ダンジョンにハグレ王国がいるのは間違っているだろうか   作:ひまじんホーム

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 だんまちタグの方から来た方には?な話になるのではないかと少々不安・・・。
 今話を読んで意味が分からんという方は2018年フリーゲーム大賞に選ばれたざくざくアクターズをプレイしてみるしかないのではないでしょうか。(宣伝)
 あと、細かい設定は捏造してる部分も多いのであまり深く考えないように。


第3話 女神の陰謀

~バベルの塔 エントランス~

 

 無事にはぐれたデーリッチらを回収したポッコ一行。転位魔法陣のあったバベル地上部の中層から階段を降り、冒険者ギルドがある一階エントランスまでやってきていた。

 

「え~っと、福の神様からは塔の入り口に案内役の神が待っているから落ち合えってことでしたが・・・む?」

 

 ポッコはギルドに集まる屈強な冒険者達の腰程度の高さしかないその身長で、目一杯に背伸びしながら辺りをキョロキョロと見回す。

 すると、白い和装に身を包んだ壮観な顔立ちの男性が此方に近付いてくるのに気付いた。

 

「お~、いたいた!久しいなポッコよ。」

 

「あれ?タケミカヅチ先輩じゃないですか?お久し振りです。」

 

 ポッコに親しげに話かけてきたのは角髪頭の男で和国で信仰される神の一柱、タケミカヅチであった。和国の神々において最大派閥を誇る福の神一派において、かつては中納言位を賜った程の中々優秀な神である。先日福の神一派から独立し、その際に中納言位をポッコに譲っている。その後、ここオラリオにおいて念願のファミリア運営を始めた。脱サラしてコンビニオーナーを始めたようなものである。

 独立したとはいえ、福の神様との関係は概ね良好で何かあればお互いに協力関係をとっている。

 

「おいおい、先輩はやめてくれよ。今はお前の方が役職は上なんだ。恐縮してしまう。あぁ、でも話し方は昔の通りにさせてもらおう。」

 

「そうですか?私としては先輩には違いないのですが。では・・・、タケミカヅチ様、が案内役ということなのですか?」

 

 急に呼び方を変えるのは思いの外難しいなと思いながら、ポッコはタケミカヅチとこの場で会ったことの意味を確認する。

 

「まぁそういうわけだが、別に大した協力が出来るわけじゃない。俺が福の神様から頼まれたのは寝床の確保だけだ。」

 

「寝床?」

 

「いわゆる拠点〈ホーム〉というやつだな。まぁ此方へ来ていきなりコネ無し宿無しではファミリアの運営もクソもないだろうということだ。」

 

「それはとても助かりますね。感謝致します。」

 

「なに、私もこちらに来てからしばらくは苦労したし、古巣のコネで助けられたものだ。かわいい後輩がどこぞの神のようにバイトして日銭を稼ぎながら宿無し暮らしをする姿は見たくないしな。とはいえ、お互いに同じ派閥出身とはいえ、ここからは覇を競う好敵手〈ライバル〉でもある。それは心しておくがいい。」

 

「・・・はい。」

 

 大恩ある先輩神も自分と同じく大望を抱いてオラリオに降り立った身である。ファミリアとは時には同じ目的の為に協力し、時には同じ目的の為に対立もする。仲間とは全く異なる距離感の存在だ。故に、塩を贈るのはこれまで、というタケミカヅチの忠言に改めてポッコは気を引き締める。

 

「さて、こんな所で立ち話なぞしていたら日が暮れてしまう。他の者の紹介も拠点に向かいながらにしようか。」

 

「はい。」

 

 そんなわけでポッコはタケミカヅチが用意した拠点への道すがら、ローズマリー以下、ハグレ王国のメンバーを紹介していった。

 コタツを背負って移動してる奴とか、フラフラキョロキョロと寄り道が絶えないお子様達を紹介され、タケミカヅチが何とも気の毒な者を見る目をしていたのは言うまでもないだろう。

 

――――――――――――――――――――

 

~オラリオの街外れ 雑木林~

 

 バベルがあるオラリオ中心部から少し外れた、この街では珍しい雑木林の中で一番大きな木。そこに彼女たちの新しい拠点〈ホーム〉は建てられていた。

 

