不器用な復讐者(リメイク版)   作:粗茶Returnees

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 本当は昨日更新するつもりだったのです。8時半からの午前中だけのバイトのつもりがまさかの残業。家に帰ったら19時。現場でのバイトなので体力尽きて執筆できず!
 
 では本編どうぞ


18話

「おらどうした。本気で来ないと死ぬぞ?」

 

「こいつッ!」 

 

 

 これ以上被害を出したくない疾斗は、会場内で戦闘しているため周りを気にしながら戦っていた。どちらも近接戦を得意とするが、シオンの方が上手である。疾斗はシオンがこれ以上何もしないように邪魔しに入り、自分が負けないようにするだけでも一苦労なのだ。そこに周囲への気遣いも入れば当然目に見えて劣勢となる。

 無論シオンもそのことを理解している。10年の付き合いだ。疾斗の性格を分かっているからこそ、そこを利用する。優勢になったところで魔法も使用し始める。しぶとくてしつこい疾斗をこの場で退場させたかったからだ。ジェイルが放ったガジェットは当然駆逐される。それまでの時間でナンバーズは任務をこなし、シオンもそれに合わせて疾斗を倒さないといけない。しかし、シオンの予想を上回ることが一つだけあった。

 

 

「なめるなよ!」

 

「!……覚醒していたか」

 

 

 そう。疾斗の覚醒だ。防戦一方だった疾斗が戦闘場所を会場の上空へと転移させたのだ。原初の魔法(アーク)を扱うものは等しく覚醒が可能だ。しかし、魔剣と契約した人間は他の人間とその条件が異なってくる。魔剣との絆や志し、そして全てを捧げる覚悟。そういったものが必要になる。それも一方的では駄目だ。魔剣、この場合はリアラの方も疾斗の思いに見合ったものを示さないといけない。

 初の契約者である先代を守れずに死なせたこと。それがネックになりリアラは応えられずにいた。しかし、今日になって疾斗に応えられるようになった。何があったかはシオンの知るところではないが、覚悟が決まったリアラの援護は厄介である。なぜなら、レイシアとの駆け引きに食らいつくのだから。

 

 

『とはいえ、疾斗がリアラの求める力を示せるかは別よ』

 

「そうだな。それに、覚醒したところで使い方を理解してなければ無意味だ。ここで叩くぞ」

 

「気合でなんとかしてやるわ!」

 

『疾斗はシオンとの戦闘に集中してください! 魔法は私がなんとかします!』

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 ガジェットやナンバーズとの戦闘。それに機動六課の意識は削がれていた。だが、ジェイルの目的は地上本部などではない。彼の目的は作戦に必要な人物を回収すること。作戦の下準備が終わり、回収の最適な日となるのが公開意見陳述会だというだけだ。ガジェットやナンバーズの多くを機動六課の足止めに向けさせ、二人のナンバーズとガジェットを六課の宿舎へと向けさせた。

 もちろん機動六課側も最低限の守備を用意している。部隊長八神はやての守護騎士であるシャマルとザフィーラを残していた。しかし、やって来たナンバーズことオットーとディードは二人を上回っていた。時間が経てば経つほど守護騎士は劣勢となっている。

 

 

「良く持ちましたね」

 

「しかしもう次で終わりです」

 

「ぐっ……」

 

「ザフィーラ!」

 

「シャマルは結界に集中していろ!」

 

 

 守護騎士はどれだけ言葉を飾ろうとプログラムでしかない。どうしても進化と言えるほどの成長を見込めない。しかし、培った経験を活かすことはできる。そして八神はやてという主への絶対的な忠誠、彼女に応えるという執念。それらはオットーとディードが理解できないことであり、そのために思わぬ反撃を受けるのだ。そして、さらに二人が予想していなかった事態に陥る。

 

 

「そうだ。シャマルは結界に集中していてくれ。ザフィーラもガジェットの破壊に回ってくれていい。ここは私が引き受ける」

 

「……!リインフォース!?」

 

「なっ! なぜここに!」

 

「疾斗の指示だ。六課を空けたら襲撃されるだろうからここに向かってくれと。途中で人型ガジェットなるものに妨害されて遅れたが」

 

「……すまない。この場は任せる」

 

「ああ。同じ主を持つ守護騎士として、この場は私が守りきろう」

 

 

