真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結 作:ダーク・シリウス
風間翔一達は学校にいる間、俺とオーフィスはのんびりと原っぱの上で寝転がっていた。
いや、オーフィスは俺の腹の上で寝転がっていた。
彼女から伝わる体温に心地よく、頭を撫でる。
「ん・・・・・」
寝ているオーフィスは小さく声を漏らす。そんな愛しい少女に思わず笑みが零れる。
「この街に長居しているな・・・・・」
なんというか、心地が良すぎるんだ。
ついつい、もっとこの街にいたいという気持ちがしてどうしようもない。
「(そろそろ、他の街に行くべきだろうけれど・・・・・)」
傍にあった石を掴んでとある方へ投げた。―――パシッ!と受け止められた音が聞こえる。
「俺に何か用か?」
「お気づきでしたか」
声は男。顔を上に向ければ、銀髪の老執事が石を弄んで佇んでいた。
「初めまして、旅人様。
私は九鬼家従者部隊序列3位、クラウディオ・ネエロでございます。以後、お見知りおきを」
恭しく頭を下げた老執事。・・・・・まあ、こいつもいることは予想していたことだ。初めて会うかのように話しかける。
「よろしく。それでもう一度聞くが、俺に何か用か?」
「はい。私の用件は一つ。あなたを九鬼家に勧誘することでございます」
「・・・・・」
「九鬼家従者部隊序列0位、ヒューム・ヘルシングを倒したあなた様のその実力は
無視することはできません。本人は口にしてはいませんが、
何時かリベンジをしようと思っているでしょう」
だろうな。あいつ、プライドが高いし。負けず嫌いだしな。
「加えて、気配を絶って近づいた私に石を投げる。
これは相当の実力者ではないとできないことです」
石を一瞥してそこらの地面に放り投げた。
「如何でしょうか。九鬼家に入り従者として働いてもらえれば、
かなりの優遇をお約束しますよ?」
「んー・・・・・」
九鬼家・・・世界最大の財閥・・・金はどうでもいいが、ここにいる間はここ以外の場所を
調べれることはできない・・・。九鬼家は世界に手を回しているんだったな・・・・・?
でも・・・・・。
「俺は自分が自分である証明する物はないぞ」
「構いません。私達は能力を優先します。
何分、九鬼家は人材不足がちで九鬼家に働いてもらえれば、どんな人でも構いません」
「俺が九鬼家にスパイであるとしたらどうするんだよ?ヒュームを倒した俺の実力は、
お前たちを越えていると道理だぞ」
「ふふっ、あなたはそんなことをしないでしょう。スパイなら、
すでに九鬼家に潜入しているはずです。
ですが、あなたはこうしてのんびりとしておらっしゃる」
クラウディオは笑みを浮かべて、俺にそう指摘した。・・・・・野暮だったわけか。
「人の目があるようだな」
「それなりに」
「―――条件がある。俺の条件を呑めば、従者にでも何でもしてやるよ」
「条件とは何でしょう?」
食いついた。俺はクラウディオに条件を告げた。
条件を言えば、クラウディオは分かりました、という。
「主に報告してからでもよいでしょうか?」
「構わない。俺は当分、ここにいるつもりだしな」
「では・・・・・」
そう言って携帯を取り出して俺から離れる。主という人物へ連絡しているんだろう。
「オーフィス、俺の中にいてくれるか?」
「・・・・・ん、分かった」
寝ているところ悪いな。と思いつつ、オーフィスを俺の中に入ってもらうことにした。
オーフィスの全身が黒く光り輝き、俺を包む。
しばらくして、俺の腹の上にいたオーフィスが光と共にいなくなっていた。
『イッセーの中、温かい』
「悪いな。しばらく中にいてもらうぞ」
『我、イッセーと一緒なら中でも構わない』
「(ありがとうな)」
「おや、あの子供はどこに?」
クラウディオが俺のところに戻って来ながらオーフィスを聞いてきた。
「ああ、気にするな。家に帰らしたから。それで、どうだった?」
「ええ、問題無く了承してくれました。特にヒュームを倒した者だとお伝えしたら、
大変興味を持たれました」
「今頃、話題になっているんじゃないか?」
「ふふふっ、そうかもしれませんね。では、私と来てもらいましょう。
私達の勤め先である九鬼財閥極東本部へ」
―――九鬼財閥極東本部
「件の方をお連れしました」
「うむ。ご苦労だった」
クラウディオに連れて来られた場所は、とある部屋の中だった。
そこに額に×の傷がある女性が座っていた。その女性は俺に視線を向けてくる。
「お前か?ヒュームを倒したという男は」
「まあ、正当防衛に近い形だけど、そうだ」
「ふむ・・・・・」
顎に手をやって考える女性。ここで従者なんて止めさせられても構わないけどな。
さて、何を考えている事やら。
「実力は申し分ないようであるが、我は直接この目で見ないことには判断ができぬ。
故にお前の条件も呑めない」
「またヒュームを倒せってことか?今度は直接見て」
「ヒュームはいま、少しばかり休養しておる。傷を癒すためにな」
・・・・・やりすぎたか。内心冷や汗を流す俺だった。
「それでしたら局様。九鬼家従者部隊の中で選り抜きした者達を100名お相手してもらうのはどうでしょうか?」
「・・・・・は?」
「100人だと?多すぎではないか?」
「いえいえ、川神院の川神鉄心様にお伺いしたところ、
100人組み手をした修行僧達を一瞬で倒したとお聞きしましたので大丈夫ではないかと」
あ、あの・・・おしゃべりジジイ・・・・・!余計なことをぽろっと零しやがって!