「お、お~。天界随一の朴念仁と名高いタケミカヅチ様とは思えない素晴らしいセンスじゃないですか。」キラキラ

 

「そーかそーか。ちょっと引っ掛かる言い方だが、芸術を司るポッコ様に誉められるとは光栄だな。それならば問題はないな?・・・では、費用の話をしようか。」

 

「は?費用?」

 

「言っただろう。私が福の神様から頼まれたのは寝床の確保だけだ。助けてやりたいのも山々だが、あいにくうちのファミリアも私自身がバイトして運営費をやりくりしている零細ファミリアだ。そんな資金も金を借りる信用もない。この費用は福の神様が保証人となりポッコファミリア名義での借入金となっている。」

 

 お、恐ろしい・・・。一体どんな手を使ったのかは知らないが、本人不在で半強制的に借金が増えているとは・・・!

 

「で、では、その金額は・・・?」

 

「ざっと4億ヴァリスだ。」

 

「よ、よよ、よんおく!?」

 

「オラリオでの取り引きに使われる通貨は〈ヴァリス〉という。貨幣単位はそちらのゴールドの1/10程度というところだな。」

 

「1/10・・・って、それでも4千万ゴールド分ですか・・・。」 ハグレ王国の国庫の蓄えはいくらだっただろうか。ポッコ自身が運営する王国美術館の収益何年分だろうか。

 王国会議での収支を基にあまり理数系に明るくない頭での計算結果が間違いであることを願って、何度も何度も計算をし直す。が、その答えは隣で会話を聞いていたローズマリーによって正しいことが裏付けられてしまう。

 

「よ、4千万ゴールドって・・・、ハグレ王国の年間予算と同じじゃないですか!?ポッコちゃんが運営する美術館単体なら80年かかる計算ですよ!?何で勝手にそんなことに!?説明を求めます!」ズズィッ

 

 ハグレ王国の出納を一手に受け持つローズマリーは誰よりもお金の扱いに厳しい。土地付き一軒家という高額な買い物が勝手に行われたことに憤り、相手が神であることを承知で詰め寄る。

 しかし、悪魔族すらたじろぐローズマリーの詰問に対し、神タケミカヅチは冷静に答える。

 

「まぁ、落ち着いて聞くがよい。この一件、恐るべしは福の神様よ。確かに物件を選んだのは私だが、金を用立てたのは福の神様だ。」

 

「福ちゃんが?」

 

「言っただろう。この借金の名義人はポッコファミリアであるが、福の神様が保証人であると。私はこの件において福の神様より4億ヴァリスという予算を用意され、それを使いきるよう言われたまでのこと。」

 

「な、何でそんなこと・・・?」

 

 まさか4億ヴァリスの借金持ちスタートなんて、こないだの秘密結社事件みたいじゃ・・・いや、まさか。

 ポッコは思い出す。数日前、福の神様がこぼしていた愚痴を。

 

「もしかして福の神様、こないだの秘密結社事件で真っ先に誘われなかったのを僻んで・・・。」

 

「「は?」」

 

「確かに呟いてました。『お金が必要なら真っ先に私の所に来なさいよ。』とか、『借金返し終わった後に合流したんじゃ私の出番ないじゃない。』とか、『福の神VS貧乏神の燃える展開がでんでこちゃんに全部持ってかれた』とか。」

 

 女神とは嫉妬深い存在である。秘密結社がお金に困っているという噂を聞いて自分の出番は今か今かと待っていたのに、こちらから依頼を出さないと誘われなかった上に、その時にはもう既に借金は返済済みという事態。

 プライドを傷つけられた福の神様は大層ご立腹であるようだ。

 

「いやいやいや、まさか!?」

 

「ローズマリー、今回のメンバーを見てみてください。秘密結社幹部が勢揃いじゃないですか。」

 

「はっ!?いやでも!?」

 

「この一件、仕組まれていたのですよ。おそらくこの面子が揃ったのも、見かねたローズマリーとミアラージュも参加するように誘導されていたのでしょう。」

 

「なるほど・・・、確かにあの時、心配だから次元の塔まで様子を見に行ってほしいと福ちゃんに頼まれたわね・・・。」

 

