大天使未来ちゃん!   作:おぎそ

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だいぶ間が空いてしまいました…。仕事やら、飲み会やら、色々あったが所詮言い訳。俺の愛が足りなかった…それだけだ…!


小日向未来、出馬する

 

「ええええええっっ!!みく、学生会会長に立候補したのぉ!?」

 

「……響、声が大きい」

 

 

本日は装者達の任務はとりあえずなかったようで、皆で仲良く登校した。まぁ響達が出動するのはいわば八方ふさがりに陥った事態だけなので、仲良く登校などいつものことではあるのだけど。

 

切歌ちゃんが2時限目にある体育のダンスの授業が憂鬱だとか、クリスの進路をどうしようだとか。たわいない会話で通学路を終えた私たちは、別れてそれぞれの教室に向かった。

 

響が耳鳴りするぐらい大きい声を出したのは、ホームルームにて配られたプリントが原因である。

 

本日の臨時集会で行われる学生会選挙の立候補者紹介のプリントだ。デカデカと私の名前と所信表明が印刷されている。

 

「なんで、なんでなんでなんで!?私、聞いてないよ!?」

 

「言ってないからね」

 

「……なんで。ちょっとは相談くらいしてくれてもいいじゃん」

 

ブッスーと効果音が聞こえるぐらい、目に見えて拗ね始める響。机に突っ伏して唇を尖らせて。

 

装者の中でも切歌ちゃんと肩を並べて元気印。ちょっとおバカな言動が目立つ響だけど、実は色々とナイーブな部分も多いのも事実。

 

響自身、仕方ないとはいえ装者になりたての頃やルナアタックの時など私に隠し事をしたことに未だ罪悪感を感じているようで、こういったことには以前に比べると敏感になっているみたいである。

 

……拗ねてる響、可愛い。

 

「ごめんね、響。相談するようなことでもないかなって思ったの。事実、響どころか誰にも言ってないの。ほら?」

 

母性をくすぐる響を思わずナデナデして、クラスを見渡すように周囲を見る。響が大声で代弁したからこそ、皆何も言ってこないが驚いている人は多いと思う。

 

私自身、学生会会長なんて柄ではないと今でも言える。それに所信表明では学校のためになんて書かせてもらったけど、目的は非常に申し訳ないことに100%私情だ。本当に、卑しい女である。

 

ホームルームが終わり、一時限目が始まるわずかの間に予想通りではあるけど友人たちに囲まれた。なぜとか、知らなかったとか。

 

それの対応に追われ、結局響に何かを言うことはなかった。

 

 

──────

 

 

昼までの授業を消化し、お昼の時間となった。学生会選挙は放課後のため、いつも通りご飯を食べることとなる。未だに腑に落ちない表情を貼り付ける響だが、特に何も聞いてはこない。

 

その心遣いに内心頭を下げつつも、お弁当を開こうとした時だった。

 

「よぉ、小日向はいるか?」

 

「クリス?」

 

クリスが私のクラスを訪ねてきた。

 

クリス先輩だー!とクラスメイトがわちゃわちゃと騒ぐ。

 

こう思うと装者の皆は例外なく人気者だよなぁと思う。卒業してしまった翼さんは勿論、クリス、切調の二人、そして響。

 

そう、そうだ。響は人気者だった。今は勿論、中学の頃だって。

 

元気で活発で、笑顔が絶えなくて。人助けばっかりで、響に助けてもらった人は両の手では数えきれないほど。人の悪口を言わない響は誰からだって愛されていた。……あの事件が起こるまでは。

 

あの時思い知らされた。人の心は移ろいやすい。だから私は……。

 

「……おい、聞いてるか?」

 

「ひゃっ!?」

 

クリスの顔が目の前にあった。

 

「んだよ、そんな驚くほどじゃねぇだろ。人の話は聞いてないしよ。まぁいい、お前昼飯食ったか?」

 

