真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結 作:ダーク・シリウス
―――葵紋病院。私はその川神市最大の大病院の一人息子として生まれ、育ってきた。
我ながら、聡明だった。成績はズバ抜けてよく、さすが葵先生のご子息と言われていた。
「うむ。冬馬は自慢の息子よの」
そう言って私の頭を優しく温かく撫でてくれるお父さん。旅人さんとは違う優しい温もりが
私の頭から感じさせてくれる。
「だが、私の後を継ぐにはより聡明でなければ」
「はい」
「もっと勉強しなさい、この問題集もだ」
「分かりました。お父さん」
今日も私は勉強を一杯する。父は皆の信頼篤く、地元でも大人気の院長だった。慈善活動で
表彰されたりもしていた。
詰め込み教育だったがそれも父のようになれると思えば楽しかった。
我ながら大人びていた。大量の本を読みあさり、人間観察を続けるうちに・・・。
「・・・人間ってのは実に醜い生き物なんだな・・・」
子供ながらにして、誘った気になっていた。だが、自分の父親と旅人さんは違う。
「お父さんは他の人間とは違う・・・・・」
口では言えないが、旅人さんも他の人間とは違う。
「お父さんのような人間に、私はなる!」
旅人さんのような誰にでも優しく接する人間になる。
「それが、夢です」
「なんて良い事を・・・・・父は嬉しいぞ。お前なら、私のようになれるさ。
なんたって、私の血を引いているもんな。じゃあ勉強しなさい。そら、これも、そら」
「与えられる課題はすべてクリアするよ、お父さん」
父親に褒められたい。父親になりたい。そう思って、ひたすらに勉強に打ち込んだ。
休みは旅人さんや友達の皆と楽しく遊ぶ。それが楽しくてより勉強も捗った。―――だが、
何か父の様子が可笑しいことに気付く。注意してみれば、行動に不審な点が幾つも見られる。
『好奇心は自分自身を滅ぼすことになる。気をつけろよ?
じゃなきゃ、お前の身に不幸が訪れる』
旅人さんにもそう言われていたのに、止せばいいのに、
好奇心が私を突き動かして・・・・・。
「何・・・・・だ・・・・・これは、不正の証拠ばかり・・・・・」
父の部屋で、とあるファイルを見つけた。
ファイルを開いて読めば・・・・・・父は病院の立場を利用し、
行政との癒着に医薬品の横流しなど数えられない悪事に手を染めていたことが分かった。
「おおお!冬馬!速くもそのファイルを見つけられたか!偉いぞ!」
愕然としていた私に父が部屋に入ってきては嬉しそうに話しかけてきた。
「え?」
「知識を実戦で活用できている証拠だ。素晴らしい」
大きく両腕を広げて、父は言った。とても信じられなく、問うた。
「お父さん・・・・・あなたは・・・・・」
「そう・・・、お前の思った通りだよ冬馬。何が裏で何が表か・・・世の中面白いだろ、
冬馬」
「・・・・・」
「冬馬。お前なら私が築き上げたこの病院の表も裏も、全て安心して継がせられる」
「私は、裏なんて・・・・・嫌です」
「はっはっは、大丈夫。お前なら私のようになれるさ。
―――なんたって、私の血を引いているもんな!」
「・・・・!」
同じ、血・・・・・私もお父さんと同じ・・・・・血を・・・・・流す・・・・・。
「そうさ。鷹の子は鷹。変わらないんだよ冬馬」
「私は、ただお父さんのように皆に尊敬される人間になりたかった、のに・・・・・」
「そう、なればいい。ただし、上っ面だけな?これがまた楽しいぞ。
尊敬されつつ好きなことできちゃうわけで、こんなに才能が溢れていて嬉しいよ」
私の頭を撫でるお父さん。
