疾斗に肉薄し、何度も刃を交えながら移動する。正確には移動
俺達の目的は既に達成しているし、(ガリューが回収して撤退したから)疾斗と戦う必要もない。ただ、アリシアがリインフォースと交戦している以上、そっちに行かないといけない。負けはしないが、勝てるわけでもない。どちらかといえば押され気味になるからな。撤退させるには俺が行く必要がある。
だが、疾斗もそれぐらい分かっている。だから場所を移しつつも、俺がアリシアの方に行かないように牽制をいれてきてる。
「…メンドーだな」
『ここまで厄介な相手になったのも、シオンの自己責任でしょ』
「まぁな」
「よっと!」
「チッ」
疾斗は剣術だけじゃない。小物を投擲してくるし、相手の無意識の瞬間を狙えるから……こうやって距離を取られる。
「…うし、これでやりあえるな!」
「シンクロしたか…。ま、外に出れてるし、そこはイーブンってとこだな」
「なぁシオン、なんでジェイルと手を組むんだよ?お前のやり方とはあまり合わない気がするんだが」
「話す必要があるか?」
「ないな!」
「……馬鹿だろ」
「話す気がない奴から無理に聞き出すのは、俺のやり方じゃない!ってことで、ジェイルと組むのは看過できないから、止めさせてもらう」
「ふん。お前には無理だ」
「それはどうかな?」
「…っ!」
(こいつ!ますます厄介な技術を会得しやがって!)
相手の動きは呼吸のリズムで掴むことができる。力を入れるときは呼吸が一瞬止まるし、呼吸が乱れたらその分相手にいいようにされる。…まぁ脱力状態からの動きもあるが、それは今は置いておこう。
疾斗は両方できるわけだが、今のは
疾斗のアークは"空間"。一瞬を付く疾斗にはこの上なく合っている能力だ。
「…ワンチャン防がれないと思ってたが、やっぱそんな甘くないか」
「俺のアークのおかげでな」
「そろそろ成長止まれってんだよ」
「終わりなんてない。特に俺の場合はな」
「長生きしてるやつは…違う、な!」
俺以外に今の疾斗の攻撃を防げるやつなんているのか?そう思うぐらいに疾斗の実力は、人の頂点に迫っている。意識外からの攻撃と同時に、刀の存在を見せつけるように振ってくる。刀は剣で防ぎ、意識外からの何かはピンポイントに張ったシールドで防いだ。
俺がなんで防げるかというと、俺のアークが"時"だからだ。洗練されていくと、アークの能力は弱くも自動的に発動される。アリシアや疾斗はその域に達せていないが、俺はその域にいる。そして、俺の場合は"未来視"ということになる。と言っても、直近の未来が見えるだけであり、契約者であるレイシアのおかげで普段は見ることもない。
そんなわけで、戦闘中は制限する必要もないわけで、どう仕掛けてくるか分かっているから防げるというわけだ。
「疾斗こそ、なぜ管理局に手を貸す。お前のやり方と管理局のやり方は異なるだろう」
「俺は管理局の存在自体を否定してるわけじゃないからな。組織だから起きる取捨選択に従いたくない。だからフリーでやってるんだ。…助けれる命があるなら、どれだけ可能性が低くても助けたいって思うもんだろ?そこにメンツなんていらないだろ?」
「当然の思考だな。だが、だからこそわからんな。そう言うならなぜ今管理局として動いている?」
「あ、別にそういうつもりじゃないから」
「は?……くくっ…あぁ、なるほどな。…自由な奴だ」
「シオン程じゃないさ」
俺とジェイルみたいなもんか。…いや、関係はそれより断然良好なんだろうけどな。さてと、時間が経つとこちらが不利になるわけだし…。
「"ベシュロイニグング"」
「っ!…このっ!」
「速さで負けてたら、お前に勝ち目はないぞ?疾斗!」
「リアラ!"天速"!」
『わかっています!』
本来は3倍速程度に抑えるこの加速魔法だが、今回は短期決戦にする。だから5倍にまで跳ね上げて、疾斗に斬りかかる。疾斗も加速技で食らいつこうとするが、なんだかんだで疾斗のことを第一に考えるリアラがサポートしている。同じ速度にまであげることはない。
疾斗は防ぎながらまた移動を始める。今度は森の中に入るようだ。たしかに周りに木が多いと、動きも制限されるからな。だが、俺にはそんなの関係ない。こういうとこでの戦闘にも慣れてる。
「その程度で俺の前に出てきたのか?」
「…まだその時じゃない、って言いわけでも…させてもらおうかな!」
「たしかに…隠し技もあるようだしな。…なるほど、管理局に従ってるわけじゃないってのも納得だ……チッ」
「ん?…あー、やらかしてるなー」
疾斗との戦闘を無視してある方向に急ぐ。どうやら六課の新人フォワード連中の持ち場の近くまで来ていたようだが、ランスターが馬鹿なことをしていた。
「…そこまで無能だったのか」
「なっ!」
「…シオン・ブラストハイツ?…なんで?」
「ランスターもナカジマもここまで馬鹿だったとはな」
