真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

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風の子と出会い×川神院

 

 

「気持ち良い場所だな。な、オーフィス」

 

「ん、気持ち良い・・・・・」

 

この世界に放り飛ばされて数十年。

あの時の戦争は第二次世界大戦の真っ最中だったことが後々になって気付いた。

戦争なら邪龍たちで終わらせようと決めて、さっさと戦争を終結させた。

 

というか、あいつらに歯が立たないと分かった国は直ぐさま戦争を止めたのだった。

それはたった一年で戦争は幕を下ろした。

 

『あーあー、つまんねぇなー。戦争があっという間に終わっちまってよ』

 

「グレンデル、まだ戦争をしている国もある。戦争に乗じてお前らを出すから我慢しろ」

 

『おほっ!そりゃ楽しみができやがったな!絶対だぞ!』

 

「分かっている」

 

寝転がっていると脳に声が聞こえる。その声と話をしていると、風が吹いてくる。

 

「さて、―――メリア、ゾラード、サマエル。そっちはどうだ?」

 

『うん、全然問題ないよ』

 

『誰もこの大陸に来ようとする人間はいません』

 

『あれだけ追い払ったのだ。諦めたのだろう。我らが住まうこの大陸(・・・・・・・・・・)をな』

 

「そうか。悪い、お前らだけ残して旅をしてしまって」

 

俺とオーフィスは旅をしていた。つい最近のことだが、現在いるのは神奈川県川神市。

俺達二人がいた世界と同じ県と市が存在していることに気付いたのだ。

最初に駒王学園があるあの場所へと向かったが・・・・・学校は存在していた。

 

しかし、名前が違っていて住んでいた家も違っていた。

並行世界・・・・・いわゆるパラレルワールドのようであった。

次元の狭間は存在している。でも、冥界、天界は存在していなかった・・・・・。

 

「さてと、掛かっているかなぁ〜?」

 

体を起こして罠を設置している川に赴いて結果を調べる。

オーフィスも起き上がってついてきて一緒に罠を見た。その結果・・・・・。

 

「・・・・・お、数匹ゲット。塩焼きにするか」

 

「食べる」

 

罠に掛かっていた魚を違う入れ物に移し、焚き火の方へ移動する。魚を串刺しにし、

塩や様々なスパイスを振り掛けて焚き火の傍に突き刺す。

少しして魚が焼く臭いが鼻の中に入ってくる。

 

「・・・・・ん?」

 

焼き上がるまでと赤いバンダナを巻いた子供が近づいてきた。まあ、俺たちには関係ないな。

子供を気にしないで一匹の焼き魚を完食した。もう一匹の焼き魚も食べるが・・・・・

 

「「・・・・・」」

 

「・・・・・」

 

ジッと俺を見詰めてくる。腹が減っている訳でもなさそうだが・・・・・。

 

「・・・・・なあ」

 

「・・・・・?」

 

「食いたいのか?」

 

「・・・・・えっ?」

 

「さっきから見られていると気に成って食い辛いだけど」

 

「いや、お兄さんがテントを持っているからもしかして旅の人かなって・・・・・」

 

旅人・・・・・ね。確かに旅をしているし、

あそこにテントを張ってここを一時的な拠点として住んでいるわけだけど・・・・・。

 

「まあ一応、そんなところだ」

 

「っ!じゃあ、色んな所に旅をしているのか!?

世界中に旅をすればワクワクする冒険はあるのか!?」

 

急に瞳をキラキラと輝かせて子供は訊いてきた。

 

「・・・・・まあ、確かにあるぞ?古代の遺跡とか宝物が眠る洞窟、

海底に沈んでいる沈没船とか色々な」

 

この世界じゃないけどな。そう心の中で呟くと子供は嬉しそうに声を弾ませる。

 

「すげぇー!俺も早く冒険がしたいぜぇー!」

 

「なんだ、冒険が好きなのか?」

 

「俺のお父さんは冒険家なんだ!俺も大きく成ったらお父さんと一緒に

冒険に出る夢なんだ!」

 

