真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

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Episode19

蒼天が某国に襲撃され、滅ぼされてから早くも一週間が経過した。

蒼天は某国の領土となり蒼天の海域も合併の形で海域も増えた。しかし、某国の行動に

世界各国から非難の声の嵐が絶えなかった。その行為は略奪、または侵略に等しいと。

事実、五万人以上の人間を所有している人工衛星のレーザーで殲滅したからだ。

そのニュースは毎日のように報道され―――島津寮のテレビでも例外なく報道されていた。

 

「・・・・・一誠さん」

 

「悲しいことですね・・・・・」

 

「ああ・・・・・国を滅ぼされて奪われちまったからな」

 

「一誠さん達はどうなっているんだ?」

 

「九鬼家の庇護下となっているそうだ。頼れる場所は九鬼家しかないだろうし、

一誠さんは九鬼家に働いていた。これ以上のない良い環境が恵まれている場所だろう」

 

「英雄の奴は元気にしていると聞いているが、どーも実際に会わないとスッキリしねぇ」

 

「うしっ!だったら、英雄の家に行こうぜ!英雄にお願いしてよ!」

 

「ああ、そうだな。英雄の家にいるんなら、一誠さんに会える。

俺たちでできる限り一誠さんを慰めよう」

 

「うん、私も賛成。そうと決まれば、英雄にワン子を押し付けてみよう」

 

「お前、策士よのぉ・・・・・」

 

「大和ほどじゃないよ?」

 

「褒め言葉として受け取っておくぜ。それじゃ、学校に行こう」

 

―――川神学園 2-S―――

 

「・・・・・すまんが、義兄上は忙しい身だ。お前達と会えることは難しいだろう」

 

直江大和達は九鬼英雄に一誠との面会を求めた。が、九鬼英雄は首を横に振った。

 

「一誠さんはどんな仕事をしてんだよ?

自分の国を奪われたままでいる一誠さんじゃないはずだぜ?」

 

「義兄上とてこのままいるつもりはない。だから、姉上と共に行動をしている。

姉上の従者として、世界を回ってな」

 

「それ、一誠さんの国とどう関係しているんだ?」

 

「我と姉上が努めている仕事は違うのだ。我とて、姉上の全てを知っているわけではない。

悪いが我から言えることはあまりない」

 

話は終わりだと風に自分の席に座りだして沈黙を貫く。そんな直江大和達と九鬼英雄のやり取りを

余所に、葵冬馬や井上準、榊原小雪も源義経たちから色々と聞いていた。

 

「オイオイ、お前達も知らないって一緒に暮らしているんだろう?

なんだったら一誠さんと会っているはずだぞ」

 

「それは・・・・・そうだが・・・・・」

 

「ねーねー、一誠はどうしているのー?僕、会いたいよー」

 

「ごめんね。私達も会いたいところだけど、会う機会がないんだ」

 

「与一もですか?」

 

「・・・・・」

 

九鬼英雄と同様に、源義経達も申し訳なさそうに葵冬馬達と対応をしていた。

その時、教室の扉から新たな生徒が入ってきた。

 

「おっ、やっぱりお前達もいたんだな」

 

「こんにちはー」

 

「モモ先輩。それに松永先輩・・・・・」

 

「よっ、弟と愉快な仲間たち。さてと、おーい、英雄。一誠の事を教えてくれないか?

清楚ちゃんに聞いても教えてくれないから困っていたところなんだよ」

 

「む・・・・・」

 

武神・川神百代と松永燕の登場に九鬼英雄は忍足あずみに視線を向けた。

忍足あずみはその視線の意図を察知し、川神百代達の前に移動した。

 

「悪いが、一誠の事に関してはお前の舎弟に全て話してある。揚羽様と一緒に仕事中だとな」

 

「仕事か。じゃあ、蒼天のあいつら、凪達はどうしているんだ?」

 

「教えたはずだぜ。九鬼家の庇護下にいるってよ。

まあ、あいつらもあいつらで国を奪い返そうとあたし達に精力的に協力してくれている。

文武両道、武も知も長けている奴が何人もいるから、

人材不足の九鬼家にとってはまさにありがたいことだ」

 

「凪達の面会は?そいつらだったらできるはずだよな?」

 

「ダメだ。あいつらは育成中でお前らと会わすほど暇じゃないんだ」

 

犬を追い払うような手の払い方をする忍足あずみ。

結局、直江大和達は一誠の情報を聞きだすことはできなかった。

 

―――2-F―――

 

「なーんか、怪しいんだよなぁ?」

 

「うん、そうよね」

 

「隠しているような感じだったね。英雄君のあの態度は初めてだったよ」

 

「義経達の方もそんな感じだったぜ」

 

「私達に隠す程、一誠は大変なことが身に起きている?」

 

「そもそも・・・・・あの衛星からのレーザー光線で一誠さんは無事でいるのか?」

 

「きっと無事に決まっているわ!だって、お姉様を倒す程の実力を持っているのよ?

それに、ドラゴンだって言うことを聞かせているんだもの!」

 

「そのドラゴン達は姿を見せなくなったってニュースで言っているのだが・・・・・一体どこに

消えてしまったのだ?」

 

次から次へと疑問が湧き続ける。直江大和達の中で一誠の事で一杯になりつつあった。

 

「英雄も義経も清楚先輩もダメとすれば・・・・・残りは二人か」

 

「え?誰?」

 

「おいおい、ワン子よ。二年と三年以外にも一年のところに九鬼家の関係者がいるだろう?」

 

「・・・・・あっ!」

 

「分かったようで安心したが、そろそろウメ先生がくるからな。

一年のところに行く時は昼休みだ。姉さんにも誘って行こう。

あのクラスには怖い従者がいるからな」

 

―――昼休み 1-S―――

 

「そのことについては、私共の口からなんとも言えませんなぁ」

 

「おいおい・・・・・ここもダメってどんだけ

一誠さんの情報を漏らさせないつもりなんだよ?」

 

昼休みの時間となり、川神百代を呼び寄せて1-S組に訪れ、

九鬼紋白から一誠の情報を聞き出そうとしたが、九鬼紋白の専属従者、

ヒューム・ヘルシングに遮られ、聞くことができないでいた。

 

「なんで教えてくれないんだよ?俺達だって一誠さんの事心配なんだぞ」

 

「あの男の事については英雄様達から既にお聞きしているはず。

ならば、これ以上の情報はないということだ。紋様からあの男の事を聞きだしたとしても、

同じ情報を聞くだけだ。それすら分からないのか、赤子共よ」

 

「・・・・・」

 

ヒューム・ヘルシングの発言に直江大和達の心の中でますます疑惑が浮かぶ。

 

「この件についての話はこれで終了させてもらおう。

お前達と何時までも付き合っている暇はないのだからな」

 