 ミアラージュもポッコの仮説を裏付ける証人として話に参加してきた。

 

「でも、メンバーはクジで決まったのに!?」

 

「それはもう、運を司る福の神様ですからね。クジの結果を操作するなんて朝飯前ですよ。」

 

「な、なんということだ・・・。福ちゃんがそんなに怒っていたなんて。」

 

 ローズマリーが両手膝をついて打ちひしがれる。

 

「そして借金の名義人自体はポッコファミリア、つまり今ここにいる私達は逃げることは許されません・・・。」

 

 昇進試験がまるで圧迫採用面接のように超ハードモードになり、絶望的な状況にポッコが肩を落とす。タケミカヅチさえも声をかけれず場に沈黙が走る。

 

 しかし、この程度のことで物事を投げ出すほどハグレ王国がこれまで進んできた道のりはぬるくはなかった。

 

「ポッコちゃん。そんなに落ち込む必要なんかないでちよ?」

 

 話に入って来たのは我らが国王デーリッチ。

 

「デーリッチ・・・。ことの重大さを理解してないんですか?4千万ゴールドですよ!?私が美術館を80年続けてやっと稼げる金額なんですよ!?」

 

「でーっちっち!ポッコちゃんは今一人なんでちか?」

 

「え?」

 

「ポッコちゃんが一人で美術館をやっているならこれは無茶な話なのかもしれん。でもここには仲間がいるでち!」ドン!

 

 デーリッチはその小さな胸をドン!と力強く叩いてポッコに笑顔を向ける。

 

「そうですわポッコちゃん!秘密結社だって最初はたった3人から始めたけど、皆で頑張ったからプリシラさんを見返すことが出来たのですわ!」フキフキ

 

 ヘルラージュがポッコの目に浮かぶ涙を拭う。

 

「妖精王国だってなーんもないところから始めたんだぜ!家があるだけマシってもんだ!」フルイタテ!

 ヅッチーがポッコの心を奮い起たせる。

 

「まったく、泣き虫さんめ。ほれワシが手を貸そう。」テヲトリーノ

 

 マオがポッコの手を取る。

 

「ポッコちゃんなら大丈夫。ボクたちも手伝うからさ。一緒に頑張ろう?」ホラタッテ!

 

 ベルがポッコを立ち上がらせる。

 

「冒険ならミャーに任せるミャ。どんな冒険もミャーと一緒なら楽しいものになるぴょん!」タノシミダピョン!

 

 ルフレがポッコに冒険者の心を説く。

 

「こどら頑張るよ!お店もやるし、借金なんて皆で頑張れば直ぐに返せるよ!」グッ!

 

 こどらがポッコに勇気を与え、そして・・・

 

「こどら、みかんジュースあるか?」

「は~い!」

 

「お前はブレないな!?柚葉!?」ガクッ

 

 そして、柚葉がポッコをズッコケさせる。

 

「何かいい雰囲気だったのに、締まらないわねぇ・・・。」

 

「まぁ・・・でも。こんな状況が私達らしいというか。なんというか・・・。」

 

 ミアラージュとローズマリーがどこか笑みを含んだあきれ顔で呟く。

 

「そんなわけで・・・、ポッコちゃんは一人じゃないんでち!このくらいのハードル楽々越えて皆で福ちゃんを見返してやるんでち!」

 

「デーリッチ・・・。わかったけんね。ポッコは一人じゃないとね・・・。」

 

 絶望的な借金、問題児ばかりのメンバー、状況は最悪だ。でも、皆の力を合わせればきっと乗り越えられる!

 ポッコは力強く立ち上がり胸を張り、誓いの右手を天に掲げ、高らかに宣言する。

 

「これより、サルバトール・ジャッコメディ・ポッコの神名において、今ここにポッコファミリアの設立を宣言する!皆で福の神様を見返してやりましょう!」

 

「「「おお~!!」」」

 

 斯くしてポッコファミリアはここオラリオの地に覇を唱えることとなった。

 彼女達の戦いはここから始まる。

 




 これでやっとプロローグが終わる感じ。水着イベント3章みたいな感じで、ダンジョンに潜るだけではなくて色んな依頼をこなしながらお金を稼いでいく物語になります。
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