機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ vivere militare est   作:kia

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第15話 古き記憶

 

 

 

 

 

 恰幅の良い一人の男が機嫌が良さそうにアイスを口に運んでいた。

 

 部屋も広く豪華。

 

 座る椅子もまた圏外圏では珍しい高級品。

 

 一目で裕福な生活をしていると分かる。

 

 男の名はノブリス・ゴルドン。

 

 圏外圏で知らぬ者はいない武器商人であり大富豪である。

 

 普段からいかに利益を得るかと策謀を巡らすこの男だが、最近酷く上機嫌であった。

 

 「革命の乙女クーデリアとそれを守る少年騎士団、ドルトで散る。筋書きとしてはこんな所か」

 

 最近は彼の思惑から外れる事も多く、イラついていたがようやく望む展開が訪れる。

 

 「それにしてもコーラルめ。奴は何を考えている」

 

 火星での策謀も彼の非協力的な態度で頓挫しかけたといっても良い。

 

 かといってノブリスに対して敵対的な行動を取る気配もなく、火星支部との取り引きは今まで通り継続している。

 

 何を考えているのか分からない。

 

 思えば初めて会った時から何を考えているのか分からない男だったが。

 

 「まあいい。事が成ればコーラルの出方も分かるだろうさ」

 

 ノブリスは背もたれに身を預け、上機嫌でアイスを口に運ぶ。

  

 これから起こる事に思いを馳せて、その口元には歪んだ笑みが形作られていた。

 

 

 

 

 「ハァ」

 

 クーデリアは目元に隈を作りながら、猫背でトボトボとイサリビ艦内を歩いていた。

 

 普段から身支度にも気を使う彼女にしてはだらしがない。

 

 しかし今の彼女にはそんな事を気にする余裕もなく、ため息だけが次々と出てくる始末。

 

 実は昨日は碌に眠る事も出来ず、一晩中考え事をしていた。

 

 だが結局どうすればよいのか分からず、今も延々と悩み続けているという訳だ。

 

 足取り重くフミタンの部屋の前にたどり着いたクーデリアは呼び出しボタンを押した。

 

 鉄華団のメンバーとも打ち解け、アトラやメリビットといった女性も居るとはいえ、結局、彼女が悩みを相談できる相手などハルかフミタンしかいない。

 

 部屋へと招き入れられたフミタンは未だ眠気の取れない顔で入ってきたクーデリアにギョッとしてしまう。

 

 「お嬢様!? どうなされたのですか?」

 

 「フミタン、私、ハルに何をしたらいいのかしら」

 

 「は?」

 

 昨夜悩んでいる様子だったハルから話を聞いた。

 

 それはクーデリアも知らなかった頃の昔の話だったらしく、それを聞いて何をいえば良いのか、どう接するべきなのかずっと悩んでいたらしい。

 

 「どのような話だったのか分からない以上、私には答えようがありませんが」

 

 「それは……」

 

 クーデリアは昨夜聞いたばかりの話を再び思い起こしていた。

 

 

 

 

 

 ハル・ハウリングにとって最も古い記憶。

 

 それは何処かの手術台の上で、医者らしき男達が見下ろしている光景だった。

 

 何を話しているのかは分からない。

 

 ただ『実験』だの『適合率』だのと話しているのだけは聞き取れた。

 

 朦朧とする意識。

 

 耳慣れない機械音。

 

 それだけが記憶に残る中で、次に目を覚ました時にはサイラスの傭兵団に拾われていた。

 

 それ以前の記憶は幸か不幸かあまり鮮明には覚えていない。

 

 はっきりしていたのはハルはヒューマンデブリとして海賊に売られ阿頼耶識の施術を受け、襲撃してきたサイラスの傭兵団に拾われたという事だけ。

 

 傭兵団に身を置いて初めに行われたのは、管理№という番号の割り振りだった。

 

 「いいか、この世界は弱い奴から死んでいく。俺はお前達の素性に興味はない。何を考えているのかも知らん。重要なのはお前達が戦いに勝つ為の戦力であり、駒だという事だ」

 

 サイラスと名乗った男が初めに告げた言葉がそれだった。

 

 その眼には何の感情も籠っていない。 

 

 だが本当に興味がないという事は伝わってきた。

 

 「死にたくないなら戦うしかない。お前達も死にたくないなら必死になれ。必死で戦え、そして殺せ。それが生きるって事だ」

 