「むしろ、100人だけでは足りないかと私は評価しますがね」
「・・・・・」
局という女性はジッと俺を見つめてくる。真意を確かめようとしているその目でだ。
「よかろう、物は試しという。―――思い切って200人と相手してもらおうか」
数が増えているー!?いや、できないわけじゃないけどさ!本当に思いきってだよな!
「かしこまりました。では、あの場所にお連れ致します」
「ヒュームを倒したというその実力を、見させてもらうぞ。旅人」
「・・・・・しょーもない」
渋々と頷き、クラウディオの後に続く。部屋から出て俺は口を開く。
「お前、買いかぶり過ぎだとは思わないか?」
「ヒュームは昔、300人と相手をして勝ちましたので」
「そのヒュームを倒した俺を試しにあの200人で示してみろってことか」
「その通りです」
「はぁ・・・・・まあ、アルバイトとして働くのに
どうして多人数と戦わないといけないんだか」
条件の一つ、正式な社員としてではなく、アルバイトとして働くことが俺の条件の一つ。
ずっと働く訳にはいかないからアルバイトという形で働くことにした訳だけど・・・・・。
「で、どこに行くんだ?」
「従者部隊は全部で1000人います。そのスペースがある施設へ向かっております」
「鍛練場っていう場所か?」
「はい」
肯定の意を示した。まあ、妥当な場所だろう。一度に200人も相手をさせられるんだ。
広いスペースがあるところじゃないとできない。
「・・・・・」
クラウディオについて行くと外に出た。ここに来る時に通った場所だ。
「おい、ここか?」
「ええ、ここでしてもらいます」
・・・・・外かよ。まあ、どっちでもいいけどさ。
「それでは、少々お待ち下さい。200人を呼んでまいりますので」
「ああ」
クラウディオは本部の中へ、俺はその場で本を読んで時間を潰すことにした。
∞ ∞ ∞
「母上、我らに何を見せようと?」
「うむ、とある者の入社試験である」
入社試験・・・・・?新しい人材でも入ったのか?
しかし、それだけならば我らに見せなくてもよいと思うのだが・・・・・。
「して、外に九鬼家従者部隊を200人ぐらいいますが、どういうことです?」
我の眼下に九鬼家に使える従者達が外で待機している・・・。
いや、何かを囲んでいるようにも見える。
それは・・・・・初めて見る見知らぬ男を囲んでいた。
「あの男の入社試験ですか?」
「うむ、その通りである。何せヒュームを倒したというほどであるからな。
手始めに選り抜きされた200人の従者達と相手をしてもらうことにしたのだ」
「なっ、あのヒュームを倒した者ですか!?」
我が弟は目を丸くし、驚愕した。我もそうだろうな。我が師匠を倒す者なぞ聞いた事がない。
その男の実力を試そうという気持ちは我も分かる。
「クラウディオ、始めてくれ」
携帯で連絡する母上の指示を出した。その瞬間、外にいる従者達が一斉に動き出す―――。
しかし、突然に従者達が倒れだした。数は200人。あの者は一歩も動いてはいなかった。
動いた素振りもしていなかった。
なのに、一瞬で200人の従者達が倒れた。我は驚きのあまりに開いた口が塞がらなかった。
もう200人の従者達が全滅した。あまりにも呆気なさすぎる。
「ヒュームは17分で300人に勝ったが・・・あの者はたったの20秒で・・・・・」
遠くからでも傷は一つも負っていないようにも見える。無傷で一体どうやって倒したと・・・。
『局様、如何ですかな?あの者の実力をご覧になって』
「うむ、しかと見届けた。すぐに連れて来て欲しい。どうやって倒したのか聞きたい」
