そのほうが戦闘は書きやすいと判断しました。
「アリシア、好きなのを注文しろよ。遠慮なんていらない」
「…ありがと。……それより、
「なんでって、夕飯食べるのにレストラン来てるのがおかしいか?」
「そうじゃなくて!あの流れでレストランっておかしくない?ってこと!しかも高級なとこきちゃってるし!」
「アリシア。お金の心配ならいらないわよ。有り余ってるのだし、必要経費としてジェイルから巻き上げるもの」
「そこはいいの!巻き上げるのは当然だからね!」
「いいのか…。なら何をそんなに言ってるんだ?」
「だ・か・ら!あの流れなら帰宅でしょ!?」
肩を大きく上下させながら呼吸を見出しているアリシアから目を離し、レイシアと同時に肩を竦める。この態度にさらに気を悪くしたのか、アリシアは拗ねるようにそっぽを向いてしまった。…仕方ない、経緯を話すか。
「アリシア、今回俺たちは戦うことを目的にあそこに行ってたわけじゃない。それはわかってるだろ?」
「…うん。そうだね」
「ルーテシアが動いたから、六課の気を反らせるために動いた」
「うん」
「つまり、俺たちの戦闘はおまけだ」
「そうなるね。それがどう関係してるの?」
「アリシア、シオンはこう言いたいのよ。『やる予定がなかったことをして、後味が悪い状態でデートを終わらせたくない』ってね」
「……ぇ」
「…んなこっ恥ずかしいことをさらっと言うなよ」
「回りくどかったんだもの。それに私は早く夕ごはんをいただきたいわ」
「本音それだろ…」
「……シオン」
「…なんだよ」
「ありがとう…」
「…っ、…変にしおらしくなるなよな。調子狂うだろ」
「ふふっ、シオンったら照れちゃって♪」
「照れてないから。適当なこと言うな」
あー、くそ。やっぱらしくないことは、するもんじゃないな。レイシアに変にからかわれるし、アリシアが頬を赤くしながらしおらしくなるし、こんな空気ごめんだわ。
メニューをアリシアとレイシアに渡して、強制的に話題を変えさせる。レイシアに呆れられたが、そんなのどうでもいい。俺は早くこの空気から解放されたいだけだ。
「何にするか決めたのか?」
「アタシは決めたよ〜」
「私も決めたわ。はい、シオンも決めなさい」
「ああ。ちょっと待っててくれ」
一通りメニューに目を通して、どれにするか決める。コース料理ではあるのだが、3人とも別々にコースを注文することができる。俺は手早く料理を選び、店員に注文した。
順番に出されるメニューを各々のペースで食していきながら、アリシアからリインフォースとの戦いを聞くことになった。
ーーーーーーー
「シオンの足を引っ張るわけにもいかないし、負けないからね!」
「そうできるかは、アリシア次第だ。"ブラッディダガー"」
リインフォースは、刃を50本出現させ、その全てをアリシア目掛けて射出した。アリシアは瞬時にそれを
「模倣…正確には"
「そうだよー」
「魔法を模倣するのはむしろ本質ではないな。その能力の本質は、『万物の操作』つまり、全てのものを思い通りにする力。物体の変形、魔力遮断、ネットワークの介入…ありとあらゆるものに通用する力…か」
「…さすがにもう隠しきれないか〜。さすがは、あの魔導王の叡智が詰まった夜天の書の管制人格ってことかな?」
「……"デアボリックエミッション"」
「スルーしないでよね!」
リインフォースは広範囲攻撃をしかけ、アリシアも先程と同様に模倣して相殺する。巻き起こる煙からアリシアは少し距離を置き、リインフォースを警戒する。
「この威力…、リインフォース…完全に調子戻したんだね…」
「おかげさまでな」
「っ!!」
独り言のつもりで呟いたのを、リインフォースに聞かれているとはアリシアも思っていなかった。それを聞かれるということは、それだけ距離を縮められてるということだからだ。
「"ディバインバスター"」
「下から!?」
背後もしくは頭上から仕掛けてくるというアリシアの予想は外れ、リインフォースは、アリシアの下からなのはの得意魔法"ディバインバスター"を放った。アリシアは模倣を間に合わせることができず、すぐに避けたがそこでバインドに嵌まってしまった。
バインドもアリシアからすれば、1秒にも満たない足止めではあるのだが、相手が騎士でありリインフォースであるならば話は別なのだ。アリシアが解除するその一瞬で、リインフォースは距離を詰めた。
「これで詰みだな」
「っ!…なめないでよね!"ブラスト"!!」
「くっ…」
アリシアは近接戦が苦手というわけではない。しかし、リインフォースほど近接戦ができるわけでもない。それを理解しているリインフォースは、アリシアとの距離を詰めれば自ずと勝ちだと考えていた。だが、アリシアはそれで諦めるような性格をしていない。
世界を敵に回すことを恐れない、誰が相手だろうと歩みを止めないシオンの横を歩く。そう決めているアリシアが、格上相手に距離を詰められた時の手段を用意しないわけがない。
アリシアは、目の前で行われた魔法しか模倣できないわけではない。記憶に残っているものならなんでも再現できる。アリシアが今行った魔法も、過去に見たものを再現したのだ。その使用者はレイシアだ。アリシアの覚悟を認めたレイシアが、過去にアリシアのためにいくつかの魔法を披露していたのだ。