 それが今の世界のルールであると笑みを浮かべて宣告する。

 

 その残酷なまでの笑顔を見た当時のハルは思ったものだ。

 

 この男は人間ではない。

 

 悪魔なのだと。

 

 それでも捨て駒扱いされる事も無く、他のヒューマンデブリよりはマシな扱いだった。

 

 少なくともハル達は理不尽な理由の暴行を受ける事は無かったのだから。

 

 「今から番号を振り分ける。それがお前らの新しい名前だ」

 

 ハルに与えられた№は11番。

 

 死ねば番号を与えられなかった欠番と呼ばれる予備のヒューマンデブリが番号を引き継ぐ事になる。

 

 嘘か本当か、ヒューマンデブリの世話役の話によればこれらの番号は適当に付けられたもので、管理以外の意味はなかったらしい。

 

 だが実際には何人かサイラスのお気に入りが居て、優先的に訓練を受けられたり、性能の高い機体を割り当てられていた。

 

 お気に入りというのは戦闘におけるセンスのある者、即ち戦場でサイラスの思い通りに動ける優秀な駒の事だ。

 

 まあハルは戦闘に関して飛び抜けて高い素養を持っているという訳ではなかった。

 

 銃を撃てば外れるし、ナイフを振るえば思い切り空振る。

 

 モビルスーツの操縦に関しては阿頼耶識がある分、マシではあったがそれでも自分で自嘲してしまう程に酷かった。

 

 「下手くそだな、11番。まあ初めから小器用にこなすよりは可愛げがある。増長しない分、長生きするだろ。地道に鍛えるんだな」

 

 それがサイラスから下されたハルの評価。 

 

 特に目を掛けられるという事もなく、互いの名前も知らない近しい番号の連中とチームを組まされた。 

 

 しばらくの間はルーチンワークのように決められた事を淡々とこなす日々。

 

 朝から晩まで訓練漬け。

 

 モビルスーツによる連携訓練から銃器の扱い、ナイフを使った肉弾戦。

 

 毎日戦う為の技術が叩き込まれていった。

 

 そして意外だったのが三食、必ず飯を食わされた事だ。

 

 曰く「食わない奴は強くなれない」というのが傭兵団の方針だったのだ。

 

 しかしこれが不味い。

 

 料理などまるで知らない奴が炊事を担当していたからだ。

 

 それでも腹は膨れる。

 

 空腹に苦しまないだけ、自分達は間違いなく恵まれていた。

 

 ちなみにハルがあまり食事に拘らないのは、この頃の経験からだった。

 

 最初はたどたどしかった訓練もしばらくすれば慣れてくる。

 

 継続は力なり。

 

 重かった引き金は軽くなり、細かった腕や足にも筋肉がつく。

 

 人に銃を向ける忌避感も薄れ、殺す事に対する抵抗も無くなった。

 

 淡々と訓練をこなせるようになり、初陣を終えた頃にはハルは立派な人殺しになっていた。

 

 その頃になると周囲の人間にも仲間意識というものが芽生えてくる。

 

 初めは話もしなかった連中とも会話を交わし、一緒に飯を食った。

 

 8番は仕切りたがりだが、誰より仲間思いだった。

 

 10番はデカい図体をしていながらも、気が弱く大人しかった。

 

 12番は口喧しい程のお調子者だが、酷く繊細だった。

 

 お互いに名前も知らない。

 

 それでも背中を預けて戦場を駆け巡る。

 

 彼らはハルにとっていつの間にか大切な仲間になっていた。

 

 しかし例外というものはある。

 

 サイラス達大人は初めから除外だ。

 

 信頼など向こうから放棄しているのだから、当たり前である。

 

 例外だったのは9番だった。

 

 仲が悪かった訳ではない。

 

 ただ彼は異端だったのだ。

   

 ヒューマンデブリというものは大体同じだ。

 

 諦観に支配されており、覇気がない。

 

 しかし9番は違った。

 

 ヒューマンデブリの中でも古株だった9番は技術や自分という存在に自信を持ち、サイラスや他の大人達からの信頼も厚い一線を画した存在だった。

 

 「11番、君は僕を避けてないかい?」

 

 「……そんな事ないけど」

 

 「ふ~ん、まあいいさ。戦場できちんと動いてくれるならね」 

 

 年齢にそぐわない言動。

 

 すべて見透かしたような視線。

 

 ハルはそんな9番の事が苦手だった。

 

 ヒューマンデブリでありながら、どうしてそんな風に生きられるのか?

