真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

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Episode5

 

「すまんな、百代。学校に登校せねばならぬお前を我に付き合ってもらって」

 

「いいですよ。丁度私も行きたいと思っていましたからね。

寧ろ、こんな機会をくれた揚羽さんには感謝している」

 

「クラウディオめ・・・・・思いきったことお考えたものだな。

これで失敗したらどうなるか分かっているんだろうな?」

 

「・・・・・なんで私まで・・・・・」

 

クラウディオの提案を聞いて数日後の事。九鬼揚羽は、川神百代とヒューム、織田信長と共に

日本海の上空にいた。ドラゴン達に気付かれないよう気を隠して飛行機に乗っている。

大気圏まで飛んで現在、日本海の上空にいるのだ。

 

『私が選り抜きした四人の従者と旅人が作った変形ロボットを使い、

囮となってドラゴンの気を逸らします。

その間に揚羽様は日本海の上空から蒼天に侵入してください。

帰りは蒼天の海域ギリギリのところで船を待機させますのでご安心を』

 

と、その提案とも言える作戦で蒼天と外交しようと決めた。九鬼揚羽は空を飛べ、

強さの壁を越えた武の達人の領域を踏み越え実力者達を選抜して実行したのであった。

 

「さて、時間だ」

 

「ふふふっ、また凪に会えると思うと楽しみで仕方がないなー♪」

 

「川神百代。これは外交なのだ。遊びに来ているわけではないぞ」

 

「外交って・・・・・傍から見れば私達は不法入国しようとしている不審者ですけど?」

 

「そんな些細なことはお前が気にするな」

 

些細って・・・・・。川神百代は一歩間違えたらとんでもないことになる重要さを

本当に分かっているのか?と思わずにはいられなかった。

織田信長は、はぁ・・・・・とただ嘆息するだけであった。

 

「・・・・・行くぞ」

 

飛行機の扉を開ける。その瞬間、九鬼揚羽は何も装備をしないままで空に飛び込んだ。

続いてヒュームと川神百代、遅れて織田信長も空へ飛びこむ。

 

 

―――蒼天

 

 

「ご主人様!大変です!この国に侵入しようとする賊が、上空から接近とのことです!

さらに、日本海からも巨大な飛行機が五つ接近!」

 

慌てて俺に報告する愛紗。その報告を聞いて珍しそうに言う。

 

「・・・・・久し振りだな、この国に来ようとする奴なんて実に数十年振りだ。

で、相手は誰だか判明しているか?」

 

「巨大な飛行機にバツ印のマークがあります。―――九鬼財閥です!」

 

ゴンッ!

 

「ご、ご主人様・・・・・?」

 

テーブルに強く頭をぶつけた俺に愛紗は困惑する。が、それどころじゃない!

あ、あいつらかよ・・・・・!?諦めていなかったのか・・・・・!あの豪快な一族はよ!

 

「ご主人様・・・・・?」

 

「・・・・・上空から来る侵入者は俺が捕まえよう。

海から来る侵入者は仮に殲滅された場合、思春に動いてもらう」

 

「自ら行かれるのですか?」

 

意外そうに愛紗が問うた。立ち上がって肯定する。

 

「ああ・・・・・俺が知っている奴らが来るんだったら、俺しか捕まえられないだろう」

 

「・・・・・」

 

「だが、もしも俺が何人か見逃したら・・・・・全力を上げて侵入者を捕らえて欲しい。

期待しているぞ?俺の愛しい武神」

 

「―――はっ!お任せくださいませ!この愛紗、必ずご主人様のご期待に応えます!」

 

 

―――日本海

 

 

金色の巨大な五つの飛行機が蒼天に物凄い速さで接近していた。

その一機にクラウディオが操作をしていた。

 

「皆さん。私達の役目は囮です。

ドラゴンをおびき寄せて揚羽様達の外交を成功させるのです」

 

『はっ!』

 

選り抜きされた四人の従者達が短く返事をする。そろそろ蒼天の海域に突入する。

とクラウディオはそう思っていたその時だった。

 

ギェエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!

 

まるで、待っていたかのように生物の咆哮が聞こえた。

機体のセンサーには五つの熱源反応が探知した。

 

「(来ましたか)」

 

すかさずクラウディオは蒼天の海域のギリギリのところでロボットを変形させる。

他の機体も変形し、その場で佇む。

一拍して、クラウディオ達の前に五匹の巨大な生物が現れた。

 

『おうおう!久し振りに侵入者が来たかと思えば、

楽しみ甲斐がありそうな奴らじゃねぇか!』

 

巨人みたいな翼と尾を生やしたドラゴンが深い笑みを浮かべて、五つのロボットを睨んだ。

 

『この国に入ろうとしているのか?ならば、入るがいい。俺達が暴れる』

 

三頭のドラゴンが不敵の笑みを浮かべる。

 

『そこから一歩も動かない方が賢明です。

我らの住処に無断で入ろうとする存在を排除せねばなりませんから』

 

以前見かけた金色のドラゴンが警告する。

 

『僕は遊びたいなー。ねぇねぇ、遊んで良い?壊してもいい?』

 

上半身が人間、下半身が蛇のような体に背中に大きな翼をもった生物が

子供のように笑みを浮かべた。

 

『侵入したらいいぞ。だが、まだするなよ』

 

凶暴で獰猛そうな顔のドラゴンがやんわりと宥める言葉をした。

 

「(人語を話せるようですね・・・・・ならば、

説得ができる可能性があるかも知れません)」

 

クラウディオは話が分かりそうなドラゴンに、説得を試みる。

 

「突然の訪問を誠に申し訳がないです。私達は蒼天と外交の目的で来ました。

どうか、我ら九鬼と交流を持ちませんか?」

 