「そうか、奇遇だな。俺の両親も冒険家だ。色々な宝物を手に入れて持って帰る時もある」

 

「おおー!」

 

「俺も今は旅の途中だ。しばらくはこの場所で休憩するつもりでいる」

 

と言っても来たばかりだけどな・・・・・

 

「じゃあ、もっとお兄さんが冒険した話を聞かせてくれよ!」

 

「それは構わないが・・・・・お前、名前は?」

 

「俺は風間翔一!お兄さんの名前は?」

 

「・・・・・はっ?」

 

風間翔一・・・・・俺の世界に存在していたバンダナを巻いた男。百代の友達。

マジマジと風間翔一と言った子供を見ていると、首を傾げてどうしたんだ?と訊ねられた。

 

「あっ、ああ・・・悪い。・・・・・そうだな・・・・・旅人と呼んでくれ。

この子はオーフィスだ。一緒に旅をしている俺の家族だ」

 

「旅人?」

 

「ああ、自由気ままに何も縛られず風のように生きて行く旅人だ」

 

「自由に生きて行く・・・・・旅人さん!」

 

「うん?」

 

「これ、やるよ!」

 

翔一が巻いていたバンダナを外して俺に突き出した。俺は首を傾げる。

 

「何故だ?」

 

「友情の印だ!ここでお兄さんと会ったのはきっと何かの縁だから

俺はこのバンダナを渡す!」

 

「・・・・・」

 

子供の言葉を聞いて俺はキョトンとした。子供の頃の風間翔一は

こんな感じだったのか・・・?

 

「・・・・・いいのか?」

 

「ああ!」

 

「・・・・・解った。友情の印を受け取ろう」

 

バンダナを受け取り上腕の部分にバンダナを巻いた。

 

「じゃあ、俺はこれをやろう」

 

上手に焼けましたー!と空耳が聞こえたが気にしないで焼き魚を風間に渡した。

何時の間にかオーフィスもモグモグと食べている。

 

「焼き魚・・・・・?」

 

「冒険をして川の傍で野宿するなら魚を捕獲して焼き魚にするのが定番だ。

まだ子供で初心者のお前はこの魚を食べた瞬間、始めて冒険の一歩を踏む事ができる」

 

「・・・・・」

 

「いらないなら食うぞ」

 

「いや、食べる!」

 

俺から串に刺した焼き魚を取り頬張り始める。

 

「うめー!この焼き魚、超うめーぞ!」

 

「当り前だ。俺が焼いているんだ」

 

「もう一匹!」

 

「あっ!その魚を取るな!」

 

「へへん!何匹も食べれちゃうぜ!・・・・・辛ぁー!?」

 

「・・・・・そいつには辛いスパイスを振り掛けてある。欲張った罰だな」

 

空のコップに水を入れて翔一に渡すと奪う様に俺から取って水を飲み干す。

 

「ぜぇ・・・・・!ぜぇ・・・・・!し、死ぬかと思った・・・・・!」

 

「注意事項その1、自然界には危険な食物が育っている。

食べられるか調べてから食べる事だ」

 

「べ、勉強に成りました・・・・・」

 

「ならいい。それと、それを最後まで食えよ」

 

「・・・・・」

 

冷汗をダラダラと流す翔一にモクモクと焼き魚を食べる俺とオーフィス。

しばらく俺は翔一と色々な話をして1日を過ごした。

 

「そろそろ帰って方が良いぞ。辺りが暗くなってきた」

 

「そうするよ。旅人さん、また遊びに来ても良いか?」

 

「しばらくはこの町に居るつもりだ。たまにいない時もあるがな」

 

「そうか、それじゃあまた明日!今日は楽しかったぜ!」

 

翔一は手を振りながら家に戻っていった。完全に見えなくなると立ち上がった。

 

「あいつが実在している・・・・・。この世界は一体どうなっている・・・・・?

