For honor『始まりし9年戦争』 作:ペペロンチーノ伯爵
どうぞごゆるりとお楽しみ下さいな。
プロローグ・暁の狼
~夕暮れ~
ー『アッシュフェルド』ー
激しい爆音と共にぐらりと視界が歪む、投石機だ。
ホールデン・クロスが指揮する投石が天井に直撃して瓦礫が崩れ落ちて来る。
大きな物は避けたが数枚の避けきれなかった瓦礫を背に受けて怯む。
「ッッ……」
(奴は目の前だ……ここで止まるわけには行かぬ!)
左腰に差した長刀の峰をしっかりと握り締め、巻き上がる石粉塵に咳き込みながらも前へ前へと駆け出す。
やつ……そうアポリオンはもう目と鼻の先にいる、この先にいる。
「ぬぅ……アポリオン…!」
「ここまで追ってきたか……私の狼よ…」
「貴様を倒す……!」
これが奴との三度目の戦い、最後の戦い、これで終わる。
二人はアッシュフェルドの大橋が見下ろせる城のオープンベランダで向き合い、互いに構える。
アポリオンはまだ助力を残しているが、こちらはもう限界に近い。
神風は目の前で握り締める長刀の刃先で割るようにアポリオンを睨み付け、荒く不規則な呼吸を整える。
その集中力は深く、己の真横に落ちた投石にも動じず兵士達の絶叫や鼓舞笛の音は聞こえない。
だがそれはアポリオンも同じ、この場の空気に、空間だけにしか意識が行かないのだ。
ブラックストーン・リージョン
グランドマスター・ウォーデン
ー『アポリオン・ウルフパック』ー
「始めるか……狼よ」
暁の誇り高き侍
百人戦の大蛇
ー『神風』ー
「ゆくぞアポリオン、いざ……尋常に勝負…!」
アポリオンが数十メートル先にいるにも関わらず神風はゆっくり、ジリジリと擦り下駄を這わせてじっくり距離を詰める。
「意気込んでいたわりには……どうした狼よ?怯えているのか?」
「……………」
(油断すれば確実に殺られる……奴のペースに踊らされてはならぬ!)
「そうか……ならば私から行くぞ!」
刹那、アポリオンは素早い前ステップと共に両手に構えた凶悪なクレイモアを振り落として来た。
その力強い豪腕から振るわれた剣身を何とか受け止めたが反動が大きい、ビリビリと痺れるような感覚を腕に感じながらも何とかアポリオンから距離を取ろうとしたがそれに感づいたアポリオンは右足で俺の腹を蹴り上げ、クレイモアの柄で壁際に殴り飛ばされる。
「ぬっ……が…!!」
「さあ踊れ!」
間髪いれず繰り出される大振りは壁に当てられてよろける神風の背中を深く切り弾く。
そして振られる二撃目を激痛の中で見切り、右足を伸ばし左足を屈めて姿勢は地面スレスレまで低く、刀を右肩に添えてクレイモアの重々しい剣身を刃身で火花を散らしながら受け流す。
ー『ディフレクト』ー
「ッ……!!」
「ほう……!」
(ディフレクトか……見事だ)
受け流しながら姿勢を組み直し、左足の踵でアポリオンの足先を踏みつけて動きを制限した。
背中を向けて視線を塞ぎ、長刀を右腕の脇下に構えて渾身の力を入れる、狙いは急所。
脇差しに構える神風の腕、そして長刀の柄には常人には見ることの出来ない弧炎が纏わり憑いている。
これはアポリオンなどの一部のエースにしか見えぬ物であり、この弧炎を纏った攻撃は武器や盾を使った防御は不可能、やり過ごすかそれよりも強力な力で受け弾く(パリィ)しかない。
ー『迅雷』ー
「スゥゥゥッ!!死ねい!!」
「ッ……かふっ…!」
脇の下を通した長刀の鋭い刃身はアポリオンの腹部を貫き、腹部から背中にかけて深く貫通した。
兜の口角部から血を噴き出し、多少ばかり呻いたアポリオンは己の腹部から流れ出る血飛沫を見ながら兜の裏でニタニタと笑う。
「っ……フフフ、ハハハ!」
「…………!?」
(嗤った……?急所だぞ!?)
「流石だぞ……私の狼よ…」
自力で腹部から長刀を強引に抜き出し、クレイモアを横凪ぎに振るって神風を弾き飛ばした。
激しい目眩に晒されながらも体勢を建て直し、勢いづいたアポリオンの素早い上からの振り落としを躱して刀を左手に構えて素早く奴の脇腹を切り付け、柄を下から上に掛けて振り上げ、ガードを崩す。
そして華麗な身のこなしで背中を伝って背後に周り、逆にアポリオンを壁際に叩き付けてやった。
「喰らえ!!」
「グッ……フゥ!!」
壁にぶつけられた衝撃で怯んだ奴の肩肉を強力な振り落としで引き裂く。
更に細かく素早い連撃で次々とその身を切り刻む。
意識が回復したのかアポリオンも負けじと大きな踏み込みから身体を回転させて背後の壁を削りながらクレイモアを振り回して来たがペースは既に神風にあった。
「フン…………」
「ッッ…………!?」
クレイモアの剣先が触れそうなギリギリの距離まで瞬間的に滑るように下がった神風は刀を逆手持って腰の後ろで構え、左手を前に出して姿勢を低く保つ、その姿はまさに居合いの如く。
「陰流……躱せるか!」
「クッ……!」
速すぎる、ダメだ躱せない……。
振り回した右腕は避けられたことによる遠心力の重量的な負担がかかり、非常に大きな隙を生み出してしまった。
「……………………」
(流石は……私の狼だ…フハハ!)
