ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか   作:ひまじんホーム

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 お久しぶりでございます。涼しくなって筆がのってきた今日この頃。勢いで書き出したものの今日中に書ききれなそうだな、でも今日投稿しなかったらまた間が開きそうだな、と思っての前後編。もしかしたら前中後編になるかも?
 というわけで、事実上の第二章の始まりです。


第17話 戦いの始まり―前編―

~ゴブニュ・ファミリア~

 

「4000万ヴァリス。」

 

「ほぁ~・・・。」

 

 モンスターフィリアから一夜明け、アイズ・ヴァレンシュタインは修理の為に預けていた愛剣デスペレートの引き取りと、修理中に借りていたレイピアの破損を報告する為に、鍛冶ファミリアであるゴブニュ・ファミリアを訪れていた。

 修理中に貸し出していたレイピアを破損してしまったアイズが弁償を申し出ると、返ってきたのが4000万ヴァリスという高額請求だった。

 壊したのは自分だし、その弁償を申し出たのも自分だが、思っていたより遥かに高額な請求にさしもの剣姫も顔を曇らせる。

 

「全く、本当にお前は鍛冶屋泣かせだな・・・む?剣姫よ、その剣は何だ?」

 

 ゴブニュは小言を挟みながら、アイズの腰に下げられた三本目の剣に目を向けた。

 

「これは借り物です。借りていたレイピアを壊してしまって、モンスターと戦うのに別の知り合いが貸してくれました。」

 

 モンスターフィリアの一件で仲良くなったポッコファミリアの自称国王?のデーリッチの厚意で、デルフィナレイピアは修理中の剣が戻るまで貸して貰えることになっていた。

 アイズ自身この剣を使用してその性能は実感している。鍛冶士としてひとかどのゴブニュが興味を持つのも頷けた。

 

「ちょっと見せてはもらえないか?」

 

「別に構いませんが・・・。」

 

 借り物を他人に見せるのは少々気が引けるが、本職の鍛冶屋ならば悪い扱いはしないだろうとデルフィナレイピアを手渡す。

 

「これは・・・一体・・・?」

 

「あの、何か・・・?」

 

 剣を鞘から抜いてまじまじと観察するゴブニュ。目を見開いてその刀身を見ていたが、やがて納得したように目を閉じ、ゆっくりと鞘に納めアイズに手渡した。

 

「借り物・・・と言ったな?こんな代物をおいそれと他人に貸すとは何者だ?まさかヘファイストスではあるまいな?」

 

「それは違う、けど・・・。」

 

 アイズは言い淀む。昨日、ポッコファミリアのことは口外しないようロキとフィンから言われている。現段階であまり事を大きくしたくないのがファミリアとしての方針である。

 

「いや、よそう。詮索は道義に反する。しかし、人の技術でこれ程のモノを鍛えるとは、な。」

 

 言いにくそうなアイズの様子を見てゴブニュも追及はするつもりはなく、口をついたのはただ剣の出来を賞賛する言葉だった。

 

「この剣、それほどに?」

 

「ワシも下界で神力〈アルカナム〉を使わず、技術のみで鍛冶の業を研鑽してきたが、これ程の剣が打てるのはワシとヘファイストスを除いては何人いるか・・・。」

 

「そう・・・ですか。」

 

 あれ?じゃあこの剣をポッコから譲って貰う交渉するのもアリじゃね?と一瞬考えたアイズであったが、流石にそれは不義理だと思い、その考えは消した。

 

「良いモノを見せてもらった。さて、少し熱くなって語り過ぎたようだな。剣について何かあればまた来るがよい。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

「4000万ヴァリスは分割でもいいぞ。」

 

「はい・・・。」

 

 思いがけず大きな借金を背負うことになったアイズは頭を抱える。まぁ、ダンジョンに籠るくらいしか策はないのだが。

 アイズは昨日ポッコファミリアとのダンジョン探索の約束を早速果たすことになりそうだ、と昨日も訪れた雑木林に足を向けた。

 

―――――――――――――――

 

~翌日ロキファミリアホーム 黄昏の舘~

 

「アイズぅ、今日何か予定ある??」

 