眼光を鋭くさせ、直江大和達に去れと暗に言いたげに睨んだ。

結局、ここも聞けなかったと直江大和達は顔を見合わせて1-Sクラスを後にしたのであった。

 

「・・・・・本当になんなんだよ」

 

「嫌な感じだぜ」

 

「どうして私達と会わせてくれないのかしら・・・・・」

 

「まさか・・・・・一誠さんは死んで・・・・・」

 

直江大和の最悪の予想は―――川神百代の口から否定の言葉を発せられた。

 

「いや、一誠は死んでいない」

 

「え?」

 

「一誠は死んでいない。私はそう信じている」

 

「姉さん・・・・・」

 

心から信じていると過言ではない強い意志を感じさせる。

 

「それに、会わせてもらえないなら・・・・・こっちから会いに行けばいいだけの話だ」

 

「へ?モモ先輩?」

 

拳を握りしめて意味深なことを言いだす川神百代に、直江大和達は唖然となる。

 

「よし、そうと決まれば―――実行あるのみ!大和、臨時集会をするぞ。小雪達にも伝えておけ」

 

「臨時集会って・・・・・急にどうしたんスか?」

 

「理由は私達の、川神院で話す。それと京とクリス。自分の武器を持って来い」

 

「は、はい?」

 

「武器を持って来いって・・・・・モモ先輩。なにを考えているの?」

 

武器を持って集合など、今までなかったことだ。

それに何時も使用している秘密基地ではなく川神院。

なんか、大変なことをしようとしていないか?

この人は、と直江大和達の中で嫌な予感を覚えた瞬間だった。

 

―――○●○―――

 

「ええええええええええええええええええええええっ!?

く、九鬼家に殴り込みぃぃいいいっ!?」

 

バキッ!

 

「五月蠅いぞガクト!」

 

ぐはっ・・・・・!と川神百代に殴られる島津岳人。

川神院の応接間で川神百代、川神一子、直江大和、椎名京、島津岳人、

師岡卓也、クリスティアーネ・フリードリヒ、葵冬馬、井上準、榊原小雪がいた。

 

「ね、姉さん・・・・・いくらなんでもそれはダメじゃないか?」

 

「ダメでも何でも、真正面から交渉しても、一誠と会わせてくれないんなら、

強引に会いに行くしかないだろう」

 

「だけど・・・・・英雄君達に迷惑が掛かっちゃうわ」

 

「迷惑を掛けている方が悪い。それに、私達の間で決め合ったことを英雄の奴はしている」

 

川神百代たちの間で決め合ったこと。それは―――。

 

「一誠の前で決め合ったこと。―――お互い隠し事は無し。

どんな事情でも理由でも互いに悩みを抱えているならば素直に話すべし。

誠の言葉が好きな私からお前達に課したルールだ。

お前達も自分の好きな言葉から考えたルールを一誠の前で決め合ったじゃないか」

 

―――――っ!

 

直江大和達は、ハッと思い出したように目を丸くした。

 

「そのことに私はちょーっと怒っているんだよな。一誠の事を教えてくれないあの坊ちゃんに」

 

「ね、姉さん・・・・・?」

 

「というわけだ大和。今すぐ九鬼家に乗りこむ作戦を考えろ」

 

「ちょっ!本気でするの!?しかも今!?」

 

あまりにも突拍子過ぎた上に無茶苦茶な指示であった。だが、しかし―――。

 

「お主ら、そんなことをこのわしが許すとでも思ったかの?」

 

川神院の総代、川神鉄心が呆れ顔と共に応接間に現れた。

 

「じーちゃん!」

 

「様子を見に来ればとんでもないことを考えておるようじゃの。

じゃが、他の家族に迷惑を掛けるようなことをわしは許さんぞい」

 

「じゃあ、ジジイは一誠の事を心配者じゃないのかよ?私達、面会すら拒絶されたんだぞ」

 

「無論、心配しておるぞ。じゃが、待つこともまた大事じゃよ。

辛抱強く、あの男の事を待つんじゃ」

 

「それでもう一週間以上も待っているんだが?ジジイはこれからも何週間、

何ヵ月間も待てって言いたいのか?―――とてもじゃないが、

私はそこまで気が長くて我慢強くないぞ」

 

川神百代の言葉に川神鉄心は溜息を吐く。

 

「モモは忍耐という耐えることを学ぶべきじゃよ。それでは、真の強さに手が届かんぞい」

 

「む・・・・・」

 

不満そうに漏らす。川神鉄心は白い髭を触れながら口を開きだす。

 

「そんな待つことが苦手な孫娘に客が来ておるぞ」

 

「客・・・・・?誰だ?」

 

怪訝に問いかけた川神百代の視界に、川神鉄心の背後から姿を現した人物に目を奪われた。

綺麗な金の長髪に垂直のスリット状の金の瞳の女性は応接室に入ってきたのだ。

その美しさに川神百代だけじゃなく、直江大和たちまでもが目を奪われる程だった。

 

「誰だ・・・・・?」

 

「おや、気付かないのですか?私なんですがね・・・・・」

 

金髪の女性は意外そうに漏らしながら―――背中に金色の翼を生やして見せた。

 

「なっ・・・・・!?」

 

「え、あの翼って・・・・・ドラゴン・・・・・?」

 

「ちょっと待て、まさかと思うが・・・・・ドラゴンなのか?」

 

信じられないと直江大和達は立ち上がったり、座ったまま固まったりしていた。

女性は柔和に微笑んだ。

 

「ええ、この姿で会うのは初めてですね。私はメリア。金色のドラゴンのメリアですよ」

 

「メリアって・・・・・ドラゴンが人に化けれるのかよ?」

 

「私の存在がその証明となっています。まあ、私の事はともかく。

あなた達が知りたがっているであろう主の事をご説明します」

 

『っ!?』

 

一誠の事が知れる。その事を知った直江大和達は、

真剣な表情となりメリアに事情を求める視線を向けた。

メリアは笑みを消して、真っ直ぐ川神百代たちに向かって言い放った。

 

「主は生きてはおられます。それだけは取り敢えず安心してください」

 

「なら・・・・・一誠はいまどうしているんだ?」

 

その問いかけに、暗い顔になったメリア。

 

「・・・・・主は、一種の植物状態になっています」

 

『なっ!?』

 

「目の前で主は、国を、大勢の人間を失った光景を目の当たりにし、

激しいショックを受けた結果、精神が崩壊して眠り続けています」

 

一誠の状態を知った川神百代達。その反応は様々だった。

 

「待ってくれ・・・・・一誠の精神が崩壊って・・・・・お前達はどうしているんだ?」

 

「我らドラゴンは、主の中におります。ですが、主の心を癒す力は我らには無い。

傷や病を癒せても、心まで癒す力はないのです。実に歯痒いことですよ。

小さい頃から主の傍にいるにも拘らず、どうすることもできないのですからね・・・・・」

 