『わかりました』
それでクラウディオとの連絡は途絶えた。
母上はクスリと薄く笑った。良き人材が手に入った、と。
―――一誠side
200人組み手を終えてすぐ、俺はまたあの部屋に連れて来られた。今度は子供二人がいた。
しかも、見たことがある顔の子供だった。
「見事だった。たった20秒で200人の従者達を倒すとは今でも信じられん気持ちだ」
「それはどうも」
「しかし、一体どうやって倒したのだ?我に教えてほしい」
やっぱり気になるか。まあ、隠すようなもんじゃないしな。
「威圧感を放ったんだ」
「威圧感・・・・・?プレッシャーを与えたという事か?」
「そんな感じだな。昔、この力を知った男の話だとこの力は『覇王色の覇気』だそうだ。
俺がさっきして見せたこの力は、周囲の精神力が弱い者を気絶させることができる。
この力で倒せるのは、圧倒的な実力差があり、戦うまでもないほど弱い相手だ」
「つまり・・・・・先程の200人の従者達では相手にもならないと?」
「そう言うわけだ」
素直に言えば、納得したのか頷いた。
「では、クラウディオにその力を使えばどうなる?」
「いや、倒すことはできないだろうな。だからヒュームには直接で攻撃したんだ」
「なるほど・・・・・では、あの者達はまだまだ未熟ということか・・・・・」
嘆息する局。一応あれでも選り抜きされた従者達何だろうな。でも、相手が悪すぎるよ。
「それで、俺の実力を認めたか?」
「ああ、認めよう。お前の条件も受け入れる」
「んじゃ、よろしくな」
「うむ。では、お前を従者として働いてもらいたい。
取り敢えずは1000位から務めてもらおう」
「了解。1000位だったら、あっという間に零にまで上り詰めてみようかな。
楽しそうだし」
「零・・・・・ヒュームを超えるか」
「戦闘力ではヒュームを超えている。
でも、それだけじゃ昇格はできない事は何となく分かる。別の方法で昇り詰めてみるよ」
「ほう、他にも何かできるのか?」
局の問いに俺は頷いた。
「ある程度は全部マスターしている。料理とか掃除、楽器や戦闘機の扱い方とか踊りとか
マッサージも。ああ、物を作る事も長けているぞ?空き地で子供達と大きな段ボール製の城を
作ったほどだし」
「ほう・・・・・お前は見かけによらず色んなものに手を伸ばしているようであるな?
一体、どこの家の者なのか知りたいのだが・・・・・」
「ノーコメントでよろしく。ここは能力があれば雇うんだろ?相手の素性を気にしないで」
「む・・・そうであるな」
少し残念そうに呟いた。俺もちょっと安心した。
まさか、異世界から来た人間だなんて教えたら、信じる訳がないだろうし、
笑われるのがオチだろう。
「では、旅人様。これをお渡しします」
「・・・執事服か」
「はい、これを着て朝9時に出勤してください」
透明な袋に包まれた九鬼家従者の執事服をクラウディオから受け取って、頷いた。
「そういえば、その子供達は?」
「うむ?ああ、我の子供だ。長女の九鬼揚羽、弟の九鬼英雄である」
・・・・・やっぱり、あいつらか。うん、子供の頃から顔は変わっていないな。
髪形が違うだけか。そう思いながらも二人に挨拶をする。
「よろしくな。俺の名前は旅人だ。偽名だけどそう呼んでくれ」
「うむ、我からもよろしく頼むぞ」
「フハハハ!クラウディオも良い人材を見つけたものだ!」
「お褒めの言葉光栄でございます」
恭しくお辞儀をする。でも、クラウディオが勧誘してこなかったらヒュームが
してきたのかもしれないな・・・・・多分だけど。