「え?ま、まだだけど…」

 

「ちょうどいい、ツラ貸しな。弁当持ってきてもらってかまわねぇからよ」

 

屋上でいいだろ、と私の左手首を掴んで半ば連行するような形で引っ張っていく。

 

「え?ちょっとクリス?響は?」

 

「あ?あの馬鹿はいいんだよ。今日は他でもないお前に話があんだ。おい馬鹿、コイツ借りてくぞ」

 

口でそうは言ってるものの、有無を言わさぬ感じだ。響も困惑した様子でいってらっしゃーい?とか言ってるし。

 

結局グングンと引っ張られ、何を聞くまでもなく屋上に到着してしまう。他に人は見られず、手近なベンチに投げ捨てられるように座らされることとなった。……お尻が少し痛い。

 

あっちぃなぁおい。と言いながら袋からあんぱんを取り出すクリスはまるで意を介していないけど。

 

「……それで、何か話があるの?」

 

このクリスを見る感じ、何を言っても無駄だと思ったので話を先に進めることにする。

 

正直、全く想像ができない。ここに響もいるのならそれは装者特有の話になることは大方予想出来るのだけれど、私と一対一で話すようなことがクリスにはあるのだろうか?

 

「おう、お前学生会会長に立候補したみたいだな」

 

「知っての通りだけど…。それがどうかしたの?」

 

「なんで立候補した?」

 

少し、声のトーンが変わった気がした。

 

「……なんでって、それは」

 

「ああ、先に言っとくけど変な建前とかを聞きにきたわけじゃねぇからな」

 

皆みたいに頑張りたくて。そんな言葉は釘を刺されたように引っ込んだ。

 

私を見るクリスは真っ直ぐこっちを見ていて。照れ屋で3秒目を合わすと顔を赤らめるくせに、こういう時は心を覗くように紫の瞳が私を捉えて離さない。

 

何秒たったかはわからない。結局私はクリスに言うべき言葉が見つからなかった。

 

「……まぁいい。今から言うことはあくまで私の予想だ、話半分で聞いてくれりゃいい」

 

口を開かない私を見かねたのか、クリスは話し始める。

 

「あたしの知る小日向未来という人物は真面目で面倒見がよくて、何事もそつなくこなすタイプの人間だ。学生会会長だって問題なく全うするだろーさ。でも、なんだろうなぁ。なーんか違和感あんだよ。小日向未来ってのは学生会会長の地位を欲しがるような奴でもない、身内の世話焼きが大好きなお前がわざわざその時間を削ってまで、会長になって何を成すのか」

 

ジリジリと照らす太陽は私にもクリスにも容赦なく降り注ぐ。

 

いい天気だねというには、少し暑すぎる。この汗も暑さのせいだ、うんそれに違いない。

 

「なぁ、この立候補、あたしらのためか?」

 

「……なんで、そう思ったの?」

 

「消去法だ。世話焼く時間削ってまでやること。それが思いつかないからこれも世話焼きの一種なんじゃねぇかなって。それだけだ」

 

やれやれと言わんばかりに、私に見せつけるかのようにため息をつくクリスは心底呆れた表情だった。

 

あくまで予想だけどな。と言うけれど、どこか確信を得てるような。そんな雰囲気がある。事実間違いではないから何も言えない。

 

「ったく、お前といい、馬鹿といいこのコンビは救いようがない馬鹿だな」

 

「……響と同列…」

 

失敬な、私は響の保護者だ。響ほど元気でも馬鹿でも可愛くもない。だってそれを眺めるのが大好きなんだ、決して同列ということはない。

 

言うことは言ったとばかりに、クリスは手元のあんぱんを食べ始めた。何か言い返したいのはやまやまだけど、何を言ってもクリスの予想をより強固にする結果しか招きそうにない。

 

隠すようなことでもないつもりだったけど、こう面と向かって言われるとそうだよとは言いづらかった。

 

