人々が我先にと逃げ惑い、モンスターだけではなく人同士で衝突したり転んだり踏まれたりして怪我をしているひともチラホラ見られた。

 あらかたモンスターを倒し終えたデーリッチは怪我人にヒールをかけて廻り、魔法を初めて目にした観光客は魔法すげぇ!と感動の声を上げていた。

 

「ここはこれで大丈夫でちね。他の場所の救援に向かうでちよ。」

 

「そうだね・・・ん?」

 

――ごごごごご

 

「地震・・・でちかね?」

 

「地面が・・・危ない!デーリッチ!」

 

ビキビキィッ!

 

「わわ!よっと!」ヒョイ

 

 地面にヒビが入りデーリッチの足下に筋状に伸びてくる。ローズマリーの合図でデーリッチは慌てて横跳びで難を避ける。

 

―――どーん!

 

 地面を割って現れたのは蔦を蛇の様にうねらす全長20メートルはあろうかという巨大な植物系モンスターだった。

 

「これは・・・中々でかい、でちねぇ?」

 

「おかしいな?闘技場にこんなモンスターいたかなぁ?」

 

 心配性なローズマリーは、前日の段階で捕らえているモンスターの種類や入れられていた牢の強度を確認している。テイマーの見世物の為に集められたモンスターは獣タイプばかりで植物タイプのモンスターはいなかったとローズマリーは記憶している。

 

「なんか、ものすごい見られてる気がするんでちけど・・・。」

 

「分析してる余裕は無さそうだね。やるよ、デーリッチ!」

 

「おうでち!」

 

シュルルルル!

 

 デーリッチはモンスターから伸びてきた触手の1本を避けようとせず、タイミングを合わせて杖をフルスイングして上方へと打ち上げる。

 

「とりゃ!」ブン!

 

ゴイ~~ン!

 

「硬っ!?めっちゃめちゃ硬いんでちけど!?」ナニコレ

 

 なまじ植物タイプは防御が弱いモンスターが多く油断していたのもある。デーリッチは銅鐘を叩いた様な思わぬ手応えに、腕をしびらせて硬直状態に陥ってしまった。

 

「ファイア!」ボゥ

 

 その間に、ローズマリーは落ちついて周りに被害が出ないように威力を絞った魔法でデーリッチが打ち上げた触手を焼き払う。

 しかしそれがここでは悪手となった。

 

ギュルルル!

 

 デーリッチが硬直しているスキに2本目の触手がデーリッチへと伸びてくる。学習能力があるのか、先程より鋭い一撃がデーリッチへ襲いかかる。

 

「しまった!援護が間に合わない!デーリッチ!」

 

 援護が間に合わないと判断したローズマリーは鞄の回復薬を取り出し、回復に備えた。

 

 しかし、その瞬間、デーリッチの前に青い風が立ち塞がる。

 

「過剰防衛の陣!」パシュン!

 

 この周辺は新たなモンスターが現れたことで、一般人は既に逃げだしており、それを目にしたのは極僅かな者しかいないだろう。いや、目にはしても何が起きたのかまで目で見えた者は皆無とも言える。

 それはポッコファミリアのデーリッチ達でも、斬られたモンスター自身すらも目では見ることが出来てはいないだろう。瞬きをする時間にも満たないその瞬間に繰り出された一撃は、時を圧縮し、まるで停止した世界でただ一人だけが活動しているかのようだった。

 そして一瞬とも、永遠とも表現できる切り取られた絵画の世界は、それを為した者の合図によって終演を迎える。

 

――パチン

 

 納刀。世界の再開を告げるにはあまりにも軽い音が静寂を切り裂く。

 

――ドシャア!

 

 崩壊。自身が斬られたことを思い出したかのようにその巨体は重たい音と共に沈んだ。

 

「柚葉!」

 

「ふむ、礼ならば私にダンチョーの座を譲るだけでよいぞ?」

 

「そいつは無理でち~!」

 

「ぬぅ。」

 

「でも、助かったでち。ありがとう、柚葉!」

 

 リュージン族に伝わる伝説の秘宝の一つ『統べるもの如来』。竜眼石で創られたその刀は重さを要せず、ただ刀の反りと鋭さのみであらゆる物を切ると伝えられる。凡人が手にすれば只の折れやすい刀でしかないが、達人が手にするならば次元すらも切り裂くことを可能にするという。なんとなく気に入ったというだけの理由で、この刀を自在に操れる者は柚葉以外にはいないだろう。

 

「・・・ふむ、しかしデーリッチよ、気を抜くのはまだ早い様だぞ?」

「はふ?」

 

「デーリッチ!足下だ!」

 

――ごごごごご

 

「お?お?」

 

――ズ、ズズン!