「それじゃ、俺は帰らせてもらう」
「ええ、また明日会いましょう。旅人は初仕事なので私が付き添って教えます」
「ありがとう、助かる」
そう言って、窓ガラスの方へ向かって歩くと目の前に大きな穴が開いて、
俺はその穴に潜って―――外に落ちた。
「よっと」
地面に着地して顔を見上げれば、信じられない顔を浮かべる局達が視界に入った。
ペタペタと、窓ガラスを触れているその仕草がまた面白いな。
「(さーて、色々と利用させてもらうぜ。元の世界に帰れる手掛かりを見つけるまではな)」
∞ ∞ ∞
朝。九時前に九鬼財閥極東本部の玄関に進めば、クラウディオが佇んでいた。
「余裕を持ってきましたね」
「初仕事だしな。それじゃ、色々と教えてもらうぞ?先輩」
「気軽にクラウディオと呼んでも構いませんよ」
「なら、そうさせてもらう」
本部の中を案内してもらい、最初に連れて来られた場所は扉が多い廊下だった。
「本来は、あなたもここに住んでもらう手筈でしたが、ここは私達従者が住むところです。
ピラミッドのように一階から最上階まで位が高くなり50番以上の従者は、
一人部屋で住むことになっております」
「それ以下だと数人か十数人で一緒に暮らすという事か」
「その通りです。そして、お分かりになっておりますでしょうが、最上階は私やヒューム、
他の上位の従者達が住んでおりますので、用件がおありでしたら最上階に来てください。
部屋のプレートに数字が書かれてありますので迷わないかと」
「わかった」
次に案内されたのは厨房だった。かなり大きく500人位は入るスペースで、
料理を作っている人達の傍に置いてある調理器具が多種多彩だった。
「ご覧の通り厨房です。ここは料理長を始め、
世界から登用した腕自慢のコックやシェフ達が調理をします」
「人数が大勢いるから広いな。ここ」
「従者も含めて1000人以上いますからね。
後ほど、旅人の料理の腕前を見せてもらいます」
それから、九鬼家の従者達が会議する部屋、風呂場、食卓、鍛練場、軍事に関する施設、
九鬼家ファミリーの各部屋・・・・・。
―――数十分後
「以上で全てを見てもらいましたが、わからないことがあれば私に相談してください」
「部屋がいくらなんでも多過ぎだろう・・・・・」
「最大財閥ですからね、九鬼は」
「それもそうか・・・・・」
「では、鍛練の時間はすでに過ぎていますので、私達は食卓へ参りましょう」
「そこで何するんだ?」
「待機をするだけです。主達が何かご要望がおありでしたら私達はそれに応じて動きます。
最初は見学ということで、私達の動きを見てください」
「了解、頼りになる執事様だ」
「ありがとうございます」
クラウディオと一緒に食卓へ移動する。食卓の部屋に赴けば、丁度ヒュームが歩いてきた。
そして、珍しく俺の姿を見て目を丸くした。
「なぜ・・・・・貴様が・・・・・」
「クラウディオに勧誘された」
「はい、私が勧誘しました。従者に入るための試験も難なくこなしましたよ」
「・・・・・」
不機嫌そうな顔をする。
まさか、俺が九鬼家の従者に入るとは思いもしなかったんだろうな・・・。
俺自身もスカウトされるまでは九鬼家に働くなんて考えもしなかった。
「まあ、よろしくな。先輩」
「・・・・・虫唾が走る。先輩など呼ぶな小僧」
「じゃあ、ヒュームと呼ばせてもらうよ。老いぼれ」
「「・・・・・」」
―――バチッ!
俺とヒュームの視線の間に火花が散ったような幻想が生じた。これって、あれだよな?
ライバル同士とか負けられない戦いに起きる王道的なあれだよな?