「そんな・・・・・一誠が・・・・・」

 

「だからか、英雄達が教えてくれない理由は・・・・・」

 

「あの者達は、あなた方に心配を掛けさせないと言う思いからの行動でしょう。

ですけど、隠すことは何時までもできない。いずれ知られてしまうからです」

 

メリアの足元に金色の魔方陣が出現した。

 

「主の事を伝えました。これからどうしようがあなた達の自由です。

我らは何時までも主と共におります」

 

そう言い残して魔方陣の光が弾いたと思えば、メリアの姿はなかった。

その後、直江大和達は寮や自分の家に帰宅した。一誠の事で悲しい思いを抱きながら―――。

 

―――○●○―――

 

―――川神学園―――

 

―――2-S―――

 

「英雄!一誠さんと会わせろ!」

 

「・・・・・またお前達か。だから、義兄上は姉上と―――」

 

「一誠さんは精神が崩壊して植物状態、寝たまんまだってな」

 

「なっ・・・・・どこでそれを。・・・・・っ!」

 

「やっぱり、そうだったのか・・・・・」

 

しまった!と一誠の状態を思わず肯定してしまった九鬼英雄の反応に

直江大和達は確信した。メリアの言葉は真実だと。

 

「・・・・・お前達。どこでその情報を知ったのだ」

 

「一誠さんのドラゴンからだよ」

 

「ドラゴンだと?」

 

巨大なドラゴンを想像する九鬼英雄。蒼天が消失して以来、

一誠のドラゴンは行方を暗ましていた。一体、何時の間に直江大和達と会って一誠の状態を

告げたのか、九鬼英雄は分からない。

 

「そういうことだ。俺達のために隠したんなら、尚更一誠さんと会わせてくれよ。

俺達、一誠さんの事を知っている仲じゃないか」

 

「・・・・・」

 

腕を組んで、思い悩む九鬼英雄に近づく川神一子。

 

「英雄君。お願い、お兄様と会わせて?」

 

「・・・・・」

 

川神一子の懇願に九鬼英雄は、川神一子の肩を掴んで重々しく告げた。

 

「・・・・・一子殿の頼みとあらば、仕方がない。義兄上と面会させよう」

 

「わーい!ありがとう、英雄君!」

 

一誠と会えるということで歓喜し、九鬼英雄に抱きついた。

九鬼英雄は珍しく顔を真っ赤に染めて、あたふたとうろたえる。

 

「・・・・・やっぱ、昨日ワン子を当てるべきだったな」

 

「流石にダチの弱点を突いて聞きだすのって気が引いたからな」

 

「でも、これで一誠さんと会えるね」

 

「ああ、そうだな」

 

―――九鬼家極東本部―――

 

学校が終わったその日、直江大和達は九鬼家のリムジンに乗って九鬼英雄達の家に訪れた。

 

「ここにくんのも、ガキの頃以来だよなー。相変わらず、デカい建物だぜ」

 

「英雄が仕事でいなくなることが多いから、中々ここで遊ぶことはできなかったよな」

 

「お兄様がいたから、英雄君の家で遊べた時もあったわねー」

 

九鬼家の玄関に入り、九鬼英雄を先頭に続く直江大和達。一誠がいる部屋へと向かっている。

 

「なあ、今でも一誠さんは寝ているのか?」

 

「今朝も顔を出したが、やはり寝ていた。今でもきっと寝ていると思われる」

 

「そうか・・・・・」

 

何とも言えない面持ちで極東本部の廊下を歩き続ける。

しばらく歩いていると、壁から出てくる感じで黒いサイドテールの少女が現れた。

 

「・・・・・お前達は」

 

「あっ、愛紗!」

 

川神百代が声を上げた。一誠の家族の一人、西区の王に仕えていた愛紗。

緑を基調とした学生服にネクタイ、黒いミニスカートという服装は変わらないままの

姿で再会した。

 

「なるほど・・・・・一誠様に会いに来たのか」

 

「ああ、そうだ。愛紗、九鬼家の庇護下にいることは知っているが、

九鬼家の従者になっているのか?」

 

「蒼天のメンバーは九鬼揚羽殿の下で行動している。

我が主、兵藤一誠を庇護してくれている礼としてな」

 

「そうか・・・・・」

 

「九鬼家には感謝している。が、心は一誠様のものだ。すまないな、英雄殿」

 

「気にするな。我とて、義兄上を人質にお前達を手中しようなど思ってもおらんからな。

一時的とはいえ、九鬼家のために働いてくれ」

 

「承知した」

 

愛紗は短くお辞儀をし、直江大和達から遠ざかった。その様子にポツリと川神百代は呟いた。

 

「会った時より覇気を感じなかったな・・・・・」

 

「当然であろう。慕っている義兄上があの状態なのだ。

が、蒼天の者達は何時までも落ち込んではいない。

あの者のように義兄上のため、優れた能力を我が九鬼家に貢献しているのだ。

これが従者部隊に属していれば、二桁か三桁の位を与えられていただろうな」

 

「ん?従者部隊じゃないのか?」

 

「義兄上も含め、蒼天のメンバーは庇護下。アルバイトのような感じで働いてもらっている。

先ほども言ったように姉上の下でな」

 

再び足を動かし始める九鬼英雄。その歩く先は愛紗が現れた壁―――白い扉だ。

 

「静かにせよ。この扉の向こうに義兄上が寝ておられている」

 

『・・・・・』

 

九鬼英雄に釘を刺されて、沈黙する一行。白い扉に叩くと、ガラリと扉が勝手に開いた。

 

「オーフィス・・・・・」

 

「久しい」

 

扉を開けたのは、オーフィスだった。無表情なままの幼い子供は直江大和達を一瞥して、

踵を返して部屋の奥に消えた。九鬼英雄が中に入れば、直江大和達も続く。

汚れを知らない真っ白い空間で機械音が聞こえ続ける。

その空間に白いベッドに寝転がっている男性が瞑目している。

 

「一誠さん・・・・・!」

 

久々に再会した一誠に歓喜よりも当惑が強かった。

黒かった髪が真逆の色、白髪になっていたからだ。

 

「たった一週間以上も会わないうちに・・・・・ここまで変わってしまったのかよ・・・・・」

 

「一誠さん・・・・・」

 

一誠を慕う一行は信じられないと、中には涙を流す者もいた。

オーフィスはただただ、一誠の傍で見守り続けるだけだった。

 

「オーフィスよ。義兄上の様子に変化は?」

 

「ない、変わらない」

 

「・・・・・そうか。かなりのショックを受けているのだな・・・・・義兄上は」

 

九鬼英雄の発言にオーフィスが答えた。

 

