真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

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テロ事件

 

 

ガラ・・・・・ッ

 

「・・・・・くそ、ド派手にやってくれたもんだな」

 

「た、旅人・・・・・」

 

四方八方、上を見れば瓦礫で外の景色を遮断している。

そんな状況に俺と英雄様、揚羽様といた。

 

「旅人・・・・・血が・・・・・」

 

「俺のことは心配しなくていいさ」

 

「だ、だが・・・・・胸に鉄柱が・・・・・っ!」

 

震える声で俺の胸から突き出ている鉄柱に九鬼揚羽が指摘した。

絶え間なく血が流れ出ている。

 

「心臓には突き刺さってはいないが、肺がやられたようだな。

呼吸がし辛くくてしょうがない」

 

口の端に流れる血も拭う事もできずにいる俺は瓦礫を支えている状態で佇んでいる。

さて、どうしてこんな状況になったのか、それは二日前に遡る。

 

 

 

 

 

「旅人、我と英雄と共に外国へ行くことになった」

 

「外国?急にどうしたんだ?」

 

「うむ。我が父上の仕事を見学をするためだ」

 

「父親の・・・・・帝様だっけ?まだ一度も対面いないけど」

 

「その通りだ。我らの護衛として、一緒に来てもらう事に決定したのだ」

 

「俺なんかよりヒュームとクラウディオの方が良いんじゃないか?

俺はまだ1000位の従者だぞ?」

 

「お前は我の執事であるぞ?位などどうでもよく、お前はヒュームを倒した者だ。

母上も了承してくれた」

 

「・・・・・そうか、だったら従うしかないな。その前にあいつらを川神院に預けてくる」

 

「すまないな」

 

「仕事だ。あいつらも渋々と納得するだろう」

 

と、俺は九鬼姉弟と外国へ行くことに決まった。滞在期間は二日間。九鬼家専用ジェット機に

乗りこんで早数時間、二人の父親がいる外国へと辿り着き、空港から出れば出迎えの車に乗り

込んでしばらく。

 

「父上と会うのは久し振りであるな」

 

「うむ。実に楽しみだ」

 

二人は顔を緩ませて今か今かと楽しみにしている。

世界中に飛びまわる父親と再会するのは一年で十回以上が良い方だとか。

 

「帝様はどこにいるんだ?」

 

「九鬼財閥の所有地にある建物の中におられる。場所は・・・・・」

 

英雄が九鬼帝の居場所を教えてくれた。

 

「へぇ、やっぱ当主だけあって凄いところに働いているんだな」

 

「そうであろう?我らもあの建物に入るのはこれで二度目なのである」

 

「そうか、それでも今日は帝様と一緒に過ごすんだろう?だったら親孝行と、

マッサージをしたり一杯話をしたりしてな。仕事ばかりで癒しも必要だと思う」

 

「フハハハ!無論、そのつもりである!」

 

九鬼帝からの誘いで外国に来た俺達。九鬼姉弟は久し振りに会う父親との再会に

楽しみにしていた。

 

 

―――???

 

 

「ジュンビハトトノッタ。ワレラノイギノテッツイヲ、ゴウマンタルクキケノモノニクダストキ」

 

『イーッ!』

 

「サクセンハ、アスノ1000ジニケッコウスル」

 

『イーッ!』

 

「・・・・・ソノヘンジハドウニカナランノカ?」

 

 

―――富裕層のとあるビル

 

 

とあるビルの前に車が停車する。俺達は車から降りて、ビルの中へと入る。

ビルの中は外国人が大勢あちらこちらへと歩き、仕事を務めていた。

受付の女性に話しかけて九鬼帝の令嬢と子息が来たと話せば、YESと答え、

どこかに連絡をし出した。少しして、受付の女性が最上階へ九鬼帝がいると教えてくれた。

 

「ありがとう」

 

「・・・・・」

 

ニッコリと笑みを浮かべて礼を言ったら、受付の女性が顔を赤く染めた。

九鬼英雄と九鬼揚羽を引き連れてエレベーターに乗り込み、最上階へと目指す。

 

「そう言えば、どこで寝泊まりするんだ?」

 

「この建物には社員達が寝る部屋があるのだ。我らもその用意されている部屋に寝る」

 

「と言う事は、食堂もあるんだな?」

 

「である」

 

頷く英雄。九鬼家の建物は豊かな施設で多いことだな。

 

チーンッ。

 

しばらくして、エレベーターは最上階で停まった。左右に扉が開き、足を進めて廊下を歩く。

その最中に幾つものの扉が視界に入る。この階の部屋で寝るのかな?