 ロキファミリアでは、食事は基本的にホームに備え付けられた食堂で摂ることになっている。ファミリアの中でも個人的な親交はそれぞれであり、大抵は特別気の合う者同士で食事を摂ることが多い。中でも高レベルの者同士は役割上、会議や遠征で一緒になることも多く、必然的に親交もある。

 そんな中で、アイズは食堂の片隅でロキファミリア名物凸凹ヒリュテ姉妹、期待の若手レフィーヤ・ウィリディスと共に四人で向かい合って(、、、、、、)朝食の席に着いていた。

 気安げにアイズに今日の予定を聞いたのはヒリュテ姉妹の凹の方である、ティオナだ。

 

「二、三日ダンジョンに、籠ろうと思ってる。」

 

「お一人でですか?」

 

「お金を、用意しなくてはいけなくて。知り合いと一緒に、潜る約束をしてる。」

 

 アイズは昨日ゴブニュファミリアからの帰りにポッコファミリアに寄り、今日からダンジョン探索に同行する約束をしていた。

 

「あぁ、だったら私も一緒に行くよ!作り直してもらった大双刃〈ウルガ〉のお金稼がなきゃだし。知り合いってこないだの子達でしょ?私も混ぜてよ!いいでしょ?」

 

「でしたら、私もご一緒させてくださいっ!」

 

 敬愛するアイズの予定を聞いて、あわよくばオフ日の行動を共にしようと声をかけるのはレフィーヤ。

 

「あれ?レフィーヤも何か壊したっけ?」

 

「いや、あの・・・、アイズさんのお手伝いがしたくって。」

 

「本音は?」

 

「あの人達と一緒にいるとアイズさんがおかしくなるからっ!」

 

「「レフィーヤぇ・・・。」」

 

「何言ってんのよ、レフィーヤ。あんただって初めてコタツに足突っ込んだ時には『あへ~』てだらしない顔しながらヨダレ垂らして寝てたじゃない。」

 

「ヨダレなんて、た、垂らしていません!・・・多分。」

 

 レフィーヤが憤慨する理由。

 先日のモンスターフィリアで、アイズが共闘したというポッコファミリアのホームに行ってからというものの、帰ってきたアイズの背中にはコタツなる物体が乗り、口から出たのは彼らのダンジョン探索に同行するという言葉。そして、今まさに朝食を摂るのに使っているのがアイズが背負っていたコタツなのである。

 あの美しくて強くて素敵で美しくて素敵なアイズの背中に、不格好なコタツなる物体が乗っているという現実。しかしながら本当に許せないのは、今その魔力の虜になりつつある自分自身でもあった。

「ていうか!なんでティオナさんもっ!ティオネさんもっ!この状況にあっさり順応してるんですかっ!?」

 

「え~?だってめっちゃ楽じゃん。アイズのコタツ。」

 

「そうよねぇ。私にはレフィーヤが何に憤慨してるのかが分からないわぁ?」

 

「むぅ~!?」バンバン

 

 何も言い返せないレフィーヤには頬を膨らませながらコタツのテーブルを叩いて遺憾の意を表すことしかできなかった。

 

「まぁ、レフィーヤも参加でいいね。じゃあさ、ティオネも行く?」

 

「私はやめとくわ。団長のお側を離れるなんて嫌だもの。」

 

 世界平和よりも団長フィンを優先する団長至上主義のティオネは参加を拒否する。が――、

 

「あっ!フィン!リヴェリア!今からダンジョン行くんだけど、一緒にどう?」

 

「ふむ・・・アイズと、てことは例の彼らとの探索か・・・。いいよ。付き合おう。たまには他のファミリアとの親交も必要だろう。リヴェリアもいいかい?」

 

「構わない。」

 

「私もそう思ってたところなんですだんちょ~(はあと)。」

 

 結局、アイズ、ヒリュテ姉妹、レフィーヤ、フィン、リヴェリアの6人が同行することになった。

 

「あ~、ところでアイズ?」

 

「何?リヴェリア?」

 

「ダンジョンに行くときにはそのコタツは置いていけよ?」

 

「え?」ナニイッテンノ?

