不器用な復讐者(リメイク版)   作:粗茶Returnees

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25話

 

 今回の事件はJ.S事件という名称で呼ばれることとなった。ジェイル・スカリエッティ率いるナンバーズとの戦闘。聖王のゆりかごの起動と大量に放出されたガジェット。それだけでも管理局の対応は手一杯だった。でも管理局が対応しないといけなかったのはそれだけじゃない。シオン・ブラストハイツ……このファミリーネームは産まれのファミリーネームではないみたいだけど、とにかくシオンとその契約者であるレイシア。協力者であるアリシアと、完全に闇を取り除かれたことで理性を手に入れた元闇の書の闇であり、防衛プログラムにして再生プログラムであったナハトヴァールことナハト。人数は少なくても全員が管理局のエースを軽く超える実力者。最後のダメ押しおしてシオンに召喚されたティアマトも本来なら大隊が複数必要な存在。そんな二勢力を同時に相手にしないといけなかった。

 その局面を多大の被害と犠牲を払いながらも乗り越えられたのは、フリーで活動していた疾斗と夜天の書最強の守護騎士であるリインフォースの存在。そして、シオンたちとジェイル・スカリエッティ勢力が仲違いしたから。ジェイルスカリエッティによって生み出された最後の聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの完璧なクローン。彼女がシオンたちに大打撃を与えた。

 

 シオンとの最後の戦闘もそれが響いていた。

 

 壊滅したと思われていたゼスト隊の復活。その隊長で地上の守護神たるゼスト・グランガイツの復帰。それによって爆発的に士気が上がった地上部隊は次々にガジェットを破壊。ゼスト隊と二代目守護神大和大雅の部隊、そしてティアナの兄ティーダがティアマトの撃退を遂行。全員「逃げられた」と討ち取れなかったことに落胆してところに、好戦的な面が伺えた。エリオとキャロが対峙し、保護したルーテシア・アルビーノの母メガーヌ・アルビーノは、ギンガとスバルの母クイント・ナカジマの鉄拳で本当に目を覚ましたのだとか。ティーダがドン引きしながら話していたから話を盛ったわけでもないようだ。

 地上本部はゼスト隊の復活によって持ち直せるらしい。本当に存在が大きいようだ。

 

 クロノ提督たち海の部隊は、リンディ総督の指揮の下、無事にゆりかごの破壊に成功。10年前のナハトヴァールの件があるから、リンディ総督は何度も確かめたらしい。軽くトラウマ案件なようだ。独断で地上に降りてきてたクロノ提督は、本来なら責められるところだけど、シオンとの戦闘に重要な役割を果たしていることで黙認されてる。本人は責められても言いくるめられる用意をしていたようで、無駄になったと愚痴っていた。でも口元が緩んでいたから、他の部署の思考が柔軟だったことには喜んでいると取れる。そのクロノに協力したユーノ司書長は何もなかったように無限書庫に戻ったけど、彼の力と頭脳はむしろこれから頼りにされるから、その前に少しでも休んでおきたかったのかな。たぶん先んじて資料を集めてるだろうけど。

 

 機動六課も事後処理に追われてる。そもそも機動六課の宿舎が壊されてるから、活動拠点とする場所が今もアースラとなっている。所属が地上だから、地上の復興に手を回すことになってる。捕えられたナンバーズたちは、留置所に送られている。その中でも協力的な人たちは、厚生教育を受けた後に釈放される。そうでない人達は留置所に捕らえられたままになる。今回の鍵となった少女ヴィヴィオは高町なのはが引き取ることになった。たぶんフリーランスの疾斗も力を貸す。というか早く身を固めてほしいところ。

 

 その疾斗たちは、管理局がどうしても後回しにしがちな案件を優先的にこなしてる。そうするために疾斗はフリーになっているから。契約者であるリアラと協力してるリインフォースも同じ。

 

 

 ──だいたいこんなところかな。何か聞きたいことある?」

 

「俺を裁く準備はできてるのか? フェイト」

 

「あいにくとできてないよ。だってシオンって管理局が切り捨ててきた人たちをずっと助けてきてたでしょ? その人たちがシオンを釈放するように訴えかけてきてるし。シオンにかけられてた罪状の9割が冤罪。そしてシオンが今回初めて殺した人たちはみんな裏で犯罪に手を染めてた」

 

「そういう奴らを殺したからな」

 

「ねぇいつからなの? いつから疾斗と協力してたの? 今回シオンに殺された人たちの犯罪歴を、疾斗が資料にまとめてはやてとクロノとリンディ母さんに渡してるんだけど」

 

初めからだよ(・・・・・・)。10年前から手を組んでた。完全に利害が一致するわけじゃないから敵対はしていたが、管理局の腐ってる部分を潰すってことだけは協力した」

 

 

 あいつはヒーローを目指してるからな。ヒーローが見捨てられる人たちを放っておくわけがない。協力して汚職してる奴らを特定していったが、そいつらを殺すのが俺の目的の一つ。そいつらを法にてらして処罰するそれが疾斗の考えだった。俺が殺した以上疾斗の負け。纏めてた資料をクロノたちに叩きつけるしかなくなるってわけだ。

 

 

「シオンはなんでわざと(・・・)捕まったの? 10年前に回収してたジュエルシードを利用して私達のブレイカーを防いだのに」

 

「8年前と同じ理由だ。単純に疲れたんだよ」

 

「じゃあまた抜け出す気?」

 

「そりゃあな」

 

「もちろん助けるよ」

 

「っ! 姉さん!? どうやってそこに!」

 

「やっほーフェイト。アタシ相手にこんなとこじゃ何も守れないよ?」

 