俺、ヒュームとはそんな関係じゃないんだけどな。
「まあまあ、お二人とも。中に入りましょう」
「そうだな」
「・・・・・ふん」
クラウディオに窘められて俺達は睨みあいを止めた。扉を開け、中に入り壁際に佇む。
それからしばらく、この家の中心とも言える家族が入ってくる。
「九鬼局、推参である」
「フハハハ!九鬼揚羽、降臨である!」
「九鬼英雄、参上である!」
・・・・・なんと、豪快な挨拶なのだろうか。多分、この家系しかしないだろうな。
挨拶も軽めに、九鬼家の朝食は始まった。九鬼家の朝食は静か・・・と思いたいが、
九鬼揚羽と九鬼英雄というキャラが食卓の場を豪快にしてくれる。
その光景を静観していると、九鬼揚羽が話しかけてきた。
「旅人よ。今日が初仕事であるが、しっかり働くのだぞ」
「ええ、頑張りますよ」
「うむ。お前は他の従者と違い、特別な従者だ。見守らせてもらうぞ」
フハハハ!と笑う九鬼揚羽。九鬼局も九鬼英雄も、俺に視線を送ってくる。
一応、期待されているんだろう。それに応えるのが執事ってわけか。
∞ ∞ ∞
「旅人。あなたは検査をしていませんでしたね」
「検査?」
「はい、簡単な検査ですよ。いわゆる健康診断という奴です」
「ああ、それか。今日するか?」
「そうですね。できるだけ早く済ました方がいいでしょう」
九鬼ファミリーの朝食が終えて、今度は従者の朝食の時間。
従者専用の食事の間で俺とクラウディオは共に食べていたが、
今では食べ終え、廊下を歩いている。しかし、検査か・・・。それは困ったな。
「んー」
「どうかなさいましたか?」
「いや、するのは良いんだけど・・・・・俺の血って特殊だからさ」
「というと?」
「A型とかB型とか、その血液型に当て嵌まらないというわけだ」
クラウディオが興味深そうに耳を傾け、口を開いた。
「つまり、異種の血液だと?」
素直に同意すれば、クラウディオその目は真っ直ぐ俺に向く。
「でしたら尚更のことです。すぐに検査をしましょう」
そう言ってすぐにとある扉の前に立った。扉のプレートは医療室と刻まれていた。
最初からここに連れてくる気だったか。医療室の中に入り、早速検査が始まった。
身長や体重、視力や聴力、握力の検査、(その際、握力を計る機械を壊してしまった)。
そして、最後に血液検査が行った。輸血パックに俺の血が溜まる。
その血の一滴をクラウディオは採取をして、
傍にいた一人の男に渡しながら訊ねるように問いかけてきた。
「旅人の血液はAB型でもないのですか?」
「残念ながらな。でも、どうしてAB型だ?」
「揚羽様の血液型がAB型なのです」
「輸血用に雇われるのはゴメンだ。その内、ストックが確保されて解雇されそうだ」
「そんな事はしないと思いますが」
「可能性としての話だ。気にするな」
しばらくして、俺の血を検査していた男が怪訝な顔をしたまま、報告して来た。
「クラウディオ様・・・・・この方の血液は初めて見る血液の種類です」
「それでは?」
「ええ、事実上・・・・・世界で唯一、一つしか無い血液だと思われます。
A、B、O、AB型のどの血液型とは全く異なる血液です」
男とクラウディオが俺を見つめてくる。
まあ、俺はドラゴンや兵藤家の血が混ざって体に流している人間だし、当然の話だろうさ。
「しかも、採取した血液を見れば・・・・・生きているように動いています。
まるで、心臓が鼓動しているかのように・・・・・これは新発見ですよ」
「ふむ・・・・・私にも見せてくれますか?」
「はい、こちらです」
クラウディオも気になるようで、俺から採取した血を見に行ってしまった。
その間、腕から針を抜いて、片付けでもしておくか。
「・・・・・なるほど」
ポツリとクラウディオが呟いた声が俺の耳に入った。
丁度片付け終わった時で、双眼鏡のように眼だけ覗き、
俺の血を見ているクラウディオに向ければ、血を見ていた視線を俺に向けてきた。
「やはり、あなたは私の思った通りの人のようだ」
「どんな人だよと、聞いても良いか?」
「ふふふ、秘密です。因みに自分の血のことを知っていたようですが、
どうやって知ったのです?」
「ノーコメントでよろしく」
俺は子供のように笑って教えなかった。クラウディオも俺の笑みを見て追及はしなかった。
「分かりました。これも貴方の条件の一つですからね。
ですが、この血を利用した研究をさせてもらいますが、よろしいですね?」
「悪用しなければ問題ない」
「ありがとうございます」
「それじゃ、俺がする仕事を教えてくれ」
「そうですね。では、参りましょう」
医療室から出て、俺はとある場所へと赴いた。ようやく俺の初仕事ができる―――。
―――数時間後。
「ふむ。初仕事にも拘わらず、完ぺきにこなすとはさすがですね」
「そうか?」
「ええ、埃一つもなく綺麗に掃除するどころか、
私から課す題を難なくクリアしましたからね」
「失敗がないようで安心だ」
「では、そろそろ夕食の時間です。あなたの料理の腕前を見せてもらいましょうか」
キラリ、と眼鏡を輝かすクラウディオ。現在、俺がいる場所は厨房だった。
最後にとクラウディオが俺の料理の能力を試そうと、とっといたらしい。
「今日のメニューは何だ?」