けれど、大好きだったこの手の温もりは・・・・・私を犯罪者の道に進ませようとする
偽りの温もりとしか認識できなくなっている自分がいる。
「そうだ、井上副院長の息子もお前に付けよう」
井上副院長・・・・・。私の友達である井上準はこの病院に務めている副院長の息子。
私と準は必然的に出会い、友達になった。まさか、あの人までもが・・・・・。
「小さなモノから少しずつ、悪い事をしていこう」
「・・・・・」
もはや言葉が出なかった。父は・・・・・私の大好きな、
尊敬する父親は・・・・・人の皮を被った悪魔だ。
「捕まらないためにももっと利発にならないとね。
できれば全国模試で一位近くではないとなぁ」
「・・・・・お父さん、僕はそんなことの為に勉強したくない」
「駄目っ、どんどん勉強しろっ、どんどんどんどん」
父は強引に私を何時ものように勉強を、課題を与えた。
「冬馬は私の子だろ。連帯責任、一蓮托生だ。
さぁ、どんどん知識を身に付けて悪い事したり良い事したりしよう。どんどんどんどん」
「お父さん・・・・・」
「そら、この本も、冬馬、そらっ、勉強だ!」
私の前に表と裏を身に付けさせる本を次々と置いていく。
「続けろ冬馬!さあ、裏と表を一分一秒でも学び、身に付けるんだ!」
父親と言う皮を被った悪魔は・・・哄笑をしながら私に悪魔の知識を与え続けたのです。
―――夜
「・・・・・」
「若・・・・・」
「・・・・・準」
「言いたいことは分かってる。お互い、とんでもねぇ父親の血を流しているんだな」
ベンチに座って黄昏れている私に声を掛けてきた。
どうやら準も、知ってしまったようですね。
「若、俺はどこまでもアンタについていくぜ」
「・・・・・ありがとうございます」
「トーマ?準?」
不思議そうに、榊原小雪ことユキが話しかけてきた。私は何でもありませんよ、と言う。
彼女には心配を掛けれません。
旅人さんに彼女の面倒を見てほしいをお願いされているのですからね。
「どうしたの?そんなに落ち込んで、元気がないよ?」
「ちょっと、勉強のしすぎて・・・・・」
「そっかぁ~、なんか悩み事があるなら旅人のお兄ちゃんに言ったらどうかな?
って思ったんだけど」
旅人さん・・・・・九鬼家の従者として働いている世界中を旅している人・・・・・。
「僕も助けてくれたし、京も助けてもらったからね~。
トーマと準も何かあったら旅人のお兄ちゃんに助けてもらったらどうかな~?」
・・・・・っ!
「若・・・・・」
「準・・・・・」
「ユキの言う通りにしてみないか?もしかしたら、あの人なら・・・・・」
「うん!そうしなよー!旅人のお兄ちゃんなら、絶対に何とかしてくれるよー!」
準の話を聞いて自信に満ちた笑みを浮かべてユキは私に促した。
「・・・・・分かりました」
旅人さん、申し訳ございません・・・・・私を、私達を助けてください。
∞ ∞ ∞
「・・・・・なるほどな」
休みの日。何時も通り皆が空き地にやってきては時間になるまで遊んだのだった。
しかし、今日は違った。井上準と葵冬馬が助けを求めてきたんだ。
自分の父親が医薬品を不正に横流しをしていることを、息子である葵冬馬に悪事を染めようと
することを告白してきた。そんな葵冬馬の勇気に頭を撫でた。
「よく教えてくれた。クラウディオ、聞こえているんだろう?」
「はい、人材確保ができそうで何よりです」
俺の傍に現れたクラウディオが笑みを浮かべる。
能力があれば犯罪者だろうと採用する九鬼家にとっては、嬉しい事実だろうな。
「そう言うわけだ。後は大人の俺達に任せろ。子供のお前達は安心して
あいつらと遊んでいろ」
「はい・・・・・お願いします」