そんな事を思っていれば、二人は他の扉とは違う凝った扉の前に立ち止まった。

九鬼揚羽はノックする。

 

『おう、入れ』

 

あっさりと許可したな。二人は笑みを浮かべてドアノブを掴んで、回し、押し開いた。

部屋の中に入ると、堂々と―――扉の前に立っていた一人の男がいた。

 

「久し振りだなぁ!揚羽と英雄!」

 

ガバッ!と二人を抱きしめた。髪にヘアピンを多く付けていて、額には×の傷がある。

この男が九鬼帝・・・・・。

 

「「お久し振りです、父上!」」

 

二人も嬉しそうに抱きしめ返して、久し振りの再会を喜ぶ。

気配を消してしばらく様子を見続けること数分。

 

「お?ヒュームとクラウディオじゃない執事だな?」

 

「初めまして、九鬼帝様。九鬼揚羽様の従者であり、

九鬼家従者1000位、旅人です。以後、お見知りおきを」

 

「1000位?思っていたより全然低いな。

揚羽、こうは言いたくないんだけど色々と大丈夫か?」

 

「フハハハ、父上。旅人は九鬼家従者になって数年ですが、

ヒュームを何度も倒した実力者ですぞ」

 

「あのヒュームをか?そいつは・・・・・信じらんねー」

 

胡散臭そうに俺を見る。まあ、口で言っても実感はないだろう。俺もそうだしな。

 

「と言うか旅人?それは偽名だな?」

 

「九鬼家は能力があればどんな人材でも採用すると聞いたが?」

 

「お、当主である俺にそんな口を訊くなんて珍しい従者だな」

 

「因みに―――」

 

どこからともかく箱を取り出した。蓋を開けると九鬼帝は目を見開いた。

 

「あなたの好きな食べ物は揚羽様から聞いている。なので、餅を作って持ってきたぞ」

 

「おお、用意が良い奴だな。丁度、食べたいなーと思っていたところだったんだ」

 

「クラウディオには敵わないさ」

 

どうぞ、と餅が入った箱を渡せば、嬉しそうに餅を掴んで食べ始めた。

 

「ん、んめぇな、これ・・・・・今まで食べた餅の中で・・・・・ん、上位に入るぞ・・・・・」

 

「満足してくれたようで嬉しいよ」

 

全部持ちを食べ終えたら九鬼帝は満足そうに息を吐いて、俺に話しかけた。

 

「おう、旅人。お前の名前を覚えたぞ。これからも俺達に力を貸してくれ」

 

「できる限りの事は尽くす」

 

「ほんと、他の従者とはまた違う奴だな。面白い、気に入ったぜ」

 

ははは!と笑い、踵返してソファーに座りだした。九鬼揚羽と九鬼英雄は九鬼帝の隣に

座って雑談をする。気配を殺してジッと壁際に佇む。

 

 

∞                   ∞                      ∞

 

 

「はー、俺が見ない間にお前らは随分と楽しそうに暮らしているんだなー?

友達もできたと聞いてびっくりだぜ」

 

「フハハハ、旅人と共に行動すると楽しく、面白いことがいっぱいです」

 

「おうそうか。とうか、局がショックを受けるほどの料理ってどんだけ美味しいんだ?」

 

「総料理長になれるほどの腕前ですぞ」

 

「それでまだ1000位かよ?変な従者だな。もっと位を上げたらいいじゃねぇか俺が許す」

 

「帰国次第、母上にそう申し上げます」

 

「おう、言っておけ。本当にヒュームを倒したかどうだか知らないが、

本当なら一桁の位になっても可笑しくはないからよ。・・・さーて、飯にでもしようか」

 

「でしたら、旅人に作らせてはどうでしょうか」

 

「旅人に?んー、そうだな。餅も美味しかったし・・・・・作らせてみるか」

 

「そう言うわけだ、旅人。頼めれるか?」

 

「了解。で、厨房は?」

 

「50階のところにあるぜ」

 

下に指を差す九鬼帝。俺は頷いて―――足元の床に穴を開いてシュンッ!と落ちた。

 

「ぬお!?あいつ、落ちたぞ!?」

 

「窓から落ちたかと思えば、今度は床に落ちる・・・・・旅人は摩訶不思議であるな」

 

「ただいまーっと」

 

「はやっ!?って、もう飯を作ってきたのか!?

というか、床から出て来たってどんだけなんだ!?」

 

「父上、ツッコムことが多いですな」

 

苦笑する九鬼揚羽。俺はテーブルに健康第一の料理を並べ始める。

そんな時、九鬼帝が問うてきた。

 

「旅人・・・・・お前は何なんだ?」

 

「九鬼家の従者だけど?」

 

「そう言う意味じゃねぇよ。お前の本質に問うているんだ」

 

「それだったらノーコメント。従者になる際に、

俺の詮索をしないことに条件で働いているんだから」

 

「無理にでも詮索したらどうなるんだ?」

 

「仕事を辞める」

 

サラリとそう告げた。

 

「サラッと言うな。自分から仕事を辞めるだなんて言う従者は聞いた事がない」

 

「名前通り、俺は旅人だからな。世界中を旅する放浪人であるからして、

また旅をすればいいだけのこと」

 

「へー、お前って旅してんの?」

 

「数年前までは・・・・・ほら、夕飯の準備ができた。食べな」

 

「おう、いただくぜ」

 

九鬼帝を始め、九鬼揚羽と九鬼英雄も料理を食べ始めた。

 

「さっきの話の続きだけどよ、どこまで旅をしてきたんだ?」

 

「神奈川県の川神市だ。居心地がいいから長居してしまった。今では従者として働いている」

 

「んじゃ、いつかは辞めてまた旅に出るのか?」

 

「そのつもりだ」

 

肯定する。これは本心だ。何時までも働く気はない。俺は元の世界へ帰るんだ。

こんなところで何時までも・・・・・。

 

