ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか 作:ひまじんホーム
~オラリオ東区 とあるレストラン~
すっかり日も傾き、道に溢れるほどいた観光客もまばらとなった闘技場近辺。その一角に佇むレストランにて、神ロキと神フレイヤは今朝と同じように向き合っていた。
「ったく、気に入った子にちょっかい出すんにあんな大掛かりにやるかぁ?」
今朝の話でこの色ぼけ女神がやらんとしていることは予想出来ていたとはいえ、いざ付き合わされる身としては恨み言の一つも二つも言いたくなるものだ。
「あらぁ?付き合って、ってお願いしたハズよ?それに被害は出なかったでしょ?」
今年の怪物祭〈モンスターフィリア〉はモンスターが街へ逃げ出すという大きなトラブルがあったものの、幸いにして死者ゼロ、負傷者若干名という、奇跡的とも言える小さな被害で事態は終息した。その背景にはガネーシャファミリアの迅速な対応とギルドが雇った警備員、偶々居合わせたロキファミリアの協力によるものと記録されていた。尚、そこにはポッコファミリアの名前は何故か(、、、)記載されてはいなかった。
「あぁ、あんなけのモンスターが町中で暴れたっちゅうんに、死人も怪我人もほぼゼロ。ウチのレフィーヤがちぃっとやられたぐらいや。」
「怪我を?」ハテ?
嫌味ったらしくのたまうロキに対して、フレイヤは、はて?ときょとんとした顔を見せる。〈千の妖精〉こと、レフィーヤ・ウィリディスの名はフレイヤも知るところである。闘技場のモンスターは強いモノでもレベル2相当。後衛タイプとはいえレベル3の冒険者を苦戦させる程のモンスターがいたとは思えなかった。
「せや、あの気色悪い蛇みたいな花みたいなデカブツ。ティオネ達は新種言うとったが、自分、あんなんにも色目使ったんかぁ?趣味悪すぎるで。」オオン?
ロキはフレイヤがしらばっくれようとしてると思ったのか、問い詰める様に語気を強めた。
「何を言ってるの?私が逃がした中にそんなモンスターはいなかったわ。」
悪びれることもなく、あっさりとモンスターを逃がしたと口にするフレイヤ。それでもあの植物タイプのモンスターは知らないという。モンスターを逃がしたことを罪とすら認識していないフレイヤがここで嘘を吐く必要もなく、ロキも虚を突かれたように言葉を失う。
「じゃあ、あれはなんや!?」
「さあ?知らないわ。」
ロキは長い付き合いの中でよく知っている。この色ぼけ女神は我が儘で傲慢で他人の都合を考えないはた迷惑な奴ではあるが、嘘を吐くことはない。はぐらかされることはあるが。だからフレイヤがはっきり知らないと言うならば本当に知らないのだろう。
となれば、この件は終わり、ロキはもう一つの要件に移る。
「どうやらホンマに別件ちゅうことかい。それじゃ、もう一つ。自分、ポッコファミリアについて何か知らんか?」
「・・・何かって?」
「はん、こっちは図星みたいやな。今日の一件でアイズと共闘したらしいんやが、分からんことが多すぎてな。」
ロキは長い付き合いの中でよく知っている。この色ぼけ女神は嘘を吐くことはないが、はぐらかそうとするときはとても分かりやすい。どうしても都合の悪いことには沈黙するが。だからフレイヤがはぐらかそうとしているときは何かを知っているときだ。
「ロキ、あの子達には手を出さない方がいいわよ?」
「何や、自分のお気に入りてあの子らのことやったん。まぁ自分と対立するつもりはないし、手ぇ出すな言うならそれは構へんけど・・・。」
「それもあるけれど、あの子達、強いわよ?多分ウチのファミリアを総動員しても勝てないわ。」
「はあっ!?んなアホな!?どういうこっちゃ!?」
「どうもこうも、そのままの意味よ。理由は知らないわ。」
「ホンマかいな・・・。」
ロキ、フレイヤ、どちらもオラリオ有数のファミリアであり、その自負もある。フレイヤファミリアが勝てないと言うのならロキファミリアも同じだ。レベル1の冒険者達がアイズと肩を並べて戦ったという報告を受けてまさかと思っていたがフレイヤがこの様子ならば誇張でもないのだろう。
「まさか、噂の超越者〈オーバーロード〉でもあるまいし・・・。神界からの差し金とでも言うんか?」
ロキの頭によぎるのは、自らも因縁のある神オーディンを一騎討ちで下したという異界の冒険者の噂。下界における神界の情報は新参の神から最近の事情が語られる程度にしか得ることは出来ないが、その中でも最近は専ら、『神ならぬ身にて神を超越せし者〈オーバーロード〉』と呼ばれた冒険者についての噂が後を絶たない。そして、神々が天界から降りてくることが出来るならば、神を超越した者ならば世界を渡ることが可能であることも道理と、知識としては知っている。