五体のドラゴンは一度、顔を合わせて直ぐに金色のドラゴンが口を開く。

 

『申し訳ないですが、我らドラゴンにそのような話をされても無意味です。

我らは、我らの大陸に侵入しようとする存在を排除する役目ですからね』

 

『その上、貴様ら人間の目的なんぞ知ったことではない』

 

「私たち人間と共存する気はないと?」

 

『グハハハハ!俺達、邪龍にとって人間は踏み潰し、噛み砕き、喰い殺し、殺戮や暴虐を

ただ快楽に感じさせてくれるちっぽけな存在だ!―――共存なんて痒い事を言うんじゃねぇよ!』

 

『おい、グレンデル。俺とメリアを邪龍にするな。迷惑だ』

 

『あれ?僕はどうなるの?』

 

『・・・・・ノーコメントです』

 

言い辛そうに金色のドラゴンは呟いた。

どうやら、ドラゴンには名があるようだ。これは大発見であることには間違いないだろう。

 

「では、どうしてあなた達ドラゴンは大人しく蒼天にいるのですか?」

 

『主の命令です。この国に近づく者は排除するようにと』

 

「主?それは人間ですか?」

 

『うん、そうだよー。でも、それ以上は言えないからごめんねー?』

 

・・・・・人間がこの五体のドラゴンを従わせている・・・・・。

そんな事実があるのだろうか?

 

『で?来るのか来ないのかどっちなんだ?はっきりしてもらおう』

 

三頭のドラゴンが訊ねた。このまま囮となって時間を稼ぐには骨が折れそうだ。

 

『お?』

 

一体のドラゴンが上空を見上げ、クラウディオ達も視線を上に向ければ・・・・・一つの影が

空に向かって物凄い速さで飛翔するのが見えた。

 

『あいつ、どうしたんだ?』

 

『本当だ、どうしたんだろう?』

 

五匹のドラゴンが空に飛翔する一つの影に不思議そうに見た。

クラウディオはその影をズームアップにして覗くように影の正体を見て―――驚愕した。

 

「(まさか・・・・・どうしてあなたが・・・・・!?)」

 

『・・・・・なるほど、もしかしたら我らは嵌められたようですね』

 

―――不味い!とクラウディオは焦り出す。ドラゴンは知能が高いようで自分達の作戦に

気付かれたのだと判断したからである。

巨人型のドラゴンは、怪訝に金色のドラゴンに問うた。

 

『どういうことだよ?』

 

『彼らは私達をおびき寄せる・・・・・言わば囮と言うわけです。

本命は遥か上空からあの大陸に潜入しようとしているのです』

 

『・・・・・じゃあよ、良いんだな?』

 

『―――構いません。目の前の敵を破壊しましょう』

 

金色のドラゴンの口から無慈悲な言葉が発せられた。

クラウディオは他の従者にこの場から逃げるようにと指示を出そうと口を開いた瞬間。

 

カッ!

 

視界は一瞬の閃光を捉えた。その光にクラウディオは呟いた。

 

「申し訳ございません・・・・・揚羽様」

 

その言葉を最後に、クラウディオが乗っていたロボットが光のレーザーによって破壊され、

爆発が生じた。残りの四体も四体のドラゴンによって破壊された。

 

 

―――上空。

 

 

「クラウディオ・・・・・ッ!」

 

 

空から破壊された五つの金色のロボットを視界に入れた九鬼揚羽は唇を噛みしめた。

自分の目的のために九鬼に長く仕えていた従者を殺したのだ。

その事に九鬼揚羽の心は罪悪感で一杯になった。

 

「―――揚羽さん!」

 

「っ!」

 

川神百代の呼びかけに九鬼揚羽は目を見開いた。視界に飛びこんでくる一つの影が

近づいているからだ。その影は四人の前に止まって、四人と一緒に落ちながら口を開いた。

 

「―――久し振りだな、揚羽様」

 

四人の前に現れた男が真剣な表情で低く呟いた。九鬼揚羽、川神百代、ヒューム、そして、

織田信長の顔は驚愕の色が染まった。数年ぶりに再会した人物が、

これから行こうとする国から来たことに愕然としたからだ。

 

「な―――っ!な、なぜ・・・・・!?」

 

「旅人!?ど、どうして・・・・・!?」

 

「貴様・・・・・!?」

 

「どうして、蒼天から・・・・・?」

 

四人の問いは、敵意で返された。

 

「とりあえず・・・・・不法入国しようとする不法侵入者を捕まえるとしようか」

 

「「「「っ!?」」」」

 

空を蹴って、瞬時で四人に接近した。一誠から離れて、月歩をしながら叫ぶように喋った。

 

「旅人!お前がこの国にいるのはどういうことなんだ!?説明してくれ!」

 

「今は敵同士だ。敵に説明なんてするわけがないだろう」

 

「待ってくれ!私達と敵対する理由が―――!」

 

「俺達の国に不法で入国するんだ。敵とみなして当然だ」

 

「俺達の国だと・・・・・どういうことだ、旅人ぉおおおおおおおおおおお!」

 

ヒュームが叫びながら一誠に攻撃を仕掛けた。

 

「―――俺はこの国に住んでいるからに決まっているだろう。なぁ?ティアマット」

 

刹那―――。巨大な青い生物が横からヒュームを殴り飛ばした。

 

「ぐぬっ!?」

 

体勢を立て直して自分を殴り飛ばした生物を睨んだその眼は直ぐに丸くなった。

 

『はっはー!意外と頑丈だな!これは楽しみ甲斐がある!』

 

「ド・・・・・ドラゴン・・・・・!?」

 

「旅人・・・・・!お前は一体・・・・・!」

 

「・・・・・ティアマット、その金髪のジジイと遊んでいろ。殺さずにな」

 