「そうかよ。そんじゃ、それまでしっかり働いてもらうぜ」

 

「そうさせてもらう」

 

揚羽から視線を感じながらも頷く。

 

 

―――某部屋

 

 

「オーフィス、出て来て良いぞ」

 

虚空に言うと黒いオーラが俺の体から飛び出してきて、

目の前で集束しつつオーフィスが現れた。

 

「悪いな、遅いけど食べようか」

 

「ん、一緒に食べる」

 

何時でもどこでも一緒にいるオーフィス。俺もそうだけど、二人は一心同体・・・・・てな。

用意した料理を食べる。俺の膝の上でオーフィスは静かに食べるが、

たまに俺の顔を見上げては、

 

「あーん」

 

と、食べさせてくれる。俺もお返しにと食べさせる。そんな事を繰り返していると。

 

コンコン。

 

ドアにノック音がした。オーフィス・・・・・いいか、このままで。

 

「入って良いぞ、揚羽様」

 

ガチャリとドアが開き、部屋に揚羽様が入ってきた。寝巻き姿でだ。

 

「む・・・・・オーフィス、何時の間に・・・・・?」

 

「オーフィスの事は気にしなくていいさ。

それより、どうしたんだ?良い子は寝る時間だぞ?」

 

「そう言う旅人はまだ寝ないのであるか?」

 

「俺、腹が減った、だから飯を食べていた」

 

「であるか」

 

ドアを閉めて、俺が寝ようとするベッドの上に座りだした。

 

「さっきの問いに答えてくれないか?どうしたんだ?」

 

「・・・・・」

 

九鬼揚羽は沈黙した。でも、俺達が食べ終わる頃にようやく口を開いた。

 

「旅人は、また世界中に旅をするのか?」

 

「旅人だし、そうするつもりだ」

 

「九鬼家で働くことよりも重要なのか?」

 

「俺の人生だ。俺が何をしようと、どんなことをしようと周りにとやかく言われても、

俺は俺の道へつき進む」

 

オーフィスと一緒に歯を磨いて、

歯磨きを終えればもう一つのベッドにオーフィスと寝転がる。

 

「揚羽様と出会ってもう数年だな。今では中学生だ。時の流れは早い」

 

「そうであるな」

 

優しく、オーフィスの頭を撫でてやると目を瞑り小さく寝息を立てる。

ギュッと、コアラのようにしがみ付いて俺から離れようとしなくなった。

 

「なあ、旅人」

 

「なんだ?」

 

「世界を旅して、なにを求めている?何を探している?」

 

「・・・・・」

 

「自ら世界中に行かなくとも、我が九鬼家の情報網で知り続ければいいと思う。

お前ほどの有能な者を、野に放浪させるのがとても惜しいのだ」

 

尻目で揚羽を見ればこっちに視線を向けていた。

 

「いや、我は・・・旅人とずっと一緒にいたい。

その気持ちがここ最近強くなってきておるのだ」

 

ベッドから降りて、俺達が寝転がっているベッドに乗ってきた。

 

「これは・・・・・この感情は・・・・・寂しさから来るものなのか?それとも・・・・・」

 

恋愛感情からくるものなのか・・・・・?

と中学生の九鬼揚羽が俺の顔を上から見つめる形でそう問いかけてきた。

 

「・・・・・俺から言えるのは、その気持ちを自分で気付くべきだ」

 

「旅人・・・・・」

 

「その人の気持ちは自分だけのものだ。他の人から教えてもらって気付くこともあるが、

俺はそんな甘くはなくて、自分で気付くべきだと思っているんだ」

 

九鬼揚羽の頭を撫でる。サラサラとした銀髪が手の平で感じる。

 

「それに、俺は誰かと・・・・・」

 

言いかけたその口を俺は閉ざした。この事を今の九鬼揚羽に言うのは酷だろう・・・・・。

言うのならば、もっと成長したときに言おう・・・・・。

 

「・・・?」

 

「何でもない。それより・・・・・揚羽様はここで寝るつもりか?」

 

「うむ。そうするつもりだ。

ふふふ、英雄以外の異性と寝るのは初めてであるから少し緊張するな」

 

布団の中に潜り込んで、顔を恥ずかしそうに朱を染めるが、

頭を俺の腕に置いて視線を向けてくる。

 

「・・・・・お前の体から伝わる体温・・・・・心地好いのだな」

 

「そうか?」

 

「ああ・・・・・心から安らぐぞ・・・・・こんなことならば、もっと早く・・・・・」

 

ウトウトと、九鬼揚羽は眠たそうだった。そして、完全に目が瞑って寝息を立て始めた。

 

「お休み、揚羽様・・・・・」

 

そう言うと、九鬼揚羽は俺の体に抱きついてきた。もっと俺の温もりを全身で感じたいとそんな風に・・・・・。

 

 

∞                    ∞                     ∞

 

 

―――???

