不器用な復讐者(リメイク版)   作:粗茶Returnees

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24話

 

 時はシオンがアリシアを連れてゆりかごから出た頃に戻る。

 

 ジェイルが開発し、地上にも大量に放出していたガジェット。その多くは管理局も対抗策を持っていたが、最後に開発された人型ガジェットには苦戦を強いられていた。人型ガジェットも当然のようにAMFを展開するが、脅威なのはそれだけではない。人型ガジェットたちは常にデータを収集し、自分の動きを何度も洗練させる。そしてそのデータは人型ガジェット同士で共有される。つまり、ガジェット数が多ければ多いほど、それぞれが戦えば戦うほど強くなるのだ。

 そんな厄介なガジェットに、スバルとティアナは道を塞がれていた。

 

 

「ティアやばいよ! アタシ達もゆりかごに行かないといけないのに!」

 

「分かってるけど……! こいつら厄介すぎる! っ! スバル横!」

 

「え……」

 

 

 ティアナの援護を受けながらガジェットと戦っていたスバルだったが、建物の間から高速接近するガジェットには気づけなかった。ティアナも気づいた時には既にガジェットがスバルに肉薄していた。相棒を守るのが自分の役目。そう決意していたティアナは、己の失態を悔いた。

 何のための自分なのか。何がランスターの弾丸を認めさせるだ。肝心な時にできないではないかと。

 

 人型ガジェットの刃がスバルへと届こうとしたその時、

 

 ──オレンジ色(・・・・・)の魔力弾がガジェットを撃ち抜いた

 

 

「え……」

 

 

 何が起きたのか分からないティアナとスバルは、その場で硬直してしまう。スバルと対峙していたガジェットがその隙をつかないわけもなく、目の前にいるスバルを斬ろうとする。そのガジェットの背後から忍びよった人物によってそのガジェットもまた破壊される。ガジェットの心臓部を的確に貫いた拳。その拳に装着されているデバイスに二人は既視感を覚える。

 そう、スバルとギンガ(ナカジマ姉妹)が扱う物と類似しているのだ。

 

 

「他に気を取られてるようじゃまだまだね。精進なさい。スバル」

 

「か、母さん(・・・)

 

「あれが……スバル達のお母さんのクイントさん……」

 

「あれで二児の母とか信じられねぇだろ? 俺もビックリしたもんだぜ」

 

「っ! ま、さか……」

 

「ん? もしかして忘れちまったか? それはショック死できるぜ」

 

「にい……さん……? でも……なんで……」

 

 

 急襲したガジェットを撃ち抜いたのは、ティアナが目標としていたランスターの弾丸の体現者であるティアナの兄──ティーダ・ランスターだ。そしてガジェットの心臓部を拳一つで貫いたのが、スバルとギンガの母──クイント・ナカジマだ。二人とも死んだはずの人間である。死んだと思っていた肉親が生きていた。これほど嬉しいことはないだろう。

 しかし、二人は素直に喜べずにいた。死んだはずの人間の記憶を保持して生み出された存在を既に知っているからだ。その再現度があまりにも高いオリヴィエという偉人を。つまり、二人は目の前にいるそれぞれの兄と母がその類の存在ではないかと疑ってしまうのだ。

 

 

「あー、まぁオリヴィエ様のそっくりさんがいるから疑っちまうか」

 

「仕方ないことだけど、ここはあなた達しだいよ? 私たちは事件を裏で引いていた本当の黒幕の思惑通りになるように死んだことになっていた。実際にはシオン君に助けられて潜伏生活をしていたのだけどね。事態が事態だし、黒幕をシオン君が倒したらしいからこうやって堂々と出てきたってわけ。……ゼスト隊長には先に会っておきたかったけど」

 

「それは仕方ないっすね。シオンが認めるほどの騎士ですから。自分の生き方に従順でしょうし」

 

「これだから男ってのは……」

 

「あ、あはは、でも他の方は先行されてるのでしょう(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「そうね。なんとかするでしょうから、あとはメガーヌね」

 

 

 ゼスト隊が壊滅した事件。しかし、その真相は誰も死んでいないのである。死んでいないとバレるわけにもいかないため、クイント同様他の隊員たちも少数に分かれ、潜伏して生きていた。その隊員たちもまたこの日に動き、ゼストの下へと勝手に集まろうとしている。

 

 

「たしかレリックが必要なのでは?」

 

「そんな甘えは許さないわ」

 

「え?」

 

「叩いて起こす。それだけよ」

 

「いやそんな無茶な……」

 

 