 

「地面が、抜け・・・のわぁ!?」

 

「一旦下がって!モンスターが荒らしてない所までは落ちないハズだ!」

 

 先程のモンスターが地面で暴れていたせいだろう。脆くなった地面は底が抜け地下水道まで崩落してしまったらしい。

 

「へぇ~この下は地下水道になってるんでちね。」

 

「呑気なこと言っている場合じゃないよ?さっきのモンスターが闘技場から逃げ出したのではなく、元々地下を根城にしていたということだ。街の地下でモンスターがウヨウヨしてるなんてたまったもんじゃない。」

 

「ハグレ王国の地下と同じだな。」

 

「それは言いっこなしでちよ。」

 

 ハグレ王国の拠点ははるか昔に古代人に造られた遺跡をそのまま使っている。その地下部分は水道というわけではないが、水を大量に溜め込み水没している。これは古の時代、マナが薄い地上では生活出来なかった古代人が地底に居住空間を作る為に、マナを含む水を蓄えることでマナ不足を補っていた為である。

 

「拠点の地下と同じ、・・・か。いや、拠点というよりもこれはむしろ・・・世界樹?だとしたらこの街、いやこの世界は・・・?」ブツブツ

 

「どうしたでちローズマリー?」

 

 オラリオの地下水道は当然、生活用水なのでハグレ王国の拠点とは事情は違うのだが、唯一、マナの環境という点においては似通っていると言える。

 ローズマリーはそれがダンジョンの魔物湧きに影響していると考えた。また、ダンジョンから半永久的に持ち出され、様々なエネルギー源として使われる魔石の存在。これはマナを異世界から取り込み、その葉から世界に拡散する世界樹の仕組みと根本的には同じ構図だ。

 

「ボサッとしている時間はないのではないか?」

 

「ん?あぁ、ごめんごめん。そうだね。これ以上さっきのモンスターが湧いてくるのも困る。こちらから調査に行こうか。」

 

 ブツブツと思考の迷路に落ちていたローズマリー。二人に指摘され今はそれを考えるときではないと頭を切り換える。

 

「お~い!デーリッチ~!」

 

「あっ、ヅッチー!みんなも!」

 

「あら、もう片付いちゃったみたいね。」

 

「この様子だと結構な大物がいたようだのう?」

 

 そうやっている間に別行動していた仲間達が集まって来た。ポッカリ開いた大穴を覗きながらこの場所に現れたモンスターの大きさを各々で予想していた。

 

「ありゃりゃ?みんな集まっちゃったんでちね?」

 

「あんだけでかい音してたら真っ先に駆け付けるわよ。で、どうするの?じきに他の冒険者も集まってくるわよ?」

 

 ポッコファミリアのメンバーはたまたま近場にいたのと、素早さにおいても他の冒険者の追随を許さないレベルである。必然的に先行して集合となった。

 

「う~ん・・・。さっきのモンスターを他の冒険者に戦わせるのはちょっと不安でちね・・・。デーリッチ達だけで先行する方が良さそうでち。」

 

「そうだね。急ごう。」

 

 ポッコも合わせて11人。全員揃っての行動はオラリオに来たとき以来となる。間違いなく過剰戦力と言える人数を引き連れて地下水道へ歩を進める。

 

――「待って。私も行く。」

 

 ・・・のだが、その背から声をかける者がもう一人。

 

「あら、アイズじゃない。貴女も来ていたのね。」

 

「ミアラージュ・・・?この穴・・・食人花のモンスターが暴れた跡だよね?モンスターは貴女たちが?」

 

 先日、服屋で出会ってから交流が出来た二人。ベル・クラネル君の件について連絡を取り合ったことがきっかけでお互いに友人と呼べる関係になっていた。

 アイズは先程まで戦闘していたらしく、着ている衣服があちこち破れている。固有の風魔法エアリアルを駆使して街を飛び回っていたアイズは他の冒険者よりも早くこの場に到着できたらしい。地上部の掃討はあらかた終わったが、懸念が残るのは先程の食人花のモンスターの存在だ。上からでは見つからない脅威に対し、都合良く開いた穴から地下に降りようとした次第である。