 

 

「ジカンダ、サクセンヲジッコウスル」

 

『アイアイサー!』

 

一誠たちの知らないところに闇が動き出そうとする。

 

 

―――揚羽side

 

 

「えっ、次の外国へ行く?」

 

「ああ、悪いな。本当なら今日は俺の仕事を見て学ばせるつもりだったんだが、急用だ」

 

「そうですか・・・・・」

 

「今度、日本に帰ったら家族揃って遊園地に行こう。約束する」

 

二人を抱きしめる。少しして立ち上がり、俺に顔を向けて口を開いた。

 

「旅人、俺の家族をよろしく頼んだ。守ってくれ」

 

「この二人は、仕事ばかりのお前の方が心配すると思うぞ。

疲労と心労で体を壊してぶっ倒れんじゃないぞ」

 

「ははは、本当にお前は面白い奴だ。俺に敬って言っているのか?

友達と接するような言い方だぜ」

 

「半々と言ったところだ」

 

「そうかよ。だが、俺はそんなヤワじゃないさ」

 

九鬼帝は数人の護衛と共にこの部屋から出ていこうとする。

 

「じゃあな、旅人。次に会う時にも餅を作ってくれ。ありゃあ美味かったからな」

 

「ああ、約束しよう」

 

頷き肯定する。九鬼帝はこの部屋からいなくなった。九鬼揚羽と九鬼英雄は窓に近づき、

地上を見下ろし続けた。しばらくすると、そこに九鬼帝と護衛がビルから出て来て、

車に乗り出すと車は発進した。時計を見ると9時59分だった。

 

「飛行機の時間は?」

 

「我らの専用ジェット飛行機は何時でも飛べれるぞ」

 

「そうか、それじゃ俺たちも日本に帰るとしようか」

 

訊ねると二人は頷いた。

 

「む?」

 

「姉上?」

 

窓から離れようとしたその時、揚羽は不思議そうに声を発してかと思えば窓の外を凝視した。

 

「どうなされたので?」

 

「いや・・・・・飛行機が見えるな・・・・・と」

 

「飛行機ですか?それは別に珍しくとも・・・・・」

 

「そう言う事ではない」

 

九鬼揚羽の視線を追えば、確かに飛行機が見える。しかし・・・・・このビルに向かってくるようにも見えるのは一体・・・・・・。飛行機はどんどん距離を縮めてこっちへ―――。

 

「おい、まさか・・・・・!?」

 

俺は物凄く嫌な予感がして、

二人を抱きかかえてこの部屋から出て一気に階段を降りていった。次の瞬間。

 

ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

爆発したような轟音が鳴り響く!その衝撃でこのビル全体が激しく揺れて、

動きを止めて二人を守るように体で隠した!

 

「な、何事だ!?」

 

「さっきの飛行機がこのビルに直撃したんだ!」

 

「な、なんだと!?」

 

驚く九鬼揚羽だが、そんな暇はすぐになくなった。

下から銃を発砲するような音と悲鳴が聞こえてきた。

 

「こ、今度は何事だ!?」

 

「・・・・・これは・・・・・」

 

階段の隙間を覗きこむ。―――一瞬だが、銃のような物を持った人間が階段を上がってくるのが

見えた。

 

「(テロか!)」

 

「旅人!この状況はなんなのだ!?教えてくれ!」

 

九鬼英雄が懇願する。九鬼揚羽も真意を知りたいと視線を送ってくる。

そんな二人を廊下に連れ出してこの状況を説明した。

 

「・・・・・テロリストがこのビルに侵入している」

 

「「っ!?」」

 

「目的は知らないけれど、ここから脱出するぞ」

 

「ま、待て!このビルにいる民達を救ってくれ!」

 

「英雄様、俺が最優先することはお前達二人を安全な場所へ非難させることだ」

 

「我の事よりまず、父上と共に働いている者達の救助の最優先だ!」

 

「だが・・・・・」

 

「頼む!」

 

英雄様が頭を下げた。

しかし、俺が口を開く前に遠くからテロリストが姿を現して持っていた銃を発砲しだした。

 

「ちっ!」

 

二人を抱えて、床に穴を開けて一階下に降り立つ。

―――その廊下に血まみれで倒れている人々がいた。

 

「「・・・・・っ!?」」

 

その光景に目を丸くした九鬼揚羽と九鬼英雄。

悔しそうに唇を噛みしめては涙ぐみ、体を震わした。

 

「・・・・・」

 

俺も悔しい。全員、生気が感じられない。少しでも感じれるような人がいれば

直ぐにでも助けてやって救済するというのに・・・・・!

 

「旅人・・・・・」

 

「・・・・・帝様達がこのビルから発して直ぐだった。

この階までテロリストが上がってきたという事は、かなりの数がいるということだ」

 

このビル全体に探知する。一つ・・・・・また一つ、気が消えていく。

 

「ダメだ・・・・・助けようにも人手が足りないどころか、

俺が助けに行くよりも銃の方が速い」

 

「そ、そんな・・・・・」

 

「くそ・・・・・!また、俺は・・・・・守れないのか・・・・・!」

 

目の前にテロリストが現れた。直ぐに銃弾を放ってくる・・・・・が、

 

「効かねぇよ」

 

足で蹴り返せば、銃弾がテロリストに直撃した。一拍して倒れる。

 

「つ、強い・・・・・」

 

「このぐらい、ヒュームだってできる」

 

抱えての戦闘で、狭い通路での死闘・・・・・大変だな。

 

ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

今度は下から轟音が鳴り響いた。―――また、飛行機が直撃したとでも言うのか!