 ここにきてのまさかの脳筋発言。自分ではクイントを止められないと分かっているティーダは、メガーヌが無事に目覚めることを祈るしかなかった。二人の話についていけてなかったティアナとスバルは、話に区切りがついたと判断し、本当に生きていたのだと信じることを伝える。身内が信じないでどうするのだと。

 

 

「ガジェットのことは俺たちに任せてくれ。二人はまだやることあるだろ?」

 

「うん。ゆりかごに行くのと、シオンをみんなで捕まえること」

 

「ハードルたけーなー。ちなみにシオン戦には俺たち加担できねぇから。一応恩人相手だし、いろいろと話した仲だし」

 

「そっか」

 

 

 共闘できればよかった。まだまだ未熟ではあるが、成長した姿を兄にすぐ隣で見てほしかった。そう思っていたティアナだが、ティーダの決意は固い。どう転がろうとシオンとの戦いには加担しない。それはシオンにも伝えていることだ。ティーダは少し寂しさを匂わせるティアナに心の中で謝り、胸ポケットから1枚のチップを取り出した。

 

 

「……俺の戦闘データが纏まってるやつがここにあるが、使うか? 参考にはなるだろうぜ?」

 

「兄さんのデータ……。ううん、大丈夫。私は私の力で、なのはさんに教わって、スバルたちと鍛えてきた私の力で戦う。ティアナ・ランスターの弾丸を見せつけてくる!」 

 

「ティア……。へへっ、立派になったな。兄ちゃんは嬉しすぎて涙が止まらねぇぞコンチクショー!!」

 

「ちょっ! 恥ずかしいからやめてよ!」

 

 

 最愛の妹が成長している。その事に感慨深いものがあったらしく、ティーダは場所を気にせずにティアナに抱きつきながら涙を流した。言葉の綾などではなく、ガチ泣きである。

 

 

「ティーダくんは面白いわよねー」

 

「母さん……」 

 

「スバル、あなたはあなたの道を進みなさい。私もシオン君とは戦わないけど、その代わり人型ガジェットはみんなで殲滅しておくから」

 

「う、うん」

 

「それとギンガの居場所教えてくれる? あの子にも手伝ってもらうから」 

 

 

 もう一人の愛娘であるギンガ・ナカジマ。敵に捕縛され、スバルと戦い敗れた子。そのギンガは左腕に装着していたナックルをスバルに渡している。まだデバイスを持っているとはいえ、この状況下では危険だろう。ギンガが取る行動を予想していたアリシアが、ギンガ用のデバイスを開発しクイントに持たせている。クイントはそれをギンガに送り届け、共にゼスト隊と合流した後、殲滅戦を行おうと考えている。

 それを聞いたスバルは、ギンガと別れたポイントのデータをクイントに渡した。同じ箇所にいるか分からないが、そこまで行けば魔力痕を元に合流が望める。

 

 

「機動六課で鍛えた拳。しっかりと振り抜いてきなさい!」

 

「うん!」

 

 

 現場を二人に任せ、ティアナとスバルは機動六課のヘリに乗り込むべく移動を開始する。それを阻もうとするガジェット達は、クイントとティーダによって尽く破壊されていた。

 

 

 

 

 

 

 場所は違えど、エリオとキャロもまた同様の状況になっていた。エリオたちは自分たちの隊長であるフェイトの下へと向かいたかった。それを人型ガジェットによって阻まれていたのだ。 

 

 

「キリがない……!」

 

「フリードに乗せてもらっても向こうも空を飛べるし……」

 

 

 エリオは人型ガジェットを両断しながら、次々と現れるガジェットたちに悪態をついた。キャロの援護もあるが、疾斗に直前まで鍛えられていたこともあり、人型ガジェットに苦戦を強いられずに戦えている。それでも敵が現場に到着する方が早く、終わりの見えない戦いになっていた。

 

 

「どうすれば……」

 

「単純に考えりゃいいんだよ」

 

「え?」

 

「あらよっと!」

 

 

 突如現れた成人。その者が獲物を一閃するだけで、エリオ達の視界に映る限りのガジェットが両断される。斬られたガジェットが爆散する数が多いとこから、エリオ達が認識できていなかったガジェット達も斬られたことが伺える。

 

 

「疾斗さん!?」

 

「フェイトのとこまで行くんだろ? 俺も同行するからさっさと行こうぜ。早く六課の態勢を整えた方が良さそうだ」

 

「どういうことですか?」

 

『戦いの終幕が近いですが、同時に最後の大きな山場を迎えるということです』

 

「要はシオンを倒さねーとなって話だ。どうせ管理局の戦力を総動員するわけだし、バラバラじゃ意味ないからな」

 