と、訊ねればクラウディオが夕食の献立を教えてくれた。
どれもこれも高級な料理店が出すようなメニューだった。
「流石は世界最大の財閥だな。食べる料理も豪華だ」
「作れないと?」
「まさか、作れるさ」
巨大な冷蔵庫に赴き、食材を取り出し用意する。さーてと・・・・・始めますか。
最大に研ぎ澄まされた包丁を手にとって―――。
「ああ、そうだ」
食材を一閃。その一閃で様々な食材が色んな形に切れた。
「今日の夕食は、俺のオリジナル料理で食べてもらう。
俺の料理の腕を見てもらうためにな。味見をよろしくな」
クラウディオにそう告げて俺は料理を作るのだった。
∞ ∞ ∞
「これは・・・・・?」
「はい、旅人が自ら作った料理でございます」
夕餉の時間となり、九鬼家ファミリーは食卓に着くと変わった料理が置かれたのを
クラウディオが答えた。
「味見はクラウディオにしてもらった。本人も納得してくれたから口に合うはずだ」
「ええ、とても美味しかったです」
肌が艶々としているクラウディオが頷いた。九鬼局はふむ、と呟き言う。
「確かに、旅人の料理の腕は気にはなっていた。クラウディオが納得するのならば、
問題はないだろう」
そう言って俺が作った料理を一口。・・・・・一拍して、九鬼局が暗くなった。
「・・・・・私より料理が美味い人間がいる事は理解しているが・・・・・ここまでとは」
それでも俺の料理を食べ続ける度にショックを受ける。
うん、この世界でも俺の女殺しの料理は通用するようだな。
「味わったことがない感触に味の料理・・・・・旅人、この料理は世界中を旅したから
この料理を作れるのか?」
「俺は料理が大好きだからな。失敗を積み重ねてようやく完成していくんだ。
その一品もまた、失敗を積み重ねて成功した料理の一つだ。
他にも俺しか作れないオリジナルの料理もある」
「では、金平糖の料理も作れるか?」
「金平糖?」
首を傾げて問うと、九鬼揚羽の好物なのだとか。
・・・・・マシュマロはともかく、金平糖か。
「悪い、金平糖とという料理の発想はなかった。試してみる。
しばらくかかりそうだけど待ってくれ」
「うむ。楽しみにしておるぞ」
本当に楽しみなのか、満面の笑顔で言われた。・・・・・そうだな。
この機に新しい料理でも作ってみるか。意外性な料理や、
有り得ない料理とか色々と。・・・・・そうだ、
「そう言えば、クラウディオの好きな食べ物は?」
「サラダです」
「で、ヒュームは?」
「・・・・・」
「串焼きですよ」
沈黙するヒュームの代わりにクラウディオが教えてくれた。なるほど、串焼きか。
「後で二人の好きな食べ物を作ってやるよ」
「ありがとうございます」
「ふん・・・・・」
お礼を言うクラウディオに鼻を鳴らすヒューム。んで、
しばらくすれば九鬼家ファミリーの夕餉は終わった。
「旅人、ショックが大きかったが美味しかった。料理が得意というだけあって美味であった」
「フハハハ!従者ではなく、九鬼家の総料理長を目指してもらうのも
悪くないのかもしれませんな!」
「我としては従者がいいな。・・・・うむ、旅人。我の相手をしてもらえぬか?」
相手・・・・・?なんのだ?
「この二人の夕食を作ってからでも?」
「うむ。それでもいい。それを終えたら我の部屋の前で待っていてくれ」
「了解」
了承すれば、九鬼揚羽はこの部屋からいなくなる。俺はもう一度厨房に赴いて
串焼きとサラダの料理を作った。作り終えれば、二人に食べさせる。その感想は・・・・・。
「これはこれは・・・・・野菜の甘みが凝縮して、中には苦みのある野菜もあるにも拘らず、
苦味がないですね・・・・・しっかり抜き取られております。
そして、このドレッシングも野菜のうま味をより引き出しています。
なんと素晴らしいサラダなんでしょう」
「・・・・・合格点と言っておこうか」
と、二人から称賛の言葉をもらった。
さて、料理を作ったことだし九鬼揚羽の部屋に赴くとしようか。
「待て」
「ん?」
ヒュームに呼び止められると、
「揚羽様には主に足技の格闘術を教えている」
「それで?足技の稽古をしろというわけか?」
「俺と足技だけでの勝負をしろ」
お、ヒュームが勝負を仕掛けてきた。
「じゃあ、揚羽様も呼んで勝負しようか。足技だけの勝負なら、学べる事もあるだろう」
「・・・・・良いだろう」
「では、審判は私がしましょう。
直で旅人とヒュームの勝負を見てみたいと思っていましたからね」
シャキシャキと、お代わりしたサラダを食べながらクラウディオが買って出た。
「食べてからな?」
「ええ、・・・・・美味しいです。このサラダ」
・・・気に入ってくれたようで嬉しいけれど、ヒュームが物凄く睨んでいるぞ。
―――揚羽side
何故か、旅人とヒュームが足技だけでの勝負を行う事になった。
我はただ話し相手をしてもらいたいと思って言っただけなのだが・・・・・。
「クラウディオ、何時までサラダを食べておるのだ?」
「すいません。旅人のサラダは美味しくて止まりません。体のエネルギーが活性化して、
細胞が若返るかのような感じがしますよ」
ボールに盛られたサラダを美味しそうに食べるクラウディオ。
確かに・・・肌が潤っているのが分かる。肌に良い料理なのか?