 

「私達は来たばっかりよ。モンスター倒したのはこっち。」

 

「貴女たちだけで、あのモンスターを・・・?」

 

「そうでちよ。デーリッチたちは強いでちからね!」エッヘン

 

「わりと危ないところだったけどね。」

 

「それは言いっこなしでちよ~。」

 

 鼻高々に語るデーリッチ。油断してピンチに陥ったことはナイショである。

 

「そう、宜しく。」

 

「まぁ共闘してくれる仲間が増えるのはこちらとしても心強い。いいよ、一緒に行こう。」

 

 今、ここにポッコファミリア全戦力にプラス一人を伴って地下道へ降りていった。

 

―――――――――――――――――

 

~オラリオ地下水道~

 

 薄暗い地下水道をぞろぞろと歩いていく。彼女たちを知らない人がみれば立入禁止区域を探検する子供達の集団にしか見えないだろう。

 アイズ自身もその集団に溶け込んではいるが、これはピクニックではなく、モンスター討伐である。おそらくこの場においては唯一の第1級冒険者として、いざ戦闘となれば彼女達も守らなくてはならない。普段は最前線で敵を葬ることしか考えないアイズも、同行者のことを慮る必要が出てくる。

 

「貴女たち、レベルは?」

 

「レベル?みんな1でちよ?」

「え?」

 

 アイズはその話に首を傾げる。先程ヒュリテ姉妹とレフィーヤと一緒に、装備が不足していたとはいえ、4人がかりでなんとか討伐したモンスターをレベル1の冒険者だけで対処したと言う。

 

「みんな、強いんだね。」

 

「まぁ私達は見た目以上には強いから安心していいよ。」

 

「頼もしいね。」

 

 何が何だか分からないが、まぁ付いていけば分かるだろうと、アイズは持ち前のおおらかさであっさりと順応していた。

 

 それから、少し進むと前方に開けた空間が見える。そしてその先から感じ取れる邪悪な気配。

 

「ストップみゃ。」

 

 警戒をしながら先頭を歩いていたルフレが歩を止める。巨大な物が蠢く気配に勘づき、近付いて先の様子を窺う。

 すると、先程倒したモンスターと同種のモンスターが見える範囲でも5体以上が蠢いていた。そして、その内に1体、明らかに他の個体より一回り大きく姿も異なる魔物が混じっている。なにやらその大きな個体は他の個体を取り込み、更に大きさを増していっているように見える。

 

「あれ、何か見たことある大型魔物が混じってるんでちけど・・・?」

 

「あれは・・・プラントヒュドラ!?何でここに!?」

 

 プラントヒュドラ。かつて帝都決戦に投入された植物タイプの大型魔物だ。ヒュドラの首のように伸びた触手を自在に操り、周囲のマナを吸収して半無限の自己再生を繰り返す厄介な能力を持つ。更に周囲に食人花アサルトフラワーの種を撒き散らして増殖し続ける恐るべきモンスターである。

 

「で、あれは何をしているんでしょうか?」

 

「共食い・・・に見えるみゃね。」

 

「このパターンはアレね。」

 

「アレでちね。」

 

「「「ボス戦。」」」

 

 声が揃う。同時に警戒度は最大に引き上げられる。なぜプラントヒュドラがいるのかは分からないが、かつて苦戦させられたモンスターがそこにいる。しかも他のモンスターを喰らうことで明らかに強化されているようだ。

 

「さすがに武器なしでは厳しそうな相手だ。今のうちに装備を整えておこう。」

 

 そう言ってローズマリーはポーチを取り出す。大概のモンスターなら無手で何とでも出来るが、見たところ今回はそうもいかなそうだ。

 

「何?それ?」

 

「?あぁ、四次元ポーチは初めて見るかい?」

 

「四次元・・・?」

 

「まぁ、見た目以上に物が入るカバンだと思ってくれたらいいよ。そんなに珍しいものではないし気にしないで。」

 

「そう・・・かな?」

 

 アイズはロキファミリアでは見たことのないアイテムに目を丸くする。珍しいものではない?いや、そんなことがあるわけ・・・、いやどうだろう。わからない。ダンジョンはいつだって未知に満ちているのだから。

 

「あっ、そういえば私も武器・・・。」

 

 各々が武器を用意する中でアイズは先程の戦闘で鍛冶屋から借りたレイピア(4,000万ヴァリス)を折ってしまったことを思い出す。折れた刀身を見つめながら、これから予想される叱責と弁償につい深いため息がこぼれる。