 

「え?じゃない。いや、お前は本気でコタツを背負ってダンジョンに潜ろうとしてたのか?」

 

「コタツがあればキャンプ道具いらないし・・・。」

 

「リヴェラで泊まればいいだろう?」

 

「それに見た目より軽いから平気。」

 

「そういう問題では・・・。」

 

「コタツを着たままレベル上げするとコタツ神拳が会得できるらしい。」

 

「え?なにそれ?」

 

「私は、強く、なりたい。」

 

「アイズ・・・、本気なのか?」

 

 アイズが強さに執着し、特に最近はステイタスが上がらないことに悩んでいることは、リヴェリアやフィンも承知している。見た目はふざけているようにしか見えないが、アイズなりに現状を打開しようと足掻いているのかもしれない。

 

「・・・分かった。アンクルウェイトトレーニングの一種と思えば、効果もなきにしもあらずだろう。但し戦闘に差し支えることがあれば何と言おうと没収するからな。」

 

「分かってる。ありがとう、リヴェリア。」

 

 結局、アイズの熱意に押されて、リヴェリアはコタツ着用の許可を出してしまった。

 

 

――――――――――――――――

 

~ポッコファミリアホーム~

 

「今日はアイズさんと約束したダンジョン探索に行きますわよ。」

 

 こちらはポッコファミリアのホーム。普段は参謀のローズマリーが立つ位置に今日はラージュ家の凸凹姉妹の凸の方、ヘルラージュが立っている。ダンジョン中層以降での活動にはマナ不足の不安があるローズマリー、凹ラージュ、ヅッチーの3名と、開店予定のコタツ喫茶の店長になるこたつドラゴンの計4名は開店準備の為に街でお仕事の予定である。

 

「ヘルちん、皆を頼んだよ。」

 

「ヘル、気を付けてね。」

 

「も~、お姉ちゃんもマリーさんも心配性なんですから~。この秘密結社リーダーのヘルラージュにお任せあれ!」

 

「「ルフレさん、ヘル(さん)を頼みます。」」

 

「任されたみゃー。」

 

「何か私の信用低くない!?」

 お決まりのやり取りで役割を確認する。一応凸ラージュにも、秘密結社を率いて愛する姉を妖精の羽が生えた悪魔の手から救いだしたという実績もあるのだが、イマイチ頼りなく思えてしまうのはやはり知力値の低さの故だろうか。

 

「デーリッチ達も付いてるから安心するでちよ。ローズマリー、ミアちん。」

 

「デーリッチちゃん?ワタクシどちらかというとアナタの保護者ですのよ?」

 

「そうだね。ヘルちんを頼むよ、デーリッチ。」

 

「解せぬ。」

 

 まぁ、組織とはトップが引っ張ることでまとまる場合と、トップを支えることでまとまる場合と其々あるものだ。ハグレ王国の気性としては皆でトップを支える形の方が向いているのかもしれない。そして、ヘルラージュ自身も仲間の想いを力に変えることが出来るタイプの人間なのだ。平時はへっぽこヘタレラージュと呼ばれているが。

 

「で、今日はどうする?」ズズー

 

 柚葉が味噌汁を啜りながら話を戻す。

 

「アイズさんのお話では中層以降での稼ぎになると日帰りは難しいそうです。今日は18階層の中継地点で宿泊して、明日は様子を見ながら30階層まで行って折り返して18階層に宿泊。帰着は明後日の予定です。」

 

「えっ、泊まり掛けで準備は大丈夫なのか?私は何もしてないぞ?」

 

「ローズマリーさんが必要な物は鞄に入れておいてくれましたので。」

 

「さすマリー。抜かりないな。」

 

「アイズさんも仲間を連れてくるかも、と仰っておりました。基本的にはあちらの皆さんとお互いの親交を兼ねてのお金稼ぎですので、皆仲良くね?」

 

「「「はーい!」」」

 

 斯くして、ポッコファミリアとロキファミリアの第一回合同探索行と相成ったのである。

 

 

――――――――――――――――

 

~ダンジョン第8階層~

 

「正直、驚いた・・・。」

 

 そう溢すのはロキファミリアの団長、〈勇者(ブレイバー)〉こと、フィン・ディムナ。

 探索に同行するという名目で付いてきているが、フィンとリヴェリアの今回の役割は『監視』である。不可思議な力を持つ新勢力の実力と善性を見極め、結果如何では友好か警戒か敵対かを判断する立場にある。実際同道し、モンスターと戦闘になっても最低限にしか手を出さず、極力見に廻っていた。