『面倒だなぁ。まあ、ちょっとは楽しめそうだから手加減して遊んでやるよ。

―――ロックンロールッ!』

 

咆哮して青いドラゴン・・・・・ティアマットはヒュームへと襲いかかった。

 

「旅人!」

 

問いだそうと川神百代が叫ぶ。だが、一誠は・・・・・。

 

「・・・・・」

 

背中に燃え盛る炎の翼、腰辺りに炎の尾羽を展開する。全身に炎を纏わせ、

巨大な炎の鳥へとなった。

 

「その姿は・・・・・!?」

 

「不死鳥・・・・・フェニックス・・・・・!?」

 

「旅人・・・・・!」

 

『俺の目的は・・・お前らを捕まえることだ』

 

クチバシの口内から膨大な熱量の炎のエネルギー砲が放たれた。

その攻撃に気のエネルギー砲を放って相殺する川神百代。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

気のエネルギー砲は炎のエネルギー砲を押し返して、火の鳥の頭を貫いた。

だが、すぐに頭が燃えながら元に戻った。

 

『やるな・・・・。だが、無駄だ。この姿は不死鳥そのもの。

不死の能力を持った鳥を殺せるわけがない』

 

「不死・・・・・!?」

 

「そんな、不死の相手ではどうしようもないじゃない・・・・・」

 

『分かったなら倒れろ。取り敢えずな』

 

ビッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

上空から稲妻が落ちてきた。三人はもろに直撃して、全身に電流が駆け巡る。

 

「た、たびび・・・・・と・・・・・」

 

余りにも膨大な感電に川神百代がそれだけ呟き、気を失った。九鬼揚羽も同様。

そして二人は、金色の球体によって閉じ込められて空中に漂う。一方、織田信長は・・・。

 

「・・・・・っ」

 

全身から煙を立たせながらも意識がまだあった。

 

『驚いた。俺の攻撃を耐えれるなんて』

 

「これでも、旅人さんの血を流し、英雄のクローンですから・・・・・身体は丈夫です」

 

『やはりそうか・・・・・お前は俺の血を流しているクローンなのか』

 

会話を交わす間に、織田信長の傷が塞がる。

 

「私の体質は・・・・・どんな傷でもすぐに治る。斬撃だろうが、打撃だろうが、

どんな衝撃でも耐えてはダメージが回復する・・・・・疲労も回復するんですよ」

 

『うわ・・・・・それは凄いな』

 

「だけど・・・・・デメリットがあるの。誰かと戦いたい欲望。壊したい、殺したい欲求。

私は生まれながらにして戦闘狂。性的にでも、戦いたいと興奮したらそうなってしまう」

 

『・・・・・それはなんというか・・・・・ごめんなさい。俺の血のせいで』

 

「気にしないでください。悪いのは九鬼ですから」

 

当のヒュームは・・・・・ティアマットに捕まれていた。

ところどころ、全身に切り傷があった。

流石のヒュームもドラゴンには敵わなかったということであった。織田信長に問う。

 

『・・・・・戦うか?』

 

「いいです。寧ろ、悪いのはこちらなんですから拘束されます。

できれば、痛くしないでくださいね」

 

『分かっている。ティアマット、帰るぞ』

 

『あいよ、分かったぜ』

 

人間の姿に戻って、織田信長を金色の球体の中に閉じ込め、

ティアマットと共に蒼天へ戻った。

 

 

∞                    ∞                     ∞

 

 

「・・・・・うっ」

 

「気が付いたか?」

 

「揚羽さん・・・・・?」

 

「ふん、ようやく起きたか」

 

「・・・・・」

 

川神百代の視界に九鬼揚羽と織田信長がいた。

体を起こし辺りを見渡すと、どうやら牢屋に入れられたようであった。

通路を挟むような形で鉄格子の向こうにはヒュームが牢屋に入っていた。

 

「ここって・・・・・牢屋ですか?」

 

「ああ、我らは牢屋に入れられた」

 

「・・・・・何で、あの人がここにいたんでしょうね」

 

「分からん・・・・・我も未だに驚いておるのだ」

 

「・・・・・ここから出ないのですか?」

 

「鉄格子に触れた途端に電流が流れました。また感電したいのであればご自由に」

 

「・・・・・」

 

「それに、我らは外交の目的で来ているのだ。

これ以上、犯罪になりかねない事をしたら蒼天という敵を回しかねない」

 

すでに手遅れでは・・・・・?と、川神百代は心の中で思った。

この牢屋に入れられた時点で犯罪者ではないか、と小さく嘆息する。

 

「これからどうします?いや、どうなるんでしょうかね・・・・・?」

 

「「・・・・・」」

 

二人は沈黙する。思いもしなかった出会いに三人は驚愕し、あっさりと倒されて捕まった。

一誠がこの国に住んでいると知っていれば、また違う方法で来れたはず。

 

「―――起きたようだな」

 

不意に女の声が聞こえた。顔を上げ、鉄格子の向こうへ視線を送れば、銀髪に鋭い目つきの

女性がいた。川神百代と九鬼揚羽はその女性を知っているのか、目を丸くした。

 

「た、橘・・・・・さん!?」

 

「橘殿・・・・・!?」

 

「久し振りだな、九鬼揚羽と川神百代。こんな形で再開するとは思いもしなかった」

 

「橘・・・・・西の四天王だったスピードクィーンの橘天衣・・・・・?」

 

橘天衣。元は西の四天王で、四天王最速を誇る武道家として知られていたが百代に敗れ、

武者修行をしていた所をとある人物に敗れたため、四天王の称号を剥奪されている。

それ以降の橘天衣の話や噂は忽然となくなり、行方も不明のままであった。

 