 

「その剣、折れちゃったんでちか?さっきのモンスターめっちゃ硬かったでちからね~。ローズマリー、アイズちゃんにも何か剣を貸してあげるでち。」

 

「いいの?」

 

「かまわんかまわん。一緒に戦う仲間でちからね。良いものを使ってね。」

 

「う~ん・・・、アイズさんは女剣士だから・・・、これなんてどうかな?」

 

「ありがとう。」

 

 ローズマリーが取り出したのはデルフィナレイピア。死して尚も人々の為に戦い続けた伝説の女勇者デルフィナが使っていたというレイピアを、ハグレ王国の鍛冶屋ジーナが持てる技術の粋を凝らして打ち出し再現した名剣。2本打って出来が良かった方はジーナの弟のアルフレッドに贈り、残った方はハグレ王国に寄贈された。しかし、せっかく最高品質の武器が寄贈されても、王国には西洋式の剣を好んで扱う人物があまりおらず、実戦で使われることはなかった。そんな経緯があった為か、〈剣姫〉アイズ・ヴァレンシュタインという使い手を得たことで、レイピアも心なしかほんのりと輝いて見える。

「さてと、もう準備はいいかなみんな?戦闘開始といこうか!」

 

「「「おう!!!」」」

 

 

 そして決戦の幕が上がった。

―――――――――――――――――

 

「ノーフューチャー!」オマエハモウシンデイル!

「トアミサンダー!」バッサァ!

 

 急所一点、ルフレの手裏剣が刺さりプラントヒュドラをその場に縫い止める。その上から網状に投じられたヅッチーの雷魔法が覆い二重に行動を制限する。

 

パシュパシュパシュパシュ!

パシュパシュパシュパシュ!

 

「なにっ!?」

 

 プラントヒュドラは周囲に1度に8個ものアサルトフラワーの種を撒き散らす。先程まで食人花を喰らっておりマナも栄養もたっぷりあるのだろう。それらは着弾と同時に芽吹き襲いかかってくる。

 

「フレイム!」ボウ

「マオちゃんトンネル!」シュワッチ!

 

ガアアアアア!ガブッ

シャアアアアア!ガブッ

 

「いった!?メチャクチャ痛ぇですわ!?」

 

 ローズマリーとマオちゃんがアサルトフラワーを焼却していくが数が多く全てを処理するには至らない。4体のアサルトフラワーが火の海を潜り抜けてヘルラージュに噛み付く。

 デーリッチが慌ててひっぺがすが、ヘルラージュの腕やら腿からはドクドクと血が流れている。

 

「ヘル、あなたふざけて死んでも黄泉返りはしてあげれないわよ?」

 

「それ今はシャレにならないからやめて!?」

 

「やあねぇ。ゾンビジョークよ、ゾンビジョーク!」遺ェ~影ィ!

 

「うぅ・・・お姉ちゃんが優しくない・・・。」グスン

 

「ヘルさん、はい回復薬。」ニッコリ

 

「ありがとうベル君。やっぱりベル君は優しいわ~。ゴクゴk・・・ぶっはあ!?何コレ!?」ニガー!

 

「何っていつものポーションですよ?」

 

「そう、そういえば死ぬほど苦いんでしたわね・・・。あの、デーリッチちゃん?ヒールをお願いできます?」

 

「も~しょうがないでちね~。ほい、ヒール!」

 

「ありがと~。デーリッチちゃん良い子良い子。」

 

「余裕あるね、みんな。」

 

 ロキファミリアも大概に賑やかだと思っていたけどこの人たちは一体なんなんだろう?さっきの攻撃一つとっても強いと自称するだけのことはある。致命的に隙だらけだがそれも余裕の現れにも見える。

 こんなんでモンスターを倒せるんだろうか、ほら、さっき噛みついてた花がまた仕掛けてきた。

 

「私が行く!」

 

 アイズはデーリッチに飛びかかろうとするアサルトフラワーに側面から斬りかかる。

 

スパパ!

 

「え?」マップタツ!

 

 想像以上に軽い手応えでアサルトフラワーを両断できてしまい逆に困惑してしまう。斬ったモンスターが柔らかいわけではない。借りた武器の性能が良すぎるのだ。1振りで1体、その返し刃で1体、まるで胡瓜を切るかのように2体のアサルトフラワーをあっさりと倒してしまった。

 

「お見事でち!アイズちゃん!」パチパチ

 

「これは、武器のおかげ。」

 

 

「さて、私もかわいい妹をキズ物にされて黙ってはいられないわねぇ。〈パパ〉もそう思うでしょ?」

 

――オオオオオ!