煙が俺達のいる廊下にまで立ち込め始めた。

 

「げほっ、ごほっ」

 

「ぐっ・・・・・!」

 

「ビルが火災しているようだな・・・・・」

 

テロリストがいるにも拘らず、どうしてこんなことを?足元に穴を広げて下に落ちる。

その最中、物凄い熱量が肌で感じる。

穴に落ちる度に建物の中で燃える火が視界に飛び込んでくる。

 

「おのれ・・・・・!テロリストどもめ・・・・・!」

 

瞳に怒りの炎を宿す九鬼英雄。その様子を見ていれば、

ようやく一階のホールに辿り着いた。着地して辺りを見渡す。

 

「・・・・・酷いな」

 

辺りに人が倒れて血を流していた。昨日の受付の女性も撃たれたようで生命が感じない。

 

ガチャ・・・・・。

 

「「「・・・・・」」」

 

音が聞こえた。ゆっくりと背後に振り返るとガッシリと鍛え上げた筋肉が

服の上からでも分かるほどの肉体を持つ外人が銃を突き付けていた。

 

「クキケノモノダナ?」

 

「ああ、そうだ。お前がリーダーか?」

 

「ソウダ」

 

「目的はなんだ?金か?」

 

「ソレモソウダガ、ワレワレノモクテキハ、セカイヲスベヨウトイウ、

ゴウマンナクキケヲハイジョスルコトダ」

 

九鬼家の排除・・・・・。九鬼家に恨みを持つ集団か?

 

「クキノトウシュガ、ワレワレノケイカクヨリハヤク、コノビルカラサッタコトニハ、

オドロイタガ、クキケノコドモヲコロセバ、ケイカクノタッセイニハカワリナイ。

ワレワレノモクテキノタメニ、シンデモラウ」

 

「・・・貴様等のくだらない理由で、

このビルに働いていた者達を殺したというのか・・・!?」

 

「ギセイハツキモノ。リカイシテイルハズダガ?」

 

「許せん・・・・・許せんぞ・・・・・貴様ら!」

 

リーダーはいやらしい笑みを浮かべて、手を上に翳した。

 

ザザザッ!

 

俺達の周りにテロリストが現れ、囲まれた。

 

「ユルサナクテケッコウダ。ココデオマエタチハシヌノダカラナ」

 

リーダーの言葉に呼応するかのように俺達を囲むテロリストは銃を撃ち始めた。

 

「―――死ぬのはお前らだ」

 

カッ!

 

虹色に輝く光の膜が俺達を覆い、銃弾を防いで守った。

だが、それだけではなく、防いだ銃弾をそのまま跳ね返してテロリスト達の頭を貫いた。

 

「ナ、ナンダ・・・・・ト」

 

ドサ・・・・・。

 

リーダーも胸に、心臓に銃弾で貫かれ絶命した。

 

「「・・・・・」」

 

唖然と目を見開き、空いた口が塞がらないでいる九鬼姉弟。

 

「どうした?」

 

「・・・・・旅人、お前は一体・・・・・」

 

「俺は俺だ。どんな力を使おうと、俺は旅人と言う世界中に旅をする人間だ」

 

危機は脱した、とばかりに俺は二人を抱きかかえて、この建物から出ようとする。

 

ドッガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

「「「―――っ!?」」」

 

直ぐ近くで爆発が生じた。それも絶え間なく。玄関に巨大な瓦礫で塞がって退路が絶たれた。

 

「ククク・・・・・」

 

不意に、笑い声が聞こえた。

 

「コノビルノイタルトコロニ、バクダンヲセッチシタ。

ソレモコノビルヲササエルテッコツヲチュウシンニ・・・・・」

 

声のした方へ振り向けば、まだ生き残っていたテロリストが携帯の筒のような物を

持っていた。

 

「―――ワレラノ、カチダ!」

 

足元が一気に崩壊した。地下にも爆弾を設置していたのか―――!

月歩で回避しようとするが、大質量の巨大な瓦礫が俺達に迫る!

 

「旅人ぉー!」

 

「くそったれがぁ!」

 

二人を抱きかかえたままでは、神速でも逃れないと判断した俺は、

幾重の光の膜を張って瓦礫から防ごうとする。

 

ビシッ・・・・・!バキッ・・・・・!

 

「ぐっ・・・・・!」

 

全方位から超重量の塊が俺達を潰そうと押し寄せてきた。しかし、

あまりの重さに光の膜に罅が入って・・・・・耐えきれず、ガラスのように割れて散った。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

ドドドドドドドドドドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

二人に幾重の光の膜を張って、俺は素手で瓦礫を受け止める体勢になった。

 

 

∞                    ∞                     ∞

 

 

と、言うわけで俺達は瓦礫に埋もれた状況にいるわけであった。

 

「旅人・・・・・っ」

 

「お前ら、怪我ないか?」

 

「我らの事より旅人が・・・・・!」

 

「俺はお前らを守る仕事なんだ。このぐらいの傷でへばったらヒュームに笑われる」

 

「・・・・・っ」

 

「しかし・・・・・これは流石にキツイな」

 

ドグドグと流れる血を見て自嘲する。これ以上、血を流したら出血多量で死ぬぞ。

 

「旅人・・・・・もう、放して・・・・・」

 

