機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ vivere militare est   作:kia

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第56話 抗う意志

 

 

 

 

 

 混乱の続く地球圏。

 

 火星から散発的な戦闘を繰り返し、地球へとたどり着いたアリアンロッド艦隊は部隊の立て直しに追われていた。

 

 モビルスーツの修理、弾薬の補給、部隊の再編成。

 

 やる事は山ほどある。

 

 しかしある問題が浮き彫りになっていた。

 

 それが物資の不足である。 

 

 火星から戦闘続き。

 

 碌に補給も受けずに強行軍で地球圏への帰還を優先したツケがここで表面化してきたのだ。 

 

 「ラスタル様、やはり一度補給のため月に向かうべきではないでしょうか?」

 

 「確かに。だが、問題は時間だな」

 

 グレゴリの行動には無駄がなく、しかも彼らはこちらの動きを隅々まで把握している。

 

 楽観は決して出来ず、月に向かっている余裕は恐らくない。

 

 となると一番は近場のコロニーで補給を済ませるのが無難な方法なのだが、各地で戦闘が行われている状況で、果たしてアリアンロッド艦隊を受け入れてくれる余裕があるのか微妙な所だった。

 

 「ラスタル様、イオク様より通信が入っています」

 

 「繋げ」

 

 モニターに映ったイオクはやや疲れた顔をしているものの、大きな怪我などは見受けられない。

 

 「丁度良いタイミングだ、イオク。詳細な状報告と補給の手配を頼みたい」

 

 ≪……ラスタル様、状況はよくありません≫

 

 「何?」

 

 イオクの口から語られたのは、ラスタルの予想を上回る程に追い込まれた状況にあるという事だった。

 

 地球圏で開示されたラスタル自身のスキャンダルとギャラルホルンの腐敗。

 

 祭壇ごと破壊されたガンダムバエル。

 

 そしてグレゴリの真実とヴェネルディの素顔、ガンダムアザゼルの正体など。   

 

 羅列すれば一つ一つが致命的とも言える最悪の情報だった。

 

 ≪地球上でも混乱はしていますが、宇宙程ではありません。しかし、この件で各経済圏はギャラルホルンとの決別を採択。組織解体の要請を発表しました≫

 

 元々ギャラルホルンに対して各経済圏は煙たがっていた。

 

 さらにエドモントン動乱以降も不祥事は後を絶たず、しかもセブンスターズの一角が自分達の都合で経済圏を巻き込んで紛争を引き起こし、挙句の果てにグレゴリの台頭。

 

 色々と物議を醸してはいても、結局の所、すべてギャラルホルンに端を発した出来事ばかり。

 

 今回のグレゴリの起こした争乱にしても、要するにギャラルホルンの内紛でしかない。

 

 巻き込まれ続けてきた各経済圏は限界に達し、ギャラルホルンこそ混乱、争乱の元であると断じたのである。

 

 ≪現在も交渉は続けていますが、懇意にしていた経済圏さえギャラルホルンとは関わらないとの一点張り。これにより各地の補給線が限界に達しています≫ 

 

 「……用意周到とは思っていたがな」

 

 グレゴリを侮っていた訳ではなかったが、此処まで徹底するとは思っていなかった。

 

 何故ならやりすぎれば、仮にグレゴリ側が勝利しても、自分達がギャラルホルンに成り代わる事など出来ないからだ。

 

 それとも他に目的があるのだろうか。

 

 「ならば圏外圏側の―――ッ!?」

 

 圏外圏側の企業に連絡を取って補給を行おうと考えたのだが、そこで気が付いてしまう。

 

 アリアンロッド艦隊に便宜を図ってくれる組織は、軒並み機能していないという事実に。

 

 最も有力な人物であったノブリス・ゴルドンや幹部たちは何者かに射殺され、彼らが率いていた企業はマヒしていた。   

 

 そしてテイワズも内紛によって本拠地である歳星が甚大な被害を被り、組織として弱体化を余儀なくされた。

 

 他の組織も同様に今回の混乱に巻き込まれ、アリアンロッドに融通する余裕はあるまい。

 

 その時、何故か脳裏にあの男の言葉が思い出された。

 

 『こうも考えられないか? 俺が顔を出したのは、正体を明かしても問題が無くなったからだとな』

 