まさか自分の弾丸を制御できずに、相方に当てそうになるとはな。今の動きからして連携技のようだが、それを容認するナカジマも馬鹿だ。
「シオン…お前」
「ヴィータか。どういう指導したらこんな無能を晒するんだ?」
「無能…無能って…あんたも…!!」
「…無駄だ。お前程度の弾は俺には届かない。
「っ!!」
「ティーダのやつはもっといい弾を撃ってたぞ?」
「な…んで…」
「ティーダの相手をしたことがあるからな。ま、結果は分かっていたし、
「ま……さか…まさか……あんたが…兄さんを!!」
ぶっちゃけたら、俺はティーダを殺したわけじゃないんだがな。ティーダになんの恨みもなかったし、殺す必要がないからな。
そんなことを言っても、目の前のランスターは信じないだろうな。怒りに任せて無茶苦茶に弾を乱発しているが、どれも俺には届かない。全ての弾丸を反らさせる。
「てめっ!俺の方に飛ばすなよ!」
「敵に飛ばして何が悪い?」
「…あー、こいつらこんなノリで戦ってばっかだったな」
「ヴィータにもプレゼントしてやるよ」
「いらねーよ!…マジで飛ばしてきやがった!」
「馬鹿にしてぇー!!」
「魔力量も多くはないだろうに、そんなに消耗しているいいのか?…それと、バレバレだぞ?ナカジマ」
「がっ!」
ティアナ・ランスター、か。センスは別にティーダに劣ってるわけでもないだろうに、コンプレックスでも抱えてるのか?自分で強みを消してるな。ま、こうやって激情しながらも連携を取ろうとするのは、評価に値するが。それでも詰めが甘いな。
頭上から仕掛けてきたが、奇襲の意味を分かっているのか?声を出してちゃ意味ないだろ。そんなわけで、カウンターにアッパーを入れ、間髪入れずに体を1回転させて踵落としを入れる。もちろん飛ばす方向は、ティアナ・ランスターがいる場所だ。
「…ご、ごめん…ティア」
「きり…かえなさいよ。…あれは…化物なんだから」
「酷いいいようだな」
「いやぁ、俺からしてもシオンは化物だぜ?」
「疾斗も大概だろ」
「ヴィータ、俺を売るなよ」
「うっせ!」
「さてと、そろそろ帰るか」
「逃がすと思ってんのか?シグナムとザフィーラもこっちに向かってる。さすがのシオンも厳しいんじゃねぇか?」
「はっ。リミッター付きのくせによく言えたもんだ。ま、リミッターがなくても関係ないがな」
「どうだかな」
「ヴィータ、俺が
「あん?」
「あ、ヴィータ。今回は負けだわ」
「これ…1人で?」
「…つくづく化物なのね」
上空に巨大な魔法陣を展開し、そこから魔力で作られた無数の剣がその切っ先を覗かせている。これだけの魔法となると、本来それなりの時間を要するのだが、それをアークで省略した。
アークはどれにしても汎用性が高い。俺の"時"のアークで言うと、今やったように時間の省略だな。
「せいぜい死なない程度に足掻けよ。クイントのようにな」
「え…なんで母さ…」
「スバル!」
「"カタストロフ"」
俺の口から、母親の名前が出ると思ってなかったようだな。動きを止めたスバル・ナカジマは、ティアナ・ランスターの声で切り替えていた。それを尻目に、魔法を発動させ、剣を降り注がせていき、その間に移動を開始する。
剣は無造作に注がれるわけではない。ランダムにだが、それぞれの剣が目標に向かって飛来し、追尾機能もある。そして目標の体かその付近に当たれば爆発するようになっているのだ。
『これを使う必要があったのかしら?』
「手っ取り早いだろ」
『もっと敵が多い時か攻城戦でしか使ってなかったじゃない』
「疾斗の足止めには、これぐらいはいるんだよ」
疾斗は俺と違って、魔法もアークもパートナーのリアラ任せだ。それはそういった面のセンスがないからで、こうやって仲間を守らせるようにしたら疾斗もすぐには追ってくることができない。
それでも急ぐ必要はある。疾斗のアークの能力上距離なんてあって無いようなものだからな。
「…リインフォースのやつ、完全に調子を戻したな」
『最強の守護騎士復活ね』
リインフォースは、アリシアを相手に、完全に距離を詰めて近接戦に持ち込んでいた。近接戦はアリシアの得意分野じゃないし、リインフォースの方が上だ。アリシアも粘っているが、あそこまで張り付かれたらジリ貧だな。
俺はさらに移動速度を上げて、リインフォースに斬りかかった。リインフォースは奇襲に驚いてはいたが、ガードを間に合わせ後方へ飛ばされる程度に済ませていた。
「…時間切れか」
「シオン…」
「アリシア、帰るぞ」
「…うん」
リインフォースもどうやらこれ以上は戦わないようだな。アリシアの手を取り転移魔法を発動させる。
暇潰し程度にジェイルの悪巧みに付き合ったが、そこそこの収穫はあったな。目的の物はガリューが回収したし、疾斗の今の技量もそれなりに観れた。何よりも、リインフォースの完全復活が分かったのが大きいな。
…これからは、今までのように気楽にはできないな。
あー、グダグダだ。