 夜天の書の管制人格にして最強の守護騎士であるリインフォース・アインス。彼女がこの場に来ることは誰も予想していなかった。その圧倒的な魔力量を惜しみなく、そして無駄なく使用するリインフォースの蹂躙が始まった。リインフォースはシグナムとの近接戦すら制する猛者だ。複数の魔法を同時に制御しながら格闘戦を始めることもこなしてしまう。

 ジェイルの目的を見抜いているリインフォースは、オットーとディードを倒せばその守護に向かおうと考えていた。しかし、状況はさらに反転する。突如現れたその人物は、リインフォースの魔法を全て消し去り、その拳を防いだ。

 

 

「うひゃぁー。リインフォースがいるとはね〜。ま、想定はしてたけど、二人をここまで圧倒するとは」

 

「アリ……シア……?」

 

「あなた……まで」

 

「二人は休んでていいよ。残ってる人型ガジェットをさっき改良したからザフィーラはそれで動けなくなるし、リインフォースをここで抑えとけばアタシ達の勝ちなんだから。シャマルが結界を解けばそれで六課は終わりだからシャマルも動けない」

 

「……まさか……! アリシア!」

 

「シオンがもう容赦しないって決めたから。だったらアタシもそれに応えるだけだよ。シオンを独りにしないためにも、罪を全部背負わせないためにも!」

 

「罪と分かっていてやるのか。お前たちは」

 

「ヴァルケンリッターにだけは何も言われたくないね」

 

「……そうだな」

 

 

 アリシアは専用デバイスであるアスカロンを変形させる。右手に剣を持ち左手に銃を持った。先程のリインフォースの戦闘を見たのと、今の(・・)己の状態を考慮したものだ。機動六課の宿舎上空には、アリシアが消したリインフォースの魔法を収束させたものが待機させられている。全力を出したことが裏目に出たというわけだ。シャマルが結界を解いた瞬間アレが放たれ、宿舎は確実に崩壊する。そしてそれは残っている非戦闘員の犠牲を意味する。

 

 

「私がアリシアに勝てばいいだけのこと」

 

「アタシはもう負けないよ。シオンと歩んでいくって決めてるから」

 

「その先が闇しかなくてもか……」

 

「闇かもしれないけど、光もあるかもしれない。未来は誰にも分からないし、自分で創るもの。そうでしょ?」

 

「それもそうか。……もう言葉は届かないか。助けてくれたことに報いたかったが」

 

「悪いけど受け取れないね。全部に片がついたらデザートを作ってくれてもいいんだよ?」

 

「ならそれでいこう」

 

 

 軽やかに言葉を交わすこともやめ、全てをかけた戦闘が始まる。リインフォースが次から次へと魔法を仕掛けてはアリシアが追いかけるようにそれを消す。しかし、もう上空へとそれを集める余裕はない。時に消し、時に操作権を強奪して他の魔法やリインフォースへと放つ。リインフォース本人はそれを躱しながらアリシアへと接近する。

 

 

「"グラビトン"!」

 

「なっ! ……この……力は……!」

 

 

 リインフォースの予想をアリシアが超えた。重力を操作し、リインフォースを地面へと叩きつけたのだ。森羅万象にまで干渉し操作する。これができたのは夜天の書の初代主にして魔導王と呼ばれた人物だけだった。

 

 

「"夜天の……翼"……くっ……!」

 

「……まさかこの力に逆らって飛べるとはね」

 

「全ての魔法には対処できるものがある。……初代はそうなるように魔法を開発していたからな」

 

「凄い人だね。でも、アークに魔法で対処するのは限界があるよね?」

 

「その前に勝つ」

 

「わりと脳筋だよね」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「はぁ〜〜疲れたよ〜。シオン労って〜」

 

「ひっつくな暑い」

 

「労ってくれないとヤダ〜!」

 

「……チッ。……お疲れ様。アリシアのおかげでだいぶ楽ができた」

 

「えへへ〜。どういたしまして! ご褒美のチューは?」

 

「調子に乗るな」

 

「ちぇ〜」

 

 

 ジェイルたちの隠れ家とは別にあるシオンたちの隠れ家。開戦した以上共に行動する必要がなくなったため、シオンたちはここへと戻ってきたのだ。間違いなく最強の魔導士であるリインフォースとの戦闘は、覚醒したばかりのアリシアには厳しいものだった。実戦でどこまで通用するかを確かめつつ戦わないといけないからだ。それでいて選択を間違えれば落とされる。とてつもない緊張感と集中力があったのだろう。だからアリシアはシオンにひっついて疲労を取ろうとしているのだ。