「橘さん・・・・・あなたまでどうしてこの国に・・・・・?」

 

「・・・・・会っただろうが、私は旅人・・・・・いや、一誠に救われた」

 

「っ!?」

 

「驚いたぞ、まさかお前達がこの国に侵入してくるとは思いもしなかった」

 

「フハハハ・・・、外交のつもりで参ったのだがこの有り様。

九鬼家の優秀な従者達も亡くした・・・・・」

 

顔を曇らせて、哀愁を漂わせる。絶対にあり得ないとは思っていなかったが

実際に目の当たりにしてショックを受けている。だが、そんな九鬼揚羽に朗報が告げられる。

 

「ああ、海域で破壊したロボットに乗っていた奴らなら奇跡的に助かっているぞ。全員だ」

 

「本当か!?」

 

思わず九鬼揚羽は鉄格子に触れた。その瞬間、電流が流れて九鬼揚羽の全身を駆け巡った。

全身に煙を生じさせて、心配した川神百代に抱きかかえられた。

 

「触れるな・・・・・と言っても遅いか・・・・・。今は治療している。

まあ、明日には目が覚めるのではないか?」

 

「そうか・・・・・良かった・・・・・」

 

「・・・・・それで、何時までお前はそこにいるのだ?」

 

「「・・・・・?」」

 

不意に橘天衣が視線を違う方へ向けて口を開いた。他に誰かがいるのか?と思った二人。

 

「・・・・・」

 

腰まである黒髪の小柄な少女。黒いワンピースを身に着け、細い四肢を覗かせている。

胸にペンダントを身に付けている少女が川神百代と九鬼揚羽の前に現れた。

 

「・・・・・え?」

 

「お前は・・・・・・」

 

「久しい、元気にしてた?」

 

「「オーフィスッ!?」」

 

「・・・・・俺もいるけどな」

 

スッとオーフィスと呼ばれた少女よりも身長が高い人物が現れた。二人は・・・・・いや、

四人は、その人物の姿を見た途端に目を丸くし、空いた口が塞がらなかった。

 

「た・・・・・」

 

「改めて久し振りだな。揚羽様と百代、織田信長。ついでにヒューム」

 

「旅人・・・・・」

 

懐かしき九鬼家に仕えていた元従者が現れた。

旅人・・・・・一誠を視界に入れてしばらく。瞳は潤い、何時しか涙で頬を濡らした。

 

「旅人ぉ!」

 

電流が体に流れる事を構わず、九鬼揚羽は鉄格子を掴んで一誠の頬を触れようとする。

一誠は牢屋の横にあるレバーを上げて、電気を止めた。それから九鬼揚羽の手を触れて、

頬を触らせる。

 

「旅人・・・・・旅人・・・・・・!」

 

「こうして近づいて見れば綺麗になったな、揚羽様。百代も随分と美しく成長したな」

 

「旅人・・・・・っ!」

 

「本当なら、お前らの前に二度と現さないでいようと思っていたんだが・・・・・、

この国に侵入してくるとは驚いたぞ。流石の俺も」

 

「どうして・・・・・そんな事を言うのだ・・・・・。

我はお前の事を好いておるのだぞ・・・?」

 

「未だに、俺の事を想ってくれているのか?」

 

「当たり前だ!」

 

涙を流し続けながら叫んだ。一誠は申し訳なさそうに溜息を吐く。

 

「取り敢えず、お前達がこの国に来た理由は分かった」

 

鍵を取り出して、牢屋の鍵穴に差し込んで捻り回す。

ガチャンと音と共に鉄格子が左右に分かれた。

その瞬間、九鬼揚羽と川神百代が一誠に抱きついた。数年ぶりに再開した旅人という男に。

 

「ようやく・・・・ようやくお前と会えた・・・・・!」

 

「ああ・・・・・本当に久し振りだ・・・・・!」

 

「お前ら・・・・・」

 

一誠は二人の背中に腕を回し、頭を撫でる。

その撫でられる感触に二人は本当に旅人と再会したと実感し、心から嬉しく思った。

―――そんな微笑ましいムードをぶち壊しにした人物が約一名。

 

「おい・・・・・貴様、俺を忘れてはいないか・・・・・」

 

「・・・・・空気を読めよ。それでも従者0位の執事か?」

 

「・・・・・ふん」

 

ヒューム・ヘルシングだった。

 

「・・・・・旅人」

 

九鬼揚羽は、一誠から離れては顔を覗きこんだ。

 

「どうして・・・・・お前がこの国にいるのだ?」

 

「・・・・・それは後で詳しく教える」

 

そう言ってヒュームのところに赴き、ヒュームを牢屋から解放させた。

 

「ついてこい」

 

 

―――玉座の間

 

 

四人が案内された場所は広い空間だった。その空間には鏡合わせのように、

誰かが座る席が左右に階段状に並んでいる。

鏡合わせの席の中央の少し奥には、上座だと思しき場所で階段があり、

5つの椅子が半円状に置かれていた。その背後には四神である青竜、白虎、玄武、朱雀。

そして、黄竜の画が飾られていた。

 

「ここは・・・・・?」

 

「ここは最も重要な会議をするために作った場所だ」

 

「玉座の間ということか?」

 

「ああ、その通りだ。そして―――」

 

「「「っ!?」」」

 

どこからともかく、ゾロゾロと数十人の少女と女性が一誠達の前に現れた。

 

「お前達の処遇を決めるためでもある」

 

一誠は上座の方へ赴き。5つの席の1つに座った。

それから一誠に続き、四人の少女達が座った。

鏡合わせのように、座る席にも少女や女性達が座る。

中には川神百代と決闘した凪の姿もあった。

 

「あっ、百代と揚羽じゃん!」

 

「おや、本当だねぇ」

 