「イッセー、心が弱い、だから、ショックを受けた」

 

「一誠さんの心が弱いって・・・・・本当かよ?あんなに凄くて強くて優しかったのに」

 

「イッセー、過去に家族を失った経験がある。その経験はまだ残っている」

 

経験というのはきっとトラウマの事なのだろう。

それの上、一誠自身にそんな悲しい出来事があったとは誰も思いもしなかった。

 

「・・・・・」

 

ジッとオーフィスが川神百代を見据えた。

川神百代はオーフィスに向けられる視線に小首を傾げた。

何か言いたげに視線を向けられてくるのだが、理解できないでいた。

 

「・・・・・百代、イッセーを起こせる?」

 

「はっ?」

 

「・・・・・百代じゃない百代、でも、酷似している。違うけど同じ百代」

 

「なにを・・・・・言っているんだ?」

 

当惑する川神百代を余所に、オーフィスが川神百代に近づく。

 

「この可能性、掛ける」

 

徐に川神百代の手を掴んだかと思えば、寝ている一誠の手を握らせた。

 

「・・・・・」

 

「こうし続けてほしい」

 

続いて、松永燕に近づけば、川神百代と同じように一誠の手を握らせた。

 

「えっと・・・・・?」

 

「こうし続ける」

 

頑に言われ、川神百代と松永燕は思わず顔を見合わせる。

これ、何時までしていればいいのだろうか?と

 

「・・・・・変化ない」

 

しばらくして―――どこか、落ち込んだようにオーフィスが呟いた。

 

「・・・・・ごめんなさい」

 

「どうして謝るんだ」

 

「百代じゃない百代、我、知っている。イッセーも、だから・・・・・可能性を掛けた」

 

「私じゃない私って・・・・・オーフィス、何が言いたいんだ?」

 

訳が分からないとオーフィスに問うが、

当のオーフィスは一誠をジッと見つめ始め答えようとはしなかった。

 

―――宇宙―――

 

地球に迫る巨大な機械が迫っていた。

その機械は人工的に造られら宇宙船だと誰もが思うだろう。

その形は長い鎌首を持つ三つの龍を模していて、

背中に三対六枚の翼に巨大なブーストが八つも有った。

四肢の胴体で胸部の部分には外の光景を覗けるように窓ガラス。

そのガラスに真紅の髪の女性が悠然と佇んでいた。

 

「次はあそこか・・・・・」

 

ポツリと何かを求めるように漏らした。

 

「ガイア」

 

「ん?」

 

ガイアと呼ばれた女性は、窓ガラスに映り込む背後の女性に反応する。

 

「救難信号が傍受したけれど、どうする?」

 

「救難信号?この宇宙にか?」

 

「ええ、そうよ。一応、その信号が送られている方へ向かっているわ。

丁度、私達の次の目的地のすぐ近くだけれど」

 

「・・・・・ついでだ。拾っておけ」

 

「分かったわ」

 

三頭龍の宇宙船は、進路を変えて救難信号を発信し続けている場所へ移動した。

数分後、宇宙船は宇宙に漂う巨大な物体を発見した。

 

「なんだ?枝を折られたような花の形の・・・・・建造物?」

 

ガイアは怪訝に窓から宇宙を覗く。暗い空間に漂う巨大な建物。

満開に咲いた花のようなフォルムをしていて、

確かに途中から枝のような筒が折れているようにも思えた。

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

―――その時、宇宙船内部に警報がけたたましくなりだした。その警報にガイアは眉根を寄せた。

 

「狙われている?この船が?」

 

だが、慌てる様子もなくその場から動こうとせず、悠然と佇む。

宇宙船はとある人工衛星にロックオンされていた。皿のような器の形をしたところから

機械の突起物に光が集中したと思えば、ガイアが乗っている宇宙船に向かって放たれた。

 

ガシャンッ!

 

三頭龍の宇宙船の頭の一つが動き出す。上下に顎のようなハッチが開いて砲身を覗かせた。

砲身に光が集束し、お返しとばかり極太のレーザー光線を放って、

人工衛星が放ったレーザー光線ごと人工衛星を呑みこんで破壊した。

 

「ふん、そんなチャチな玩具でこの船に傷を付けるなど愚かな考えをする人間がいたものだな」

 

敵を排除し終えた宇宙船は、花の建造物に接近した。

 

「・・・・・なるほど、そういうことか」

 

ガイアは理解した。花の建造物の中には大勢の人間が閉じ込められていて、

先ほどの人工衛星はこの建造物を破壊しようとしていた玩具だと。

 

「人助けか・・・・・久し振りにすることになるとはな」

 

遠い目をして懐かしげに花の建造物を見た。

ガイアは窓ガラスから離れ、とある廊下へ進んでいく。そこは格納庫と思しき場所でかなり広く、

膨大な量の積荷が壁際に置かれている。しばらくすれば、ガイアの眼下で

巨大な魔方陣が出現して光が弾いたかと思えば、一瞬で格納庫に大勢の人間が現れた。

 

「さて、この人間達から聞きだすとしようか」

 

ガイアがいる高い階段から飛び降りて格納庫にいる人間の前に降り立った。

ガイアの登場に花の建造物に閉じ込められていた人間達が驚愕する。

 

「あ、あんたが俺達を助けたのか?」

 

「ついでだ。さて、こちらの質問に応えてくれば一人残らず地球に帰そう」

 

「ほ、本当か!?俺達、地球に帰れるのか!?俺達の家、蒼天に!」

 

男性の言葉が格納庫に響き渡って、至るところから歓喜の声が上がった。

 

「蒼天?どこの国だ?」

 

「えっ?知らないのか?日本という国の西の海域に存在する国の名前だ。

その国に俺達は住んでいたんだ。

あの地球に住んでいる人類なら誰でも知っている常識なことなんだけど・・・・・」

 

「日本・・・・・そうか。あの地球も日本が存在しているのだな」

 

ガイアの言葉に違和感を感じたのか、男性が問いかけた来た。

 

「・・・・・あんたら、創造主の部下たちじゃないのか?東西南北の王の、

中央の区の部下なんだろう?この大きな宇宙船だって作れるとしたら創造主と

開発班しかいないはずだ。だって、俺達が閉じ込められていたあの宇宙施設も数十年の時を要して

完成したって聞いた話だ。きっと月面にコロニーを建設するための宇宙船なんだろう?

創造主が俺達を助けるために―――」

 

「生憎だが、この宇宙船を作ったのは創造主ではない。我らは違う星から来た存在だ」

 

「なっ・・・・・!?」

 

男性は目と耳を疑った。とても信じられないと目を見張り、体を振るわせ始めた。

 

「じゃ、じゃあ・・・・・・お、俺達をどうするきだ・・・・・?助けたからその見返りに

俺達を労働させる気か?」

 

「お前は我の質問に答えるだけでいい。その創造主の名前はなんだ?

