果たして・・・
翌日、俺は浦の星女学院までお邪魔することになった
理事長直々にお話があるそうだ
しかも、少しの間だけならグラウンドを使わせてもらえるというのだからなんと言った好待遇だろうか
そして今、持ち運びができるバッティングネットを持参して高海さんのフォームを確認している
「うん、確かに球は芯で打ててるしコントロールも申し分ない。化けるっちゃ化けるといったところか」
流石はソフトボール経験者といったところだ
現代で、ソフトボール経験者がプロ野球に入団するケースが生まれたためか自分には合いさえすればソフトボールから野球にも転じれると思えるようになった
「いや、これぐらい出来るなら音ノ木坂でやった方がいいだろ?120km/h出せて、バッティングは天才肌。俺が音ノ木の監督ならスタメンにすぐ使ってるぞ?」
最初は、冗談で言ったつもりだった
でも、少し高海さんが俯いたように感じた
「それじゃあ、ダメなんです」
「?」
「私達、浦女を廃校の危機から救わないといけないんです」
また、、廃校という言葉を聞いた
音ノ木坂で野球の伝説が始まったのも廃校を阻止する為だ
「そうで〜す♪」
何処からともなく見知らぬ声が聞こえた
その声の主は
「ま、鞠莉!?」
松浦さんが驚いた表情を見せる
「はじめまして。私が浦の星女学院理事長兼生徒の小原鞠莉です!
チャオ〜♪」
ハーフだろうか、日本とは違った風貌をしていて日本語にも海外の訛り
しかも、理事長兼生徒!?
ここは何処かのワンダーランドか何かだろうか
「貴方には、ここを救って貰うべく私がスカウトしました」
「また小原グループの金で解決させたの?」
「ちょっとだけ・・・ね?」
小原グループってちょっとだけ知ってるけどまさかそこのお嬢様か
どおりで給料が跳ね上がるように高かった訳だ
(金目当てで入った訳でははないが)
「実は貴方に少々お知らせしておくことがあります」
理事長が改まったようにそう言った
「来月からここに転校生が入って来るそうですが
それが音ノ木坂からやってくるらしいんですよ、しかも元野球部の」
俺には余りにも衝撃で声も出なかった
まさか・・・
「ほ、ほんとー!?」
高海さんも目を丸くしている
「その子の名前がー」
「桜内梨子、、そうじゃないですか?」
理事長が驚きを隠せない表情をしている
どうやら図星のようだ
「よく知ってるのですか?」
「あぁ、ただあいつは一癖あるからなぁってのもあるけどもしかしたら野球部入らないかもしれないかもなぁ」
「えー!?」
「まぁ、そのことを伝えに来ただけだから。それでは、チャーオ!」
と、風のように理事長は去っていく
「そういえば、桜内さんだっけ?その子どんな子なの?」
松浦さんが少々首をかしげる
「会ってみれば分かるよ。決して悪い子じゃないしむしろ凄く優しいし良いんだけどそれが、、、なぁ」
始業式
僕は事務室の椅子によそよそしく座る
学校の外からだと伝統ある校舎で年季があるなぁ
なんて感心してたが
事務室は意外にも新しげだった
音ノ木でよく遠征の交渉や予定表なんかを作っていたおかげか
事務の中では大分と業績があった俺は浦の星でもサクサクと仕事を終わらせていく
はずだったが
そんなに仕事がない
廃校が近づいてるだけあってかする事も何もなくて
ましてやこの学校1年目の俺が
でかい仕事を用意してくれるはずもなかった
それでも無理やりパソコンを開いて用事を作ろうとしていると
「すいません、ここに内野先生っていらっしゃいますか?」
誰かが俺の名前を呼んだようだ
事務室から一歩外に出て、
「どうしました?」
「先生は、野球部の顧問でいらっしゃいますよね?」
「顧問・・・?そんな感じ・・・なのか?」
「それなら・・・。私は、ここの生徒会長です。お言葉ですが、野球部の申請もないのに勝手に始めるのはいかがなものかと・・・」
「!?」
え!?まだ部として学校側から認められてないの!?
マジかよ・・・ん?
理事長はこのこと知ってるんだよな・・・
「理事長は認めてくださっているのですが、その事に関してはご存知ですか?」
「鞠莉さん・・・、またややこしい事を。まぁいいです。ただし、部員は5人以上いないと認められないのでまず人を増やしてから私の所に来てください」
そう言って、去っていった
それにしても野球部、公式に認められてないの!?
これは尋問しないといけないやつだな
「大変そうですね」
隣の先生が話しかけてくれた
俺は失笑するしかなかった
放課後、俺が指定したバッティングセンターで彼女たちを待っていた
前に使った公園も公共施設だし、学校側も認めているのか認めていないのかガバガバなので敷地はやはりとれなかった
「あれ?君、大学で野球やってた内野くん?」
バッティングセンターの店長らしきおじさんが退屈そうな僕に声をかけてくれた
大学で野球やってたことを知ってるってことはそれなりのマニアさんであることが分かる
「はい、そうですが」
「お〜!!やはり噂は本当だったようだなぁ。何しにここへ?」
俺はここにきた理由を簡潔に話した
「浦の星で監督か〜、うちにこんなスターが来てくれるのはありがたい。
・・・そういえば、今あそこにすんごい打ってる女の子がいるけど教え子さん?」
おじさんが指差す方向を見ると
僅かな紅色の髪
真っ直ぐな瞳の女の子が120km/hの球をいとも簡単に前へ飛ばしている
しかもその球は綺麗な放物線を描き、あとひと伸びでホームランといった所でネットに当たった
「梨子・・・」
そう、あの人が桜内梨子
折角の機会ではあるし、話しかけたら?との事で
俺は打ち終わるのを待って
「おい!久しぶり」
「・・・!監督?なぜここに?」
「おい、聞いてなかった?俺こっちに転勤してきた。お前はこっちに何しに来た?
まさか俺みたいに逃げてきたのか?」
「・・・。言い方。それじゃあ帰るから」
少し揶揄ったら冷たくあしらわれた
しかし、本人は「逃げた」を否定しなかった
本音は否定して欲しかったのだが
やはり・・・
「遅れてごめんなさい!!って、、あれ?桜内さん!?」
高海さんが慌てて、松浦さんが後を追うようにゆっくり入ってきた
「あ、高海さん・・・」
「どう?野球部、入らない?」
「・・・ごめんなさい」
怪訝そうな顔で、梨子は去った
「桜内さん、やっぱり入ってくれないのかなぁ・・・」
「まぁまぁ・・・」
「言ったろ?難しいって」
「じゃあ、何故そう思うんですか?」