 

 それが疑問であり、不気味であり、何より恐怖だったのだ。

   

 とはいえ近しい番号だからチームを組む機会も多く、結局は関わらずにはいられなかったのだが。

     

 そうして訓練と実戦を繰り返す命懸けの戦場を渡り歩く。

 

 それが日常になった頃、その生活は突如として終わりを告げた。

 

 別の傭兵団が奇襲を仕掛けてきたのである。

 

 それ自体は別段おかしな事ではない。

 

 サイラスは実力のある凄腕の傭兵だ。

 

 モーゼスなどの商人達にも太いパイプを持ち、その仕事ぶりからクライアントからの信頼も厚い。

 

 反面彼のやり方に反発した者からは酷く敵視され、各方々から敵も多かった。  

 

 「こいつら手強い」

 

 「あの装備、最新型か?」

 

 その部隊は異常だった。

 

 見事な連携と優れた装備、高い練度はただの傭兵とは思えない程。  

 

 傭兵団も奮戦したものの、奇襲の打撃は大きく、戦線を立て直せないまま追い詰められてしまった。

 

 後に分かった事だが襲撃者はガラン・モッサ率いる傭兵団。 

 

 業界ではサイラスと同じく名の通った傭兵だった。

 

 そんな精鋭から奇襲を受けながらも全滅する事無く応戦できたのは、襲撃を受けた場所が岩場の多い岩礁空域であった事が上げられる。

 

 障害物が多数ある分、陰に隠れる事も、盾にして攻撃を防ぐ事も出来た。

 

 リーダーだった9番の指示に従い迎撃に出たハルも乗機がボロボロになりながらも戦い続けた。

 

 「このままじゃ」

 

 装甲も傷つき、武装の弾薬も残り僅か。

 

 一度補給に戻るべきか思った時、通信機から9番の声が聞こえてきた。

 

 「11番、他のメンバーと共に時間を稼いでくれ。僕はサイラス達を連れてくる」

 

 「何を言って―――」

 

 ハルの問いに答えず9番は後退していく。

 

 サイラス達も同じく敵と交戦している筈だ。

 

 こちらに増援で来る余裕があるとは思えない。  

 

 それともサイラス達には余裕があるとでも言うつもりか。

 

 「くそ!」

 

 こうなっては補給に戻る事も出来ず、どうにか戦線を維持する他ない。

 

 9番が戻ってくればの話だが。

 

 そしてハルの危惧は現実のものとなる。

 

 9番はおろかサイラス達もその姿を見せず、結局ハルを残して部隊は全滅してしまった。

 

 「……アイツ、仲間を盾にして」

 

 皆、必死に戦って死んでいった。

 

 8番は道を開く為に敵へと特攻した。

 

 10番は仲間の盾となって潰された。

 

 12番は敵の部隊長と相討ちになった。

 

 もう皆に会う事はない。

 

 死んでしまったのだ。

 

 「くぅ、うわあああああ!!」

 

 知らずに涙が零れ、胸中の痛みを紛らわすようにボロボロになった機体を操りながら敵の頭部を壊し、コックピットを叩き潰す。

 

 それで限界が来た。

 

 周囲の敵は大体倒したが、自分の乗機もすでに戦える状態ではない。

 

 「いつの間にか母艦付近まで後退していたのか」

 

 母艦はいくつもの砲撃を受け、岩片に不時着していた。

 

 碌な反撃も行っておらず、乗員は誰も居ないのかと疑ってしまう程に無防備だった。

 

 ハルは訝しみながらも乗機を捨て母艦の格納庫へと足を向ける。

 

 特に奇妙と思った事を直接確認しようと思った訳ではない。

 

 単純に別の機体があれば使おうと思っただけ。

 

 

 ―――それが眠る悪魔との出会いをもたらした。     

 

 

 「これは……」

 

 格納庫には人は誰もおらず、残ったモビルスーツも存在しない。

 

 代わりに普段決して入ってはならないと厳命されていた隔壁がひしゃげて中が丸見えの状態になっていた。

 

 覗き込んだ先にはさらにコンテナ。

 

 そのコンテナの中には一機のモビルスーツが保管されていた。

 

 「モビルスーツがこんな場所に? それに何で戦闘で使ってないんだ?」

 

 外から見る限り破損場所等は見受けられない。

 

 使えると判断したハルはコックピットハッチを開くと同時に僅かな躊躇いがある事に気が付いた。

 