 あの時はサイラスの言葉の意味を図りかねていたのだが―――

 

 「まさか」

 

 戦場におけるセオリーはいくつかあるが、絶対に守るべき重要なものが存在する。

 

 それが補給線。

 

 敵の補給線を潰す事はまさにセオリーであるし、それを死守する事もまた定石である。  

 

 地球圏におけるスキャンダル公表の真意はギャラルホルンと経済圏を分断、各地で戦闘を起こして補給線を圧迫。

 

 そして圏外圏における有名企業の頭を潰して、地球圏外からの補給線を断つ事。

 

 これが狙いだったとすれば。

 

 「……正体を明かしても問題が無くなったとはそういう事か」

 

 サイラスは驕ってなどいなかった。

 

 自らのアドバンテージを最大限に生かしたまま、こちらを追い込む為に出来る限りの手を打っていたのだ。

 

 だが、敵の手腕を称賛している暇はない。

 

 いかにアリアンロッドが精強な戦力を保有していても、補給ができなければ戦いようがないのだから。 

 

 ≪ラスタル様、私が交渉している経済圏の管理下にあるコロニーからならば、補給も可能かもしれません≫

 

 「本当か、イオク?」

 

 ≪はい、以前から親交のあった経済圏で、懇意にしている人間が何人かいます。一個人として頼めばどうにかなるかと。ただし一度が限度です。補給線は限界に達していますし、何処も今後を考えギャラルホルンと関わりたくないというスタンスですから≫   

 

 「……それで手配してくれ。時間がない、急いでな」

 

 ≪了解しました。補給の方はそちらへ運ぶように手配します≫

 

 通信を終えたラスタルは椅子に深く身を預けると、目を閉じる。

 

 思い起こされるのは、今は亡きアレクシア・ボードウィンとの最後の問答だった。

 

 「……腐り落ちるのみか」

 

 あの日、彼女の残した予言は成就した。  

 

 組織の腐敗と共にグレゴリという存在がギャラルホルンの影だというのなら、確かに身から出た錆によって腐り落ちたのだ。 

 

 もはやギャラルホルンという組織が全く同じ形で存続する事はあり得ないだろう。

 

 勝っても、負けても、ギャラルホルンは終焉を迎える。

 

 しかしだ。

 

 だからと言ってこのまま終わらせるつもりは毛頭なかった。

 

 「我々は最後までギャラルホルンとしての役割を全うする。過去の亡霊の好きにはさせん」

 

 例え相手がずっと潜んでいた自らの影であったとしても。 

 

 

 

 

 上方から速度の乗った一撃を振り下ろす白の機体。 

 

 ガンダムバエル・ヴァーリ。

 

 その姿を見たガンダムアザゼルは、挑戦者の乱入を歓迎するかのように迎え撃つ。

 

 スラスターウイングを最大限可動させながら二機は同時に剣閃を繰り出す。

 

 打ち放った剣が激突し、交差しながら鍔迫合う。

 

 「この動き、マクギリスだな」   

 

 「お見通しという訳か」

 

 一合、二合と切り結び、弾け飛んだ二機が再び睨み合う。

 

 「よりにもよってバエルの模造品とは。相当、余裕がないらしい」

 

 電磁砲の連射を回避したマクギリスは、バエル・ヴァーリに装備されたライフルを発射した。

 

 これはシグルドリーヴァⅡが使用していた強化型レールガンを小型化した専用ライフル。

 

 威力こそ強化型に劣るものの、モビルスーツ相手でも直撃すれば、ダメージは避けられない。

 

 それを装甲に掠めながらも、後ろに飛んだアザゼルは回避に成功する。

 

 だが、体勢を崩した瞬間を狙ったバエルの斬撃が襲い掛かった。

 

 「流石にやる! だが!」

 

 驚異的な反応で逆手に構え直した剣で受け流すと、バエルの側頭部を切りつけた。

 

 「グッ、今のを流して反撃してくるとは!?」

 

 「動きが鈍いぞ、マクギリス。まだその機体に慣れていないからか? それともバエルモドキではそれが限界か?」

  

 「人の心配よりも、貴様はもっと周囲に気を配った方が良いと思うがな」 

      

 「ッ!?」

 

 その瞬間、ランスを構えたキマリスヴィダールが凄まじい加速で突っ込んで来た。

 