いや、もう気付いている。この世界は別の世界だ。並行世界だって理解している」

 

少し困惑気味になってしまい、頭を左右に振るった。

 

「オーフィス、どうやらこの世界は百代にとって幸せな世界みたいだぞ」

 

「そう、それは良い世界。でも、我にとっては、イッセーと共にいることが幸せ」

 

ピョンと俺の肩に乗っかった。この世界に来てからというものの俺とオーフィスは一瞬でも

離れた事はない。もう無二の存在だ。

 

「さて、少し早いけど寝るか」

 

「ん、一緒に寝る」

 

「分かっているよ。俺もオーフィスと一緒に寝たいさ」

 

そう言いながらテントの中へと潜り込んだ。明日もあの子供が来るし、

もっと聞きたいこともある。

 

 

∞                    ∞                     ∞

 

 

翌日、昨日は土曜日だったため、今日は日曜日である。

朝起きて、朝食を食べ終える頃には風間が風のように走ってきた。

 

「旅人さぁーん!オーフィス!」

 

「おはよう。言った通りに来たな」

 

「おはよう」

 

「おはよう!旅人さん、もっと旅の話を聞かせてくれ!」

 

「いいぞ。でも、それは歩きながらで良いか?この街に訪れたのはつい最近なんだ。

まだこの街の地理は詳しくはない」

 

本当は知っている。どこに店があるのか、店員が誰なのかも知っている。

元の世界に帰れるヒントがあるかもしれないと思って、世界中を旅しているに過ぎない。

 

「だったら俺がこの街の案内するぜ!」

 

「そうか、だったら頼む」

 

「おう!」

 

子供らしく元気のいい返事をする。

オーフィスは俺の肩に乗っかり、風間翔一の先導の下で川神市を歩き回る。

川神駅の周辺の金柳街、川神院正面に繋がる仲見世通りの商店街や親から言ってはダメだと

言われている川神駅の裏に繋がっている親不孝通り。

しばらくすると、風間翔一が腹を押さえだした。

 

「腹減ったぁ~」

 

「・・・・・もう昼食の時間か。さっき通った梅屋で食べるか?」

 

「いいのか!?」

 

「道案内してくれたお礼だ」

 

「ありがとう!」

 

嬉しそうに風間翔一は笑みを浮かべた。それから思う存分に

食べたらまた多馬川沿いに戻って旅の話をした。

 

「旅人さん旅人さん!蜘蛛って食べれるか!?」

 

「・・・・・食べれなくはないけれど、殆ど毒がある蜘蛛だから食えないぞ。

食べるにしても調べて、調理法を覚えてからするんだぞ」

 

「分かった、絶対にそうする」

 

食べる気なのか!?小学生とは思えない発言に俺は度胆を抜かれた。

 

「蜘蛛・・・・・美味しい?」

 

「オーフィス、頼むから興味をもたないでくれ」

 

あれは調理したくはないぞ。サバイバル以外で・・・・・。

 

「さてと、オーフィス。あれをやるぞ」

 

「あれ?」

 

「ああ、たまにやるんだ」

 

オーフィスはコクリと頷いて、俺の手の平を器用に乗った。

―――そのまま上空へ思いっきり投げた。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

風間翔一が開いた口が塞がらない。

オーフィスの姿は豆粒よりも小さくなって数十秒は落ちて来なかった。

二分ぐらい経った時に、オーフィスが俺の真上に落下してきて両手でキャッチした。

 

「お帰り、どうだった?」

 

「楽しかった」

 

そうか、と呟いていたら翔一が俺のズボンを引っ張った。

どうした?と見下ろせば目をキラキラと輝かせて見上げていた。

 

「旅人さん!俺も俺も!」

 

「・・・・・大丈夫か?」

 

「ああ!絶対に怖がらない!俺は風になる!」

 

そう言われてしまっては・・・・・しょうがない。オーフィスを地面に下ろして

風間翔一をオーフィスと同じように上空へ放り投げた。―――少しして落ちてきた。

 

「よっと、どうだった?」

 

「・・・・・」

 

フルフルと体を震わせた。・・・・・やっぱり恐かったか?と思っていたら・・・・・。

 

「おもしれぇー!ジェットコースターに乗った気分だった!」

 

