──『聖王のゆりかご』
かつて、古代ベルカ時代において聖王家が所有していた兵器。他のモノが到達できない高度にまで飛び上がることで一方的に戦局を自軍の勝利に導く戦艦。それを動かせるのは聖王家の人間のみ。そして動かせば最後。その者は命を落とすまでゆりかごの動力と化す。まさに最強最悪の兵器と言える代物だ。
それを現在動かしているのは、最後の聖王と呼ばれるオリヴィエ・ゼーゲブレヒトのクローンであるヴィヴィオだ。強制的に起動者にされたのだが、オリヴィエはそんな自分のクローンを気にかけることなくある部屋へと入って行く。
その部屋にて捕らえられ、気絶させられているアリシアは手足を拘束されて吊るされる。オリヴィエがアリシアを捕らえたのは、シオンを誘き出すためであるのだが、それだけではない。もう一つの理由が存在し、そのためにはアリシアが気絶したままではいけない。
「がっぁっ……!」
「現代のスタンガンって便利ですね。程よい加減で電流を流せるので殺してしまう心配がいりません」
「ゲホッゲホ……、聖王とは思えない言動だよね」
「なんとでも言ってください」
アリシアの意識を無理矢理戻させたオリヴィエは、用済みとなったスタンガンを後方へと投げ捨てる。スタンガンでいたぶるなどという陳腐な目的ではないらしい。
一方、アリシアは意識を戻すやいなやすぐに現状の把握に努めた。視線をオリヴィエから少しも離さず、それでいて自分の状態、場所、目の前にいる人間の分析。多少混乱しようとも思考を止めないのはオリヴィエも感心するほどだ。
──シオンの隣に立つ
その目的のために研鑽を積むことをやめなかったのだろう。そしてその弛まぬ努力の結果、見事にシオンの隣を堂々と立てるほどの実力者となった。そのことには素直に賞賛するオリヴィエだが、許せないことがあるのだ。
「シオンの隣にいることは幸せですか?」
「……そうだね。人に指を刺されることになることのほうが多いけど、それでもアタシはシオンと一緒にいることを選んだもの。後悔なんてないよ」
「この状況になってもですか?」
「アタシが未熟だった。それだけのことだよ」
「
「愚問だね。覚悟の上だよ」
──バキィィ!
「……なるほど。見事ですね」
オリヴィエが取った行動は単純なものだ。己の拳をアリシアの腹部へと全力で叩き込む。それだけだ。しかし、アリシアもそれぐらい予想していた。予想ができていれば手を打てる。アリシアは
「さっきも言ったけど、伝承の聖王オリヴィエらしくないよね」
「伝承とはそのままの姿が残るものではありません」
「そうだね。それで? 無駄とわかってても殴るのかな?」
「あなたこそ何も分かっていませんね。あなたが頼みにしているアーク。
「え?」
──ビィーービィーー
アリシアの手足を拘束する錠。それらから鳴り響く音。それがいったい何なのか、その正体は続いて流れる音声でアリシアも理解することができ、そして同時に顔を青ざめることになる。
オリヴィエがなぜ無駄だと言ったのか。アークは解析ができなくなっているというのに、なぜそんなことを言ったのか。それが分かったからだ。
『
「……うそ……!」
「アークが解析できないのは現代では失われた技術だからです。古代ベルカではアーク使用者は少数派だっただけ。無論研究も進められていました。そして次々と開発された物の中にこの一つがあるのです。完全にアーク使用者を封じる錠が」
「そんな……ぐぉっ! ぁ、ぁぁ……」
「すみません。逆恨みであることは理解していますが、お腹を殴ってしまいました。
「っ!? な……なん、で……?」
「生命の息吹を敏感に感じ取れるもので。……羨ましいですね。私はそういう体ではないので。しかも彼との子ですか」
次第にオリヴィエの目から光が消えていく。その瞳から読み取れるものはただの憎悪だ。それも並大抵のものではない。アリシアが今までで見たことがないほどの激しい憎悪。それが今のオリヴィエを形どっているとさえ言える。
「私がどれだけ望んでも決してできなかったこと。それをあなたは成し遂げたのですね。本当に……妬ましいですね」
「おね……がい……。この、子を……傷つけないでぇ」
アリシアは涙を流して懇願した。己が愛する人との間に宿った生命だ。たとえ自分がどうなろうとも宿った生命だけは守りたい。母となる者が皆思うことだろう。女性ならその気持ちを汲み取れることだろう。
実際にそこまで考えて懇願したわけではない。純粋に己の子を守りたいという本能に従ったまでのことだ。
「えぇ、えぇ。分かっていますとも。子供には何の罪もありませんからね。先程お腹を殴ってしまったことは謝ります。ですがこの憎悪をあなたにぶつけることはやめません」
「……うん」
「なので、あなたの膣を壊しましょう」
「……え?」
「二度と子を成せない体になっていただきます。あぁ安心してください。子宮までは傷つけませんから、今いる子供は帝王切開で産めますよ」
