機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ vivere militare est   作:kia

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第60話 誓いと怨嗟と

 

 

 

 

 崩れていく。

 

 体に穿たれた大穴に、自らの終焉を否応なく理解させられる。

 

 しかし、巨体に宿った意識はそれを激しく拒絶していた。

 

 『い、嫌―――だ―――私は―――まだ―――戦って―――勝って―――いない』

 

 僅かに残った自意識は、声高に否だと叫んで憚らない。

 

 そう、だって、自分はまだ。

 

 自分はまだ戦っていないから。

 

 バルバトスと。

 

 まだ倒していない。

 

 勝っていないのだ。

 

 あの悪魔に。

 

 だから。

 

 『私はァァァァァァァァァァ!!!』

 

 残された力を振り絞り、残った武装を一斉解放。

 

 自らの体を、人型を、使えなくなった胴体から切り離す。

 

 そして両刃のグレイヴを握り、戦場へと躍り出た。

 

 今度こそ。

 

 今度こそ、あの悪魔を。

 

 今度こそ私はバルバトスを!!

 

 しかし、そこで残った意識は掻き消えた。

 

 青い戦乙女の刃によって、背後から刺し貫かれたから。

 

 最後まで、本命に出会う事も、再戦を果たす事も出来ず―――エリヤ・スノードロップはこの世から消え去った。

 

 

 

 

 「カハァ、ハァ、ハァ、しぶとい」

 

 ロトは溜まりに溜まった緊張感ごと大きく息を吐き出す。

 

 目の前には崩壊するサンダルフォンから飛び出してきた人型が、ヴァルキュリアブレードにて両断されていた。

 

 最後の悪あがきであろう。

 

 しかし、今度こそ確実に倒した。

 

 ようやくあの化け物を仕留める事が出来たのだ。

 

 これで少しは状況も好転する筈。

 

 「鉄華団のガンダムは……」

 

 黄色い獅電は無事のようだが、あの損傷で大量のミサイルを撃ち込まれてしまっては―――

 

 「くそ!」

 

 憤りを堪えながら、片腕を失った雷電号の元へ機体を向かわせる。

 

 「無事か、鉄華団のパイロット!」

 

 どうやらパイロットは、怪我もなく無事のようだ。

 

 それに機体も、右腕は完璧に破壊、吹き飛ばされてはいるものの、本体に損傷はない。

 

 あの砲撃を食らって本当に運が良い。

 

 「シノ、さんは?」

 

 「……済まない」

 

 「くっ」

 

 ドンと操縦桿を叩く音が響く。

 

 聞こえてくるすすり泣きに、慙愧の念が沸き上がる。

 

 こんな戦いに巻き込んだのは自分達。

 

 しかも年端もいかぬ少年たちを巻き込んで、命を散らせてしまっている事実。

 

 だが、そんな感傷は彼らの覚悟に水を差す。

 

 すべてを堪え呑みこむと、ふと見た敵艦の動きに気が付いた。

 

 「敵の旗艦がグラズヘイムへ向かっている?」

 

 サンダルフォンを倒した事で、敵の圧力は衰えた。

  

 だが、こちら側の被害は甚大で、陣形もズタズタにされてしまっている。

 

 アレでは敵の旗艦や部隊を止める事は出来ないだろう。

 

 「部隊の再編成は間に合わないな。最終防衛ラインも何時まで持つか……動ける者で何とかするしかない。君は一旦、戻れ!」

 

 「お、俺も!」

 

 「その損傷じゃ無理だ!」

 

 ライドの言葉を遮るように踵を返したロトは、進軍を続ける敵旗艦へ向かって動き出した。

 

 

◇ 

 

 

 激しい戦艦戦を繰り広げるアリアンロッドとグレゴリ。

 

 砲撃とミサイルの飛び交う死地の狭間を、凄まじい速度で駆ける二つの機体があった。 

 

 ガンダムバルバトス・ルプスレクスとガンダムアザゼル。

 

 器用に砲撃を躱しつつ、相手に向けて渾身の一撃を叩き込む。

 