「お願いします、旅人さん」
「お前たちの証言の下に、調査を入念にして証拠を暴くとするか。
クラウディオ、冬馬と準の家に行って不正の証拠を探しに行こうか」
「では、この場はヒュームに任せましょう」
「百代!」
「ん?」
「ちょっと用事ができた、亜巳達を川神院に泊らせてやってくれ!」
「分かった。でも、用事って何だ?」
「―――悪者退治をしてくるだけさ」
そう言い残してクラウディオと共に空き地からいなくなった。
それからあの二人の家に訪れては、気配を消して家の中に入り、悪事の証拠を探し回り、
深夜に葵紋病院にも訪れて、不正の証拠を探し出して―――見つけた。
「これで全部か」
「そのようですね。しかし、あの子達のおかげで街の闇を一つ、摘み取ることができました」
「そうだな、勇気ある行動に称賛を与える」
「・・・・・旅人、誰かが来ますよ」
「闇にまぎれて隠れるか」
どこからともかく常闇を思わせるマントを出しては、
クラウディオと一緒に全身を身に包め隠れた。
ガチャッ。
闇に隠れたと同時に白衣を身に包んだ男性が入ってきた。様子を伺っていると、
何やら焦り出して探し始めた。
「私達他の存在に気付いていない・・・・・?」
「忍法、隠遁の術ってな」
「なるほど、このマントはそういうわけでしたか」
理解したのか首を縦に振って納得した。証拠のファイルを音もなく男性に向かって浮かせて
近づけさせる。そうすると、男性は目を丸くした。
そろそろネタばらしでもするか。マントを脱いで姿を現す。
「お探しの本はこちらかな?」
「っ・・・・・っ!?」
「おや、一体どこから現れた、といった表情をするな。
その答えは最初からこの部屋にいたぞ?ああ、俺の名前は旅人だ。
こちらは俺の先輩のクラウディオ・ネエロ。共に九鬼家に仕えている従者だ」
「深夜に訪れて申し訳ございません。
ですが、この街の闇を摘み取るのが我々の仕事でございますので、ご了承ください」
「お前は入念な調査によって危険人物と判断した。そして、これがその証拠だ。
念のために家にも静かに、迷惑をかけないように調査をさせてもらった」
「あなたは九鬼監視のもと、証拠をすべて焼却、政治家との関係性も絶ち切り、
その知識をクリーンなことに使っていただきます」
「ふ、ふざけ―――」
ドッ!
「がはっ!」
俺の蹴りの一撃で男性の意識を狩った。
直ぐさまクラウディオは糸・・・・・ワイヤーで縛り上げた。
「で、捕まえるのは良いんだけどよ?葵紋病院はどうするんだ?」
「九鬼家の監視下のもとで運営しましょう」
「事実上、九鬼家の病院となるわけか?」
「将来、あの子がこの病院を継げれば問題はございません」
「そうか、その手もあるな。
まあ、その間は九鬼家が手を回して運営をしなければならないがな」
「そうでしょうね。さて、残りの人にも訪れましょうか」
「旅は道ずれ世は情け・・・・・上手い事を言った偉人がいたもんだよ」
フッ、と俺達はこの場から姿を消して、副院長のところへ赴き、捕縛した。
「これで終いだな。後の事は任せるぞ」
「はい、ご協力感謝します」
「それはあの二人に言ってくれ。それじゃ」
クラウディオから離れて一瞬で空き地に戻った。
テントの中に入れば、あいつらはいない。川神院にいるんだろう。俺がそう言った訳だし。
「寝るか」
「ん、一緒に寝る」
ようやく口を開いたオーフィス。今までずっと肩に乗っかっていたけれど、
喋らなかったな。ゴロリと寝転がってオーフィスを抱きしめる。
「おやすみ、オーフィス」
「おやすみ、イッセー」
これで・・・・・あの二人は幸せになれるだろう・・・・・また一つ、俺は救済ができた。