反響が良ければ続きを書きます。
この世界の設定は以下の通りです。
・適正者が艦の魂を持っている艤装と適合することで艦娘になる。
・適正者の数自体が少ないため、軍は適合係数が高ければどんな人間だろうと、軍に招き入れて艦娘にする。
・その分提督はそうすることで発生してしまう問題児たちを指揮するために公正で人格的に優れた人物が任命される。
・深海棲艦を地球を救う存在だと崇める宗教組織があり、軍の上層部や一部にもそういった宗教に入信している人たちがいる。
・深海棲艦の何らかの組織を体内に取り込んだりすると、それに適合した場合人間が深海棲艦に堕ちてしまうことは理論上起こりうるとされている。なお、艦娘になった経験がある場合そうなる可能性は跳ね上がると推測されている。
以上5点を踏まえたうえでお楽しみください。
「おい、ちょっと面貸せよ。」
「………」
黒いフードを顔を隠すように深く被っている少女の顔のすぐ横の食堂の壁に紫色の髪の眼帯をつけた少女が手を突き付けながら宣言する。
眼帯少女の行動に食堂にいる全員の目が集まる中、黒フードの少女は黙って何もしゃべろうとしない。いや、その手に握っていた2つのものを胸の前にあげようと動き出した。
2つのもの、即ちスケッチブックとペンで少女はさらさらと何かをつづる。数秒後、書きたいものを書き終わったのか少女は目の前で険しい視線をぶつけてくる少女に書いたものを見せつけるかのように掲げた。
「『なんで?』だぁ?それはお前のその何が何でも隠したいようにしているフードの下の面を拝むためだよおらっ!」
「!?」
黒フードの少女は必死になって無理やり力づくでフードをはがそうとする眼帯少女の動きに対抗しようとフードの端を握りしめる。両手に持ったペンとスケッチブックが落ち、地面で音を立てて転がり少女の足元に近づいた。
それをちらりと見た眼帯少女はうっすらと口の端から笑みをこぼし、少女のフードをはがそうとするのではなく、逆に自分の方へと引っ張った。
「!!」
黒フードの少女は必死に後ろの方へと体重をかけていたのに急に前に引っ張られたせいでその場で踏鞴を踏み、
「ア…」
さらに運の悪いことに転がっていたペンを踏みつけてそのまま背中から転んでしまう。
少女が背中に確実に来るであろう痛みを予見して目を閉じたその時、背中から勝手に白い蛇のようなものが飛び出し、彼女の背中を支えるかのように太く、大きくなった。
Jの字を描くように静止した少女がフードの下から辛うじて見える口が呆然と開いているのと同じように、周りで眼帯の少女と黒フードの少女の様子を黙って見たいた少女たちも口を開いていた。
そんな少女たちの様子を期にもしないかのように眼帯の少女はびっくりして離れていた少女のフードを引きはがす。
露わになったフードの中を見て眼帯の少女は
「やっぱりか。」
と、呟いてから手元に刀を召還して未だにJの字を描くような体勢で固まっている少女の首筋に突き付け
「なんで深海棲艦が鎮守府にいることが許されてんだろうなぁ?」
と告げてから自らに怯えた視線を向ける既に少し刃が刺さってうっすらと流れ出る液体による筋ができている少女の首筋にさらに刃を差し込もうとした……その時だった。
「止めろ天龍!!」
食堂の入口の方から威厳のある女性の声が響きわたる。その場にいた全員が食堂の入口の方へと視線を向けるとそこには2本の電探付きのヘッドギアをつけた長い黒髪を後ろになびかせながらこちらへと歩き寄ってくる背の高い女性がいた。
黒いロングコートを身に纏い、引き締まった腹筋を見せつけるように肌を出し、腰には大日本帝国軍の象徴である菊の御紋をあしらったベルト。
第二次世界大戦において日本海軍の象徴と呼ばれた艦たちの一つ、戦艦長門の意思を託された艦娘長門が険しい表情で眼帯少女、天龍によって少女のその白い首筋に浅く食い込まされていた刃を抜き、手元に持っていた応急治療用のガーゼで流れ出る
「この子についてはきちんと今朝の総会で説明をしたはずだ。この子は我々の敵ではなく、さらには被害者でしかないということは提督や大淀、さらには明石からきちんと資料付きで説明が行われたはずだが……まさか天龍貴様総会をすっぽかしてどこかへと行っていた…ということはないだろうな。」
今にもここから逃げたいといわんばかりにごそごそと動く少女を抑えながら処置をしながら怒りを感じさせる声で長門は今も後ろにいるはずの天龍へと告げた。
「…?」
しかし、返事はない。まさかと思い振り返るとそこには既に天龍の姿はなく、青い血によって少し汚れた日本刀だけがその場に残されていた。
「……ったくアイツは……。」
そう悪態を零しながら長門は少女を抱きかかえた。
「一応、医務室の方へと連れてゆこう。なぁに、君もあの人もきっと元の姿に戻る手段がいつかは見つかるはずだ。心配などしなくてもよい。」
お姫様抱っことでもいえそうな体勢に白い少女を抱え、あやすかのように胸元の少女に言いながら長門は食堂から出て医務室の方へと歩き出す。
