ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか 作:ひまじんホーム
~次元の塔 エントランス~
ここは次元の塔。一体どういう理屈なのかは一切不明だが、ハグレ王国から直通で繋がった謎の建造物である。一度中に入れば、入る毎に地形が変わったり、アイテムが自動生成されたりなど、罠やモンスター犇めく1,000回遊べるダンジョンが思い出される。
しかしこの次元の塔の恐ろしい所は、そんな話ではない。なんとこの塔の各階層は、異世界や宇宙、はたまた冥界や天界にまで繋がっている超異常地帯なのである。
誰が、何の目的で建てたのか、そして何故ハグレ王国の拠点に繋がっているのか、原理も原因も謎のままであるが、ハグレ王国ではもうそんなことを気にすることもなく、体のいいレベル上げスポット程度の認識となっている。ハグレ王国の懐の広さ、恐るべし。
そして、塔のエントランスで溜め息を吐きながら、自分のこれからを案じずにはいられない幼き女神が一人。
「だ~いじょうぶでちよ!ポッコちゃん!デーリッチ達にど~んと任せるでちよ!」
「そうだぜ!心配なんていらねぇよ!だってよ、ヅッチーなんだぜ?」
「まってよ~デーリッチちゃ~ん、ヅッチーちゃ~ん!」
「ほらほら、あなたたち!あまりはしゃぐと転んで怪我をしますわよ!」
「さ~てどんな冒険がみゃ~を待っているのか、た~のしみだぴょん!」
「ワシを楽しませてくれる相手はおるかのう?」
「ふむ、腹が減ったな。」
「あっ、こどらみかん持ってきたんだけど、みんな食べる?」
「「「食べる~!」」」
「おめ~らだから心配しちょるけんね!?」
あまりにあんまりなメンバーに普段は意識して使わない素の口調が出てしまう。
どうしてこうなった。なぜよりによってこのメンツが揃った。神ポッコはこめかみを押さえながら福ちゃんとのやり取りを思い出す。
~ハグレ王国 会議室~
「あの、異世界って?」
「文字通りよ?実は昨日、次元の塔の第10層が解放されたって、ヘルパーさんがローズマリーさんに伝えに来てくれたのよ。その先は異世界のオラリオという街のバベルの塔という場所に繋がっているらしいの。あなたは昨日お休みしていたけど、会議で皆には伝えてあるわ。」
昨日は世界樹のお祭りが重なり、ポッコは会議を欠席していた。お茶を啜りながらそんな重要な話なら無理にでも会議に顔を出しておくべきだったかと思いつつ、話を返す。
「オラリオって、最近天界で話題のあの?」
「あら、耳が早いわね。話が早くて助かるわ。そう、そこでは天界から様々な神が暇潰しに下界に降りてきていて、気に入った冒険者にファルナ〈恩恵〉を刻んでは自分の眷族に仕立て上げ、日々派閥争いをしているのよ。」
「では、私も福の神一派として派閥争いに参加すると?」
「そうだけど、ちょっと違うわね。福の神一派ではなくて、ポッコちゃんが自分の派閥を作るのよ。そうじゃないと試練にならないわ。」
「良いのですか?それでは福の神一派にはメリットがないように思えますが?」
てっきりオラリオで派閥の影響力を拡大するのが目的かと思ったポッコは首を傾げる。
「組織っていうのはね、大きければ良いってものではないのよ。あなたにもいずれ解るわ。」フフ
自分よりも常に2歩、3歩先を見据えるその上司の底知れなさにうすら寒さを感じる。これが亀の甲より年の功というものか。
「今、年がどうとか考えなかった?」
「滅相もございませぬ。」
考えてはいけないと思うと余計に考えてしまう。このお方は本当に心が読めるのではないかと疑ってしまう。
「そう?で、これからオラリオに行ってもらうんだけど、ローズマリーさんと話をしたら、ハグレ王国としてもオラリオには調査ということで人を出すことになったのよ。そのメンバーと一緒にオラリオに向かってちょうだい。」