 サイラスはこの隔壁の中には立ち入るなと厳命していた理由はこのモビルスーツで間違いない。

 

 コレが使わずに保管されていた事にも理由がある。

 

 中身が壊れているのか、それとも余程危険な代物なのか。  

 

 何より勝手に使って良いものなのか。

 

 言いしれぬ不安に襲われ、立ち竦んでしまう。

 

 しかし今までにない程に母艦が大きく揺れ、ついには傾いていた船体が横倒しになってしまう。

 

 「このままじゃ戦艦ごと潰される!」

 

 もはや時間の猶予はなかった。

 

 死にたくなければやるしかない。

 

 乗り込んだコックピットは普段から使用している阿頼耶識に対応していた。

 

 「阿頼耶識が搭載されていて助かった」

 

 これが非対応型であれば動かす事すら一苦労だったに違いない。

 

 背中に接続すると今まで使ってきた機体とは桁違いの負荷が掛かる。

 

 「ぐっぅぅぅ、名前は、アスベエルか」

 

 阿頼耶識の反動に耐えながら機体―――ガンダムアスベエルを起動させたハルは横倒しになった船から脱出する。  

 

 そこには母艦へ砲撃を行っている敵が待ち構えていた。

 

 「そこをどけェェェ!!」

 

 大剣を横薙ぎに振るい敵の胸部を叩き潰すと分割した剣で背後から迫る敵の頭部を斬り裂いた。

 

 視界を奪われ慌てる敵のコックピットに拳を打ち込み、パイロットを圧死させる。

 

 「残り1つ!」

 

 残骸を最後の一機へと投げつけ、その陰に隠れるように突進する。

 

 砲弾と化した残骸は同時にアスベエルを守る盾となり、敵の銃撃を防いでくれた。

 

 そして残骸を躱すべく横に飛んだ敵に向かって大剣を突き出した。

 

 「落ちろ!」

 

 大剣を避ける術を持たず、胸部に叩きつけられた刃が機体ごとパイロットを串刺しにすると岩片へと叩きつけた。

 

 串刺しにされた敵は動きを止め、剣を引き抜く。

 

 その瞬間、横倒しになっていた母艦が突然爆発した。

 

 「なっ」

 

 ハルは咄嗟に岩の陰へと飛び込み、爆発から身を隠す。

 

 「母艦が自爆した? 何で……他の連中は」

 

 戦闘はすでに終息していた。

 

 周りには敵も味方もいない。

 

 ただ破壊された残骸と宇宙に放り出された死体だけが漂っている。

 

 これが意味する事は一つだけ。

 

 「皆、死んだんだ」

 

 それしかないと結論付ける。

 

 思い出とも言えない過去の光景が思い浮かぶ。

 

 それを振り捨てるように頭を振り、破壊された母艦を一瞥する。

 

 「……さようなら」

 

 今日まで自分の家だった艦へと別れを告げ、アスベエルは火星へと離脱した。

 

  

 

 

 「お嬢さま?」

 

 「え、あ、いえ」

 

 ハルは火星の仲間の話はしても、傭兵時代の仲間達の話をしない。

 

 サイラス達に関しても恩も情もないと迷いなく言い切っている。

 

 仲間を囮にされた事を憤っているのかとも思ったが、彼らに対し感情的になる訳でもない。

 

 言葉に出来ない複雑な感情を抱いているのだと予想できる。 

 

 その辺はハルなりに消化してきた。

 

 しかし昔の仲間である9番と再会した事で心の奥に仕舞い込んでいた感情を掘り起こされてしまったのだとしたら―――

 

 「勝手にハルの過去を話すのが憚られるなら、私からは一言だけ。今まで通り普通に接したらよろしいかと」

 

 「普通に?」

 

 「はい。というかお嬢様がハルに気を使ってもすぐにバレるだけかと。恥を掻くだけです」

 

 「な!?」

 

 あまりの一言に流石のクーデリアも顔を引きつらせてしまう。 

 

 「ハルにとってお嬢様が普通に接し、笑っている事が一番良い事かと」 

 

 「フミタン」

 

 色々思う所がある物言いではあるが、確かにクーデリアが気遣った所でハルにはお見通しだろう。

 

 ならいつも通りに接するのが一番良いのかもしれない。

 

 やはりフミタンは頼りになると思う反面、些か辛辣すぎやしまいか。

 