 

 突如として現れたアリシアにフェイトが驚愕しながらもバルディッシュを構える。だがフェイトがそうしたところでアリシアには手が出せない。なぜならアリシアは俺の隣にいるからだ。

 

 

「なんで助けに来たお前が同じ牢に入ってんだよ」

 

「面白いかなーって。どっちにしても助けられるしさ! ちゃーんとみんなで来たから」

 

「みんな? しまっ! ぐっ……!」

 

「申し訳ありません執務官殿。私達には彼が必要なので連れ出させてもらいます」

 

「相変わらず優しいのね。問答無用で気絶させればいいのに」

 

「レイシア、まだ怒ってます?」

 

「怒ってないわよナハト。苛ついてるだけ」

 

 

 それは怒っていると言うんじゃないのか。まぁでも怒らせてる原因が俺だからここは黙っておくとしよう。オリヴィエがフェイトを組み伏せてバインドで縛る。オリヴィエのバインドは固いからすぐには解けないだろうな。というかオリヴィエとレイシアとナハトがフェイト囲むて、イジメにしか見えないぞ。それとアリシア抱きつくな。

 

 

「今なら二人きりだね!」

 

「檻挟んで向こう側に四人いるけどな」

 

「アタシ以外の女は気にしちゃ駄目だよ。それとナハトは幼いし」

 

「幼女趣味はねぇよ。……意外と独占欲あるのな」

 

「まぁね〜」

 

「アリシア。喧嘩なら買うわよ。脱出した後にでもどちらが相応しいか決めようじゃない」

 

「レイシア落ち着いてください」

 

「とりあえず出るぞ。アリシア頼む」

 

「オッケー! 聞いたレイシア? 頼まれたのはアタシ。つまりアタシが相応しい!」

 

 

 なんでいちいち煽りに行くのだろうか。この後の展開が怖すぎるんだけど。オリヴィエとナハトが二人がかりでレイシアを抑え、勝ち誇った顔のアリシアが転移魔法を展開させる。

 

 

「シオン……!」

 

「じゃあなフェイト。久々にゆっくり話せて楽しかったぜ」

 

「お姉ちゃんたちを捕まえられるものなら捕まえてみてね〜」

 

「ところでアリシア。どこに飛ぶか決めてるのか?」

 

「ランダムだよ!」

 

 

 やっぱりな。俺とレイシアはこれに慣れているから、「またか」とため息をつくだけ。だが慣れていないナハトとオリヴィエは冷や汗を書いてる。少なくともそんな恐ろしいところに飛ぶことはないんだがな。滅多に。

 

 

「──で、案の定どこぞの空からスカイダイビングってわけだ」

 

「全員飛べるから心配いらないでしょ?」

 

「空!? なんで空に!? わけがわからないです!」

 

「ナハトがパニックになってるようだけど?」

 

「あれー?」

 

 

 スカイダイビングを想定していなかったナハトがパニックに陥り、飛行魔法を行使していない。近くにいたオリヴィエがナハトの手を掴んだから心配はいらないな。怪我なく地上に降りられるだろう。最初に俺が降り立ち、ふざけたアリシアが俺の背に抱きつくように降りる。それに不満を抱いたレイシアが俺共々アリシアを蹴飛ばして着地。オリヴィエとナハトは我関せずと周囲の確認を始める。

 

 

「っつつ。そういやオリヴィエは生きることにしたのな」

 

「はい。シオンの言うとおり世界を見てみようかと。それと言い忘れていましたが、オリヴィエの名前は名乗らないことにしました。彼女に失礼ですから」

 

「そうか。じゃあなんて呼べばいい?」

 

「リールです」

 

「分かった。これからよろしくなリール。名前通りになれる生活を保証してやる」

 

「はい!」

 

 

 完全にオリヴィエとの決別を決めたんだな。それなりに長かった髪も切って肩あたりで整えてるし、ストレートにしている。リールと和解も兼ねて握手をしているだけなのだから、後ろでコソコソ喋るな。

 

 

「うぇっ!? な、なな、なんでこないなとこに人がおるん!?」

 

「ん?」

 

「確保ー!」

 

「ちょっとアリシア! ……はぁ」

 

「はいフード取ってー。おぉ! みんな見てみて! この子すっごい可愛いよ!」

 

「なっ! か、かわいいやなんて……うちはそんな……」

 

「はうっ! 可愛すぎる!」

 

 

 アリシアがノックアウトされたな。鼻血出てるぞ。唯一の絶対的良心であるナハトが心配して処置してるが、俺達はアリシアを放置だ。それよりもこの子……まさか末裔がまだ生きてたとはな。リールとレイシアも驚いている中、俺がその子に近づいて話しかける。長い黒髪をツインテールにして纏めている症状。あいつと同じ透き通った青い目。

 

 

「俺はシオン。他のやつの紹介は後でするが、お前エレミアの末裔か」

 

「う、うん。お兄さんなんでわかったん?」

 

「エレミアとはちょっと縁があってな。名前は?」

 

「ジークリンデ。ジークリンデ・エレミア」

 

「へぇ。いい名前だな。見たとこ修行してるようだな。俺達と行動してみないか? 今より良い修行をつけさせてやれるぞ」

 

「え……」

 

 

 リッドとの関わりが最初にして最後だと思っていた。もうエレミアとは会わないだろうと。だが生きていれば分からないものだな。俺たちに修行をつけてくれた一族の末裔を今度は俺達が修行をつけるなんて。

 

 




 こんな終わり方になりました。彼らは逃亡しながらジークを鍛えるという生活になります。
 拙い文章でしたし、端折ることも多かったですが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!

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