 だが、それも互いの高い力量で防がれ、致命傷には至らない。

 

 巨大メイスの殴撃を剣で器用に捌いたヴェネルディは、改めて三日月の技量に感嘆の声を上げた。

 

 「今の一撃を受けきるとは。素晴らしい反応だよ」

 

 心の底から楽しそうに笑うヴェネルディに対し、メイスとテイルブレードを使い分け、攻勢を仕掛ける三日月。

 

 拮抗していた二機の激突は、徐々にアザゼルへと傾きつつあった。

 

 「君は強い。操縦技術、機体制御、状況把握、そして戦術構築。すべてが高レベルだ。しかし、一つだけ欠点がある」 

 

 メイスの柄を蹴り上げ、打撃の方向をずらしたアザゼルは、近くに浮かぶ小惑星に向けて電磁砲を撃ち込んだ。

 

 破壊され、飛び散った岩片にバルバトスの視界が一瞬遮られ、その瞬間、アザゼルのライフルが火を噴いた。

 

 それに誘導される形で発射される戦艦からのミサイル群。

 

 「チッ」

 

 200mm砲でミサイルを迎撃する三日月だが、その隙に撃ち込まれたライフルがバルバトスに直撃する。

 狙ったのは、損傷していた左肩の傷。

 

 そして狙い通り電磁砲の直撃を受けたバルバトスの左腕は、明らかに動きを鈍らせた。

 

 「戦略眼、すなわち大局を見る眼がない。いや、その発想が乏しいというのが正確かな!」

 

 再び発射された電磁砲がバルバトスの軌道をずらし、すれ違い様に撃ち込まれた斬撃が左腕を切り裂いた。

 

 「私が無闇に君と打ち合っていたと思っていたかな?」

 

 「何かあると思っていたけど、戦艦の射程に誘い込むのが狙いか」

 

 「いかに『鉄華団の悪魔』でも、片腕では不利は否めないだろう」

 

 「だから何?」

 

 全く怯まない三日月にヴェネルディも笑みを浮かべ、再び剣を構える。

 

 その時、グラズヘイム向かっていたフィンブルヴェトルの速度が鈍っている事に気がついた。

 

 「進軍速度が上がっていない? マクギリス達とロトか。思った以上にやる。そこにアリアンロッドも加わるとなると……」

 

 「どこを見てる」

 

 「君への警戒を怠ってはいないさ!」

 

 速度を乗せたメイスの刺突を剣を交差させて受け止めたアザゼルに対し、バルバトスは射出したテイルブレードで裂かれた左腕を貫くと、弾き飛ばしたアザゼルに向けて投擲。

 

 テイルブレードのワイヤーを引き戻す反動を利用して、投擲を回避したアザゼルの背後から刃を激突させた。

 

 「ッ、ブレードを回収する反動を利用するか!」

 

 激突させたとはいえ、精々態勢を崩した程度だが、三日月にとってはそれで十分。 

 

 僅かに出来た合間を使って距離を取ったバルバトスは、バラバラになった小惑星の岩片を利用して離脱を図った。

 

 「思った以上に冷静な判断だ。命がけの特攻よりも後退を選択するとは。それとも指揮官から離脱命令でもあったか。ふむ、追う事は容易いが、今はフィンブルヴェトルの方が優先だな」  

 

 踵を返したアザゼルはスラスターウイングを噴射させ、旗艦に攻撃を仕掛ける敵の迎撃へ乗り出した。

 

 

 

 

 一点の乱れもない隊列から発射される砲撃。

 

 グレゴリの新型機エゼクェル・ネブラから発射されるレールガンは、ナノラミネートアーマーすらも打ち砕く威力を持ったもの。

 

 故に砲撃は掠めるだけでも脅威だ。

 

 しかし相対している三機のモビルスーツは、それを一切構わずに、砲弾の雨の中を突っ切っていく。

 

 「ハアアア!!」

 

 先陣を切るのはガンダムキマリス・ヴィダールである。

 

 持ち前の突進力で敵の懐まで一気に飛び込むと、主武装であるドリルランスでエゼクェル・ネブラの胴体を貫く。

 