「…まさか、近づいた敵の魔力を暴走させようとするとは…」
「さすがリインフォースだね。あとちょっと逃げるのが遅れてたらアタシの勝ちだったのに」
「恐ろしい技だな。騎士相手でも対応できるようになったか…」
「そうしないとアタシはシオンの隣を歩けない」
「…なるほど。彼の過去全てを知っているのかは知らないが、その覚悟が本気なのは分かった。だからレイシアもアリシアに協力したのだろうしな。……なら私も出し惜しみはやめよう。まだ体に不安があるが、それは相手に失礼だな」
「出し惜しみしてもいいんだよー?…なんて…」
「何をいうか。騎士に二言はない」
「だよね」
リインフォースは自分でリミッターのオンオフができ、今完全にリミッターを解いた。アリシアがそのことに冷や汗をかいたのは、無理からぬことだ。リインフォースの全力をアリシアは今まで見たことがないのだ。放たれるそのプレッシャーは、間違いなくシオンと遜色ない、つまり"最強"という呼び名に相応しいレベルのものだ。
アリシアは別段最強の一角にいるわけではない。その能力の特性と本人の惜しみない努力で、「魔導士の天敵」と呼ばれるだけに至ったのだ。ようするに、アリシアが"最強"と呼ばれるレベルに一人で勝つことは、非常に難しいのだ。
それでもアリシアは引かない。自前のデバイスである"アスカロン"を構え、リインフォースの動きを見逃さないように神経を張り巡らせる。
……だが、最強というものは理不尽だ。アリシアはリインフォースの接近を見きれなかった。
「がっ!」
「…完全にトッたと思ったが、寸前で不正だか」
「ゲホッ、ゲホ…つっ、速すぎるよ…。でも…もう見切れる」
「さすがはシオンの相方といったところか。だが、防戦一方ではジリ貧だぞ?」
リインフォースは再度接近を試み、アリシアも今度は自分から近づく。アリシアは、レイシアにしか鍛えられていない…なんてことはない。何度も頼み込み、シオンを根負けさせて近接戦を教えてもらっているのだ。だから、どちらかといえば苦手分野である近接戦でも、シグナムレベルの騎士相手に引けをとらない。
アリシアは、両手にそれぞれ握っているガンブレイドを振るう。リインフォースは拳に魔力を纏わせ対抗する。武器がある分、アリシアはリーチで優位に立っているが、密着されればアリシアは負ける。拮抗しているように見える勝負だが、その実押されてるのはやはりアリシアだ。
リインフォースはアリシアの太刀筋を見切り始めており、さらに武器を使わない分瞬時に応用を利かせられるのだ。押され始めているのを理解したアリシアは、今まで振るっていた武器の切っ先をリインフォースへと向け、引き金を引いた。
「"バースト"!」
「っ…。オオォー!!」
「なっ!」
アリシアが振るっていた"ガンブレイド"は、その名の通り剣と銃を合わせた武器だ。見た目こそただの剣だが、持ち手が少しだけ変わっており、そこに引き金がある。それを引けば剣のどこからでも技を放てるのだ。わざわざ切っ先を前に向けたのは、その性質を知らないリインフォースの意表をつくため。アリシアのその目論見は成功したと言えるが、リインフォースはそこで止まらなかった。ダメージを堪え、一瞬の油断が生じたアリシアを拘束しようとしたのだ。
だが、結果的にそれは叶わなかった。シオンが駆けつけ、戦闘に割って入ったからだ。
ーーーーーーー
「…こんなとこかな」
「そうか」
「うーん、真面目に批評させてもらうと、アリシアがリインフォースに勝てるビジョンがないね」
「っ………だよね」
食事をしながらゆっくりと話を聞いたが、…そうか、リインフォースの実力はそれほどあるのか。ある意味、疾斗以上に厄介だな。疾斗は一つを極めて、誰も至れない境地に迫っているが、リインフォースは逆と言える。全ての分野においてトップたりうる技量の持ち主だ。
だが、レイシアの判断は早計と言わざるをえない。なんせ、俺はアリシアが勝てないとは思ってないからな。目を伏せて悔しそうに唇を噛んでるアリシアの頭に手を伸ばす。丁寧に手入れされてるのが分かる綺麗な金髪。サラサラとした触り心地の髪を優しくなでると、アリシアが驚いたように顔を上げた。
「…シオン?」
「安心しろ、アリシア。リインフォースに勝てないと決まったわけじゃない。…むしろ、俺はアリシアがリインフォースを凌駕するほど強くなれると思っている」
「…そんなあからさまな気休めなんていらないよ」
「シオン、私もどうかと思うわよ?」
「気休めじゃない。事実だ」
「いい加減にしてよ!」
「アリシア!!」
「っ!」
「アリシア、俺がこういう時に嘘をつくと思っているのか?」
「それは……でも………だって…わかんないもん……勝てるって思えないもん」
「勝てるさ。…やることは明白だ。アリシアはまだ覚醒してないだろ?」
「…そういえばアリシアはまだだったわね。…なるほど、それならたしかに可能性があるわ」
「え……」
「アリシア、もしかしたらアリシアが俺やリインフォースを差し置いて最強になるかもしれないぞ?アリシアのアークはそれだけの可能性があるんだ」
なんせ今の能力が完全にあの魔導王の下位互換だからな。