For honor『始まりし9年戦争』 作:ペペロンチーノ伯爵
ガウル専用・戦技発動
レベル4
死の底へ落ちたはずの彼を急かし、暖かな光まで飛び上がらせようとする心臓にガウルは叩き起こされる。
「ウゥア……!…………っ?」
「本当に起きたのか…ウォーロード」
「だから私は言っただろう……?必ず起きてくると」
ここは……何処だ?
暖炉の暖かさを感じながら熊革が敷かれた床から目を覚まし、適切な処置が施された傷口に手を当てながら腰を上げる。
「……俺を……助けてくれたのか?」
目の前の木椅子に座っているヴァルキリー、すぐ隣の柱にもたれ掛かるハイランダーに視線を向ける。
「助けたのは私達だが……」
「ここまで運んできたのは俺達じゃない」
「なら誰が……?」
ハイランダーは柱から離れ、酒樽から酒を波々に汲んでガウルに手渡す。
「行けるだろウォーロード」
「あぁ……すまん」
「お前をここに運んできたのは……黒い甲冑の大蛇だ」
「…………大蛇?あのアポリオンを殺したー」
「そいつじゃない」
ガウルの隣で一緒に酒を飲み始めたヴァルキリーが言葉を遮った。
「お前、黒い深淵の伝承は知ってるだろう?」
「黒い深淵……まさか、噂ばかりだと……」
「俺達も昼まではそう思っていたよ」
そう言われれば、もう夕時になっている。
自分はかなりの時間眠っていたのだろう。
「待てよ、昼までと言ったか?ならその大蛇は俺を夜明け前からここまで運んでいたのか…?」
「どうだろうな、特に疲弊した様子は無かったぞ、刀には血の痕が付いていたが、何とも言えないな」
「奴は何か言っていたか?」
「ああ……『こやつはまだ、ここに来るべきではない』とか言ってたな」
「…………」
どういう意味だ?いや、それよりも気になるのは。
「もしも奴が伝承通りの大蛇なら……なぜお前達は奴を襲わなかった?」
黒い深淵の伝承、伝承の中に現れる大蛇の首を取った者には絶対的な力と絶えぬ生命が与えられると記されている。
ヴァイキングの民でこの伝承を信じる者は皆、血眼になって伝承の大蛇を探しているはずだ、力と生命を得るために。
「答えは単純だウォーロード」
「勝てないからだ」
「……なんだと?」
われわれ蛮族、ヴァイキングの口から最も出てきてはならない言葉が、さも当たり前のように飛び出てきた。
「それは……一体どういう事だ?」
「かつて、アポリオンが起こした生存競争の中で革命を起こしたレイダーとその仲間達がいた」
「アポリオンが殺されたあと、彼らは黒い深淵の大蛇を狩りに向かい、発見されて戻ってきたのは首だけだと言われている」
「実際に見て感じ、分かった。あの大蛇は何か、常人離れした異常な何かを身に纏っている、あれを前にして武器を向けられる者はいないだろう、少なくとも私達は無理だった」
ガウルは暫く沈黙し、手に持つ酒を飲み干す。
「ウォーロード、名前は?」
「……ガウルだ」
「そうか、俺はジルアード、ハイランダーだ」
「私はクシナ、見ての通りのヴァルキリー」
お互いの自己紹介が終わったところで、ジルアードがガウルに疑問をぶつけた。
「ガウルよ、何故おまえはあんな傷だらけで運ばれたか分かるのか?」
「……あぁ……造船所の船に乗っていたあのクソッタレのロウブリンガーにやられた……」
「造船所……あそこに一人で行ったのか!?仲間は?」
「……皆、その前の処理堀に捨てられた、俺だけが生き残った……」
「造船所のロウブリンガー……指揮官の『カーク』の事だな」
「知ってるのかクシナ?」
クシナは呑み終えたジョッキを置き、木椅子に座ってから再び話し始める。
「知ってるさ、私とジルアードは奴に故郷を焼かれたのだから」
「…………そうだな」
「そうか、俺の故郷も奴らに燃やされた、妻のニーナも奪われた……許せねぇ……」
「……ならガウル」
怒りに震えるガウルの肩をジルアードが掴む。
「俺らと手を組もう、明日、俺とクシナはナイトの補給拠点を襲撃するつもりだ」
「襲撃……他の部族は?」
「ダメだ、他の部族達は村を焼かれる前にナイトに降伏した、もう逆らう意思をもった部族はいないだろう」
「……ならば目を覚まさせてやればいい!補給拠点のナイト共の首を晒し上げれば他の奴等も立ち上がってくれる!」
「そう、その通りだガウル、だから俺達三人でやるぞ、この廃家もそろそろ用済みだ、新しい家が欲しかったからな」
「敵は決して少なくない、雑魚以外にエースらもいる可能性がある」
それでも構わない。
ガウルは暖炉の横に立て掛けてあった剣と盾を手に取り、剣の柄で盾を殴る。
「やってやろう……この怒りはカークを殺すまで鎮まらない、豚の餌にしてやる!!」
今まさに、小さくも確実なる革命が新たに起ころうとしている時『彼ら』は既にその先へと向かっていた。
~???~
「……全ては順調だ」
男は二本の斧の刃に砥石を滑り込ませながらボソリと呟いた。
「私達の計画は、次の段階に進む……あのナイトのロウブリンガー、断罪王といったか?なかなか面白い眼をしていた……」
女は打ち台に乗せた盾の表面に左手を滑らせながら歩く。
「そうか、まだそんな戦士がいたとはな……火の国はどうだ?」
「これから、帝を襲撃にするための偵察に荒武者と野武士を送った、ワシは遅れて行くことにする」
身の丈程あろう長刀を掲げ、肩に担ぎながらその者は去っていった。
「…………だが、我々の計画を完成させるには、最後の障害が立ちはだかる可能性が高い」
「ふぅむ……深淵に堕ちた者か」
彼はまだ暖かい死体から刀を引き抜き、その香りに振り替える。
「……………………神風…………」
濃厚で、まるで乱暴に混合して塗りたくられたように
足元に転がるコンカラーの残骸を踏み越え、まだ命ある者へ足先を向ける。
「………………………………」
彼の目の前には、愚かにも力に溺れ、更なる愚者へと向かう者達が居た。
「………………………………」
刀を握り締め、ユラリ、ユラリ、ユラリと深淵は輝ける生命を狩り尽くすために歩く。
「………………………………」
ー限界を超え、更なる力を求め正気失った英雄達ー
ー深淵に愛され、絶頂に見魅られた死者ー