ハグレ王国にとって次元の塔はトラブル解決に精鋭を集めて駆け付けることが多い場所だった。が、今回は特段慌てることもないので、取り合えず調査という名目で少し人数を出すだけに留めることになった。
「え?でもハグレ王国から人手を借りたら私の功績にならないんじゃ?」
「ファミリアとして名を上げればそれはポッコちゃんの功績になるから問題ないわ。それに、オラリオで自由に活動するには冒険者になるのが一番なんだけど、冒険者は神が主宰するファミリアに所属する必要があるのよ。だから、ハグレ王国のみんなにはポッコちゃんのファミリアに所属してもらって活動してもらうことになるわ。勿論、現地で有望な人材がいれば、新しく眷族に迎えることもできるわよ。」
いきなり異世界に放り出されることになり、それなりに不安もあったが、いつものメンバーが一緒なら幾分安心というもの。
「なるほど。分かりました。それで、ハグレ王国からは誰が参加するのです?」
「・・・まぁ、ハグレ王国の皆って、新しいもの好きでしょう?で、行きたい人募ったら思いの外希望者が多くなっちゃって、くじ引きにしたのよ。」
「はあ。」
福の神様にしては珍しく歯切れが悪い話し方をする。
「え~と、選抜メンバーとは次元の塔で集合になってるから、行ったら分かるわ。ちょっとだけ大変かもしれないけど、頑張ってね!」
どうにも不安が残るやりとりだが、その後、一旦準備を整え、言われた通り次元の塔に向かうことにした。
そして、冒頭に戻る。
~次元の塔 エントランス~
そこに集まったメンバーを一望して、ポッコの心にはもう不安しかなかった。
デーリッチ、ヅッチー、ベル、ヘルラージュ、ルフレ、マオ、柚葉、こどら。お子様と自由人しかいないメンツを前に一体何をど~んと任せられるというのか。
「ちょっとちょっと、ポッコちゃん!ワタクシ!秘密結社リーダー!保護者枠ですのよ!?」
「知力2は黙っちょれ!」
「ひどっ!?」
「まぁ、この魔王マオ様が子供たちの面倒を見てやればよかろう?」
「生まれてから1年しか経っちょらんお子様魔王が何をぬかしやがるですか!?」
「も~皆こどらみたいに大人になろ?ね?」
「おめ~が一番不安なんですよ!?コタツから出てからモノを言いやがれです!」
「こどら、みかんもう1個。」
「は~い。」
「お前はブレないな柚葉!?」
「さ~冒険の始まりだぴょん!みゃ~がいっちばんのりだぴょ~ん!」ダッ
「あ!ずるいでち~!」ダダッ
「ヅッチーも負けねえぞ!」ダダダッ
「あっ、ダメだよ~!皆一緒に行動しないと怒られちゃうよ!?」
「ねぇ・・・きみたち?本来の目的を忘れてはいないかい?」
「!?」ピタッ
この大騒ぎのなか、不思議と全員が聞き取った、静かに発せられたその言葉に時が止まる。
「ちょっと心配になって様子を見に来てみれば、出発前からこの有り様とは・・・。」
ハグレ王国で一番怒らせてはいけない人物が、怒りのオーラを纏いながらそこに立っていた。
「ロ、ローズマリー・・・さん?」
「決めた。私も同行することにするよ。くじ引きの結果は仕方ないとはいえ、きみたちを自由に行動させたらろくなことにならなそうだ。」
「え゛っ!?」
明らかにツッコミ役が不足しているこのメンツをポッコ一人でまとめるのは気の毒だと判断したローズマリー。ともう一人。
「やっぱり私も行くわ。ローズマリーだけじゃ面倒見きれないでしょう?」
「お姉ちゃんまで!?」
先日のグルメフェスでは妹の確かな成長に嬉しさを感じていたミアラージュ。この発展途上の妹をまだまだ放ってはおけない親心と、そばでその成長を見守ってやりたい姉としての我が儘。この際、自分の我が儘を通させてもらうことにした。
「どうしたの?何か問題でもあるかな?ん?」
「「「め、滅相もございませぬぅ!」」」
斯くして、一行はようやく旅立つのであった。
水着イベント2章出だしのカオスっぷりが好きすぎてこんなメンバーに。
ポッコちゃんと保護者達の胃は大丈夫なのだろうか。