 それはある種の奇襲となり、同時に発射されたバエルの電磁砲と合わさってアザゼルに回避の余裕を与えない。

 

 いかに一流のパイロットであろうとも、これを捌ける人間はいないだろう。

 

 しかしヴェネルディは余裕を崩す事なく二刀を交差させ、キマリスヴィダールの突撃を受け止める。

 

 そして槍を横へ弾くと同時にスラスターウイングを操作、背面に回り込むとキマリスヴィダールの背中に蹴りを入れた。 

 

 「何!?」

 

 「今のを切り抜けるとは」

 

 信じがたい光景に攻撃を仕掛けたガエリオも、見ていたマクギリスも思わず絶句する。

 

 ヴェネルディは突進の威力を少しでも殺す為にスラスターウイングを逆噴射させ、槍の一撃を止めた。

 

 この時、受け止めた角度が少しでもズレれば槍の刺突の餌食になっていただろうし、力任せに弾こうとすれば剣の方が折れていただろう。

 

 そして槍を弾くタイミングも絶妙で、機体のコントロールも完璧。

 

 阿頼耶識を装備しているとはいえ、一連の機体操作をミスなくやってのけたヴェネルディの技量に怖気が走る。 

 

 「まさに絶技か」

 

 「マクギリス、もう一度! 連携を!」

 

 「分かっている!」 

 

 驚愕を押し殺し、体勢を立て直したアザゼルに二機のガンダムが連携を取りつつ、攻撃を仕掛ける。

 

 ライフルの射撃で動きを制限。

 

 バエルがアザゼルと切り結んだ隙を狙ってキマリスヴィダールが突撃する。

 

 二機の一糸乱れぬ連携に、アザゼルはこの戦闘で初めて防戦を選択した。

 

 「素晴らしい連携だ。しかし―――ッ!?」

 

 キマリスヴィダールの攻撃を捌いたアザゼルに別方向からの攻撃が襲い掛かる。

 

 咄嗟にバエルに蹴りを入れ、その反動で距離を取ると先ほどまでアザゼルが居た位置を強化型レールガンの砲撃が通り過ぎた。

 

 「この砲撃、ロトだな」

 

 左足を失ったとはいえ、シグルドリーヴァは未だに健在。

 

 バエルとキマリスを援護するように立て続けの砲撃がアザゼルへと迫ってきた。  

 

 「三対一か。それはそれでやりようはあるが」

 

 ≪ヴェネルディ様≫

 

 砲撃を躱しつつ、反撃に転じようと考えていたヴェネルディを遮るように通信が入った。

 

 「フリーエか。無事に合流できたようだな。何よりだ」

 

 ≪ありがとうございます。まず報告を。サイラスと交戦したアリアンロッド艦隊ですが、部隊を突破し地球圏へ入りました≫

 

 「だろうな。あの戦力でアリアンロッドを殲滅できると思う程、私も呑気ではない。サイラスにとっても織り込み済みの展開だろう。しかしこのまま挟撃されても面白くないないな。一度、体勢を立て直すべきか。全軍に指示を出せ」

 

 ≪了解しました≫

 

 繰り出される攻撃をすべて捌き切ったヴェネルディは大きく距離を取った。

 

 「まさか後退するつもりか?」

 

 「残念だが此処までだ。決着は次の機会まで取っておこう」

 

 「待て!」

 

 追いすがるマクギリス達の攻勢を振り切ったヴェネルディは、母艦に向けて後退し始めた。

 

 

 

 宇宙へ上がっていたフミタンはイオクの要請を受け、アリアンロッド艦隊の補給を行う為に合流を図ろうとしていた。

 

 格納庫に運び込まれた物資のチェックは問題なく、ホッと息を吐きだす。

 

 「ただこれでどれだけ戦えるか」

 

 イオクが行った交渉の結果、極秘裏にではあるが補給物資を確保に成功。

 

 限られた物資で万全な状態とは言い難いが、これでアリアンロッドはグレゴリと戦う事ができる。

 

 しかし補給を運んでいる部隊の面々に覇気はない。

 

 誰もが気が付いているのだ。

 

 戦闘に勝っても、負けてもギャラルホルンは終わりであると。

 

 ならば何故、こんな危険な目にあってまで補給物資を運ばねばならぬのか、疑問に思うのは当然の反応だろう。

 