 

 

「シオンの方はどうだったの? 疾斗は?」

 

「邪魔が入って時間切れだ」

 

「邪魔? 誰?」

 

「大和大雅。あいつ地上本部の防衛を後回しにしてこっち来やがった」

 

「うわ、何してんだろうね地上の守護者は。でもシオンなら二人同時でも勝てるでしょ?」

 

「言ったろ。時間切れだ」

 

 

 シオンが言う時間とは、ジェイルたちの作戦が完了するまでの時間のことだ。現在の管理局最大の切り札と言われる人物が、陸に所属しているにも拘わらず地上本部を守らないとはシオンもアリシアも考えていなかった。さすがに時間がかかりすぎてしまうため、時間になるまで二人を相手取ることにしたのだ。古代ベルカ時代の人物であれば、シオンに勝る人もいた。しかし、現在で古代ベルカの人物はいない。

 

 

「シオン。ナハトが起きたわよ」

 

「そうか。アリシアはいい加減どけ」

 

「は〜い。ナハト〜! ぎゅ〜っ!」

 

「アリシア……苦しいです」

 

 

 5、6歳程の小さな少女がレイシアと一緒にシオンがいるリビングへとやって来た。今アリシアに抱きつかれているこの少女は、10年前の闇の書事件でシオンが回収した闇の書の闇だ。数年かけて暴走プログラムのみを排除し、本来の防衛プログラムの姿に戻された。腰まで伸びるウェーブがかった銀髪で銀の瞳をした少女。数百年間人の姿をしていなかったために本来の姿に慣れてなく、リハビリをしては長い眠りについていた。

 

 

「ナハト。起きてそうそうで悪いが、お前の力を使わせてほしい」

 

「大丈夫ですよ。前々からシオンが言ってたことじゃないですか。それに、わたしもシオンについて行きますから」

 

「……嫌な思いをさせるし、痛い目にあう」

 

「覚悟してます」

 

「本当にいいんだな?」

 

「はい」

 

「……ありがとう」

 

「そんな心配しなくていいって! アタシがナハトの側についてるから!」

 

「それはそれで心配ね」

 

「酷くない!?」

 

 

 小さな少女すら戦場に出さないといけない。その方がシオンの作戦が行いやすくなるが、この子を外に出さなくても問題はないのだ。だからシオンはしつこく確認した。そしてナハトはそれでいいと言い切った。覚醒したことで魔導王と同じ領域に至ったアリシアが支える。最良の形と言えるだろう。

 ジェイルの目的だった人物、ヴィヴィオはルーテシアがガリューと共に回収した。ギンガもナンバーズの手によって回収され、アリシアが寄り道して帰ったことでシオン側についた。……実際にはスバルと本気で戦うためだけに一時的に管理局に敵対するということだが。模擬戦では無意識のうち手加減してしまう。次はそうならないようにするためにアリシアが暗示をかけたのだ。ジェイルやクアットロは面白くないと言ってブーイングしていたが、アリシアの笑顔と言う名の圧に屈した。

 

 

『やぁやぁシオンくん! ご機嫌いかがかな?』

 

「今悪くなった」

 

『寂しいこと言わないでくれたまえ! まぁ馴れ合いはこのぐらいで終わらないとね』

 

「同感だ。共闘の必要が無くなったからな」

 

『ゆりかごはもうすぐ動かすよ。君の方もそれに合わせてか、その後にでも動くんだろうね』

 

「まぁそんなとこだな。それがどうした」

 

『そんな君にサプライズ(・・・・・)を送っておいたよ! 喜んでくれると嬉しいなぁ!』

 

「サプライズ?」

 

 

 具体的なことを聞こうとしたその時だった。隠れ家の入り口から魔力反応が現れたのは。そして、入り口の隙間から漏れて見えてくる魔力光は虹色(・・)だった。シオンは急いでシールドを張り、そのすぐ後に砲撃が放たれた。

 

 

「……まさか……」

 

「久しぶりですねシオン、レイシア。まさかあなた達に会えるなんて思ってませんでしたが、会えて嬉しいですよ」

 

「オリヴィエ?」

 

「はい。オリヴィエ・ゼーゲブレヒトです。そしてごめんなさい。私はあなた達を殺さないといけないようです」

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