「いや、これを支えて分かるんだけど、少しでも力を抜いたら、

瓦礫が崩れて来て俺達は潰れてしまうぞ」

 

「そ、そんな・・・・・!」

 

「救助も・・・・・期待はできなさそうだな。

精々一週間にでもならないと来ないかもしれない」

 

それか、それ以上掛かるかも知れないと内心で呟いた。

 

「・・・・・すまない」

 

「ん?」

 

「我が、お前を誘ったばかりに・・・・・こんなことになってしまった」

 

「俺はお前の執事だ。主人について行くのが義務だろう」

 

「しかし・・・・・!お前は死ぬかもしれないんだぞ!?」

 

九鬼揚羽はヨロヨロと俺の足元に近づいて額を俺の靴に押し付けた。

 

「我の・・・・・責任だ・・・・・我の・・・・・!」

 

「・・・・・なぁ、揚羽様」

 

「・・・・・?」

 

「取り敢えず、無理でもいいから笑ってくれ。ほら、何時もみたいに豪快にさ」

 

なっ・・・!と九鬼揚羽は信じられないものを見る目で絶句した。

 

「あの笑い声を聞かない日は今まで一度もない。なのに、今日は笑っていないじゃないか」

 

「こんな状況で笑えれるか!」

 

「こんな状況だから笑って欲しいんだよ。場を盛り上げるためにもさ。

だからお願いだ。何時も笑っているほうが揚羽様らしいんだよ。勿論、英雄様もだがな」

 

笑みを浮かべる。当の二人は顔を見合わせ、そのまま視線を向けあった。

 

「・・・フ、フフフ」

 

九鬼英雄が口から声を漏らしだす。

 

「フハハハハハハッ!」

 

そして、高らかに笑いだしたのだった。

 

「確かに、何時までも暗くなってはいられん!場を盛り上げようぞ姉上!フハハハハハ!」

 

「・・・・・」

 

笑い上げる弟に九鬼揚羽は溜息を吐く。

 

「こんな非常時に笑うなんて非常識であるぞ」

 

「俺は常識にとらわれない方なんでな」

 

「まったく・・・・・ああも、弟が笑い続けるなら我も笑うしか無いではないか」

 

そう言って九鬼揚羽も笑いだした。俺も笑う。それからしばらく俺は告げた。

 

「揚羽様、英雄様。お願いがある」

 

「む、何だ?申してみよ」

 

「俺がこれからすることを他の人には絶対に言わないでくれ。

局様でもヒュームでもクラウディオ、誰にもだ」

 

「なぜだ?」

 

「俺と約束してくれたら、教える」

 

「・・・・・・分かった。執事の頼みを聞くのも主の務めだ。約束する」

 

「うむ。我もだ」

 

・・・・・取り敢えず、約束をしてもらえたか。なら、さっさとしようか。

 

「それじゃ、やるぞ」

 

カッ!

 

俺の全身が神々しく光り輝く。ああ、久々にこの能力を使うな!

 

禁手(バランス・ブレイカー)

 

 

―――???

 

 

「はー、こりゃすげぇー大惨事じゃないか」

 

私、忍足あずみがとある理由でブラブラと街を歩いていた。

飛行機が二機も富裕層のビルに直撃したかと思えば、崩壊した光景を見てもっと近くで

見ようとやってきた。崩壊したビルの成りの果てが私の視界に飛び込む。

 

「英雄ー!揚羽ー!旅人ー!」

 

一人の男が必死に瓦礫に向かって叫んでいた。あのビルの中に家族でもいるのか?

でも、あれじゃあ助かりっこはない。

 

「というか、旅人?変な名前だな」

 

いや、世界は広いんだ。そんな名前の奴は一人や二人いるはずだ。

 

「戦場とはまた違う命を落とした奴らは・・・・・可哀想にな」

 

傭兵として生きていた私と違う人生を歩み、幸せな生活をしていた人間も

あの崩壊したビルの中にいるだろう。それでも、死んでしまってはどうしようもない。

願うならば、天国に行けれるようにと祈るしかないな。

 

ガラ・・・・・ッ

 

「・・・・・?」

 

瓦礫の一部が転がった。不意に転がる事はよくあるが、

一瞬・・・・・瓦礫が膨れ上がったような気もした。気のせいか・・・・・?

 

「・・・・・行くか」

 

踵返して歩を進めた。さて、これからどう生きようか―――。

 

カッ!

 

「っ!?」

 

瓦礫の山から光が漏れ出した。所々、光の帯が内側から出て来て、

まだ立ち込める煙を裂くように照らし続けた。な、なんだ・・・・・?

 

この眩しい光は・・・・・。困惑気味で瓦礫の山を見つめていると・・・・・。

 

瓦礫全体が光り輝き・・・・・時が戻るように崩壊した建物が、

元の形に戻っていく・・・・・!?