「久し振り~」

 

「天に亜巳、辰子・・・・・お前達もこの国に住んでいたのか」

 

「当然だ。俺達は一緒に旅をしていたんだからな」

 

と、竜兵が当然とばかりに言って席に座った。

 

「旅人・・・・・お前は一体・・・・・」

 

唖然と九鬼揚羽はポツリと呟く。一誠は真剣な表情で、言い放った。

 

「―――この国を、大陸を創造した創造主であり、この国の王の一人だ」

 

「「「―――――っ!?」」」

 

「そして、俺は旅人ではない。蒼天の中央区を統べる王、名は兵藤一誠だ。

よろしくな、百代と揚羽、織田信長とそれにヒューム」

 

兵藤一誠・・・・・それが旅人の本当の名前だと知り、九鬼揚羽達は心に刻んだ。

 

「さて、他の王を紹介しようか」

 

視線を5人の中で一番小さく、まるでウサギと思わせる小さく、

頭にベールをかぶせて、中国の人が着るような漢服を身に包む少女が立ち上がった。

 

「初めまして、蒼天の北区を統べる王の月です」

 

次に金髪のツインテールに透き通った青い瞳の少女に向けると、立ち上がって口を開いた。

 

「私は蒼天の東区を統べる王、華淋」

 

北区の王が自己紹介を終えれば、

青い瞳で桃色の長髪に真紅のチャイナドレスを着た長身の女性が立ち上がり、口を開く。

 

「蒼天の南区を統べる王、雪蓮よ」

 

最後に緑の制服の服装を着込んでいるが、

どこかホワホワとした天然そうな少女だと思わせる雰囲気を

惜しみなく出す少女が立ち上がる。

 

「はーい♪私が蒼天の西区を統べるの桃香です!

他の皆に負けないように頑張って仕事をしています!」

「あら?この間、途中で仕事から逃げ出したと愛紗がまた嘆いていたけど・・・・・」

「あっ、あはははっ・・・・・」

「桃香・・・・・?」

「はい、ごめんなさい。

もうしませんから、その黄金のハリセンをどうか出さないでください」

なんだか、頼り甲斐がない少女だな・・・・・と川神百代が小さく呟いた。そこで気付く。

 

「・・・・・女ばっかりじゃん!」

 

「能力的に、実力的に選抜したり、世界中に旅して勧誘した結果がこうなったんだ。

気にするな」

 

「凪もその一人ってことか?」

 

「ああ、そうだ。ここにいる全員が九鬼家も欲しがる人材だろうな」

 

「・・・・・俺からしてみれば赤子当然の者しかいないようだがな」

 

『・・・・・』

 

カチンと頭に来たのだろう。何人かの少女達がヒュームを睨んだ。だが、一誠は嘲笑を浮かべながら言った。

 

「―――俺に100回も負けたミジンコが何を言っているんだ?

こいつらをお前と比べるな大人げない」

 

「・・・・・」

 

ギロリッ!と殺意が籠った瞳で一誠に向ける。その口からどこまでも低かった。

 

「数年振りに殺し合いでもするか?」

 

「おいおい、俺に対してそんな口の訊き方をしてもいいのか?

この国での俺は、他の国で言うと大統領なんだ。

俺が一言でも呟けば、お前を殺すことなんて簡単なんだ。まあ、するのは俺だけどな」

 

「・・・・・っ!」

 

「で、お前は揚羽の従者だ。高が従者が王の俺に口出すな。

俺は九鬼財閥の令嬢である九鬼揚羽と話をするんだ。黙っていてくれ」

 

そう言われて額に青筋を激しく浮かべたヒューム。

今にでも一誠に襲いかからんと全身から闘気を発する。

 

「旅人・・・・・いや、一誠と呼んでも・・・・・?」

 

「構わない」

 

「では一誠・・・・・外交の話をする前に訊きたいことがある。

この大陸を創造したというのは本当なのか・・・・・?」

 

「本当だ」

 

あっさりと認めた。その事実に驚きを隠せないでいた。

この大陸が誕生したのは今から数十年前以上の事だ。

だとしたら、一誠はその頃からずっと姿を変わらず今まで生きていたという事になる。

 

「・・・・・あのドラゴンは?」

 

「俺の家族だ。凄いだろう?自慢の家族でもあるんだ」

 

自慢げに笑みを浮かべて一誠は九鬼揚羽の問いに答える。

 

「一誠・・・・・お前は一体・・・・・何者なのだ?」

 

「・・・・・悪いが、それだけは教えれないな。

他の事なら何だって教えれるが俺自身の事は教えれない」

 

しかし、一誠の事に関する問いだけは昔と変わらずノーコメントだと言う。

 

「ほんと、それだけは私達にも教えてはくれないのよねー?」

 

「そうね、私達を本当に信用しているのかしら?」

 

「してるさ。でも、誰だって言えない秘密の一つや二つはあるだろう?」

 

「そうかしら?」

 

「だったら華淋。お前が秘密にしている事をバラしてもいいんだな?」

 

真顔で東区の王に問うた。対して華淋は、ギクリと思わず顔を強張らせた。

それでも強がって否定するために口を開いたその瞬間だった。

 

「私に秘密なんて・・・・・」

 

「えっと小さい頃だったな。他の人の目を盗んでお前は俺の布団を―――」

 

「そ、それ以上は言わないでちょうだい!」

 

羞恥で顔を真っ赤に染めた華淋が一誠の口を両手で防いだ。

そんな様子を見ていた雪蓮がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていた。

 

「へぇ~?華淋、あなたそんな事をしていたの?意外と可愛いところあるんじゃない」

 

「う・・・・・っ!」

 

「ついでに言えば雪蓮。

お前は確か、冥淋に内緒で祭と酒を飲んでいたことも知っているぞ」

 