 

 ミアラージュの背負うランドセルが奇妙なうめき声と共にガタガタと暴れだす。狂人となり死して尚も娘を想う父親の怨念が、末娘をキズつけられたことに怒り猛る。

 

「殺っちゃって、パパ!パパズダイナミック!」

 

 首だけの怨霊と成り果てたラージュ家の旧当主は、娘を守る為に火の玉となりアサルトフラワーへ頭突きをかます。2体残っていたアサルトフラワーを瞬殺したパパの怨霊は再びランドセルに戻っていった。そして、ミアラージュは小さな声で「パパ、ありがとう。」と呟きながらランドセルのホックを留める。

 どんな形であれ家族一緒に在りたいとう、歪んだ愛が生んだ歪んだ家族。この父親の怨霊には既に自我などないハズだが、それでもただ本能で娘の敵を刈る。ただ其れだけが心残りだと言わんばかりに。やれやれ、成仏にはまだ時間がかかりそうだとミアラージュはランドセルをさする。

 

「キャー!お姉ちゃんステキ!お姉ちゃんカッコイイ!」パチパチ

 

 現当主である妹はそんな姉の気持ちを知ってか知らずか呑気なモノで、まだまだ危なっかしいわね。とミアラージュは溜め息を吐く。でも、まぁそれで良いのかもしれないと最近は思う。ラージュ家の暗部は自分が冥土まで持っていくと決めたのだから。

 

「本体が来るぞ!」

 

シャアアアアア!

 

 プラントヒュドラが2本の触手を使ったダブルウィップを放つ。かつて戦った時よりも遥かに強靭で鋭い一撃が迫る。

 

 しかし、パーティーの最前衛に立つ二人は悠然と構えるのみ。

 

「こドラ、合わせろ。」スラッ

 

「お~け~。」ジャン

 

「「過剰防衛カウンター!」」ゴッ

 

ズバババ!

 

 こドラがこたつのカドで1本目の触手を弾き、柚葉が2本目の触手を両断する。対物理最終兵器コンビは今日も健在だ!

 

ヒュウウウウ・・・

 

「急速にマナを吸い込んでいる!魔法が来るぞ!マオちゃん、押さえ込むよ!」

 

「おかのした!」ゴオオオオ

 

――ブリザード

 

 プラントヒュドラが周辺のマナを冷気に変えて放つ。

 

「フレイム!」

「イフリートブレード!」

 

 ローズマリーとマオちゃんの炎魔法で冷気を相殺する。触手攻撃、魔法攻撃両方を封じられたプラントヒュドラは隙だらけになる。

 

「アイズ!今よ!」

 

「目覚めよ、〈テンペスト〉!」

 

「援護するみゃ、ニンジンシュリケン!」シュババババ

 

 ルフレの4連手裏剣が枝葉を払いのけ、アイズの前に1本の道を作る。

 

「リル・ラファーガ!」

 

――ザシュウ

 

 一閃。アイズは眼前に開かれた道を一直線に駆け抜ける。風の属性付与〈エンチャント〉を得たアイズの刺突はプラントヒュドラの茎を文字通り刈り取る。

 

「やったわね!?」グッ

 

「ヘル、あんたわざと言ってるでしょ!?」

 

 冷蔵庫のプリンが残らないのと同じように、建てたフラグは必ず回収される。

 

ブクブクブクブク

 

 プラントヒュドラは斬られた所から泡が吹き出しそれと共に再生を始める。

 

パシュパシュパシュパシュ

パシュパシュパシュパシュ

 

「自己再生か・・・厄介だね。種の方も健在のようだ。やはり一気に倒しきらないとダメだな。マオちゃん、大魔王球を準備して。」

 

「良いのか!?久し振りに本気で暴れられるのう!ゆくぞ!大魔王球吸収!」ゴゴゴゴゴ

 

「何・・・コレ?」スゴイパワー・・・

 

 ローズマリーがマオちゃんにレベル4魔王技の解放を指示する。レベル3以上の魔王技は威力が有りすぎて環境破壊を引き起こす為、普段は使用を制限されている。マオちゃんはまるで給食で残ったプリンを手に入れたお子様のような満面の笑みで魔力を練る。