 確かにまだ浅層。レベル1の冒険者でも対処出来るモンスターしか出てきていない。しかし、気配察知に長けたウサギの獣人?ルフレと、マオ、柚葉の前衛が先行し、支援としてのヘルラージュ、デーリッチ、ベルが後衛に控える。戦闘時の役割も明確になっており、連携には熟練冒険者のそれが見てとれる。個人の能力も高く、後衛のデーリッチですら近付いてきたウォーシャドウの攻撃を危なげ無く往なしている。何より、前衛は既にアイズやヒリュテ姉妹との連携もそつなくこなすようになってきている。

 レベル5の冒険者と肩を並べて戦える。それはつまり・・・

 

――推定レベル5以上か

 

 フィンは外見に惑わされず、油断なくその実力に評価を下す。

 

「疼くか?フィン?」

 

「いや、全く。」

 

 そして、その善性にも評価が下される。直感とはいえ、彼女達からは悪意を欠片も感じない。まぁ少々お金にはがめつい様ではあるが、冒険者としては当たり前の感情だろう。

 

「少なくとも、無意味に敵対する必要は無さそうだよ。」

 

 リヴェリアからの問いにそう結論付ける。それは当然、理由があれば(、、、、、、)敵対することもある、という意味でもあるが。

 

「分かった。しかし、その時(、、、)にアイズ達を説得するのは骨が折れるだろうな。」

 

「ふふ、その時は頼むよ。リヴェリア母さん。」

 

「お前までその呼び方をするな。シバくぞ。」

 

「あはは、ごめんごめん。」

 

 リヴェリアはドスの効いた口調でフィンを睨む。一方で、今まで見せたことない表情でモンスターと戦うアイズに視線を移し、その時が来ないことを祈るばかりであった。

 

――――――――――――――――

 

 

~ダンジョン第14階層~

 

「お~!また出たよ!?ドロップアイテム!」

 

 ティオナが嬉々としてヘルハウンドが落とした『ヘルハウンドの毛皮』を拾う。

 まだ中層の入口ながら彼女がテンションを上げているのは異常な程のアイテムドロップ率の高さに依るものだ。

 

「いや~!この分だと中層でもいい稼ぎになるんじゃないかな!?」

「うひょ~!大儲けでち~!」

 

 点々と落ちているドロップアイテムを挙って拾うのはティオナと体格のわりに大きなリュックを背負ったデーリッチ。闘技場で出会ったときから意気投合していた二人は、ゲームで競うように魔石とドロップアイテムを取り合っている。

 

「しかし、このドロップアイテムの出方は異常じゃないかしら?」

 

 能天気にアイテムを貪る妹を眺めながらティオネが当然の疑問を呈する。

 

「あ~、それは多分、ルフレさんとデーリッチちゃんのお陰ですわね。」

 

「は?」

 

「あの二人、幸運値が桁外れに高いんですのよ。お金稼ぎには持ってこいの人材ですわ。」

 

「運が良いって、程度があるでしょうに・・・。まぁ現にこれだけドロップが発生してるわけだけど。」

 

 そんなやり取りがあったり。

 

「レフィーヤとやら、見せてやろう!我が魔王技を!」

 

「へ、並行詠唱どころか体術と同時に魔法詠唱!?私も負けていられません!」

 

 期待の若手エルフが魔王相手にライバル意識を燃やしていたり。

 

 

 当初の目的のお金稼ぎも親交を深めるという名目も順調にこなしながら、一行は第18階層のリヴィラの街に到着したのであった。

 

 

―――中編へ続く―――

 




「そういえば、今日はこドラ師匠は一緒じゃないの?」

「師匠!?」

「コタツ神拳の極意を教わりたかったんだけど・・・。」

「・・・ねぇ、アイズちゃんはコタツ背負うことに疑問はないでちか?」

「えっ?」

「えっ?」


 アイズさんはずっとコタツを背負ったまま戦ってます。
 言わずもがなですが、ポッコファミリアが浅層でしか活動していない割にダンジョンでの稼ぎが妙に多いのは、この異常なドロップ率といくらでもアイテムが持てる四次元ポーチに依るものです。デーリッチが背負っているのも、ドロップ率上昇効果のある魔道具『王国旅行カバン』です。こいつら本気で稼ぎに来てます。
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