「ちょっ!?ど、どうしてそれを―――っ!?」

 

不意に、殺気染みた視線が感じて雪蓮は、はっ!?と言葉を呑んだ。

壊れたブリキの玩具如く、ゆっくりと鏡合わせになっている席に座っている

褐色肌に艶がある黒い長髪に、眼鏡を掛けた女性に視線を向けた。

 

「後で祭殿と一緒にお話があるわ。良いわね?」

 

「・・・・・はい」

 

ガクリと頭を垂らした。まるで、犯罪者が捕まったかのような様子だった。

 

「と、まあ・・・・・人は隠している秘密があるんだ。知られたくない秘密がな?」

 

お、怖ろしい・・・・・と九鬼揚羽と川神百代はそう思わずにはいられなかった。

もしかしたら、自分の秘密さえも知っているのでは?と思わずにいられず、冷や汗を流した。

 

「だから言えない。分かってくれ」

 

「・・・・・」

 

無言で頷く。確かに、人には言えない秘密は誰にでもある。

九鬼揚羽だってその一人だ。秘密を暴露されたあの二人のようにはなりたくないのと、

好いている男が嫌がる事はしたくない気持ちが九鬼揚羽の背中を押した。

 

「でも、逆に俺も聞きたいことがあるんだよな。特にヒューム。どういう事だ?」

 

「・・・・・なに?」

 

一誠の視線はヒュームから織田信長に向いた。

 

「―――織田信長の事だ」

 

「っ!?」

 

ヒュームの顔に驚愕の色が浮かび、息を呑んだ。

 

「・・・・・この野郎、悪用するなとは言ったが、とんでもないことをしてくれやがったな」

 

呆れとも怒りとも感じさせる言葉を放ち、嘆息した。

 

「一誠・・・・・どういうことなの?」

 

「ああ、九鬼家は俺の血を使って英雄のクローンを現世に生ましたようだ。

あの血は扱い方を間違えると化け物にでもなってしまう。そう、本当の意味でな」

 

化け物と聞いて織田信長は体を一瞬だけ震わした。事実、その通りであるからだ。

 

「あら、それは危険極まりない存在じゃない。で、どうするの?」

 

「・・・・・引き取りたいところだが・・・・・できないだろうな。

九鬼家の技術力で生まれた存在だし・・・・・いや、できるか?」

 

ふと、今度は九鬼揚羽に視線を送った一誠。それから考えるような仕草をして、

うんと頷いた。

 

「俺達と外交をするために侵入をしたんだよな?」

 

「そうだが・・・・・」

 

「なら、今回のこの国に侵入した事を不問にし、蒼天との外交を成功したいよな?」

 

「できれば・・・・・そう願いたい」

 

「だったら・・・・・こっちもお願いしよう。―――織田信長を高校卒業後、

この蒼天に引き渡してほしい」

 

「なっ・・・・・!?」

 

「えっ・・・・・!?」

 

交換条件、織田信長を蒼天に引き渡す条件を突き出されて、九鬼揚羽は目を丸くした。

織田信長自身も自分を引き抜こうとする一誠に驚きを隠せなかった。

 

「俺の血は、他人の体に流せば適合者ではないかぎり、血がその人間を支配する。

心を喰い、周りにあるもの全て破壊しようと化け物へと変えてな」

 

「では・・・・・織田信長は・・・・・」

 

「さぁ・・・・・どうやって自分を保てているのかは知らないけど、予想はできる。

自分の血を飲んで自制心を保っているんだろう?違うか?」

 

ヒュームに問えば、沈黙するばかり。次に織田信長へ視線を送れば無言で頷いた。

それから九鬼揚羽に問うた。

 

「で、この条件を飲んでくれれば、今回の事を不問にし、

九鬼と交流をしてもいいと思っている」

 

「・・・・・」

 

「ああ、勿論。織田信長本人にも訊いても構わないぞ。

本人が嫌なら、別の条件を提案するつもりだ」

 

「・・・・・分かった。取り敢えず、一誠の条件を呑もう」

 

その言葉で全てが終わった。

 

「さーて、話しは終わったことだし、飯の準備でもするか」

 

一誠のその一言に緊張が一気になくなって、場が賑やかになった。

 

「今日は俺が作るからな。いいな」

 

「ダメ!それだけは絶対にダメ!」

 

「私達を泣かす気!?」

 

「泣く姿も可愛いから良いじゃないか」

 

「この鬼!悪魔!変態!」

 

「おい、桂花。変態と言う口はこれかぁ~?」

 

「いふぁい!いふぁい!」

 

「流琉。一緒に飯を作るぞ」

 

「わ、分かりました・・・・・」

 

「あらあら、私も一緒に作りますわ」

 

「わしも作ろうではないか」

 

「紫苑はともかく、祭。お前は冥淋と話があるんだろう?」

 

「そうです、祭殿。―――逃がしはしませんよ?」

 

「あわあわ・・・・・一誠様の料理を食べることになっちゃうよ朱里ちゃん」

 

「はわはわ!ど、どうにかして料理を作らせないようにしないと・・・・・・!」

 

「朱里と雛里。お前達二人の秘密をバラすぞ~?」

 

「「そ、それだけは勘弁してください~!?」」

 

「おや、今日の主は何時にも増して強引ではないか」

 

「きっと客人がいるからであろう。・・・・・諦めが肝心か・・・・・」

 

わいわいと少女と女性達は席から立ち上がって騒ぎ出した。

何時もこんな感じでこの国に住んでいるのか?と九鬼揚羽と川神百代は心の中で思った。

そして―――なんだか、とても楽しそうであった。

 

 

―――夜。

 

 