それだけ教えてくればすぐにでも地球に帰す」

 

「・・・・・」

 

男性はしばらく苦悩に満ちた表情を浮かべ、

「申し訳ございません」と誰かに謝罪を述べた後に男性は言った。

 

「中央区の王・・・・・兵藤一誠様だ」

 

「―――――っ」

 

創造主の名を聞いた途端。ガイアの表情は一変した。対照的に男性はガイアの足に縋りついた。

 

「頼む!創造主に手を出さないでくれ!あの人がいたから今の俺がいるようなものなんだ!

いや、ここにいる全員も創造主が創造した蒼天の国に住んで幸せな日常を送れていたんだ!

地上にいる住民たちもそうだ!頼む!」

 

「・・・・・」

 

その男性の懇願と土下座にガイアは無表情で見つめる。

すると、格納庫に男性の声が轟いて聞いていた大勢の人間達も静かに土下座をし出した。

喚くことよりも、その態度を示して懇願するという気持ちがハッキリと伝わった。

 

「・・・・・我らはあの地球に用があるだけで創造主をどうこうしようとは思ってもいない」

 

「っ!」

 

「お前達の国に連れて行ってやろう。あっという間にな」

 

別の道に繋がる階段を上り始める。助けられた人間達からガイアの顔は見えないが―――。

 

「そうか・・・・・ここにいたのか・・・・・我が愛しき男よ・・・・・」

 

静かに涙を流しながらガイアはようやく求めたいたものを見つけたと、心の中で歓喜した。

宇宙船は真っ直ぐ西日本海に向かった。大気圏を突入し、青い星に侵入した。

 

―――○●○―――

 

「・・・・・」

 

オーフィスは西に顔を向け出した。

 

「オーフィス、どうしたんだ?」

 

「・・・・・感じる」

 

「感じる・・・・・?」

 

「懐かしい龍の波動」

 

と、そう言った直後。オーフィスの全身から魔力が迸った。

魔力に包まれたオーフィスは見る見るうちに体が成長し、川神百代と同じ身長になった。

周りがその光景を驚くが、オーフィスは気にせず、一誠の腕に取り付けられていたチューブを

無造作に外して、肩に担ぎ出した。その行動をするオーフィスに直江大和が驚愕した。

 

「ま、待て!?オーフィス、一誠さんをどうするつもりだ!?」

 

「イッセーを連れていく。我らの本来いるべき場所に」

 

「本来いるべき場所って・・・・・なんのことだよ、オーフィス」

 

「ここじゃ、イッセーは目を覚まさない。我、帰る」

 

オーフィスは手元を光らせ、壁に向けた。刹那、壁が爆発を起こして大きな穴が開いた。

 

「オ、オーフィス!?」

 

「ようやく、帰ることができる。我、待っていた。イッセーを目を覚ましてくれる家族に」

 

開けた壁の穴から飛び出して行ったオーフィス。オーフィスの強行に一行は愕然とする。

 

「い、一体・・・・・どうなっているんだよ?」

 

「あんなオーフィスは初めて見た」

 

「色々と気になることを言っておいて・・・・・私達を置いてけぼりとは」

 

直江大和達はオーフィスの言動に理解できずにいると、

爆音を聞き付け、九鬼家の関係者や愛紗達が入ってきた。

 

「これは・・・・・どういうことだ!?」

 

―――蒼天―――

 

蒼天があった大陸は隣国の領土となり、その大陸に新たな建物を建造しようとしている人間達が

せわしなく動いていた。蒼天を中心に浮遊していた巨大な大陸にも人間が大勢いた。

特に巨大な黄金の大陸は金塊そのもので、掘っても掘っても一欠けらも無駄なく金になるので、

密かに自分の懐に入れる人間も少なくなかった。

これからこの国で自分達が住む大陸となる。隣国の上層部達も日夜、

酒で酔い潰れている頃だろう。前に住んでいた人間達の事は対して罪悪感も感じず、

自分の未来のために人間達は活動する。

 

―――そんな変わり果てた蒼天の上空から巨大な黒い物体が降りてきた。

轟音と共に、蒼天の至るところに設けられた簡易のテントやトイレボックス、

設計図など全て吹き飛ばした。良く見ればそれは巨大な機械。

三つの首を持ち、三対六枚に八つのブーストをもつ四肢型の機械。三つの鎌首が下にさがり、

顎と思しき場所が上下に開いて、足場が伸びた。

それから三つのハッチから続々と大勢の男女が姿を現した。

 

「ここが・・・・・蒼天だと?大陸だけではないか」

 

「いや、人がいる。聞いてみた方が良いんじゃないか?」

 

「そうだね。すいませーん」

 

一人の男性が訊ねたが、返ってきたのは―――。

 

「蒼天ノ生キ残リカ!」

 

警備隊からの放たれた銃弾だった。

 

「って、なんで撃ってくるんだ!?」

 

「敵襲!敵襲!」

 

「僕たちは敵じゃないってば!ああもう、しょうがないなっ!」

 

男性は手を天に翳した。それに呼応して上空に巨大な魔方陣が出現したかと思えば、

轟音と共に雷が振って来て撃ち続けてくる兵隊達に直撃した。雷に感電して、兵隊達は気絶した。

 

「まったく、この世界の人間は過激なんだね」

 

「蒼天の生き残りと聞こえたが・・・・・どういうことだ?」

 

ダークカラーが強い銀髪の男性が疑問を浮かべた。

 

「大陸だらけが蒼天・・・・・それにこいつらはその蒼天とやらの住民とは思えないほど

敵意を向けてきたな」

 

「まさかと思うけど・・・・・ここ、元々は国があったんじゃないかな?

何らかの方法で消滅させたとか」

 

「・・・・・あの人工衛星のレーザー光線なら、可能かも」

 

「だとすれば・・・・・格納庫にいる人間共から詳しく聞いた方が良さそうだな」

 

ガイアが船の中に戻ろうしたその時だった。急に空の一点に凝視した。

―――そして、口の端を吊り上げた。

視界に映り込み始めた金色の塊。ぐんぐんと大きくなり、

ガイアたちの前に轟音と共に地面にクレーターを作りながら現れた。

 

『皆さん!』

 

「メリア!メリアじゃないか!?」

 

金色の塊の正体は金色のドラゴン、メリアだった。メリアの登場に恐れることもなく、

久しく再会した家族のようにメリアに集まり始めた。

 

『お久しぶりです。ようやく再会できて心から嬉しく思っております』

 

「うんうん!久し振り!メリアがいるってことはイッセーくんもいるってことだよね?」

 

『・・・・・はい、そうなのですが』

 

栗毛のツインテールの女性の言葉に急に顔を曇らすメリアの肩から、

ひょっこりと顔を出す黒髪の女性。

 