 

 誰もシオンが負けるどころか膝をつかされる場面を目撃したことなどない。どうすれば勝てるのか誰一人そのビジョンが浮かんでこない。しかし、これだけ荒れた戦いを終わらせるためには、そして事後処理とその後の治安を考えると管理局が勝たなければならない。これまで統治し治安を守ってきた組織なのだから。

 最後の壁を乗り越える。その決意をエリオとキャロが固める。最後にして最大の決戦を迎えるために。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「冥王……だと……?」

 

「だからなりそこないだっての。イクスの方が才能も資格もあった。だからイクスを冥王にすべく親父は俺を国から追い出した。聖王家と敵対しない証として、俺を人質に出したんだよ。冥王の力は現王から引き継ぐことで初めて覚醒する。俺はそうならなかったから、こうして中途半端な力しか使えないのさ。マリアージュとか作れねぇってな!」 

 

 

 まぁそれでもこいつらに負ける気はサラサラないんだけどな。出会ってからずっと共に戦ってきた相棒のレイシアもいない。アークは使えなくはないが、廃人コース。回復を待つこともできるけどな。厄介な連中は他の対処に追われてるからまだ来ないし。なのはとはやてはゆりかごの中。フェイトはジェイルが潜んでいた場所。疾斗はガジェットの対処……どうせ救助活動もしてるか。大和のやつはティアマトの相手がまだ終わっていない。クロノは宙にいて、ユーノは戦闘力が無いに等しい。守護騎士たちは、ヴィータもゆりかごの中で、ザフィーラとシャマルは負傷してる。シグナムはたしかゼストを追いかけてるんだったな。そしてそのゼストはこっちには来ない。十分アークの回復は可能だな。

 

 

「冥王の力……正確にはその一部と俺の素質。それで生み出されるのがこの焔ってわけだ。その辺のレアスキル程度に思ってたら痛い目みるぜ!」

 

 

 包囲されていようと関係ない。その包囲網に合わせて円形に焔を作り、速度重視で放つ。威力は下がるが、この能力なら威力など関係ない(・・・・)

 

 

「な、なんだこの焔は!?」

 

「当たったらお前らの負けだ。消えないからな」

 

 

 盛った言い方をしているが、戦いにブラフはつきものだ。管理局は俺の評価を高くしているから、そういう力でもおかしくないと考える。本当は消し方がある焔だ。簡単には消えないし、一般局員にはできないことだろうからどのみち消えない焔だ。

 回復魔法を掛ければ治る──程度のものではない。むしろ回復魔法は悪手だ。焔の威力が増すからな。では反対に攻撃魔法を当てればいいのかと聞かれると、それも違う。せいぜいギミックに悩みながら退場していけ。

 

 

「他所見してていいのか?」

 

 

 中には防がずに避けた局員もいる。当然のことながら焔に当たらなかった局員も。そいつらが軒並み味方を案じて、俺から目をそらしているのは笑えないな。戦場にいる自覚が足りない。

 俺は前方でそうしている局員に接近し、焔で作った剣を振るっていく。シールドを張ろうと、それ諸共斬る。先程の円と違って剣は魔力を練り混んでるからな。魔力の低い局員たちのシールドで防げる道理はない。そしてこいつらの動きも遅い。対応も悪い。この程度じゃ傷一つ負わされない自信がある。

 

 

「こいつ……くらえ!」

 

「自分でくらえ」

 

 

 この包囲網は隊ごとに纏まっているらしく、俺は今一つの隊を潰したようだ。隊が潰れるとすぐに離れた位置にいる隊から砲撃が放たれる。管理局員お得意のバスターだ。だが俺に遠距離魔法は通じない。威力を上げて跳ね返すからだ。跳ね返った魔法になすすべ無く吹き飛ばされる局員たち。この程度で勝てるのは興ざめが過ぎるぞ。

 

 

「一掃するか」

 

 

 焔を上空へと打ち上げ、空で爆散させる。その瞬間その場で魔法陣が展開される。局員たちの包囲網を納めるほど大きな魔法陣が。魔法陣の展開が終わると、瞬く間に魔法陣から無数の焔の矢が放たれる。

 

 

「ぐあっ!」

「うっ!」

 

「これを対処できないんじゃあお前たちに世界を統べる資格はない」

 

「戦う力が全てではない。そして弱いからこそ仲間と戦う。それが人というものではないか?」

 

「……なんだ、最初に来たのはシグナムか。六課が纏まってくると思っていたが」

 

「シグナムだけではないぞ」

 

「へー。さすがは騎士だな。状況次第じゃ手負いでも出てくるか」

 