四人は一誠達と共に夕食を食べることになった。そこで互いに一誠の情報を交換していた。

 

「そっか、お前達は一誠に鍛えられているんだ?」

 

「ああ、そうだ。今でもしてもらっている」

 

「だから、私とあんなに戦う事ができたのか・・・・・納得したな」

 

「こんなにあなたと早く再会するとは驚いた。

それもこの国に侵入してきたのはあなた達四人が初めてだ」

 

川神百代は凪と雑談していた。一度は拳を交わした中で話しやすい相手だからだった。

 

「あの時も言ったけど、また勝負してくれ」

 

「機会があれば何時でも」

 

一方、九鬼揚羽は一誠の隣に座ってこの国の事を聞いていた。

 

「やはり、あの巨大な建物は宇宙開発のために作られていたものか」

 

「月面にコロニーを建設することが目的なんだ」

 

「月で人々が住めるようにか?・・・・・凄い事を考えるのだな。

たったひとつの国で他国の援助無しで作り上げるとは感心した」

 

「あの建物は夏の間に完成できる予定なんだ。完成したら招待してやるよ」

 

「心待ちしているぞ」

 

「ああ、待っていてくれよ?で、あの建物の開発責任者が真桜だ」

 

「それは誰だ?」

 

「はーい、ウチやでぇ~」

 

ゴーグルをぶら下げ、腰に工具を装備し、見た目は直江大和達と同じ年齢だが、

それ不相応に育った豊満な胸にビキニで身に包む紫の髪を両サイドに結んだ少女が

箸を持ったまま挙手した。

 

「彼女は物を作ることが他の人より秀逸している。

他にも私生活の用品や兵器にも手を出している」

 

「いやぁー、一誠様に褒められると照れるわぁー」

 

「それから沙和」

 

「はーいなの」

 

オシャレな服装を身に包み、茶色の髪を三つ編みにして、

髑髏に模したゴムで結んだそばかすがある少女が返事した。

 

「彼女はファッションに秀でている。自分でデザインを考え、

実際に自分の店で作った服を販売しているほどだ」

 

「そうなのー。一誠様は沙和がしたいことを何でもやらせてくれて感謝しているの。

だから沙和も張り切って頑張って作って販売しているのー」

 

「ほう、それはその歳で店を持って販売するとは素晴らしい能力ではないか」

 

「で、俺達の中で一番の稼ぎ頭は―――」

 

と、一誠がそう口を開いた瞬間。扉が開いて三人の少女が入ってきた。

 

「あっ、皆先に食べてるー!」

 

「ちょっとちょっと、地和達を待たないで食べるって酷くない!?」

 

「・・・・・あれ、知らない人が三人いるわ。新しい人?」

 

三人の少女が一誠達に話しかけた。良いタイミングで来たな、

と一誠は笑みを浮かべて九鬼揚羽に教えた。

 

「丁度来たあの三人だ」

 

「え?一誠、どういうこと?」

 

キョトンと桃色の髪の少女が首を傾げた。一誠は事の説明をする。

三人の少女は説明を聞いてなるほど、と納得して自己紹介をし始めた。

 

「私は天和(てんほう)だよー。よろしくね♪」

 

桃色の髪に黄色のリボンを結び、

ほわほわと天然そうな雰囲気を纏う踊り子の服を身に包んだ少女が最初に自己紹介をし、

 

地和(ちーほう)よ。ちゃんと覚えておきなさい」

 

小柄で水色の髪をサイドテールで緑の花を模した髪飾りで結び、

揉み上げの髪が軽めにロールになって踊り子の服を身に包んでいる少女が自己紹介すれば、

 

人和(れんほう)です。以後、お見知りおきを」

 

紫色の髪に眼鏡を掛け、揉み上げに金色のヘアピンを付けて二人と同じ踊り子の服を身に包む

クールビューティな少女が自己紹介をした。

 

「三人は3姉妹で『数え役満☆姉妹(しすたぁず)』のアイドルユニットとして活躍している。

蒼天じゃあ知らない奴はいない」

 

「うんうん!一誠が私達の歌を気に入って『手始めにこの国の人達をお前達の歌で

虜にしてみろ』って色々と準備してもらったり、手伝ってもらったりしてくれたおかげで―――」

 

「地和達はこの国一番のアイドルとなったわ!」

 

「感謝しています、一誠さん」

 

「どう致しまして」

 

一誠が笑めば、三人の少女達も笑顔になった。一誠はただ、

自分の目的のために世界を旅している訳ではなく、

世に埋もれた素晴らしい人材を探していたことに揚羽は気付いた。

 

「一誠・・・・・お前は人を見る目があるのだな」

 

「自覚している。・・・・・それはそうと揚羽」

 

「む?」

 

「妹がいるとは知らなかったぞ。九鬼紋白だったな?」

 

「ああ、一誠が従者を辞めてしばらく経った頃に父上が・・・・・」

 

「帝様が?」

 

「浮気をしていたことが発覚したのだ。その上、浮気相手との間に子を成してしまった」

 

「・・・・・まさか」

 

「うむ・・・・・その子が我と英雄の妹である紋白なのだ」

 

うわー、と一誠は九鬼帝の顔を思い浮かべた。

絶対に泥沼で修羅場みたいな事になったんだろうな・・・・・。

そう思わずにはいられない一誠だった。

 

「それより、どうしてお前が紋や織田信長の事を知っておるのだ?」

 

「ん?一度だけ学校に行ったんだよ。義経達が転入したその日に」

 

「なっ!何時の間に来ていたんだ!?」

 

川神百代がびっくりした表情で訊ねた。一誠は答えた。

 

「与一と織田信長には会ったぞ」

 

「・・・・・与一め。そんな重要なことを我に黙っていたとは。

しかし信長よ、どうして我に教えてくれなかったのだ?」

 