その一連の出来事をずっと見ていた食堂に取り残された少女たちは様々なことを話しだした。
そのうちの多くは先ほど少女の背中から生えてくるかのように出てきた見覚えのある
「……やはり鎮守府においておくのは危険じゃないか?」
食堂の端の方に置かれたテーブルに固まった女性たちのうちの一人が先ほどの様子を見て告げる。
「仮にあの話が本当だったとする。だが、深海棲艦だということは変わらないのだから殺すべきだろう。」
「そうね。けど、もう一人が空母たちと一緒にいるはずでしょ?殺すなら一度に、そしてなおかつやったのが私たちだということがバレないように殺さないとまずいわよ。失敗したせいで北上さんに被害が行くなんて私は絶対いやよ。」
「空母と言えば……そう言えばなぜ赤城と加賀はこの集まりに来ない?一応伝えたのだろう?」
「それに関しては飛龍から伝言を預かっている。赤城からは『私たちには無理です。』加賀からは『立場は一緒でも無理です。これだけは譲れません。』だそうだぜ。」
「てことは仮にもう一人を殺そうとするなら…」
「赤城と加賀がいないときにしないと無理ね。けどあの二人はここでかなり上位の方にいるからねぇ…」
「となると、どうする?このまましばらく計画は寝かせておくか。それとも今日中に実行するか。」
「今日は赤城が出撃で加賀はもう一人と一緒に折るって言ってたで~」
「そうか今日は赤城が出撃で、加賀が休み……いや待て。なんでいるの龍驤さん!?」
その場にいた女性たちの視線がすぐそばでにこにこしているえんじ色の改造巫女服にスカートを穿いた背の低い少女のもとへ集まる。そしてその背後からにじみ出ている何かに気付いて気配に敏感な数名は椅子から転げ落ちた。
「大井足柄摩耶日向に那智。お前らがどんな経緯で艦娘になったんかウチは詳しくは知らんけどなァ…」
テーブルに両肘を添えて組み、顎をそれに乗せながら一見にこやかに見せる笑顔からうっすらとにじみ出ているのは殺気。女性たちは気づかないうちに龍の逆鱗を踏んでいたのだ。
「戸籍こそ抹消されてしまったとはいえウチが世話したあの子とその世話になっていた子に手ェ出して五体満足でいられると思うなや?」
そう言い残して龍驤は歩き去る。その場に残されたのはまるで姫級の深海棲艦と初めて遭遇して腰を抜かした駆逐艦の艦娘の子たちのように動けなくなった女性たちしかいなかった。
天龍によって白い少女が首にけがを負ったのと同時刻、空母たちが集まっている空母寮の一室でちゃぶ台をはさんで3人の女性たちが正座で台に乗ったお饅頭を口に運んでいた。
「それにしても雲龍さん、まさかあなたがそうなるとはねぇ…」
白い和服に赤色の袴、そして長い黒髪をさらっと後ろに流しながらハムスターのように饅頭を口に詰め込みつつ、航空母艦赤城の誇りを受け継いだ艦娘赤城は目の前であまり表情を変えずに饅頭を口に入れてゆく全体的に真っ白気味な女性に語り掛けた。
「確かに、あなたが左目を戦闘中の怪我で失明したせいで引退してから近くで孤児院を開いたとは聞いてたけれど。まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったわ。」
赤城の言葉に続くように赤城と似たような形の白い和服に青い袴、長い黒髪をサイドテールにまとめた航空母艦加賀の艦娘加賀がそう呟きながら饅頭の横に置かれた急須に手を伸ばし、その中に入っている緑茶を湯飲みにそそぐ。
「マァ、ソノオ陰デ失明モ治ッタノデ何トモ言エマセンケド……」
のんびりお茶と饅頭を喰らう二人の目の前の白い女性はそう聞きとりづらい声で答えながら饅頭にかぶりつき、
「ヤッパリダメダワ…」
と、悲しそうな声で言いながら一口食べた饅頭をちゃぶ台に置いた。
「「……」」
その様子を赤城と加賀は悲しそうな顔で見、顔を見合わせてから赤城が口を開いた。
「一応、この部屋にはあなたと、あの子の二人以外はあまり近づけないように言い含めてるから安全上は大丈夫だと思う。ただ、この鎮守府ってどちらかというと深海棲艦に恨みをもって艦娘に志願した子の方が多いから絶対に安全とは言い難いの。」
「エエ、分カッテマス。タダ、ヤッパリソレヲ聞イテ、アレダケ好キダッタオ饅頭ノ味モ感ジラレナイカラ私ハ人ジャナクナッテシマッタンダナァ…ッテ考エチャイマスネ。」
そう哀しそうにつぶやく雲龍と呼ばれた女性は左目に青い炎を灯しており、通知が来たことでスリープ画面に変わった彼女がもつ端末には少しぽやーとした様子の白い髪を三つ編みに束ねた女性が十数人程度の子供たちと一緒に笑顔で写っている様子が通知の下に表示されていた。
その中には、黒いフードを被ることで必死に顔を隠そうとした結果天龍の刀によって首を落とされかけた少女の面影をわずかに残す少女の姿も混ざっていたのであった……
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