「まぁ、なんだ」

 

もぐもぐと口の中のあんぱんを牛乳流し込み、クリスは私を見た。

さっきまでの心を覗くような瞳ではなく、顔を赤らめたいつものクリスだった。すぐ目線をそらすんだ。

 

「あんま、気負いすぎんな。あたしら全員お前には感謝してんだ。いらねぇ迷惑かけてる自覚もある。だから、お前はお前の人生を生きろよ。私たちに縛られる必要はねぇ。少しぐらい、我儘に生きろよ」

 

それだけだ!っとクリスは早歩きで屋上を去っていく。

走り出さないのはせめてもの見栄なような気がして、少しニヤついてしまう。

 

「我儘に……か」

 

結局私はクリスに引っ張られて屋上に来たはいいが、お弁当を食べるどころか開くこともなかった。

でも、心の何処かで引っかかっていたものは取れたような気もした。

 

ありがとう、クリス。

 

 

──────

 

 

「それでは、会長に立候補した二年の小日向未来さん、所信表明のほどをよろしくお願いします」

 

「はい」

 

時は順当に流れて、選挙の時間となった。座ることなんてないと思っていた壇上の椅子に腰をかけ、ただいま名前を呼ばれた。

 

上からだと本当にみんなの顔がよく見える。

心配そうな目で見てる響、じーっと見てる調ちゃん、手を振ってくる切歌ちゃん、膝に肘を当てて頬杖をつくクリス。

 

「この度、学生会会長に立候補しました二年、小日向未来です」

 

 

──本当にみんなみんな大好きだ。

 

何度命を救ってもらったかわからない、何度心を支えてもらったかわからない。もらった想いは数えるのすら馬鹿らしくて、そんなみんなはいつだって私の憧れなんだ。

 

私がみんなに返せるものはほとんどない。それでも、烏滸がましいけど、私はみんなと肩を並べて歩きたい。一緒に未来を生きていきたい。

 

だから私は出来ることをするんだ。せめてみんなが安らげるような場所を。安心できる場所を守るため。

 

ごめんなさい、学校のみんな。私は私の目標のために会長という地位を目指しています。学校のためなんて嘘でも言えない完全な我儘が私を駆り立てています。

 

それでも、我儘に生きろと背中を押してくれた友達もいたから私は胸張って今この場に立てているんです。

 

 

──一人だけ生き延びたんだって

──ほんと、お金泥棒

──よく学校来れるよね

 

 

あんな思いを二度と親友に、友達にさせないように。

 

それでも笑っていた親友に、せめてもの安らぎの時間を過ごしてもらうために。

 

いつの日か、この日常を笑って振返れる思い出にしてもらうために。

 

 

「──以上です。ご静聴ありがとうございました」

 

拍手の中で私は頭を下げる。これは拍手へのお礼か、我儘の謝罪か。うまくまとまりはしなかったけど、想いを込めた一礼だった。

 

 

────

 

 

「ねぇ、クリスちゃん」

 

「あ?なんだ?」

 

「私、未来に隠し事されたとか、相談されなかったとか、色々思ってたけどなんかどーでもよくなってきちゃった」

 

「……ま、あんだけ熱の入った演説されちゃ何も言えねぇか」

 

 

────

 

 

他の立候補者は一人なので、私とその人の選挙ということとなる。選挙なんで仰々しいことを言うが、他の生徒に多数決をとるだけだ。

 

私は立候補者なので、投票権はなかった。いろんな人にすごかったとか、よかったとか、口々に褒めの言葉をいただけたところ手応えは悪くなさそう。

 

もちろん負ける気はないし、全力でやった。でも。

 

「みくぅー!!一緒に帰ろーっ!!」

 

なにより、大事なのは親友の笑顔を守ることだ。それは会長でも会長になれなくても、力を尽くせるから。

 




まだ3話とかなのに感想書いてくれた人がいて、すごい嬉しかったです(小並感)
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