「皆、久しい」

 

「オーフィス!」

 

オーフィスの登場にガイア達は表情を明るくした。

だが、オーフィスが飛び降りて抱えているものを見て、呆然となった。

 

「・・・・・オーフィス、お前が抱えているその男は・・・・・一誠なのか?」

 

「・・・・・」

 

コクリとオーフィスは頷いた。未だに眠り続けている白髪の一誠の変わり果てた姿に、

ガイア達は信じられないとオーフィスに駆け寄った。

 

「オーフィス・・・・・一誠に何が遭ったの?」

 

「とても大きなショックを受けた。イッセー、ずっと眠り続けている」

 

「ショックを受けた?どんな理由で?」

 

男性の言葉にオーフィスは蒼天の大陸を見渡した。

 

「ここ、蒼天だった。でも、敵の攻撃でイッセーの大事な物がたくさん跡形もなくなくなった。

イッセーはそれを見て、ショックを受けた」

 

『―――――っ!?』

 

「我、イッセーを起こすのを頑張った、でも、起きなかった・・・・・ごめんなさい」

 

頭を垂らすオーフィス。メリアも申し訳なさそうに頭を垂らした。

 

「・・・・・気にするな。お前は一誠の傍にいて支えていたのだろう。

我らが来るまでよく支えてくれた、ありがとう」

 

「ガイア・・・・・」

 

オーフィスはガイアを見つめる。対してオーフィスの頭を撫でたら、

ガイアは一人の男性に言い放った。

 

「龍牙。一誠を医療室に運んでくれ」

 

「分かりました・・・・・」

 

龍牙と呼ばれた男性は、一誠を抱えるオーフィスを引き連れ、

ハッチの奥へと消えた。ガイア達数人は外に待機。

 

「・・・・・許さんぞ、一誠から全てを奪った人間共。近いうちに粛清してやる」

 

「ふふふふっ・・・・・そうだね。うん、同感だよ。いっくんをあんなに悲しませた国なんて、

滅んじゃえば良いんだ」

 

「でも、その前にやることがあるみたいだよ」

 

男性が空を見上げた。バラバラと騒音を鳴らすヘリが近づいていた。

そのヘリの扉が開いたかと思えば、数人の少女達が降りてきた。

 

「一誠をどうした!?」

 

「・・・・・・マジで?」

 

開口一番に一誠の行方を求めた。男性はその少女に驚いた表情を浮かべる。

 

「百代さん・・・・・?」

 

「えっ、この世界って百代さんがいる世界なの!?」

 

「・・・・・なんだと?」

 

ガイア達も目の前に現れた少女、川神百代に驚きを隠せなかった。

さらにヘリが着陸を果たせば、次々と少年少女達が姿を現す。

 

「嘘・・・・・」

 

「間違いないね・・・・・ここは並行世界、パラレルワールドの一つだ」

 

「だからといって、あいつを渡す訳にはいかないがな」

 

そう言っている間にも、川神百代が近づいてきた。

 

「一誠があの中にいる事は知っている。お前達、一誠をどうする気だ」

 

「我らがどうしようと我らの勝手だ」

 

「一誠は大変な目に遭って眠ったままなんだ。お前達がどうこうできるとは思えない」

 

「ふん、それは貴様らの方だろう?だから目を覚まさないでいる。違うか?」

 

ガイアの指摘に川神百代はぐうの音も出なかった。逆にガイアは勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「我らは違う。我らは―――一誠の事を知りつくしているからな」

 

「・・・・・なに?」

 

「去れ、一誠の事は我らに任せてもらう」

 

「ふざけるな!訳の分からないお前達に一誠さんを任せれるか!」

 

直江大和が叫んだ。武の心得がある少女達から闘気が迸った。

 

「我が主を、兵藤一誠を返してもらうぞ!」

 

青竜堰月刀に闘気で纏い、一気にガイアへ跳躍した。

 

「・・・・・笑止千万とはまさにこのことだとは思わないか?なあ、メリアよ」

 

ガキンッ!

 

「なに・・・・・っ!?」

 

愛紗の得物が金色の壁にぶつかった。

その壁は―――。申し訳なさそうな表情を浮かべるメリアの指だった。

 

「メリア・・・・・一体どういうことだ?」

 

『すみません。ですが、この者に手を出さないでください」

 

「なんだと・・・・・一誠様が連れ去ろうとしている者達に手を出すなと、

お前はそう言うのか?!」

 

『その通りです。それに、この場にいる全員がいくら束になっても、

この者には勝てない。無意味な戦闘は避けてほしいと願う』

 

「いや、メリアよ。少々興味が湧いた。一誠を知る口ぶりをするお前は誰だ?」

 

金色の指が愛紗とガイアの間から無くなれば、愛紗は名乗った。

 

「・・・・・蒼天の西区の王に仕えている一人、名は愛紗だ」

 

「蒼天・・・・・では、この大陸だらけが本当に蒼天だったわけだな?」

 

「隣国の攻撃に遭い、滅ぼされた。それがいまのこの姿だ」

 

「分かった。これで謎が解消した。―――が、我は蒼天の国などどうでもいい。

我は一誠を連れ戻すことができればそれでいいのだからな」

 

「なんだと・・・・・!」

 

怒りに体を震わせる。愛紗の肩に並ぶように蒼天の武士達が集まる。

 

「一誠様は連れて行かせん!」

 

「我が主を、返せ!」

 

一誠を慕う蒼天メンバーの武士達。メリアがまた動こうとしたが、ガイアが手で制した。

 

「少しばかり、試させてもらおうか?」

 

―――三十分後。

 

「ふん、まあまあといったところだな」

 

悠然とその場で佇むガイアと対照的に、愛紗達は全身で息をし、ガイアを囲んでいた。

 

「な、なぜ我らの攻撃がかすりもしない・・・・・!」

 

「それに、全然あの場から動いていない・・・・・」

 

「死角からの攻撃も避けられたり防がれたりばかり・・・・・っ」

 

一誠に鍛えられている上に数の暴力。にも拘わらずガイアは傷一つも負っていない。

 

「一誠に鍛えられているのが良く分かった。並みの人間であれば貴様らには勝てないだろうが、

残念だ。相手が悪過ぎる」

 

「くっ・・・・・!」

 

愛紗が動き出す。体に残っている全闘気を得物に集中させ始めた。

 

「皆、下がれ!」

 

「愛紗、私もやります!」

 

凪も右腕に闘気を集束させ、溜め始める。

 

「最大の一撃を放つか。いいだろう、受けてたつ」

 

ガイアの言葉に愛紗と凪は動いた。

闘気が纏った青竜堰月刀を振るえば、闘気は龍の形に具現化し、

凪の右拳が前方に突き出すと、闘気は虎に具現化して―――二つの闘気がガイアに襲いかかった。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