 その背後から追いついてきたマスティマがウェポンシールドを展開し、バーストニードルで周囲の敵機を吹き飛ばす。

 

 敵に囲まれて尚、派手に二機が暴れまわり、それらをフォローするようにバエル・ヴァーリが二刀を振るって、隊列を乱した敵から切り刻む。

 

 まるでダンスでも踊っているかのように、優雅さすら感じさせる一糸乱れぬ連携は、互いの息がピッタリと合っていなければ出来ない芸当だろう。

 

 それはエゼクェル・ネブラを操るエースたちですらも難しい。

 

 「……ガンダム二機はともかく、狂犬であるマスティマまでああも見事に連携してみせるとは、予想外だった。しかし、一歩遅い」

 

 一歩下がった位置で戦闘の様子を伺っていたフリーエは、近づいてくる機体の反応を見て、そう零す。

 

 フリーエの言葉通り、グレゴリ最強戦力が戦場に姿を見せる。

 

 凄まじい速度でガンダムアザゼルが二刀を構え、中心にいるバエル・ヴァーリに向かって斬り込んだのだ。

 

 「ヴェネルディ様が来られる前にフィンブルヴェトルを落とせなかった時点で、貴方達は詰んでいた……ん?」

 

 接近してくる無数の機影。

 

 敵味方が入り乱れてはいるが、それぞれがフィンブルヴェトルに向かって集結しようとしていた。

 

 「自ずと集うという訳か。私も自らの役目を果たすのみ」

 

 上昇したアルマロスは向かってくる敵を迎撃すべく、配置についた。

 

 

 

 

 突如として強襲してきたアザゼルを迎え撃つバエル・ヴァーリ。

 

 エゼクェル・ネブラをドリルニーで貫き、粉砕したガエリオはマクギリスを援護しようと踵を返す。

 

 しかし、そこに槍を携え、突っ込んでくる機体があった。

 

 アスベエルと交戦していた筈のガンダムバラキエルである。

 

 他を一切無視して、発見したキマリスヴィダールを狙い、ランスを叩きつけてきたのだ。

 

 「見つけたぞ、ボードウィン!!」

 

 「グレイ!」

 

 「黙れ、俺の名はロキだ!!」

 

 バラキエルの突撃を受け流したガエリオは、素早く周囲に目を配る。

 

 先ほど襲撃してきたアザゼルに加え、アスベエルやシャムハザイなど、各勢力の主力機がいつの間にか集まっていた。

 

 「今日こそ、貴様を殺す、ボードウィン!! その後、アスベエルだ! 思い上がった地球出身者達と一緒に重力の底へ突き落としてやる!!」

 

 「どうしても、やめるつもりはないのか?」

 

 「愚問だ!!」

 

 通信越しだろうと伝わってくる憎悪の感情。

 

 これらを成熟させ、グレイを追い詰めてしまったのは紛れも無く自分であり、歪んだギャラルホルンの価値観でもある。

 

 ああ、つまりは―――

 

 「お前の痛みを理解しなかった俺の罪。だからこそ俺がお前を止めなければならない!!」  

 

 「黙れェェ!!」

 

 「いくぞ!!」

 

 互いにスラスターを全開にして、突撃する。

 

 「死ねェェェェ!!」

 

 「ウオオオオオ!!」

 

 言葉では解消しきれぬ因縁を抱え、高速でぶつかり合うキマリスヴィダールとバラキエル。

 

 すれ違う瞬間に突き出したランスの一撃が装甲を掠め、同時に撃った砲撃が互いの体勢を大きく崩す。

 

 「甘いぞ、その程度で!」

 

 ランスから発射される200mm砲を物ともせず、突進したバラキエルの刺突がキマリスヴィダールの胸部へ突き刺さる。

 

 「まだまだァァ!!」

 

 それでも加速を止めず、砲撃戦を繰り広げる戦艦の合間を駆けながら、バラキエル目掛けて刺突を放つ。 

 

 一見、互角に見える攻防。

 