 アイズはリヴェリアの長文詠唱すらも圧倒するであろうその魔力の奔流に冷や汗を垂らすしかできない。

 

「さあ、カウントダウンだ!マオちゃんの魔力チャージが終わるまで持ちこたえるよ!」

 

「「「おう!」」」

 

「落花落葉の刃!」ヒュヒュヒュヒュン

 

 

「目覚めよ、〈テンペスト〉!」シュババババ

 

「プラズマクロー!」

 

 2刀と1爪が戦場を蹂躙する。芽吹いたばかりのアサルトフラワーが成熟する前に刈り取られていく。

 

「もいっちょ!ノーフューチャー!」

 

 ルフレがニンジンシュリケンを投擲し、アサルトフラワーを失い再生途中で隙だらけのプラントヒュドラ本体をその場に縫い付ける。

 

「ほらヘル、あんたもいいとこ見せなさい。行くわよ合体技!」

 

「お姉ちゃん・・・。はい!」

 

「「魔王降ろし!」」

 

 ラージュ家に伝わる古神降霊術の奥義継承者が二人揃って始めて行使できる、いわば絶義。異世界の魔王の力を降ろし味方の特技魔法の威力を倍加させる。

 

――スゴゴゴゴゴ・・・

 

「ほう・・・血が、マナが、煮えたぎるようじゃ。ワシの方の準備はよいぞ!」

 

「大技いくよ!みんな下がって!」

 

 ローズマリーの合図でマオちゃんを残して全員が通路へ避難する。

 

「とお!」ゴオオオオ

 

 マオちゃんの極限まで圧縮された全開魔力が直径2メートル程の火球という形で解放される。炎耐性を持たない者ならばこの時点でその熱量に焼かれてしまうことだろう。

 しかし、マオちゃんはそれをプラントヒュドラに直接当てるわけではなく上方に打ち出し、自らも一緒に飛び上がる。そして空中で体を反らし、宙返りをしながらそれを蹴りあげる。

 

「雪乃に教わった特別仕様じゃ!オーバーヘッド・大・魔・王・烈・波ぁ!」

 

ドッゴオオオオオオオ!!!

 

 くす玉を叩き割るように空中で破裂させた大魔王球は圧縮された魔力を解放し、プラントヒュドラの体組織をバラバラに破裂させ焼き付くす。地下広間を充満する熱量は通路に避難したポッコファミリアにも届く程だ。

「アッチッチ!」

 

「さすがにマオちゃんの大魔王烈波は強烈だね。」

 

 ジョーカーを出した以上はこの戦闘はこれで終わり。いまだに燃え盛る広間の惨状を他人事のように眺める面々。

 一方で、アイズは深層の階層主並みのモンスターを相手に、あっさり勝利をしてしまったポッコファミリアという存在に対し、ようやく先程から溜まっていた疑問を提す。

 

「貴女たちは、どうしてそんなに強いの?」

 

「ん?まあこう見えて色々と修羅場は潜ってきてるしね。」

 

「レベルは・・・?」

 

「レベル?あぁ、私達は神の恩恵とは関係なく強くなってきたからレベルは上がってないんだ。」

 

「恩恵なしに・・・?」

 

 アイズはその意味を理解出来ない。人間は神の恩恵なしにはどんなに鍛えてもモンスターと戦う力を持たない、それが常識だからだ。そして、相手が理解の範疇を越えた存在と確信する。

 

「あ、炎も収まってきたみたいだね。マオちゃんを迎えに行こう。」

 

「あ。」

 

 アイズはまだ話をしたがっていたようだが、ローズマリーは話を切り上げてマオちゃんを迎えに行った。

 

 

 

「・・・あちきの遊び道具をああも容易く・・・。福の神一派め、いずれ必ず・・・。」

 

 そしてオラリオ史上最悪の闇派閥〈イヴィルス〉が蠢きだす。

 




「レフィーヤ。残りは飲んで。」

「えっいいんですか!?」カンセツホニャララ~

「ゴクゴk・・・ぶふぉ!?な、ナンですかコレ!?」ニガー

「ミアハファミリアで売ってた新製品。ベル印の回復薬だって。」

 なんかヤバい神様の存在を匂わせといてナンですが、次話で整理回やったら暫くはこのすばクロスの方に集中します。映画も始まるし、いい加減完結させないとね。
 今後は2~3ずつ交互に上げていくような形にする予定。
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