「は~・・・。まぁええわ。自分が惚れるゆうことは悪人ではないやろうし、そっちは後回しやな。」
さて、彼女達への推測は尽きないが、今重要なのは神フレイヤがその子達に好意を示しているという事実だ。フレイヤは色ぼけだが基本的には善神だ。魔や邪な存在に好意を向けることは有り得ない。その点において、ポッコファミリア自体は危険視すべき相手ではないとは思われる。勿論、数々の疑念は残したままであるが。
ロキはフレイヤから取れる情報は得て、まずはモンスターについての調査に動くことにした。
――――――――――――――――――
~ポッコファミリアホーム~
「じゃあ、会議を始めます・・・が、その前に。」チラ
ポッコは会議に参加している面々に視線を送る。大体皆が考えていたことは同じな様で、当人を除いた全員の視線が一点に集中する。
「何で部外者の方がウチのホームにいてこたつでみかん食べながら戦国Jリーグを読んどるんですかね?」
こたつの主であるこドラは会議のときにもこたつに入ったままだ。それはいつものことなのだが、それと向き合った形でこたつに足を伸ばしている金髪の少女が一人。
「誰のこと?」モグモグチラ
「アナタですよ、ア・ナ・タ。〈剣姫〉アイズ・ヴァレンシュタイン!」
他人事のように周りをキョロキョロ見てるアイズに名指しでツッコミを入れる。
「私?私のことは気にしないで。」コタツスキ
「そういう訳にはいかんでしょう・・・。」
どうしてこうなった。その経緯を説明しよう。
モンスター騒動が収まった後、街の混乱の収拾や物的な損害については神ガネーシャがファミリアのプライドに賭けて、ガネーシャファミリア総員で対応することになった。そのお陰でポッコ達は後片付けについてはお役御免となり、その後は一度解散して各々で普通に屋台を巡りお祭りを楽しんだ。
のだが、一度報告に戻ったアイズはポッコ達の強さの理由を知りたいと言い、ポッコファミリアのホームを訪ねることとなった。ロキとしても、偶然とはいえポッコファミリアと繋がりがあるアイズを通して情報は得ておきたく、これは主神公認での行動であったりもある。
しかし、ロキの目論見を知ってか知らずか、当のアイズは現在こたつの魔力の虜となり、2個目のミカンに手を伸ばしているところだった。
「で、貴女は結局何をしに来たんです?」
「私は、貴女達の強さの理由を知りたい。」
「それについては何度も言っているでしょう?私達はこの街の外で鍛えて来たんだって。」
「それは嘘。人間が神の恩恵〈ファルナ〉無しに強くなることは出来ない。」
「う~ん、どうしたものかなぁ・・・?」
実はハグレ王国としては異世界からの来訪者であることをいつまでも秘密にするつもりはない。此処は超常を司る神々がゴロゴロいる場所なのだから、いずれ勘づく者も出るだろうという程度の認識だ。
ハグレ王国がオラリオに来た本来の目的は、交易や技術交流の販路としての価値がどれだけのモノか調査し、それを行う下地として現在進めているのが、拠点や人脈、資金や信用を作ることである。いきなり借金からスタートしたのは予定外ではあったが。
そこへ来て、目の前の相手は有力ファミリアの幹部の一人。将来のビジネスパートナーとなり得るファミリアの交渉チャネルとしては申し分の無い相手だろう。だが、正直ここで身分を明かしてしまうのはリスクが大きい。神にも様々なタイプがいるのは過去の経験からも既知であり、ロキファミリアの事情をまだ把握出来ていない中では見切り発車と言える。時期尚早だ。交渉には自分達が信用される必要があるが、相手も信用出切る相手か見定めなくてはならない。
ローズマリーは少し思案した結果、此方の手札を残しつつ交渉のステップを踏む方向に舵を切る。
「分かりました、ではこうしましょう。私達の情報はおいそれと話す事は出来ませんが、それはお互いに信用が無いからです。なので、まずは小さな取引から信用を積み上げていきませんか?」
「具体的には?」
「私達はこれから方針を決める会議をします。これにアイズさんにも参加してもらって、得られた情報は持ち帰って頂いて構いません。代わりに私達のダンジョン探索に同行しては貰えないでしょうか?」
「貴女達のダンジョン探索に同行?其れだけでいいの?」
「ええ、実は色々と事情があって私達だけではダンジョンの中層から下に行くことが出来ないんです。第1級冒険者のアイズさんに同行して頂けるならばそれが出来るようになります。」
「・・・分かった。他のファミリアとの行動はロキの許可が必要だけど、遠征予定がないうちは大丈夫だと思う。他の仲間も付いてくるかもしれないけど大丈夫?」
「構いませんよ。その方が信用を得るという意味では効率的ですし。」