・・・・・恐かったどころか面白がっているなんてな・・・・・。

 

「旅人さん!もう一回!もう一回お願い!」

 

「しょうがねぇな・・・・・そら・・・・・よ!」

 

「うっはあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

風間翔一は風となった。

その隙にオーフィスを抱きかかえて爆発的な脚力で空を蹴り、風間翔一に近づいた。

 

「えっ!旅人さん!?」

 

「ほら、掴まれ。もっと面白い事を体験させてやるよ」

 

手を伸ばせば俺の手を掴んだ。しっかりと胸に抱えてさらに上空へ跳んでいく。

そう、大気圏までに。そこまで辿りつけば俺達は、金色の光に包まれて地球を見下ろす。

 

「・・・・・」

 

風間翔一は青い海、白い雲がある地球の反面を釘付けになって見詰めた。

 

「どうだ?これが地球だ」

 

「すげ・・・・・地球って綺麗なんだな。俺、初めて直接見たぜ」

 

キラキラと目を輝かせている風間翔一。その目で俺を覗きこませる。

 

「旅人さん!今度は月まで連れてってくれ!」

 

「いや、そこまで無理だから」

 

「えー!」

 

「月に行きないなら大人になって行け。月は逃げないからさ」

 

苦笑する俺だが、こいつは絶対に月に行くという夢を持った瞬間でもあった。

それから大気圏から降りて、地上へ物凄い速さで降下するのだった。

 

その間でも風間翔一は楽しげに笑っていた。

 

そして、地面に難なく着地すると二人を下ろすと、

風間翔一はこの事を両親に伝えたいと言って帰ろうとする。

 

「旅人さぁーん!今日はありがとうなあー!」

 

風間翔一は大きく手を振って家に帰って行った。

俺とオーフィスも手を振ってやれば、腰を下ろした。

 

「結局、まだガイアたちは来てなさそうだな」

 

「ん、いつか必ず来る」

 

「そうだな・・・あいつらだって・・・・・」

 

と、言いかけたその時。空間にポッカリと空いた穴を感じた。

そこに振り向けば・・・・・見覚えがある人物がいた。

 

「(―――――川神・・・・・鉄心・・・・・!)」

 

「ほう、よう気付きおったな」

 

白いヒゲを伸ばし、袴を身に付けている老人・・・・・あの世界にでも存在している

川神鉄心が、いた。

 

「空を見上げておったら三人が空から降ってくるのを見かけての。

助けようかと思って来てみたんじゃが、どうやらその心配はなさそうじゃったの」

 

「・・・・・川神鉄心か」

 

「いかにも。武の総本山、川神院の総代を務めておる川神鉄心じゃよ」

 

武の総本山・・・・・?あの世界ではそんな事、聞いてはいないんだが・・・・・?

 

「おぬしら、強そうじゃのう?特にその子から発する気のオーラはちと、禍々しさを感じる」

 

「だからなんだ?俺の家族に手を出すつもりか?」

 

「ふむ・・・・・そう言うわけじゃないんだが、気分を害してしまったのならば

申し訳がない」

 

頭を掻いて申し訳なさそうに言う。あの世界の鉄心と同様、

たまに読めないところがあるな・・・。

 

「おぬしら、ここで寝泊っておるのか?」

 

「旅をしているからな。しばらくはここにいるつもりだ」

 

「じゃったらわしの家にこんか?外で泊るより、家で寝た方が良いじゃろうて」

 

「・・・・・」

 

川神鉄心の提案に訝しい目つきで見る。今日あったはずの俺たちにどうして世話をしたがる?