 だが、時間が経つに従って、二機の差が如実に現れるようになっていく。

 

 同時に放った筈の突きも、射撃も明らかにバラキエルの方が速い。

 

 これは阿頼耶識―――いや、ネフィリムシステムとそうでないかの違いが出てきていたのだ。

 

 「どうした、その程度か!」

 

 「くっ、だが、想定済み! その為の訓練も積んできた!!」

 

 組み合った際に背中から伸びてきたショーテルをあえてシールドに突き刺し、体当たりでそのまま叩き折る。

 

 そして体勢を崩した所を狙い、今度こそ必殺の一撃を放つが、それすらもロキの素早い反応で、装甲に浅い傷を刻むのみに留まってしまう。

 

 しかし、ガエリオの攻勢は止まらない。   

 

 その瞬間に距離を詰め、膝のドリルニーを叩き込んだ。

 

 咄嗟にランスを盾にドリルニーを受け止めたロキは、抜き放ったブレードでキマリスヴィダールの槍を吹き飛ばす。

 

 そのまま槍は戦艦に突き刺さり、キマリスヴィダールは完全な無手となった。

 

 「ぬぅ! だが!」

 

 立て続けに振るわれるブレードを腰から抜いた刀で弾き返し、二つの刃が激しく鍔迫合う。

 

 「この動き、随分と対阿頼耶識を訓練してきたようじゃないか! 汗水垂らしてとは、貴様らしくもないなぁ、ボードウィン!!」

 

 「伊達に火星支部に滞在していた訳ではない! それにいつまでも昔の俺ではないさ!」

 

 そう、何度も、何度も訓練を繰り返してきた。

 

 両腕を失い、義手を装着して。

 

 リハビリを兼ねた、対阿頼耶識を意識した戦闘訓練を繰り返した。

 

 その度に自分の未熟さを痛感する。

 

 それでもこれまでのすべてを無駄にしない為に、未熟さを認め、研ぎ澄まし、積み上げてきたのだ。 

 

 相手がネフィリムシステムだろうが簡単に負けはしない。

 

 「グレイ!!」

 

 「何度言えば分かる、俺はロキだ!!」

 

 差し出した右腕のパイルバンカーが炸裂し、キマリスヴィダールの左肩を打ち砕く。

 

 同時に振るった刀の一撃が、ブレードを持ったバラキエルの左手首を切り裂いた。

 

 「俺が、俺が、ボードウィン如きにこうも手こずるだと!?」

 

 「言った筈だ、昔とは違うと! 姉上に誓ったのだ、恥じぬ戦いをするとな!!」

 

 「ふざけるなァァ!!」

 

 体当たりでキマリスヴィダールを戦艦の壁面に叩きつけ、残った近接武装ショーテルを振り下ろす。

 

 「オオオ!!」

 

 殆ど役に立たなくなった左腕で曲剣を防御。

 

 同時に刀を振り上げ、バラキエルの装甲を切り裂いた。

 

 「ッ、クソがァァ!」

 

 抉られながらも足でドリルニーを防いだバラキエルは再び曲剣を振るい、キマリスヴィダールも負けじと刀をぶつけ合う。

 

 戦艦に衝突しながら、高速戦闘を繰り返す二機のガンダムの戦いは、曲剣と刀を振るい、時に殴り合い、蹴りを入れて、互いの機体を粉砕していく。   

  

 「死ねェェェ!!」

 

 「グレェェイ!!」

 

 激情と共に刃を振るい続け、刀身にヒビが入っても止まらない。

 

 幾度目かの鍔迫り合いの果てに、刀は折れ、曲剣は砕け散る。

 

 もはや持ちうる武装は無くなり、それこそ殴り合いしか残っていない。

 

 それでも構わないと、二機のガンダムは残った手で相手の機体を殴りつける。

 

 「ぐぅ!」

 

 「貴様みたいなのが居るから! 特権階級だと思い上がっているから! 貴様らの世界は歪む!」

 

 マウントを取ったバラキエルのストレートがキマリスヴィダールの装甲を破壊し、さらに繰り出された殴打に腹部の一部が破壊される。

 