「ぁ……ぁぁ……」
「腕はともかく脚を閉じて拘束したのは間違いでしたね。開いていただかないと」
「やめて……やめてよぉ……!」
せいぜい痛めつけられるのだとアリシアは思っていた。しかしオリヴィエの憎悪はその上をいった。二度と子を宿せないようにするということは、つまりアリシアを己と同様の立場に引き下げるということだ。
それでも既に宿している子の生命を奪わないのは、シオンの子供だからだろう。己の願いとは違う形とはいえ、惚れた男の子であることには変わりがないのだから。
とはいえアリシアを徹底的に嬲ることには何の躊躇いもない。アリシアの言葉を無視しているオリヴィエは、鎖を動かし強制的にアリシアの脚を開かせる。その身がバリアジャケットに守られていても、オリヴィエの前ではただの衣服と同意義だ。
「あっ……ん、やめっ……」
「シオンはこういうことを頑なに拒む人です。それでも彼の子を成せたということは、シオンに拒否権がない状態にまで持っていけたということ。その手段は私も予想できないでしょう。それはともかくとして、彼は前戯も程々にしかしないでしょう」
「んっ……く、ふっ……」
「そんなわけで、あなたにはまず最初に際限なく絶頂してもらいます。壊すのはそれからです」
「やっ……あっぁ」
手足を拘束され、頼みの綱であるアークも封じられたアリシアは一般女性と同じだ。そんなアリシアの秘部に伸ばされるオリヴィエの指。撫で回され、侵入され、陰核さえも的とされる。逃れることのできないその高まりにアリシアは身をよがらせる。
次第にその口からは甘い吐息が漏れ、それを自覚したアリシアは必死に声を抑える。彼女の秘部からは液が漏れ出し、オリヴィエの指によって鳴らされるその水音もまたアリシアを追い詰める要因となった。
「耐えようとしたところで人の体は素直なものです。淫らに喘いでくれていいのですよ?」
「だ……ぁ……れがっ、ぁっ……ふっぅ」
「あなたがその気でも耐えられないものは耐えられません。気丈に振る舞うのも構いませんよ。それがどこまで保つかを楽しませてもらいますから」
「あっ……く、しゅみ……だ……ぁっ、ね。……んぁっ!」
「段々と抑えられなくなってきましたね。そろそろ一度達して快楽に溺れてください」
「や、だぁっ!」
「っ!!」
悲鳴ともとれるアリシアが拒否する声に応えるように一振りの剣がオリヴィエを強襲する。アリシアの相手を楽しんでいたオリヴィエであったが、周囲への警戒を怠っていたわけではない。その場から跳ぶことで一気にアリシアから離れたオリヴィエはその剣を躱す。
「随分とお早い到着ですね? シオン」
「はっ。むしろ遅れた方だわ。ゆりかご内にガジェットを馬鹿みたいに配置しやがって」
「シ……オン……?」
「ごめんなアリシア。遅れた」
距離を取ったオリヴィエから拘束されているアリシアへと視線を移したシオンは、すぐにアリシアの拘束を破壊した。力が抜けきっているアリシアは自分で立つことができなかったが、それを察していたシオンはアリシアを大切に抱きかかえる。
自分の身がもう安全だと理解できたアリシアは、その安堵と同時にシオンに体を預けきる。動かないながらもシオンの存在を実感するために。
「辛い目に合わせた。俺の責任だ」
「そんなこと、ないよ。アタシが、弱かったから……」
「オリヴィエは間違いなく最強だ。"聖王の鎧"に頼り切ることなく己を鍛え上げたし、天賦の才能がある。俺でも五分五分になる相手なんだから、アリシアは自分を責めなくていい」
「でも……」
「いいんだ。アリシアはもう何も気にしなくていいし、戦う必要もない。ここからは全部俺がやる」
シオンの足を引っ張ったと思い、後悔するアリシアをシオンは否定した。そんなことは一切ないのだと。もう頑張らなくていいのだと。それでもまだ気にするアリシアの口をシオンは自分の口で塞いだ。
「その子のこともある。だからアリシアは戦うべきじゃない」
「……シオン」
「大丈夫だ。信じてくれ。俺は誰にも負けないし、戻ってくるって」
「信じたいよ。……でもそれフラグに聞こえる」
「ははっ! それだけ元気ならよかった」
言葉だけであるが、アリシアは普段の調子を少しずつ取り戻した。そんなアリシアの唇ともう一度己の唇を重ねたシオンは、防護結界でアリシアを守る。そうしてからオリヴィエへと視線を戻した。
「わざわざ待ってたのか」
「接近していれば魔力弾を浴びせられることくらい分かっていますからね」
「さすが、と言ったところか。……だが、随分とらしくないことしてくれたじゃねぇか」
「私らしさをあなたが語るのですか」
『言うようになったね、オリヴィエ。言いたいことはいろいろあるけど、それは後でいい。まずはアリシアを虐めたことの報復をさせてもらうわ』
「一切の容赦はしねぇからな」
「えぇ。受けて立ちましょう」
一つだけ何でもお願いを聞く、なんてものがありましたからね。