 

 シグナム、ザフィーラ、そしてシャマル。ゆりかごにいるヴィータ以外の騎士たちが姿を現す。サポートが仕事のシャマルまでこの場に来るのは、覚悟を決めているからだろう。剣を構えるシグナムと人型になったザフィーラが肩を並べる。騎士のこだわりの一対一を捨てたようだ。

 

 

「騎士の名が廃るぞ?」

 

「それほどの相手だということだ。主に勝利を捧げるためであれば我らの誇りなど軽いもの!」

 

「忠誠心高いな。んじゃまぁせいぜい死なないようにな!」

 

 

 同時に駆け、シグナムの剣を防ぐ。俺の剣は焔で作られている。剣を防いだ瞬間その剣から焔を砲撃のように放つなど造作もない。それにより後退したシグナムとタイミングをずらしてきたザフィーラへ回し蹴りを放つ。ザフィーラは攻撃よりも防御の方が得意だ。不意打ち気味に蹴りを入れようとしてもしっかりと防がれる。

 手負いなのにザフィーラの反応速度が早い。そのことに舌打ちを放ちすぐにバックステップで距離を取る。ザフィーラの防御を崩すことに意識を向けているとシグナムに斬られるか、シャマルに嵌められるからだ。

 

 

「さすがに心得ている」

 

「何度もお前たちの戦いを見たからな」

 

「やはり正面から叩き斬るのみ、か」

 

「シンプルにいこうぜ?」

 

 

 時に剣を振るい、時に拳や脚を振るう。数による劣勢は、同等の力か相手のほうが力が強い時に起こるもの。そしてこの場はそうではない。劣勢になどならない。シグナムの剣もザフィーラの拳も脅威になりえない。

 

 ──だから仕掛けが完成する

 

 

「ぐあああぁぁ!」

「がぁぁ! これ、は……!?」

 

「シグナム! ザフィーラ!」

 

「お前たちがよく動いてくれるからすぐに引っかかってくれたな」

 

 

 用意したのは地雷だ。踏みぬけば俺が仕掛けた焔が足元から噴出し包み込む。異常な反応速度でない限り避けられない仕掛けに、シグナムとザフィーラは見事に引っかかった。戦う最中に仕掛けられるとは思っていなかったんだろうな。そしてこれもまた例に漏れず消えない焔だ。この焔を知っているからこそシャマルは何もできずにいる。

 

 

「意気込みはいいけど、まだまだだよなぁ。プログラムだから成長もないわけだし、仕方ないけど」

 

 

 二人の動きが良かったのも、シャマルのサポートがあったからだろう。しかしそれも最早意味がない。そしてシャマルには打つ手がない。唇を噛みしめるシャマルに慈悲を与えるわけもなく、焔の玉を生成し投げ放つ。接近すればその場で爆発する仕掛けだ。シャマルは避けられない。そのはずだった。

 

 

「間一髪でセーフ!」

 

「疾斗か。思ったより早かったな」

 

「慣れたら簡単に倒せるものさー。シグナムとザフィーラの焔も消してっと。シャマルは二人を連れて下がってて」

 

「わ、わかったわ」

 

「それじゃあ最終戦だな。一対一じゃ勝てねーから、俺も拘りを捨ててみんなで挑ませてもらう!」

 

「結果は変わらんさ」

 

 

 疾斗を先頭に、六課のフォワード陣と大和まで揃ってる。遠目に見えるティアマトはまだ生きてるようだから、誰か別で頼める人がいたのだろうな。

 

 言葉は不要。あとは戦って示すのみ。

 

 疾斗と音速の領域で切り結ぶ。その場に留まるわけにもいかず、移動しながら戦うが、ここは疾斗の方が上手。いや、リアラの実力か。空間のアークによって戦闘領域を固定させたようだ。つまり俺が動き回れる範囲が狭まっている。俺と疾斗の動きを終えるようになった大和も戦闘に加わり、俺の足が時折止まるようになる。その隙をティアナが見逃さずに射撃。二人の相手をしながはそれを避けていると、エリオとスバルが疾斗と大和とスイッチして仕掛けてくる。それを切り返したところで、すぐさま疾斗と大和がまた攻撃を仕掛けてくる。さらに厄介なことに、キャロが俺と他の者たちのポテンシャルの差を分析し終えたことだ。

 ブーストを誰にどれだけかければいいのか。それを理解したキャロのサポートにより、俺とのポテンシャルの差が埋められる。誰にどれだけ、そんな細かなことを素早くやりのけたキャロもまた、努力を惜しまずに続けていたのだろう。

 