 「……この状況では無理もない。私も身の振り方くらいは考えておくべきなのかもしれないけど」   

 

 そもそもフミタンにはギャラルホルンという組織に対して、自分でも驚く程に思い入れがなかった。

 

 底辺出身という事も関係しているのかもしれない。

 

 「それでよくギャラルホルンに入れたと思うものだけど」

 

 その辺を思い出そうとすると妙な違和感と頭痛に襲われるので、差し控えた。

 

 同時に思い浮べたのはギャラルホルンの病院で目覚めた時の事だ。

 

 何故、自分が病院にいるのか理解できず、やや困惑したものだが、すぐに理解出来た。

 

 そう、自分はギャルホルンの兵士であり、訓練中の事故によって負傷したのだと。

 

 フミタンという名前を思い出し、過去を掘り起こしていく。

 

 そこに多少の違和感はあったものの、怪我の所為だと納得した。

 

 そして―――

 

 「配属された先がセブンスターズのクジャン家当主の所というのは驚かされたが」

 

 正直に言うと最初の頃のイオク・クジャンの相手は頭を抱えたものだ。

 

 世間を知らず、立場を弁えず、それでいて活動的。

 

 無能な働き者ほど厄介なものはない。

 

 それでも何故か放っておけなかったのは、昔にも似たような人物の相手をしていたような気がしていたからだ。

 

 そんな人物に心当たりは全くないのだが。   

 

 「最近は随分マシになったようだけど。とにかく私は私の仕事をこなすだけだ」

 

 頭の奥にこびり付いた小さな違和感を意図的に無視したフミタンは、格納庫を後にした。

 

 

◇   

 

 

 

 戦場から一時撤退したヴェネルディは、再度攻撃を仕掛ける為の準備を進めていた。

 

 陣形を立て直し、各地に散っていた部隊も少しづつ合流しつつある。

 

 「後はアリアンロッド艦隊次第だな」

 

 あの艦隊の動き次第で作戦変更もあり得るが、おそらく次が最終決戦になるだろう。

 

 フィンブルヴェトルの格納庫を歩きながら、今後の展開を思案していたヴェネルディにとある機体の姿が目に入った。

 

 「シャムハザイの改修、間に合ったようだな」

 

 天使ハシュマルとの戦いで大破していたガンダムシャムハザイも、新しい姿となって蘇っていた。

 

 ガンダムシャムハザイ・ルヴァンシュ。

 

 名が示す通り、すべてを奪い去った者達に報復する為に生まれ変わった機体である。

 

 「ロキ、ノイの調子はどうか?」

 

 近くで自身の機体であるバラキエルの調整を行っていたロキに声を掛ける。

 

 「先ほどまで阿頼耶識とネフィリムシステムの最終チェックを行っていた。体調も今は問題ないらしいが、念の為にもう一度検査を受けさせている」

 

 「そうか。ならば先鋒はお前とノイに任せよう。鉄華団やお前の標的であるガエリオ・ボードウィンもいる。存分に暴れるといい」

 

 「言われるまでもない。ようやくだ。やっとこの手でアスベエルとボードウィンを殺す事が出来る!」

 

 全身から殺気が溢れ、素顔の見えないフルフェイスの下からでも残忍な笑みを浮かべているのが分かる。

 

 焦がれに焦がれ、発狂しそうな程に待ちわびた。

 

 彼は今日という日にすべてを掛けてきたのだ。 

 

 必ずこの手で無残な死を。

 

 奪い去った報いを。

 

 嘲笑った罰を与える。 

 

 必ずだ。

 

 溢れだす狂気を抑え込んだロキは、艦の外側に視線を飛ばす。

 

 「そういえば、あの玩具はどうするつもりだ? 一応、アレも改修したのだろう?」  

 

 彼の視線はフィンブルヴェトルに牽引されている巨大な物体に向けられている。

 

 「そうだな……しばらくはロキ、お前に任せる。邪魔者を排除する露払いくらいにはなるだろう」

 

 「アリアンロッドにぶつけるつもりだと思っていたが?」

 

 「そのつもりだよ。それまでは好きにやれと言っている」

 

 話は終わったとアザゼルの方へ向かうヴェネルディにロキは以前から気になっていた疑問をぶつける事にした。

 