「・・・クラウディオが、ああだし・・・・・このコインが落ちた瞬間に始めようか」
苦笑する旅人は一枚のコインをヒュームに見せれば無言で頷いた。一拍して、
コインを指で弾く。その瞬間に攻撃態勢の構えをする両者。―――コインは床に小高い音を生じた
と同時に落ちた。刹那―――。
ザッ!
両者が同時に飛び込んで、足を突き出した。相手の足の軌道を足で反らしての回避行動だが、
あの二人は事前に考えをしていたかのような動きを我らに見せつける。逆立ちして足を大きく
広げて、激しく回るが駒のように衝突し合うだけで決定的なダメージを与えてはいない。
先にヒュームが体勢を立て直して、大きく足を横薙ぎに蹴る。旅人は後方回転をして避け、
再び突貫する。それに対応するヒューム。
足と足が激しく、鋭く突き出され、両者の戦いぶりに我は釘付けとなった。
「お見事な戦いぶりです。旅人はすでに、足技だけでも強さの壁を越えた武の達人の領域を
踏み越えています。ヒュームとあれだけ渡り合えれば十分なぐらいに」
「・・・・・」
クラウディオが旅人を高く称賛した。強さの壁を越えた武の達人の領域・・・・・。
我はまだまだ未熟者故、その領域には達してはいないが旅人は超えている・・・・・。
世界は広いのだな。旅人はそんな広い世界を旅をしているのであるのか・・・・・。
「流石に、足技だけで戦うのも骨が折れるな」
「あの時の屈辱を倍にして返すぞ、旅人」
「いんや、今度も俺の勝ちだ」
後方に下がった旅人。すると、俺に視線を送ってきた。
「揚羽様。俺の足技を見て習得するといい。この足技はかなり有効で、
戦いにも有利になるだろう」
我にそう言う。旅人の足技・・・・・?先程のヒュームと蹴り合ったアレのことではない?
ヒュームも怪訝な面持で旅人を見る。当の旅人はその場でジャンプをし始める。
それもしばらく続けた。
「旅人・・・高がジャンプをするのが揚羽様に教える足技だと?笑わせているのか?」
「おいおい、これはただの
「・・・・・なに?」
ヒュームの言葉には我も納得する。ジャンプが準備運動だなんて、
一体どんな足技なのだろうか?旅人は口を開いた。
「月歩」
・・・・・シャキ・・・・・。
サラダを食べていたクラウディオの口が止まった。全部食べ終わったからではない。
旅人の動きを凝視して思わず咀嚼をしなくなったのだ。我の視界に入るのは・・・・・
宙をジャンプをする度に上がっていく旅人の姿・・・・・。
ヒュームは旅人を見上げる形になった。
「・・・・・なんだ、その足技は・・・・・」
「この足技の名は『月歩』。爆発的な脚力で空を蹴りながら宙に浮く。だから・・・・・」
ドンッ!と空を蹴った音が生じた。同時に旅人は別の場所の所に向かって飛んでいった。
「俺は空中を蹴りながら飛べれる」
「・・・・・なるほど。
だがしかし、空を蹴りながら宙に浮いては攻撃などできはしないだろう」
「―――嵐脚」
旅人が大きく足を振るった。その際、風が発生してヒュームに向かった。
「っ!?」
ヒュームはその場から引いた。逆にヒュームがいた場所に風が直撃して・・・・・
まるで刃物で傷を付けたかのような痕跡が深く、床に残った。
「『嵐脚』。蹴りで鎌風を起こす足技。―――長距離からでも、空からでも、
この蹴りをすれば距離なんて関係ないんだよ」
「・・・・・っ」
「―――そら、どんどんいくぞ!」
嵐脚!と旅人が口から発すると、宙を浮いたまま見えないほどの蹴りで、
次々と鎌風を起こし、ヒュームに攻撃する!迫りくる鎌風にヒュームは防戦一方だ。
空かの攻撃を避けるしか方法がない。
「舐めるなよ・・・・・小僧!」
ヒュームが鎌風を避けながら素早く動き、旅人の真下に近づけば一気に跳躍して旅人へ
迫った。だが、旅人は空を蹴って違う場所に移動しながら・・・・・、
「空を飛べない人間は不便だな」
「・・・・・っ!?」
「嵐脚―――閃飛燕!」
蹴った。蹴りから発生する鎌風が、燕のような形になりながら宙にいるヒュームへと迫る!
