ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか 作:ひまじんホーム
当方、画を描く能力がなく、お絵描きコンテストには参加出来ませんが、このSSで少しでも企画の盛り上げの役に立てたらな~なんて考えてます。
~迷宮都市オラリオ バベルの塔~
「ずばっ!」
「ずばばっ!」
「ずばばばばっ!」
「そびえ立つ塔!」
「拡がる街並み!」
「やってきました!」
「「「迷宮都市!オラリオ!」」」
「なんでそんなに息ピッタリなの!?」
やけにハイテンションな王様二人と宇宙ニンジャウサギが謎のポーズを決めていると今回のメンバーで唯一と言っていい常識人枠ベルがツッコミを入れる。
「ここがオラリオですか。ここから一望しただけでもメチャクチャ広い都市ですね。帝都よりも更に広いんじゃあないですか。」
ポッコは近くの窓から顔を出す。次元の塔からの転送出口は塔の中層辺りにあったらしく(実はとある神のプライベートルームなのだがここでは置いておく)、ここからは遠く街を一望できる。なるほど、街の端が見えない程に巨大な街並みが拡がるのが分かる。
「そうだね。こんな街で迷子にでもなったら大変だ。子供たちがはぐれないようによく見ておかないと。」
「ねぇ、ローズマリー。」
「ん?なんだいミアちん?」
「もう、いないみたいよ?」
「は?えぇ!?」
いきなりハグレ者4名。ローズマリーの胃に穴が空く未来もそんなに遠くなさそうだ。
――――――――――――
~バベルの塔 最上階~
問:どうして塔を登るのですか?
答:そこに塔があるからさ
かつて偉大なる探検家ジャッジ・マーロウさんはそう答えたそうだ。実にシンプルでありながらどこか真理に通じるものを感じさせる言葉である。
その言葉を知らずとも、日頃から修験者が修行に籠るような道なき野山を、まるで自宅の庭のように駆け回るわんぱくなお子様達は、自然とその真理に辿り着いていたらしい。
突入してきた異世界への出口が塔だと解り、ふと横を見やれば階段が。好奇心と行動力の権化たちにはそこで立ち止まるという選択肢は無かった。
「ここが最上階だぴょんねー!」
「ひゅー!すっっげーたかーい!」
「ちょっと!マリーさん達とはぐれちゃってるよ!?」
「って言いながらベル君も付いてきてるじゃないでちか~。」
「ボク、列になって移動してたハズなんだけど!?」
螺旋状に続く階段をただひたすらに登り続けて辿り着いた最上階である50階。先程よりも少しだけ空に近付いたその場所から見える景色には視界を遮るモノは何もなく、このオラリオの街を見下ろし俯瞰していると、まるで自分が神にでもなったかのようにすら思える。
「ヅッチー!デーリッチも外見たいでちー!」
「いいぜー!よっと!」
「ほらほら、ベル君も細かいこと気にしてないで一緒に外の景色を見ようでち。」
「もぅ・・・。」
陽を取り込むためだろうか、少し高い位置に空けられた窓の縁にぶら下がって外を見ていたヅッチーがデーリッチと場所を変わり、ベルも並んで顔を覗かせる。
「おぉ!空と街と草原がキレイに別れてるでちー!」
「凄いキレイ・・・。」
デーリッチとベルは窓の縁に飛び付いて二人並んで外の景色を見る。この高さからは建物一つ一つの境が不明確になり街として一つの黄色い固まりに見える。人が作りしその街並みが、遥かなる空や母なる大地と視界を分け合う程に発展し、それは人という種族の成長を暗示しているかのようで、自分達の王国もいずれはより賑やかにしていきたいと思わせられた。
ベル君も常識人とはいえ、好奇心旺盛なお子様。遥か彼方を見渡すその風景に心を奪われる。
しかし、あまりのハイテンションで彼女達は油断していた。というか、ここは他人の住居であり、当然そこに住まう者がいて、勝手にあがりこむことは迷惑行為であるという、一般的な社会通念がすっぽり抜け落ちていた。
「お前達、何の用だ。」
麗しの女神との憩いのひとときを邪魔され、無表情ながら不機嫌そうに声をかけてきたのは、身長にして2メートルは越える、猪人〈ボアズ〉という獣人族に属する大男。ただそこに存在するだけで圧倒的な威圧感を放つその男は、彼の二つ名を知らずともこう呼ぶだろう。曰く、『猛者〈おうじゃ〉』と。
「おじちゃんはここに住んでるんでちか?」
そんな威圧感もどこ吹く風と言わんばかりに放たれた、どこまでも純粋に無邪気な子供らしい言葉の暴力。
「お、おじ・・・なんだと!?」
(俺はまだ32だ。おじちゃんと呼ばれるような年では・・・、いや呼ばれるかもしれんが。いきなり見も知らずの童女におじちゃん呼ばわりされるいわれはない。訂正させなければなるまい。)
「オッタルだ。俺のことはそう呼べ。」
普段人が自分の名を呼ぶときには、愛しき女神を除いて、尊敬や畏怖、或いは嫉妬や敵意の念が込められている。オラリオにおいて自分と並び立つ者が存在しない絶対強者の自分がおじちゃん呼ばわりされるなど、認められない。断じて否である。
「じゃあオッタルおじちゃんでちねー!」
「縮めてオッちゃんでいいかな?」
「オッタルでいい。」
「オッちんでもいいんじゃないでちかね?」
「オッちんは、うっかりちんを重ねると危ないからやめよう、な?」
「オッタルだと言っているだろうがぁ!」ゴオッ
「「「ひゃ!?」」」
普段は沈着冷静なオッタルがあまりに自由な子供達に苛立ちを隠せず、声を荒げ、殺気を顕にしてしまった。この殺気を浴びた者は例外なくその身を縮こまらせ、絶対的強者へひれ伏すもの。うっかり子供に向けて放ってしまい大人げないことをしたと数秒前の自分の未熟さを反省する。
しかしこの子供達はあるはずのない例外(、、)であった。
「お~なかなかの殺気だぴょん!わくわくするぴょんねぇ!」
「オッちゃん結構つえ~んだなぁ!」
「ほら、怒らせちゃったよ!謝らないと!」
ひれ伏すどころが殺気を受けてなお楽しそうな子供達。殺気を全く感じ取れない程に鈍いのか、それとも・・・。
(まさか、この童たち只者ではない・・・?)