狙いを違わず、直撃した。誰もがそう思った。

 

「ふっ」

 

「「っ!?」」

 

「一誠の鍛え方はあながち間違いではないということか。

一誠め、一人前になりおって。我は寂しいじゃないか」

 

―――龍と虎の闘気がガイアの両手で完全に防がれていた。

しかも、ガイアが少しだけ握力を強めれば、愛紗と凪の一撃を霧散させた。

 

「ば、バカな・・・・・」

 

「私達の最大の一撃が・・・・・届かなかったのか」

 

その場で二人は地面に倒れ込んだ。気を使い過ぎて体力が今の一撃で使いきったのだろう。

 

「人間にしてはよくやったと褒めておくべきだろう。が、我に届く訳がない」

 

「だったら、私ならお前に届くのか?」

 

川神百代が一歩前に出た。そんな彼女にガイアは鼻で笑う。

 

「無理だ」

 

「即答か!?」

 

「お前はお前自身に破られる」

 

意味深なことを言うガイアが指を弾いた。すると、川神百代が今さら気付いたかのように

上空を見上げた。上空から一つの影が降ってきて、その影が突き出す拳を川神百代は受け止めた。

 

「ははっ!やっぱり私はこうじゃないとな!」

 

「な・・・・・に・・・・・っ!?」

 

川神百代は目を疑った。

拳を突きだす影は―――自分とそっくりな女性が笑みを浮かべているじゃないか!

 

「ふっ」

 

もう一人の川神百代が笑みを零したかと思えば、鋭い蹴りを放った。

対応できず蹴り飛ばされた川神百代が体勢を立て直しながら改めて眼前を見据えた。

腰まで伸びた黒い髪に赤い瞳。自分より身長がちょっと高い女性。

気は全く感じないがおそらく抑えているのだろう。

 

「お前は・・・・・誰なんだ?」

 

「私か?私は当然お前だ川神百代。でも、厳密に言えば―――私は兵藤百代と名乗るべきだろう」

 

「兵藤・・・・・百代・・・・・?」

 

「ああ、一誠と夫婦の関係だ」

 

「なっ、なんだと!?」

 

自分が一誠と結婚しているなど、現実を目の当たりにしてもとても信じられない。

兵藤百代は直江大和達に視線を向けた。

 

「ははっ、懐かしいな!学生時代の弟達じゃないか!」

 

「本当に・・・・・私のようだな。気だって私と同じだし」

 

自分だと認知し、闘気を迸った。自分に負けると言ったガイアの言葉はこの事だと気付いた。

だが、それがどうしたというのだ。

 

「お前を倒して、一誠を取り戻すことは変わりない」

 

「流石は私だ。その気持ちはよーく分かる。だけどな・・・・・譲れないことだってあるんだよ。

一気に終わらせよう。一誠に会いたいからな」

 

刹那、兵藤百代を中心に眩い一瞬の閃光が放った―――と川神百代が腕で目を覆っていると、

光の中から兵藤百代が飛び出してきた。

 

ドゴンッ!

 

「ぐはぁっ・・・・・!?」

 

腹部に殴られたのだと一瞬遅れて気付いた頃には、さらにバチッ!と何かが弾ける音が聞こえた。

 

「お前は私だからな。お前の弱点は私の弱点でもあるが・・・・・私はその弱点を克服した」

 

一拍して、川神百代が絶え間なく電撃を浴び続ける。

 

「がああああああああああああああああああああああああああっ!?」

 

「私は一誠と戦って強くなった。だが、お前は一誠と出会う前の私のように、

ただ自分の欲求を満たすために相手と戦っていただけだろう?」

 

胸倉を掴み、電撃を浴びせ続ける兵藤百代の右の拳が動いた。

 

「お前の負けだ、この世界の私―――!」

 

兵藤百代の拳が唸る。川神百代の顎下を打ち上げて吹っ飛ばした。

 

「そんな・・・・・!」

 

「モモ先輩が・・・・・モモ先輩に負けた・・・・・!?」

 

「っ・・・・・」

 

川神百代の敗北と同時に、ダッ!と兵藤百代に駆けだした女子生徒。―――葉桜清楚。

 

「今度は、俺が相手だ!」

 

何時の間にか手にしていた方天画戟を兵藤百代に振るった。

 

ガキンッ!

 

方天画戟の切っ先は兵藤百代の鼻先で停止した。

第三者が得物で葉桜清楚と入れ代った覇王・項羽の一撃を防いだのだ。

 

「やらせないよ」

 

「なっ・・・・・!?」

 

「あなたが出てくるなら、今度は私の番だよね」

 

黒い髪を一本に束ね、前髪辺りに雛罌粟の髪飾りを着けた女性が

覇王・項羽の武器と酷似した武器で兵藤百代を守った。だが、覇王・項羽の方天画戟と少し違い、

女性が持っている方天画戟の、槍のような刃の両側に左右対称に「月牙」と呼ばれる

三日月状の刃が付いている。対象的に覇王・項羽の方天画戟は、

片方しか月牙がついていなかった。

 

「お前は・・・・・私・・・・・!?」

 

「初めまして、この世界の葉桜清楚ちゃん。

だけど、全力を出すまでもなくあなたを倒しちゃう」

 

刹那、覇王・項羽に鋭い一撃が振るわれた。

 

「やらせません!」

 

そこへ、織田信長が介入し、もう一人の葉桜清楚の方天戟を真剣白刃取りした。

 

「よくやった、信長!」

 

好機と覇王・項羽が得物を横薙ぎに振るった。

このままではもう一人の葉桜清楚に直撃すると誰もが思った。だがしかし、

もう一人の葉桜清楚が片手で方天画戟の刃を摘まんで受け止めてみせた。

 

「危ない危ない」

 

「くっ・・・・・!」

 

「この力は・・・・・・!」

 

ぐぐぐ・・・・・っ!と方天戟を挟んでいる織田信長が押され始めた。

 

「あずみ!援護をしろ!」

 

「了解です!」

 

九鬼英雄の指示に忍足あずみが動いた。指にクナイを挟んでもう一人の葉桜清楚に投げ放った。

 

「そんな攻撃、甘いよ」

 

―――背中にドラゴンの翼を生やしてクナイを弾き飛ばした。

 

「なに・・・・・っ!?」

 

覇王・項羽の驚きは、直江大和達の驚きでもあった。

もう一人の葉桜清楚がまるで一誠のように翼を生やしたのだから。

愕然と間近で見ていた覇王・項羽と織田信長に一対の翼で薙ぎ払われた。

 

「あなたは・・・・・何者なのですか」

 

「私は清楚、兵藤清楚。旧名は葉桜清楚だった存在」

 

朗らかに言う兵藤清楚と名乗った女性に、織田信長と覇王・項羽は絶句した。

 

