後悔はしていない。拙い文章ではありますがお目汚し御免。
「未来ちゃん、未来ちゃんはリディアンを卒業したらなにかやりたいこと、あるの?」
友里さんの書類仕事の手伝いもひと段落したところ。友里さんのすきなブラックコーヒーを入れて、温かいものどうぞとおきまりのセリフと共に休憩をしていた、その時であった。
「やりたいこと…ですか…」
「そそ。聞いた話では学校の成績もいいみたいだし、こうやって手伝いをしてもらえばそつなくこなすどころかすごい優秀だから。将来なにするつもりなのか気になってさ」
「過大な評価な気がしますけど…」
やってることは言い方を変えれば雑用みたいなものだ。特別技能や技術が必要とするものではない。いわば誰だって出来ること。
評価されることは嬉しいことではあるけれど、それはすんなり頭には入ってこなかった。それ以上に頑張って、命を削って、人を助けている友人達を見ているからだろうか。
「そんなことないわよ!未来ちゃん要領いいし、何より周りがよく見えてるもの!ボランティアみたいな形で手伝ってもらってて正直勿体無いと思ってね」
「……はぁ」
響がシンフォギア装者となり、特異災害対策機動部ニ課に所属となった際、その実態を知ったということもあり私も協力者としてその内情を知らしてもらっていた。
一般の人と比べると優遇してもらっている自覚はある。ろくなことをしていないのに身内として扱ってもらっているのだ。
申し訳なさから誰でもこなせるような雑用の類は積極的にやらせてもらってはいるが、所詮はその程度。それは特異災害対策機動2課がS.O.N.Gに変わっても変わっていない。
「変な話だけど、スカウトみたいなものよ。将来、決まったことなかったらうちに来ない?この前司令や皆と話しててね、未来ちゃんが正式にうちに来ないかなーなんて話をしてたのよ!」
「あはは…、恐縮です」
「だってね!変な話だけど装者の皆は給料をもらってるわけじゃない?そりゃやってることと出来ることの希少性を考えたら当然だけど、それでも裏方が軽視されるいわれはないと思うの!私たちはそれなりにもらってるけど、未来ちゃんは本当にボランティア状態じゃない?もう私モヤモヤしちゃってさー!」
だからその旨を話したら皆ウチに来てもらえばいいじゃん!って話で落ち着いたのよ。なんて友里さんはウインクしながら私を見る。
いつの間にかヒートアップしている友里さんの心遣いは嬉しい。でもやりたくてやっていることだし、私の中では優遇してもらってる感謝と罪悪感からの贖罪から行なっていることなので、この行為にお金が発生してしまうのは少し思うところがある。
「魅力的なお話ではありますけど、そこまでしてもらうわけには…」
だって、忘れがちだがこのS.O.N.G、国連の組織である。国連、国連だよ。公務員の一環ではあるけどその機密性の高さはそんじょそこらの公務員とは比べものにならない。
いくら機密に携わっているとはいえ、どこぞとわからぬ馬の骨が入れるほど甘い組織ではないと思うだけど…。
「ええーっ!?未来ちゃん、一緒に働こうよー!…お金、結構もらえるわよ?」
「……友里さん、お酒でも飲みましたか?」
「ほらっ、この仕事って機密機密の嵐でしょ?正直機密に明るい未来ちゃんはこっちとしても誘いやすいのよ。それが優秀な人材となれば逃したくないわけっ!」
「根本的に、私まだ高2なんですけど…」
「なによっ、きりしらの二人はさらに一個下なんだから!問題ないわよ!」
それとこれとは問題が違うような…。
「だからね、将来やることあるのかって聞いてみたのよ。勿論、選択肢の一つぐらいで捉えてもらって全然構わないからさ」
「やりたいこと…ですか」
実はこっそり半年前ぐらいから、勉強をしていることがあるのだが友里さんに話すべきかな。
ああ、でもちょっと恥ずかしいというか、私がこんなこと考えるのはおこがましいかも…。
「ん?なーんかあるみたいね?どうどう、お姉さんに話してみない?未来ちゃんよりは経験豊富だからね、何かアドバイスもできちゃうかもしれないわよ?」
私の表情から読み取ったのか、友里さんはそんなことを私に言ってくれる。
装者達に目がいき忘れ勝ちだが、ここの人達は総じて優秀だ。それこそ私程度の隠し事なんかすぐバレてしまうぐらいには。
「その……誰にも言わないでもらえますか?特に、響とか装者のみんなには」
「もちろん!私口は堅い方なのよ?」
……藤尭さんから酒癖悪いって聞いたけど、果たしてどうなのかな?
「み~くちゃ~ん?」
「友里さん、表情から心読むの反則ですよ」
……しょうがないか。どのみち私が目指す場所がこのS.O.N.Gで必要とされるのか知りたくもあったから、いい機会なのかも。
「……その、私最近心理学を勉強してるんです」
「へー、心理学ねぇ。またリディアンで学ぶこととはベクトルが違うわね。なんでか聞いてもいいかしら?」
「ほ、本当に言わないでくださいねっ!?」
カァーっと顔か熱くなるのを感じる。うわ、私今絶対顔赤いよ。
「……S.O.N.Gでは装者の身体とギアのケアはエルフナインちゃんや技師や医療班の人達がいるじゃないですか?でもあんなに辛いことや責任を負って、毎日訓練して、非常時にはいつだって飛び出して…。そんな大変なことをしてるのに皆の心をケアしてあげる、癒してあげる人っていないじゃないですか?司令を初め、皆さん気にしてくださってるのはわかってるんです。でも、皆が戦ってるなかで、私が皆を助けられるのってこれぐらいしかなくて……」
「……未来ちゃん」
「まだまだ勉強中なんですけどね。たくさん勉強して、資格も取って、自信がついた時、友里さんにお願いするかもしれません。S.O.N.Gに入れてほしいって。……烏滸がましい、でしょうか?」
初めて晒した、戦えなくて無力な自分が辿り着いた皆を助けれる手段。頑張る皆を助けたい、でもそれと同じくらいに皆に置いていかれたくない、そんな気持ちだってある。
「……未来ちゃん」
友里はこちらをみて、私の名前を呼ぶだけだ。……さすがに傲慢すぎたかな、都合のいい時だけ頼らせてと言ってるのと同じだもんね。
「……なんて、なんて」
「……すいません、生意気言い」
「な゛ん゛でい゛い゛子゛ばん゛だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ひゃいっっ!?」
え!?泣いてるよ、友里さん!?あとすごい声でてるっ!私も変な声でたけど!
「みぐち゛ゃん!!」
「は、はいっ!!」
「応援ずるがらっ!わだしっ、まっでるがら!なんでも相談しで!?絶対ゾング入れるようにしどぐがらっ!」
「えっ!あの、えっと…、さすがに申し訳ない…」
「いいのっ!!未来ちゃん!なんでも頼ってくれていいからねっ!!私が、私が……、あーもー可愛いぃぃぃ!!」
「っいひゃああぁぁぁ!!」
その後友里さんにめちゃくちゃにされました。めちゃくちゃ謝られましたけど。
それからというものの、友里さんは私に勉強を教えてくれるようになった。私が目指す心理の学術レベルの高い大学は今の私では少し厳しいので頼ってみたところ、自作のテキストまで作ってくれるぐらい世話を焼いていただいている。
いつものお手伝いの謝礼と将来は私の心のケアもしてほしいから、その先行投資だとか。
また一つ、夢を諦めない理由が出来ました。