 

「これは・・・・・っ!?」

 

戻り続けるビルに空いた口が塞がらなかった。

そして、崩壊し建物が完全に元に戻って、何事もなかったかのように街中で佇んだ。

 

「いったい、これはどうなって・・・・・」

 

この場にいる人は全員が絶句しているはずだ。建物が勝手に元に戻るなんてことは

絶対にあり得ないからだ。こんなことできる人や技術はこの世にはいないはずだ。

 

「―――父上!」

 

建物から一人の少女が出て来てさっき叫んでいた男の下に駆け寄った。

男はその少女の存在に驚愕していたが、抱きしめて何か聞いていた。様子を見ていると、

少女が男の手を引っ張って建物の中に入っていく。しばらくして、建物から男が出てきた。

一人だけじゃない。少女と少年、胸に赤く濡らして男の手によって連れ出されている

もう一人の男が。

 

「おい!今すぐ病院へ行くぞ!」

 

「し、しかし・・・・・次の国で会議が・・・・・」

 

「んなことはどうでもいい!良いから早くしろ!

こいつはぜってぇ死なせてはいけねぇんだ!俺の子供を守って男だ!」

 

「は、はっ!」

 

あの死に掛けの男が・・・・・?じゃあ、さっきの光も、

この元に戻ったビルもあの男が・・・・・?

 

「(死をはねのける奇跡・・・・・私はそれを見たというのか?)」

 

ドクン・・・・・。

 

心臓が大きく跳ね上がった。

 

「(あの光があいつの命の輝きだとしたら・・・・・)」

 

・・・・・あの眩しい命の光の輝きを放ったと思しきあの男の傍で生きてみたい。

そう思ったら直ぐに行動した。

車に乗せようと向かう男の下へ駆け寄り、胸を赤く濡らしているのかと思えば、

今でも血を流していたことが分かった。これは危険だと思い、

傷口に鞄から取り出した布で押さえつけて少しでも出血を抑えようとする。

 

「手伝います!」

 

「ッ・・・!すまねぇ、助かるぜ」

 

男と一緒に車に近づいて私が先に車に乗って気を失っている男を男から受け取って

中に引きずり込む。取り敢えず、応急処置でも・・・・・!

 

「全員乗ったな!?おい、出発しろ!他の車とぶつかっても構わねえから

急いで病院に行け!」

 

「はい!」

 

車が急発進した。おいおい!急いでいるからってちっとは安全運転しろ!

 

「「・・・・・」」

 

二人の子供が心配そうに、不安そうに眠っている男を見つめた。

 

「旅人・・・・・死なないでくれ・・・・・」

 

こいつが旅人?と、名前なんてどうでもいい。

 

「病院に着くまで死ぬんじゃねぇぞ・・・・・・」

 

私はそう呟き、懸命に応急処置を施す。

 

 

―――一誠side

 

 

「・・・・・ん」

 

閉じていた目に眩い光が差し込んできた。目を開けると、視界がボンヤリとしていて

最初は分からなかったけれど、少しずつ視界が正常になる。

 

「「・・・・・」」

 

「・・・?」

 

寝息が二つ。右に顔を向ければ、オーフィス。左に向けば九鬼揚羽が。周りを見渡せば

白い部屋だった。というか、俺が寝転がっているのはベッドだから・・・・・病院か?

 

「(あれからどれぐらい経った?)」

 

久々に能力を使って、建物を元に戻した辺りから意識を失って・・・・・

それから記憶がない。

 

「・・・・・」

 

血が点滴されているが・・・・・俺の血だよな?

 

ガラ・・・・・ッ

 

ドアが開く音が聞こえた。スタスタと歩をこっちに進んでくるのが分かる。

 

「おはようございます、旅人」

 

「おはよう、クラウディオ」

 

何時もと変わらない挨拶をする。手を上げたいところだが、二人に掴まれてできないでいる。

 

「俺は何日寝ていた?」

 

「出血多量で6日間は寝ていました。しかし、血を点滴するとあなたの血液は抗体となり、

点滴した血液をウィルスと認識したか、他の血を食らうように食らい、

あなたの血は増殖する結果で一命を取り留めました。

因みに、いま点滴されているのはあなたの血です」

 

「・・・・・だろうな、俺の血の詳細なんて誰も知るわけがない。

今頃、俺の血で騒がしくなっているんじゃないか?」

 

「いえいえ、そうでもないですよ?あなたが連れて来られた先の病院は、

九鬼家専用の医療室へと運び込まれましたから」

 

それでも、その病院は騒がしくなっていますがね・・・と、

クラウディオは付け加えて言った。

 

「そうそう、テロに襲われ、崩壊したはずのビルが元に戻ってあれ以来どうなっていると

思いますか?」

 

「さあな」

 

「『フェニックス』と称されるようになりました。

あのビルに働いていた人達は甦りませんでしたが、

建物が生き返るように元に戻って以来、人々からそう称されるようになりました」

 

・・・・・そうか。

 

「旅人、あれだけのことをしたのです。少しぐらい私達に教えてもいいと思いますよ?」

 

「・・・・俺の力だとは気付いているんだろう?」

 

「そうですね。英雄様や揚羽様からどうやって生き残ったのかは詳しく

教えてはくれませんでしたが、旅人がお二人に口止めしていることには理解しましたよ」

 

「ああ、実際に俺達三人だけの秘密にしているからな。

だから、約束した上で俺の力を使ったんだ」

 

「では・・・・・」

 

「言う気はない。俺は静かに過ごしたいからな。あの力はもう使わないぞ」

 

クラウディオは溜息を吐く。

 

「あなたの過去になにが遭ったのカはご存じないですが、

九鬼家はどんな過去を持つ人材でも採用すると仰いましたハズです。

我々にまだ心を開かないおつもりですか?」

 