 

「信用ができないな・・・今日あったばかりのはずのお前と家に招待されるなんて、

何か企んでいると思うぞ」

 

「心外じゃのう。わしはおぬしらに興味を持っただけじゃよ。

つまり、おぬしらと接したいという気持ちで誘っておるのじゃよ」

 

・・・・・嘘は・・・・・言ってなさそうだな・・・・・。衣食住に関しては問題ないが、

この世界の川神鉄心からも色々と聞き出すとしようか。

 

「・・・分かった。その誘いを受けよう」

 

「うむ。それでは、川神院へ案内しよう」

 

「いや、知っているし」

 

俺とオーフィスは川神院に訪れることになった。川神院・・・つまり、あの少女もいるわけだ。子供の頃の、川神百代が・・・・・。

 

 

∞                  ∞                       ∞       

 

仲見世通りを真っ直ぐ通って行けば壮大な門が俺たちを出迎えた。

由緒正しい武道家の家だというだけあって、門の向こうから凄まじい闘気が満ち溢れていた。

 

広場に入ろうとすると、修行僧達が鍛練をしていた。

―――その中に混じって鍛練している少女も視界に入った。

でも、川神鉄心は俺たちを中へと案内するとばかりに、さっさと家の中へ入って行った。

 

中は木製で構築された建物だった。まあ、当然だろうな。

足を踏み込む度にギシギシと馴染みがある音が足から伝わる。

川神鉄心についていけば、とある畳の部屋の中へと案内された。

部屋の中にはポツンと将棋の盤と駒が置かれてあった。

 

「おぬし、将棋はできるかの?」

 

「できるけど・・・・・それがどうかしたのか?

(あの世界の鉄心は趣味とか言ってかなり弱かったな。この世界の鉄心は大丈夫か?)」

 

「それならわしと一勝負しないかの?夕食の時間になるまでにじゃ」

 

「分かった。簡単には負けないぞ」

 

ふぉふぉふぉ、と笑う鉄心と将棋盤を挟むようにして座る。先攻は鉄心で決まった。

さてと、実力は一体・・・・・。

 

―――数分後。

 

「・・・・・王手」

 

「・・・・・」

 

うん、あっという間に勝った。どの世界の鉄心も同じだってこともハッキリと分かった。

―――途中からオーフィスにやらせてオーフィスに負けた鉄心の実力を。

 

「鉄心、いくらなんでも弱いとは思わないか?」

 

「ぐぬ・・・・・もう一勝負じゃ!」

 

「今度は最初からオーフィスにやらせるからな」

 

―――数分後。

 

「我の勝ち」

 

「・・・・・」

 

鉄心がオーフィスに負けた。その事実に俺は有り得ないとちょっと侮蔑する

視線で送ってしまう。

 

「おい、お前は将棋から手を引いた方が良いと思うぞ」

 

「ならん!もう一度、もう一度勝負じゃ!」

 

「それで過去、誰かに勝ったことがあるのか?」

 

「うぐっ・・・・・」

 

口を閉ざして目を泳がした。な、ないのかよ・・・・・。

 

「―――総代、夕食の準備ができました」

 

襖の向こうから声が聞こえる。川神鉄心は立ち上がって、俺に促す。

腰を上げて川神鉄心について行く。

 

「さて、夕食はなにかのー」

 

「ごちそうになるが、帰らしてもらうからな」

 

「この家に泊ればよいではないか」

 

「明日は用事があるんだ。そうはいかない」

 

「そうかい、それは仕方ないのう」

 

話していると川神鉄心がとある一室に入った。

そこは修行僧達が鏡合わせのように座って待機していた。

 

「・・・・・」

 

少女がジッと俺たちに視線を送ってくる。・・・アルバムで見せてもらった

百代の小学生時代の頃と同じ姿だった。

 

「(この世界は百代達が小学生の頃の時代か・・・・・)」

 

俺とオーフィスは川神鉄心の隣に座って、ようやく夕食が始まる。

 

「・・・なぁ」

 

「うむ?」

 

「あの少女、強いな」

 

「ほう、相手の強さを分かるのか?」

 

隠すことでもないから頷いた。川神鉄心は感心した表情を浮かべると口を開いた。

 

「そう言えばおぬしの名を聞いておらんかったの。名は何と言う?」

 

「旅人とでも呼んでくれ、この子はオーフィス。俺と一緒に世界中を旅している」

 

「・・・・・偽名じゃな?」

 

「偽名だよ。本名はまだ明かせない」

 