その鎌風を蹴りで迎撃するが、中には通り過ぎて旋回し、背後から襲う鎌風もあった。
ヒュームは背後から来る鎌風に察知し、振り返って迎撃するがしかし・・・・・。
宙では踏ん張りが利かない上に態勢が立て直し辛い。空中戦では、旅人が上だ。
・・・・・ヒュームの全身は鎌風によって切り刻まれていく。
「剃」
旅人の姿が消えた。我は目で探すが、姿が見えないどころか気も感じられない。
「―――2戦2勝、俺の勝ちだな」
ヒュームの腹部に忽然と現れた旅人が深く突き刺して、そのまま床に落ちた来た!
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
両者の姿は床のコンクリートが粉砕した際に生じた煙で見えなくなった。
濛々と立ち込める煙は直ぐに晴れた。
「・・・・・勝負ありましたね」
結果は・・・・・。
「旅人の勝ちです」
床に倒れているヒュームの傍に見下ろす旅人が佇んでいた。
「ヒューム。お前もこの足技を習得できるだろう。まあ、何時になるかは分からないがな」
不敵の笑みを浮かべる旅人。その笑みは我にも向けられた。
「揚羽様。お前もこの足技を習得すれば、空を飛べれるだろう。
その時、いつか一緒に空を飛んで散歩をしよう。きっと気持ちいい散歩になる」
月歩・・・・・爆発的な脚力で空を蹴ることで初めて宙に浮く・・・・・。
魅力的な足技である事は間違いない。兎に角、足を鍛えなければならないか。
「クラウディオ」
「はい」
「お前は素晴らしい人材を見つけたな。我は凄く嬉しいぞ」
「ええ、私もそう思います。もしかしたら今後の九鬼財閥は、
彼を中心に賑やかになるかも知れません」
うむ・・・・・もしそうなら面白いではないか。
ヒュームの襟を掴んで引き摺りながら旅人が近づいてくる。
「そういや、相手って結局はなんだったんだ?」
「ふふ・・・いや、何でもない」
我は笑って誤魔化した。旅人は首を傾げてクラウディオを見るが、
クラウディオも笑みを浮かべるだけであった。・・・・・よし、決めたぞ。
「良い勝負を見せてもらった。旅人よ。我はお前を気に入ったぞ。
―――今日からお前は我の執事だ」
「・・・・・は?」
「これから毎日、我の傍におるのだ。朝昼晩、共に過ごそうではないか」
「えっと・・・・・休みの日もか?」
「当然であろう?」
と、急に困った顔をする旅人だった。何故だ?
「・・・・・・なあ、クラウディオ。俺の条件の一つは休日の時、
俺は仕事を絶対にしない条件だったはずだが?」
「ふむ・・・・・局様もご了承しておられますし・・・・・どうしたらよいでしょう」
「旅人、休日の日には何か用事でもあるのか?」
「ないが、子供達と遊ぶことが多い。その中に川神院の孫娘もいるから、
遊び相手をしているんだ」
「ほう、そうだったのですか?」
驚いたようにクラウディオは言った。川神院・・・聞いた事があるが孫娘?誰であろうか?
「旅人、その川神院の孫娘は誰だ?」
「川神百代だ。歳は・・・・・2歳年下かな?揚羽様の方が年上だな」
「我の方が年上か・・・・・その者は武を嗜んでいるのか?」
「ああ、武の総本山と謳われている川神院に住んでいるから格闘術を心得ている。
数年後にでもなれば、揚羽様と同格かそれ以上の力を持つ存在になるだろう」
その時は楽しみだと、旅人は付け加えていった。
・・・・・我は誰かと競争などと興味はなかったが、
川神百代という人間を会ってみたい。そして、未熟ながらでも拳を交えたい。
「旅人。我を案内せい」
「どこにだ?」
「決まっている。―――川神百代のところにだ」
我の執事が我の事より遊び相手である川神百代という人間を取る。
その人間を、川神百代を知る必要がある。我はそう思い、旅人にそう指示を下した。