「葉桜清楚・・・・・!?」

 

「どうなっている・・・・・川神百代だけじゃなく、俺が目の前にいるなんて何の冗談だ!」

 

「目の前の現実を受け入れないと、大変だよ?それと、まだ掛かってくる?」

 

「先輩を返してくれるまでは諦めませんよ!」

 

織田信長が本気を出す。川神学園の女子生徒の制服から覗ける肌が蛇のような鱗が浮かびあがり、

背中に翼と腰辺りに尾が生え出した。

 

「・・・・・ドラゴン!?」

 

「正確に言うならば、私は織田信長のDNEと同時に兵藤一誠の血で生まれた存在です」

 

「一誠くんの血で生まれたって・・・・・まさか、あなたは一誠くんの子供・・・・・?」

 

「言ったはずです。織田信長のDNEと先輩の血で生まれたって。

正真正銘、先輩の子供ではないですが。先輩の血を流している時点で先輩とは肉親の関係に

近いでしょう」

 

そう言った直後、織田信長の姿が虚空に消失した。

次に現れたのは、兵藤清楚の得物の柄と直撃した時だった。

 

「先輩を、連れて行かせません!私の、私の大好きな先輩を、渡しはしませんよ!」

 

「・・・・・」

 

ギリギリと鍔迫り合いとなった。

一誠に告白する織田信長に、微笑ましいと思ったのか兵藤清楚がニッコリと笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、こんな子に好かれているなんて、一誠君は恵まれているんだね」

 

「・・・・・どういうことですか」

 

織田信長の疑問の呟きは答えてくれなかった。

 

「でも、今優先する事は一誠君を覚ます事。それから一誠君から大切な物を奪ったどこかの国に

襲撃する事。―――だから、もう構っていられないの。ごめんね?」

 

笑みと共に謝罪の言葉を述べた

兵藤清楚から感じる闘気に危機感を感じた織田信長が兵藤一誠から離れた。

 

「なんちゃって♪」

 

「へっ?」

 

次の瞬間、織田信長の足元に魔方陣が出現した。

一つだけじゃなく、直江大和達の足元にまで出現していた。

 

「それじゃあね。またきっと会えると思うからそれまでもっと強くなってね」

 

手を振る兵藤清楚に織田信長は悟った。―――嵌められたと。

 

「おのれ、おのれぇえええええええええええええええええええええええええええ!」

 

―――○●○―――

 

直江大和達がガイア達の前から姿を消して少し経った頃だった。

散って行った数人の男女が戻ってきた。

 

「どうだ?」

 

「出会い頭に攻撃された。当然、気絶させたがな」

 

「私達もそんな感じだったわ」

 

「また襲撃されそうだわ。どうするの?」

 

「取り敢えず、この大陸から排除をしよう。フェンリル達でな」

 

ガイアはハッチに赴いた。三頭龍の口の中はエスカレーターのような移動する足場でできていて、

胴体の部分に着くまで佇んだ。いざ、胴体に辿りつけばスタスタと目的地に足を運ぶ。

ガイアが行く道には一誠がいる部屋。とある扉を開け放てば、

部屋の中は―――大勢の男女がベッドで眠り続けている一誠を囲んで見つめていた。

 

「・・・・・久し振りの再会だというのに、これでは涙すら出ないわ」

 

「・・・・・そうだな。一誠が精神的ショックを受けて眠り続けているようじゃ、

再会したとは言えないわ」

 

相槌を打って、紅の髪の女性の言葉を悲しげに肯定と漏らした。

ガイアの視線は豊かな金髪の女性に目を向けた。

 

「精神といえばお前の得意分野だろう。一誠の精神はどうにかできないか?」

 

「・・・・・」

 

金髪の女性は首を横に振った。

 

「記憶の読心・人格の洗脳・離れた相手と念話・想いの消去・意思の増幅・思考の再現・感情の

移植をするならともかく、完成したパズルピースをまた完全に崩した感じで

精神が崩壊しているもの。無理だわぁ・・・・・」

 

「・・・・・お前でも無理だったか」

 

「でもぉ、一誠の心の中に入り込んで、一誠を呼び醒ますって言う手段ならあるでしょ?」

 

「・・・・・やはり、その手しかないか。一誠の中にいるあの二人も今頃、

そうしているだろうがな」

 

「じゃあ、私達もイッセーの心の中に入りましょう」

 

「見張りを十人程度、してもらうがな。和樹、お前の魔法でこの大陸ごと結界を張れ。

それと蒼天の住民達にしばらく格納庫で過ごしてもらうと伝えろ。

街の無い大陸で生きていけるわけがない」

 

「分かった。そっちも頑張ってね」

 

ガイア達の足元に巨大な魔方陣が展開した。

その光と共にガイア達の意識は一誠の中へと入って行く。

 

―――○●○―――

 

「無念だ・・・・・!主を救うことができず何が家臣だ!」

 

「訳の分からない奴らにこのまま一誠を奪わせはしないわ」

 

「作戦を練ろう。どうやら、まだこの地球からいなくなるわけでもなさそうだ」

 

蒼天から日本にまで戻され、九鬼家極東本部に戻った直江大和達。

巨大な機械から出てきた存在達に一誠を奪われ、怒りと悲しみ自分の力の不甲斐なさに

悔いを抱いていた。

 

「もう一人の姉さんと清楚先輩・・・・・一体、どうなっているんだ」

 

「私も・・・・・自分と戦うなんて驚いた」

 

「あの人はとてつもなく強かった。清楚先輩なのに、清楚先輩とは違う力がありました」

 

もう一人の川神百代と葉桜清楚の存在に疑問と驚愕をする。

 

「あの真紅の髪の女がリーダだと思って良いだろう。

一誠さんのドラゴンが逆らえないと言った感じだったし」

 

「でも、蒼天の皆の攻撃を簡単に避け続けたわよ?お姉様だって、

お姉様に負けちゃったし・・・・・」

 

「リーダーを倒せば、奴らだって大人しくなるかもしれない。―――強大な戦力が必要だ。

四天王クラスの実力者とリーダーを戦わせてなんと掛かってもらうしかない」

 

「四天王クラスってモモ先輩と揚羽さんぐらいしか俺は知らないぞ?」

 

「あと西のスピードクイーンの橘天衣って人もいるわ。

でも、四天王の称号を剥奪されているし・・・・・」

 

「常人より強い奴なら誰だっていいんだ。あのリーダーを倒せれば誰だって・・・・・。

俺達の兄のようで父のような存在の一誠さんをこのままみすみす放っておく事は俺はできない」

 

直江大和の決意に他の皆が真剣な表情で頷く。全ては慕い、敬愛している一誠を取り戻すため。

この瞬間、全員の気持ちが一つになった。

 

 

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