 だが、そうであっても俺がまだ負けるわけではない。

 たしかにこのままでは押し切られるだろう。二人一組となったものが二つ。それを対処しながらティアナの精密な弾丸を避ける。キャロによってブーストは継続してかけ続けられている。どう考えてもジリ貧だ。このままでは(・・・・・・)

 

 ──アークの使用

 

 それがまだ残っている。予想よりも早く来られたが、アークの回復が間に合わないわけではない。押し切られる前に使用できるだろう。……本来なら今でも扱えるが、脳への負担を考えると待っている方が身のためだ。そして遠距離ながらにレイシアに抑制されていることも関係している。

 

 このままでは終わらない。終わらせない。

 

 そのはずだった。

 

 

「っ! バインド?」

 

「お、やっと来たかー」

 

「っはぁー。俺たちの勝ちだな」

 

「この程度──」

 

「この程度とは酷いね。僕とクロノが10年かけて開発したバインドだよ?」

 

「使用できるのは僕とユーノが揃っている時だけだがな」

 

 

 クロノとユーノが開発したバインド、か。メタ張り男とバインドマンが10年かけたものなら、なかなか拘束を解けないのも無理はないか。それにしてもなぜクロノがここにいる。ユーノなら納得だが、クロノは宙にいるはずだ。艦隊を率いていなければならないはず。ゆりかごを破壊するのなら。

 

 

「僕がいないといけない理由がなくてね。僕と同等かそれ以上の人に代わりを頼めば問題ないってわけさ」

 

「……リンディか」

 

「頼んだら潔く了承してくれたよ。さてシオン。君を逮捕させてもらうよ」

 

「そのバインドはただ強度が高いだけじゃない。AMFの要素もあるし、アークも抑えるから」

 

「ド畜生か! ……ははっ、アークの分析を済ませたとは、さすがユーノだな。伊達に引き篭もってない」

 

「引き篭もりじゃないからね!?」

 

「シオン相手にその拘束がずっと続けられるとも思ってない。だから気絶してもらうぜ? バカ魔力三人衆のブレイカーで」

 

「まさか……」

 

 

 周囲を見渡しても気配を探っても、バカ魔力三人衆ことなのは、はやて、フェイトの居場所が分からない。俺の察知可能範囲外にいるということか。しかし、そんな場所からどうやって当てる気だ。

 

 

「覚醒したら便利だよな」

 

「あ〜、疾斗、お前の力でやるのか」

 

 

 空間のアークを使う疾斗が覚醒し、離れた場所にいる者の攻撃も難なくこの場に届けられるようにしたらしい。ゼファーも使っていた"ゲート"。それを疾斗が使っている。分かりやすく言えば間の距離を無くす技だ。疾斗は今まで認識してる範囲内でしかできなかったが、覚醒したことによってその範囲が拡大したらしい。頭上に"ゲート"が展開されていて、そこを見れば三人が魔力を溜めているのが見える。

 

 

「それにしても、このアングルか。下着が丸見えだが、疾斗お前変態だろ」

 

「あの三人がゲートに向かって真っ直ぐ撃てる場所にいればよかったの! あんな角度つける位置にいるのがおかしいの!」

 

『疾斗くん。あとでお話しようね? ……シオンくん。助けられたこともあったけど、でも私は管理局員だから。お礼とかは捕まえてから全部するね』

 

『なのはちゃん怖いなー。闇の書事件とかリインフォースの件とか、うちもお礼したいとこやけど、散々胃が痛くなることされたから先に鬱憤晴らさせてもらうわ! あ、大雅くん協力感謝やわー。お互い落ち着いたら食事でも行こなー!』

 

『はやてフリーダム過ぎ。それと胃の痛みの半分は疾斗のせいでしょ。シオン、いっぱい話したいことがある。姉さんも一緒に。二人は全然止まってくれないから、話してくれなかったから、今度こそ話をするために捕まえるね』

 

 

【トリニティ・ブレイカー】

 

 

 かつて闇の書の闇に放ったバカ魔力任せの砲撃。そんなものを一人間相手に使うとは。恐ろしい女に育ったもんだ。ゲートを介することで放たれてすぐに俺へと接近する砲撃。三色の魔力光が一つの砲撃に纏まっているのは実は凄いこと。これだけの砲撃を三人で混ぜ合わせているのだから。誰かの砲撃に飲まれることなく、三色均等に。

 

 視界を覆うほどのブレイカーが迫る。

 

 それをバインドで縛られながら見上げる。

 

 

──あぁ

 

 

──これだから

 

 

 

──お前たちは




次回がラストですねー。急ぎ足な作風のせいで!
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