 追い詰めている。

 

 勝っている。

 

 有利である筈のロキの怒りは止まらない。

 

 憎悪はさらに加速する。

 

 「死ね、死ね、死ねェェェ!」

 

 バラキエルは射出したワイヤーで動きを封じると、残った武装であるパイルバンカーを突き出した。

 

 「俺の勝ちだ、ボードウィン!!」

 

 「負ける訳にはァァァ!!」

 

 咄嗟に繰り出したドリルニーがバラキエルの腕を逸らし、パイルバンカーはキマリスヴィダールの壊れかけた左腕を今度こそ奪い去った。

 

 それは間違いなく大ダメージとなる一撃。

 

 胸部にまで至る損傷に崩れ落ちるキマリスヴィダールに、ロキは愉悦の笑みを浮かべる。

 

 「貴様にしてはよくやった、ボードウィン。昔とは違うという貴様の言い分もあながち間違いではなかったのだろう」

 

 損傷で見れば明らかにキマリスヴィダールよりもバラキエルの方が軽微。

 

 中破し、戦闘継続が難しいキマリスヴィダールに比べ、片腕と装備の大半を失ったとはいえ、それでもバラキエルは未だ戦闘可能である。

 

 しかしネフィリムシステムを搭載し、体の大半を機械化したロキを相手に、此処まで食い下がるとは思ってもいなかった。

 

 相応の努力をしてきた事は認めざる得ないだろう。

 

 「それでもだ、そこが貴様の限界だよ。決着だ。あの世でアインに詫びてくるがいい!!!」

 

 「そうはいかない!!」

 

 再び放たれたパイルバンカーに頭部が抉られるものの、生き残ったスラスターを総動員し、バラキエルを突き飛ばす。 

 

 「まだ足掻くか!?」

 

 「当たり前だァァ!!」

 

 そして突き飛ばされたバラキエルを追いながら、戦艦の装甲に刺さったランスを掴み取ると、速度を緩めず特攻する。

 

 「オオオオオオオオ!!!」

 

 「ボードウィィィン!!」

 

 レールガンの迎撃に削られながらも、止まらないキマリスヴィダールの一撃がバラキエルを貫いた。 

   

 「ガアアアアアア!!」

 

 「グゥゥゥ、終わ、りだッ……グレイ!!」

 

 加速した状態のまま、僅かな逡巡と共にガエリオはドリルニーを展開。

 

 そのままコックピット目掛けて叩きつける。

 

 当然、胸部に槍が刺さり、加速に耐えるバラキエルに避ける暇など、ある筈がなく。

 

 「そんな、今度こそ、クランクニ尉の仇を、ボードウィンを、この手で……なあ、アイン、俺は」

 

 続きの言葉が口にされる事は無く、装甲を貫通したドリルニーに巻き込まれたロキは、怨嗟を晴らす事も、消化する事も出来ぬまま、あっけなく磨り潰された。

    

 

 

 

 グラズヘイムを背に陣形を組み、待機している複数の部隊。

 

 彼らこそロトが残していた最後の部隊にして、グラズヘイムを守る最終防衛ラインである。

 

 此処を突破されれば、それこそ後がない。

 

 そんな彼らの前に、艦隊戦を繰り広げる戦闘が近づいてくるのが見えた。

 

 アレがグレゴリとギャラルホルンの艦隊だろう。

 

 「あれがグレゴリの戦艦か。デカイな」

 

 最終防衛ラインに配置されていたガンダムグシオンリベイク・フルシティは、ハルバードを肩に担いで、今か今かと出番を待っていた。

 

 「あの中にいる筈だ」

 

 これがおそらく最後の機会になるだろうと、何となく昭弘は感じていた。

 

 何故かは分からない。

 

 この戦いの決着が近づいているからかもしれないが、どちらにせよやる事は変わらない。

 

 「命令を果たす。そして昌弘、お前を」

 

 操縦桿を握る手に何時も以上に力を込めた昭弘は、迫り来る戦闘を見つめていた。

 

 

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