「興味本位で顔を突っ込んだら身を滅ぼすぞ」

 

「「・・・・・」」

 

それから俺達は沈黙する。その沈黙を破ったのは俺だ。

 

「信用と信頼はしている。でも、心を開くかどうかは別だ。

他人の過去を知らなくとも、今を知って過ごせば良いじゃないか」

 

「・・・・・そうですか」

 

「それにな」

 

「はい?」

 

「―――盗聴している奴がいるのに話せるかよ」

 

ドアに視線を向ける。クラウディオはドアに近づくと一拍して、

クラウディオと入ってきたヒューム。

 

「0位の従者が立ち聞きなんて、変なことをするな?」

 

嘲笑するかのような態度で言えば、ヒュームは鼻を鳴らす。

 

「貴様は謎に包まれているからな」

 

「俺の詮索をしない条件で従者になったんだ。当然だろう」

 

「それで本当に納得するとでも思っているのか?」

 

「しないと思っているに決まっているだろう」

 

「だったら、お前の秘密を教えろ」

 

「お前の初恋の相手が誰なのか教えてくれるのなら考えてもいいぞ?」

 

ヒュームにそう言うと怒気と闘気を発した。額に青筋を浮かばせて、

ふざけるなと視線で言ってくる。

 

「敵・・・・・?」

 

眠っていたはずのオーフィスが目を覚まして、全身から魔力を漂わせ始めた。

敵意を感じて目を覚ましたようだ。ベッドに乗っかって俺を守るように立ちはだかる。

そんなオーフィスとヒュームにクラウディオが窘める言葉を放った。

 

「ヒューム、闘気を治めなさい。オーフィス様もそこに乗っかっては、

旅人の胸の傷が開いてしまいますよ」

 

「「・・・・・」」

 

闘気を治めたヒュームと俺の上から降り、

ベッドの中に潜り込んでは俺の隣で寝る姿勢になるオーフィス。

 

「今日は一先ずお暇しましょう。まだあなたは安静をしないといけませんからね。

何時でもあなたを会いに行きますので」

 

「はいよ」

 

半ば強引にヒュームを強引に連れだしてこの部屋からいなくなった。

あの二人がいなくなってから静寂が続く・・・・・。かと思うが、

 

「何時まで寝たフリをしているんだ?」

 

「・・・・・」

 

不意に俺は九鬼揚羽に話しかけた。当の本人は顔を上げて俺を見つめてくる。

 

「・・・何時から気付いていた?」

 

「ヒュームが闘気を放った瞬間から。あれで起きない奴はいないだろう。

もしいるのなら、そいつはとんでもなく鈍い奴だ」

 

「であるか・・・・・」

 

見詰めてくる九鬼揚羽の目は充血して、真っ赤になって目の下に隈ができていた。

 

「ずっと、俺の傍にいてくれたのか?」

 

「当たり前だ。我と英雄を守ってくれた者が、意識不明の重体であったのだぞ。

六日間も寝ている間、我はずっとお前のことを心配していたのだぞ」

 

「・・・・・悪かったな」

 

「違う・・・・・」

 

「ん?」

 

「こう言う時は『ありがとう』であろう?」

 

九鬼揚羽は笑みを浮かべる。つられて、フッと俺も笑ってしまった。

 

「・・・・・ありがとうな」

 

「フハハハ、どう致しましてだ」

 

さて・・・・・と九鬼揚羽は立ち上がったかと思えば、

俺の体を被せている布団をめくって靴を脱ぎ、中に入ってきた。

 

「・・・・・おい?」

 

「ここしばらく、お前の看病をしていてな。あまり寝てはおらんのだ」

 

俺の腕に頭を乗せて抱き枕のように抱きついてきた。

 

「我が満足するまで、こうしていろ」

 

「・・・・・了解、揚羽様」

 

「うむ・・・・・」

 

それから九鬼揚羽は瞑目し、寝息を立て始めた。よほど疲れていたんだろうな・・・・・。

 

「・・・・・心配してくれて、ありがとうな」

 

俺ももう一度寝ようと瞑目する。二人の温もりを感じながら寝るのも、悪くはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや、幸せそうに寝ておるわ」

 

「目を覚ましたと駆けつけて来れば寝ておられておったか」

 

「記念に一枚でも撮りましょうか」

 

「ふふっ、顔を赤くする揚羽が脳裏で思い浮かぶわ」

 

「しかし、こうして見ると・・・まるで親子のようにも見えますな」

 

「そうであるな。揚羽と英雄と帝様と一緒に寝た事はないな」

 

「仕方ありませぬ。父上は多忙の身でありますからな」

 

「ふむ・・・ならば今宵は英雄と一緒に寝るとしようか。

家族水入らず、偶には共に寝るのも悪くはない」

 

「はっ、母上・・・我はもう、そのような歳では・・・・・」

 

「何を恥ずかしがる?良いではないか。我の部屋で待っておるぞ」

 

「う、うむ・・・・・分かり申した・・・・・」

 

それからの事、密かに取られていた写真が九鬼揚羽の手に渡ると、顔を朱に染めるがどこか、嬉しそうに笑む彼女、九鬼揚羽だった。

 

 

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