そうか、と頷くだけでそれ以上の追及はなかった。

さて、それからは川神鉄心からあれこれと訊かれる内に夕食は終えて、別れようとした。

 

「旅人、ちょいと待ってはくれんかの」

 

「なんだ、また将棋か?」

 

「いやいや、おぬしの強さを知りたいのじゃ。なので組み手をしてもらいたい」

 

「相手にならないと思うぞ?」

 

「そう謙遜するではない」

 

ニヤリと不敵の笑みを浮かべる川神鉄心に心の中で溜息を吐く。

 

「(あの世界の鉄心は武術の心得を学ばせる人だったが、

この世界の鉄心は強いな・・・。相手にするのも大変そうだ)」

 

「分かった。相手しよう」

 

「うむ。では、武道場へ行ってくれんか?こっちは準備をするんでな」

 

川神鉄心の言葉に頷いていると、一人の修行僧が近づき、「こちらです」とに案内される。

少しせっかちじゃないか?

 

 

∞                  ∞                       ∞    

 

武道場

 

 

修行僧に案内された武道場。大方、俺と組み手させられるのはこの世界の鉄心かな?

と思った。

 

「オーフィス、さっさと終わらせて帰るからな」

 

「イッセー、頑張る。我、応援している」

 

「おう、応援してくれ」

 

すると、修行僧が入ってきた。さっきこの場に案内してくれた修行僧・・・・・うん?

 

「修行僧が一人・・・修行僧が二人・・・修行僧が三人・・・修行僧が四人・・・

修行僧が・・・」

 

次々と修行僧たちが武道場に入ってくる。

数えていると眠たくなってくるので途中から数えていなければ、

続々と数十人の修行僧たちが入ってきた。もう点呼することすらも止めた。

最後に川神鉄心と緑のジャージを着込んだ男とちょっと邪な気を持っている男と、

幼少の百代が入ってきた。

 

「おい、俺と組み手をするのって誰なんだ?」

 

「この百人の修行僧達とじゃよ」

 

「・・・・・百人組み手かよ」

 

嘆息する。まさか、修行僧達と組み手するとは思いもしなかった。

てっきり鉄心かと思ったんだがな。

 

「もう一度言うぞ、相手にならないと思うぞ?」

 

「謙遜するではない」

 

そう言われて、俺は口を閉ざした。この鉄心はどこまで俺の力を見越している・・・・・?

 

「総代、この者と組み手を?」

 

「そうじゃ、頼んだぞい」

 

「はぁ・・・」

 

総代の頼みならば断われないと修行僧達は俺と対峙する。

オーフィスは俺から離れてチョコンと壁際に座っている。

 

「お互い、大変だな」

 

「ええ、全くです。ですが、組み手をするからには真剣(マジ)でいかせてもらいます」

 

「(悪いな、一瞬で終わらしちまう・・・・・)」

 

心の中で苦笑する。自然に佇んで合図を待った。向こうは何やら木製の武器を持っていた。

刃物は禁じられた組み手・・・・当然か。

 

「それでは・・・・・はじめい!」

 

模擬戦の開始が宣告された。同時に一人の修行僧が飛び出てきた―――刹那。

 

『・・・・・っ!?』

 

百人の修行僧達が目を見開いて、口から泡を吹きバタバタと倒れていった。

俺1人だけ残して。

 

「「「「・・・・・」」」」

 

「もう終わりか?」

 

なんとでもないとばかりに川神鉄心に問うた。

 

「うむ、これで終いじゃ」

 

あっさりと認めた。そのあっさりさに拍子抜けするが、

終わりならさっさと帰ろうとオーフィスに顔を向ける。

 

「帰ろう」

 

「ん」

 

ピョンと俺の肩に乗っかる。オーフィスが肩に乗っかったことで俺は武道場から

立ち去ろうとする。

 

「またここに来させてもらうぞ」

 

「構わんよい。おぬしには色々と訊きたいことが山ほどあるからな」

 

「・・・・・じゃあな」

 

さっさと帰ろうと武道場をあとにした。

 

 

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