「交渉、成立だね。」スッ
「ええ、宜しくお願いします。」アクシュ
アイズが手を差し出し、ローズマリーがその手を両手で包み込むように握手を交わす。
「ええと、それじゃあ会議を始めますよ。」
ポッコは既に疲れた様子で会議の開始を宣言した。
―――――――――――――――――
「まずは、収支報告をお願いします。」
ポッコが司会進行を務め、いつも通り会計収支についてローズマリーから報告がされる。
「はい。期間収支は、ダンジョン探索での収入が200万ヴァリス、ギルドからのクエスト報酬が100万ヴァリス、ベルくんの薬販売の利益が10万ヴァリス、支出は生活費合計で20万ヴァリス。合計290万ヴァリスの収益となっています。」
「お疲れさまでした。では、今日一つ目の議題について、ベル君から説明をお願いします。」
「はい。僕からは、開店予定のお店の見積もりについて説明します。」
先日作成したお店提案について、ベル君が説明をしていく。
「お店・・・?」
「お金稼ぐのにダンジョン探索だけだと時間かかるからお店を作るじゃんか。」ヒソヒソ
お店と聞いて何のことやら解らないアイズにはこドラがフォローを入れる。
「開店資金が安い順から、こたつ喫茶が350万ヴァリス、美術館が500万ヴァリス、道具屋が600万ヴァリスです。」
「こたつ喫茶が一番安いの?テーブルとかの設備にお金かかりそうだけど。」
「こたつ喫茶・・・!」
「アイズ、こたつ気に入ったの?」ヒソヒソ
「ロキには重大な情報を伝えなくてはいけない。こたつは良いものだ。」ヒソヒソ
「じゃあ、アイズにもこドラが前に使っていたこたつを1台あげるよ。これでアイズもこたつ同盟の一員だね。」ヒソヒソ
「いいの?」ヒソヒソ
「いいよ。」ヒソヒソ
着々と加盟人数が増えていくこたつ同盟。アイズは目を輝かせてその提案を受けた。
「こたつ喫茶が安いというより、他施設が高いとも言えますね。美術館はどうしても内装が特注になってしまうのと、道具屋については調合機材に加えて開店に最低限必要な在庫確保が出来ないとお店を始めても棚が空になってしまいますから。人造人間についても販売が見込める高レベル冒険者さんからの許可を得ないと始められませんし。」
「成程ね。」
「じ、人造人間の販売・・・?」ナンテコトヲ
「ぬいぐるみのことだよ?」
「現在、手元にある現金は385万ヴァリスだから、こたつ喫茶がギリギリ始められるね。収益率は道具屋の方が高そうだし、ポッコちゃんとしては美術館も早めに始めたいところだろうけれど。どうしようか?」
「はい。」
「アイズさん?どうぞ。」
「こたつはいいものです。」キリッ
「はあ・・・、貴重なご意見ありがとうございます。」
この人も大概天然だなと思いつつ、ローズマリーはゲストにお礼を言う。一応、一人のユーザーの意見としては参考には出来るだろう。
「今は少しでも早く資金を稼ぐことを優先すべきでしょう。こたつ喫茶の開店に向けて動くべきだと思います。」
ポッコもこたつ喫茶の開店に賛成する。
「了解した。じゃあ、こたつ喫茶を開店する方向で決めよう。今手持ちの現金の多くを使うことになる。資金の残額に注意するようにしてください。」
「では、二つ目の議題です。資金稼ぎについてです。ローズマリーさんからお願いします。」
「はい。今回、こたつ喫茶の開店にも人員が必要なので、またパーティを二手に分けて行動します。ダンジョン探索についてはアイズさんの協力が前提になるけど、中層の探索が中心になると思う。そうなると、必然的に私とミアちん、ヅッチー、あと店長になるこドラはお店開店準備担当になるね。ダンジョン探索についてはルフレとヘルちんが中心になって子供達の面倒を見てあげてほしい。」
「了解だぴょん。」
「了解致しましたわ。」
二つ目の議題についてはほぼ確定事項なので、内容共有だけとなった。
「それでは、これにて会議を終了します。解散!」
「「「は~い。」」」
ポッコファミリア会議期間の収支
収入:3,100,000ヴァリス
支出:3,700,000ヴァリス
借金残り:399,650,000ヴァリス
3歩進んで2歩下がる
「ア、アイズたん・・・その格好は!?」
「こたつは良いものだ。」キリッ
「ウチのアイズたんがおかしくなってもうた!ポッコファミリアで一体何があったんや!?」
「彼女達は強い冒険者の人造人間を量産して売り出すらしい。」
「な、何やてーー!?」
予告通り、本作は今回でちょっとお休みしてこのすばの方に集中します。
とか言いつつ、新作も書きたくなってしまうという浮気症。
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どれにしようかな~。