 「ありがとう、フミタン。貴方の言う通りね。でも貴方最近ハルの影響で口が悪くなってない?」

 

 クーデリアの指摘にフミタンは沈黙をもって答えるのだった。

 

 

 

 

 

 ブルワーズとの戦闘を終え、鉄華団は再び地球への航路を進み、そしてついに地球圏へと到達していた。

 

 そして現在イサリビのモニターへ映し出されているのは地球の手前にあるドルトコロニー群であった。

 

 「あれがドルトコロニー」

  

 「ああ。ドルトってのは地球経済圏の一つアフリカンユニオンの公営企業さ。あそこに浮かぶコロニー全部がドルトって会社の持ち物なんだと」

 

 「へぇ」

 

 オルガの説明を聞きながら全員が宇宙に浮かぶコロニーに見入っている。

 

 「あっちのは?」

 

 「あれはドルト3。地球からきた工場経営者達が住む高級住宅街とその人達向けの商業施設があるんだ」

 

 「へぇ、ん、おい、あれ!」 

  

 シノが指さした所に浮かぶのは青い星。

 

 火星とはまるで違う輝きに誰もが息を飲んで見入ってしまう。

 

 あれこそが―――

 

 「地球」

 

 「綺麗、宝石みたい!」

 

 あの美しい星こそ鉄華団の最終目的地であり、クーデリアが目指すべき場所である。  

 

 とはいえ今すぐに地球へ向かう訳にはいかない。

 

 鉄華団にはテイワズより運ぶように依頼された荷物がある。

 

 まずはそれをドルト2へ運ばなければならない。

 

 地球へ向かうのはその後になる。

 

 「よし、テイワズの一員としての初仕事だ。気合い入れていくぞ!!」

 

 「「おお!!」」

 

 意気込む鉄華団のメンバーだが、これから向かうドルトコロニーにて彼らは思いもよらぬ事態へと巻き込まれる事になるのだった。

 

 

 

 

 実家での休暇を終えたガエリオは戦意を漲らせながら、戦艦の出航準備を進めていた。

 

 鉄華団がドルトコロニーに到着したという待ちに待った知らせが届いたのだ。

 

 「アイン、グレイ、出るぞ。今度こそガキ共と!」

 

 「お待ちください、勝手に出撃しては不味いのでは?」

 

 「問題ない、演習で船を出してなにが悪い。マクギリスは新設部隊の方で忙しくて今の俺はお役御免だ。じきに声が掛かるだろうがそれまではある程度自由に動ける」

 

 この時を待ちわびていたのだ、逃してなるものか。

  

 今度こそ火星での借りを返す。

 

 「覚悟を決めろ、お前達の上官の仇を討つチャンスだ」 

 

 「ハッ!」

 

 仇を討つ。

 

 それに勝ることは無い。

 

 覚悟を決めたアインとは対照的にグレイは一歩下がり、冷たい視線で眺めていた。

 

 確かにクランクの仇を討てる機会が与えられる事は喜ばしい。

 

 それが憎しみすら抱いているガエリオ・ボードウィンから与えられるものだとしてもである。 

 

 「どうした、グレイ?」

 

 「……いえ。奴らと戦える機会を与えてくださりありがとうございます、ボードウィン特務三佐」

 

 感情を押し殺し、グレイは頭を下げる。

 

 ガエリオやギャラルホルン地球本部の人間たちは総じて憎い。

 

 しかし彼らは敵ではなく味方。

 

 本当に倒すべき敵は鉄華団。

 

 そこをはき違えるつもりはなかった。

 

 「奴らと戦う覚悟が決まっているなら言う事はない。二人共俺について来い」

 

 「「ハッ!」」

 

 二人の部下を連れ、格納庫に足を踏み入れたガエリオは用意していた機体を見上げる。

 

 「マクギリスも新しい機体を手にしたらしいからな。なら俺もそれなりの用意をしなければ。それにコレは奴らを倒すにはうってつけだ」  

 

 ガエリオの視線の先にあったのは白い曲線の装甲と上に突き出した頭部装甲を持つ機体。

 

 その造形は中世の騎士を彷彿させ、鉄華団にも所属している機体と同じ特徴的な頭部に目が引かれる。

 

 「これで奴らと決着をつけてやる!」

 

 気合いを漲らせるガエリオは自らが操る機体を見上げて、意気揚々と右拳を左手に叩きつける。  

 

 鉄華団との再戦の瞬間が近づいていた。

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