小人族〈パルゥム〉という訳ではない。目の前にいるのは正真正銘只のヒューマンと妖精の子供と獣人である。
オッタルが思案げにしていると、不意に脇の扉が開かれた。
「オッタル、何を騒いでいるのかしら?その子供達は・・・はぅっ!?」
扉を開けて姿を現すなり素頓狂な声をあげたのは、ここオラリオでロキファミリアと並ぶ最大派閥、フレイヤファミリアの主神。人も神も魔物ですら魅了する美貌を持つ美の女神フレイヤである。
(なんて澄みきった美しい魂の色・・・。紺碧、金糸雀、撫子、そして勿忘草、四者四様の輝きを放っている。性別が女なのが惜しいけど、男の子の方は手元に置いておきたいわね。)
「フレイヤ様、申し訳ございません。どこぞの童が紛れ込んだようで。直ぐに排除致します。」
「いえ、その必要はないわ。」
オッタルを制し、神フレイヤは子供たちに語りかける。
「ねぇ、あなた達、私の眷族になりなさい。」
それは提案ではない。遥か高みから下された命令である。神力〈アルカナム〉を使わずとも下界の者ならは美の女神の魅力〈チャーム〉に男は勿論、女でも抗うことは敵わない。
例外(、、)を除いて。
「何言ってんだ?このオバサン。」
「オ、オバ、オバ・・・?」ピキ
――時が止まった
それは美の女神に対する最上級の侮辱の言葉。
神は下界の子供たちの嘘を見抜く力を持つ。しかしそのせいで、なまじ純粋な子供たちからの、一編の曇りなき心からの言葉の暴力が突き刺さる。
そう、この子供は美の女神を卑下するわけでも、チャームに抗おうと抵抗するわけでもなく、ただただ純粋に美の女神に対して〈オバさん〉という感想を抱いていたのである。
「ヅッチーちゃん!?初対面の人にオバサンなんて言ったら失礼だよ!?」
「じゃあオバちゃんでちかね?」
「みゃーは敬意を表してオバ様でいいと思うみゃー。」
そして容赦のない追撃。傷口に塩を塗ってグリグリ塗り込む、そのいとも容易く行われたあまりにえげつない行為に、猛者オッタルにして対応を鈍らせた。
「おば、おばば、OBA・・・?BBA・・・?」フラッ
「フ、フレイヤ様っ!?」
精神の許容範囲を越えたフレイヤが気を失う。オッタルはそれを支え、ベッドに寝かせる為に部屋に戻る。
事態が混沌とする中、その元凶達にもようやく迎えが来る。
「あ~!こんなところにいた!まったくもう、勝手な行動しないでくれ。全員、今日のおやつは抜きだからね!」
「「「え~!?」」」
「文句は一切聞かないからね。わかったら直ぐに戻るよ!デーリッチ、さっきのところに転送用の魔法陣があっただろう。座標を確認もしたいから、あそこまでキーオブパンドラで転送してくれ!」
「わかったでち~。え~んプリンが~。」グスッ
デーリッチが半べそでキーオブパンドラに魔力を込めていると、フレイヤを寝かせたオッタルが扉から出て来た。
「おい、貴様らふざけおってもう許さんz・・・。」
「ゲートオープン!」シュン
「なっ、消えただと・・・!?」
彼らは一柱の女神にとてつもないダメージを残し、突然消え去った。
これが後にオラリオ史上最大の派閥戦のきっかけになるとは誰もが予想だにしていなかった。
BBAといえば、EX.BBA強かったなぁ。レベルカンストしててもナメプしてると沈められたり。
今作のハグレ王国はBBA様含めた超強敵を全て撃破してますので滅茶苦茶強いです。現段階の最強さんと各自がタイマン出来るレベルを想定しています。
ですが、バトルメインではないのでその辺はあまり期待しないで頂けると有り難いです。