「いや、与一に関しては俺が口止めした。

でも、織田信長がお前達に言わなかったのは疑問だな」

 

そう言い、一誠は織田信長を見詰めた。

九鬼揚羽の隣にいる織田信長は九鬼揚羽の視線に向けられていて、

小さく息を零して口を開いた。

 

「私の勝手です」

 

そうか、と一誠は苦笑した。九鬼揚羽は溜息を吐いて喋り出す。

 

「この者は自分に置かれた立場と状況と我が九鬼家に恨んでいるようなのだ。

『自分の利益のために看板として私達を生ました九鬼家が嫌いだ』と真っ直ぐ面に

言われてしまった。だからなのだろう、お前の事を我らに教えなかったのは」

 

そう言って少し悲しそうに、寂しそうな表情を浮かべた。一誠はそんな

九鬼揚羽の頭を昔のように撫でて慰めた。しばらくして、一誠は東区の王こと華淋に告げた。

 

「華淋、世界に挑戦してみないか?」

 

「あら・・・・・いきなり面白い事を言うわね?」

 

「今回、こいつらが無謀な侵入をしようとしたことで切っ掛けになったと俺は思う。

殻に籠るのはもう止めにしよう。外に出て、さらに俺達の事を全世界に知らしめる。

そう、三国志でいうと天下を統べるために戦いを挑むようでな」

 

華淋だけじゃなく、この場にいる全員に問うた。一誠の問いを聞き、静寂が場を支配した。

 

「・・・・・ふふっ、ふふふふっ」

 

だが、華淋が小さく笑いだした。次第にその笑い声が大きくなって、

一誠に向かって言い放った。

 

「そうね、そうしましょう!この蒼天は各国と対峙できるほどの国力があるんですもの。

何時までもこのままでいられないわ。一誠?私の夢を覚えているかしら?」

 

「―――『自分の手で世界を創り変え、平和にしてみたい』。覚えているさ」

 

「ええ、それを一誠は笑って『気に入った』と私をこの国に連れてきた」

 

「雪蓮と桃香も夢は違うが、似ている部分がある。

俺は二人の夢を気に入ってここに連れてきた」

 

「はい!」

 

「確かにそうね」

 

二人は笑みを浮かべながら頷く。

 

「だから俺は、個性的で逸脱している能力を持ったお前達を探し、この国に連れてきた」

 

一誠は食卓を囲んでいる少女と女性達を見回す。

 

「良い機会だ。この国はもう十分安定している。治安も政治も環境的も全て万全に整った。

俺達のシンボルでもあるあの建物ももうしばらくすれば完成する。

お前達―――世界へ羽ばたく時だ」

 

「―――じゃあ、地和達の歌も他の国でも歌えるって思ってもいいのね?」

 

「そのまま世界に轟かせろ」

 

「やったー!一誠、ありがとーう!」

 

「天和姉さん、地和姉さん。私達の歌を全世界に轟かせましょう。

私達の夢、世界一のアイドルを目指すために」

 

「勿論よ!手始めに、最初は日本を制するわ!」

 

「あー、日本ってブランドものが揃っているのー。沙和、それを買って参考にして作ろっと♪」

 

「自分の金で買えよ?国の金で買ったらお仕置きだからな」

 

沙和にそう言うと、首を何度も縦に振って頷いた。

 

「で、最初はどこにするのかしら?私達の名を上げるためにはこの国を拠点にして」

 

「そうだな。ここは勿論―――日本から始めよう」

 

九鬼揚羽と川神百代を見て決めた。ここは日本海。

なら、最初に制するのは日本にし、

それから周囲の小国や大国を制するのは面白いかもしれないと、

一誠は考えて決めたのである。

 

∞∞∞

 

バサッ!

 

「すみませんね。わざわざ送ってもらって」

 

「そう思うなら最初から蒼天に侵入してくるな」

 

「しかし、驚きました。まさか旅人がこの国に住んでいるとは思いもしませんでしたよ」

 

「言ってないから当然の反応だろう」

 

日本海上空に飛ぶ金色のドラゴンの背に、一誠たちが乗っていた。川神百代たちを日本に帰すためである。懐かしげにクラウディオが一誠と会話する。

 

「旅人。旅を終えているのであればどうでしょう?もう一度九鬼家の従者になりませんか?」

 

「無理だ。俺は一国の王だぞ?従者になれるか」

 

「おや、それは残念ですね。揚羽様がお喜びになるのに」

 

「揚羽をダシにしても変わらない」

 

真っ直ぐ前を向いたままハッキリという。

 

「ドラゴンの背中に乗れる日が来るとは・・・・・」

 

「金色の体って凄く綺麗ですね」

 

「・・・・・この鱗一枚でも売ったらどれだけの価値なんだろう?」

 

「百代、そんなことしたら絶交だからな。それとお前ら、二度とあんなやり方で蒼天の国に来るなよ」

 

「では・・・・・?」

 

「蒼天の国が誕生して以来数十年、初めてあの国に侵入した報いとして、船から入国できるようにする。ただし、九鬼家だけだ」

 

「えー!私はどうなんだよ!?」

 

「付き添いで来ればいいだけだろう」

 

「それもそうか」

 

納得する川神百代。というか、また来るつもりでいたのか?と一誠は呆れる。

 

「そうだ、一誠。アドレスを交換しよう」

 

「うむ。我もしよう」

 

「あっ、私もお願いします」

 

川神百代の発言が呼び水となり、九鬼揚羽と織田信長が携帯を取り出し始める。

 

「・・・・・しょーもない。ただし、大和たちには内緒だぞ。それが条件だ」

 

「なんでだ?」

 

一誠は意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「驚かした時の表情が見れなくなるからだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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