「深く!切り捨てるのみ!!」
神風の刀身はアポリオンの右脇腹を切り開き、そのまま刀を掲げてアポリオンの身体を一文字に切り落とそうとしたその瞬間。
「さて………そろそろ遊びは終わりだ」
「…………?」
ー『クラッシングカウンターストライク』ー
刹那、いつの間にか侵略してきた激痛を己の左肩に感じた神風は出血が止まらない肩を押さえてふらりと怯みよろけてしまった。
「んぐっ!?……がはぁ……!!」
「ほら、さっきまでの覇気は何処へ行った?」
激痛で歪む視界の先に見えるアポリオンは左肩を突き出し、クレイモアを肩に添えて自分の身体を小さく丸めて尋常じゃない力を引き締める。
そしてその全身は迅雷に似た弧炎を纏っており、今にも破裂せんばかりに膨らんで行く。
「躱せるのか大蛇!!」
「ぬ……うぅ!!」
(無理だ……クソ……あれはまずい!)
ー『ショルダーバッシュ』ー
身体が一瞬浮かんだ、圧倒的な突進力で肩からタックルを入れてきたアポリオンに成す術もなく構えを完璧に崩され、気力は失われた。
ー『ウォーデンの怒り』ー
続けて振り落とされた渾身の一撃は躱せずに背中に受け、二撃目の切り込みも失った気力を貫通して神風の身体を振り斬る。
ー『守護者の襲撃』ー
さらに瞬間的な踏み込みからの高速の縦斬りは胸元を引き裂き、右横から繰り出されたかなり大振りの斬り下げにも反応出来ずただ切り捨てられるだけだった。
溢れる鮮血は黒ずみ、肝臓から滴る流血を感じながら神風は目を見開き、右回転に身体を回しながら刀を翻してアポリオンの腹を深く斬り付ける。
「かふっ!……それがどうしたというのだ!?」
「ッ…………まだ終わっておらぬ!」
震える両手で刀を握り締め、ふらつく足取りでアポリオンに構える。
正直、もはや神風は虫の息だった、この身体では大きく身を躱すことは出来ない。
出来るのは二つの動作のみ、脚を動かし、この刀を振るう事だけ……十分だ。
ー『勇ましき突破』ー
アポリオンは余裕の足取りで神風に近付き、最速の前ステップでクレイモアを肩から思い切り神風へと振り落とす。
「ッ……なんっ!?」
(まさか………!?)
ー『廻流』ー
「これが……最後だアポリオン!」
神風はアポリオンの攻撃を身を仰け反らせることで躱し、頭上に掲げた刀を渾身の力で引き落とし奴の胴体へ斬り込んだ。
「がっ……ふ…………あが……」
「ッ…………」
これで、終わった。
全ての元凶はこれでおわー
ー『リベンジタイム』ー
…………は?
「ウガァァァァァア!!!」
それは大きな穴だった、己の腹部を貫くソレは奴のクレイモアだった。
吐血し、全てを吐き出す。
アポリオンは全身に弧炎を纏い、まるで何事も無かったかのように深々と突き立てた神風の腹からクレイモアを引き抜いて肩から股関節に掛けて深く斬り込む。
「アア……私の……勝ちだ!」
処刑
ー『エクセキュー
その時、アポリオンは謎の衝撃波に弾かれた。
地面に投げ出され、重い耳鳴りに目を細めながら神風の方に視線を向ける。
神風の身体も自分と同じ弧炎を纏い、確かにそこに立っていた。
ー『リベンジタイム』ー
「来いアポリオン……引導を渡してやろう…」
二人は再び向き合い、お互いの限界を越えて睨み合う。
グランドマスター・ウォーデン
戦争を望む者
ー『アポリオン・ウルフパック』ー
「こい…真の狼よ、私を、戦争を殺してみろ」
百人戦の大蛇
暁を守る帝の守護者
ー『神風』ー
「お主を……討ち取る…………戦争を止める」
それが最後の戦いだと思っていた、己の命を捨ててでも……これで終わらせるつもりだったのだ。
だが……全てはアポリオンの思惑どうり…………我らは狼、戦争から……闘争からは逃れられなかった。
やばい、プロローグに3500字も使ってしまった……ま、まあテンションMAXですから?シカタナイネ!