 「この戦いに勝利した後、貴様が新たなギャラルホルンを率いるのか?」

 

 ギャラルホルンにとって状況はすでに詰んでいる。

 

 いかに足掻いても彼らの崩壊は決定的だった。

 

 ならばこの戦いの後、秩序の番人であるギャラルホルンの後釜をグレゴリが担うと考えていたのだが、ヴェネルディは僅かに驚いたような表情を浮かべた。  

 

 「ロキ、我々は今、ギャラルホルンと呼ばれた神を排除しようとしているんだ。ようやく愚神を退場させられるというのに、自分達が同じ席に座っても意味が無いだろう」

 

 それは今まで感じた事がない程の凄味と真実味が籠っている声色。 

 

 氷のような冷たさを持ちながらも、決して譲れない熱のようなものを感じさせる。

 

 「もう世界に神は必要ないのさ」

 

 去っていくヴェネルディに意味を問いかける事も出来ず、ロキは僅かに残った生身から流れる冷汗を感じていた。

 

 

 

 

 一時後退したグレゴリに合わせ、交戦していたギャラルホルンもまたグラズヘイムへ集結し、体勢を立て直していた。

 

 とは言うものの、現状はあまり良いとはお世辞にも言えないものであった。

 

 多くのモビルスーツが傷つき、パイロット達も疲労困憊な様子でグラズヘイムの通路に座り込んでいる。

 

 無理もない。

 

 指揮官であるロトの鼓舞によって他の部隊よりは士気が保たれてはいるが、それでもこれまでに起きた出来事は確実に影響を与えていた。

  

 まるで野戦病院にいるような喧騒の中、先行組と合流した鉄華団がグラズヘイムへ到着した。

  

 「こりゃ酷いな」

 

 「それだけグレゴリの連中は強いって事だ、ユージン」

 

 かつてギャラルホルンと戦ったからこそ、その手強さと精強さはよく知っていた。

 

 それがここまで傷ついた状態を見せられると、否応なく敵の手強さを認識させられる。  

 

 「それでオルガ、地球支部とは連絡ついたのかよ?」

 

 「ああ。一応、地球支部の方は問題ないらしい。だが、アーブラウは他の経済圏同様の処置を取るってよ。鉄華団との契約は継続する気みたいだが」

 

 「俺らがギャラルホルンの仕事を受けてるって分かったら、その契約も破棄されるんじゃねぇか?」

 

 「かもな。だが、それもこの戦いの決着がついた後の話だ」

 

 通路で休む者達を避けながら、司令室に進むとロト達が待っていた。

 

 「よく来てくれた、鉄華団。地球外縁軌道統制統合艦隊司令官ロト・バクラザンだ」

 

 「鉄華団団長、オルガ・イツカだ」

 

 ガッチリとオルガと握手を交わしたロトはすぐに本題を切り出した。

 

 「ゆっくり話をしたい所だけど、時間がないんだ。早速、打ち合わせをさせてもらいたい」

 

 「勿論だ。俺らも遊びにきた訳じゃないんでね」

 

 モニターに映し出された戦域図に目を向ける。

 

 まず地球外縁軌道統制統合艦隊や鉄華団のいるグラズヘイム。

 

 その正面にグレゴリの部隊が展開され、さらに後方にいるのがおそらくアリアンロッド艦隊だろう。

 

 上手く連携すれば挟撃出来そうだが、やや距離が離れすぎている。 

 

 さらに周囲にはギャラルホルンを退け、分散していたグレゴリの部隊が集結しつつある。

 

 「これ、かなりヤバい状況だよな」

 

 「ああ。アリアンロッド艦隊とは連携出来ないのか?」

 

 「向こうは補給作業と部隊の再編制で動けないらしい。しかしアリアンロッドを待ってる時間はないんだ。時間が経てば経つ程、我々が不利になるんだから。各地に分散していたグレゴリの部隊が集結すれば、こちらに勝ち目はなくなるだろう。その前に蹴りをつけたい」

 

 現在の状況と今の説明を頭の中で整理しつつ、これの打開策を考える。

 

 いや、方法はそう多くない。

 

 あまりに危険で、単純な方法だが。

 

 どうやらロト達も同じ結論だったらしく、険しい表情で頷いた。

 

 「君達の考えた通りだ。頭を叩く。それしかない」

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