For honor『始まりし9年戦争』   作:ペペロンチーノ伯爵

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第二話『導くこと』

「…………ここがあの野武士の村か……」

 

神風は一人、影岬(かげまる)が占領している村を木陰から偵察していた。

村の規模は小さかったが、その大半は焼き払われ、残った幾つかの民家や小屋を根城にしているのだろう、その中から血塗れの民が駆け出して来た。

 

「女か……逃げようとしているようだが……」

(あれではなぁ……)

 

女は後から追ってきた影岬の雑兵三人にあっさりと捕まってしまった。

そして雑兵は女の服を破き捨て、その場で押さえつけて犯し始める。

 

「……なるほど、では行こう」

 

神風はその光景から視線を外し、林を駆け降り、ススキの群れを通り抜けて焼け焦げた民家の外壁に背中を預けて周囲を警戒する。

 

「……よし、さぁ次にー」

 

 

ゴトッ!

 

 

「ッ……!?」

 

身を隠していた民家から離れようとした瞬間、瓦礫の山となっている民家の中から崩れ去る音が鳴った。

素早く刀を抜き、注意深く民家の中を見てみると、どうやらただ単に積まれていた瓦礫がずれただけのようだ。

 

「…………いや、何かおかしいぞ」

 

どうにもおかしい、山になっている瓦礫に不均衡さは無く、厳選されたかの様に長さや厚さが均一の廃材がキレイに重なっている。

 

「…………もしや……?」

 

刀を右手に握り、気配を殺し音を立てず、ゆっくりと慎重に瓦礫まで近付

そしてある程度間合いに入った瞬間に神風は瓦礫の支柱を蹴り上げて瓦礫の中に見えた一瞬の人影、その者の首筋に刀身を差し込む。

 

「ひっ……!」

 

「…………む?何者だ?」

 

神風が声を掛けてから数秒間の沈黙が続き、刀の冷たい刃が沈黙者の首筋に沈み込もうとした時。

 

「やっ、まって……どうか……!」

 

「拙者はお主が何者かを問うたのだ、貴様の命はその後に決める、たった数秒でも会話をした方が死なずに済むぞ?」

 

声の主は女だった、瓦礫の隙間から見える白い首筋の上、その唇は酷く荒れており、上唇の端は大きく割れて灰色がかっていた。

 

「私の名前は……『峯月(みねづき)』です……『彩月(さつき)姉様』と……暮らしていました…………」

 

「峯月……ふむ、峯月よ。お主の姉は野武士か?」

 

「ッ!。彩月姉様に会ったのですか!?」

 

どうやら彼女があの野武士の妹らしい、それは間違いない。

 

「ああ……彼女からお主の存在は聞いている。妹がいるとな。今はこの近くにある井戸小屋で待っている」

 

「そうなのですか……分かりました」

 

そう言うと彼女は手元にあるのか何らかの棒で瓦礫を押し出して姿を現した。

 

峯月。

頭の後ろで長い銀髪を白い半月の髪飾りで結び、その顔は煤や埃で汚れてはいるものの化粧で化ける必要がないほど美しく、整っていた。

身に羽織った白豹と狐色の半月の模様が描かれた絹羽は確りと腰の帯できつく結ばれており、隅々に黒ずみや裂傷が目立つ。

 

「その絹羽……お主も野武士か……?」

 

「はい……ですが私は姉様がいなければ何も出来ない無力な雑兵に過ぎません」

 

「ふむ…………」

 

確かに、この者から覇気や強者たる気配を感じない、野武士であることは確かだがまともに戦えないだろう。

だが、神風は見逃さなかった、彼女の裾に隠れる寸前に見えた両腕に無数の古い斬り傷や打撲痕を。

 

(あの傷は確実に戦場で出来たもの、この者は一体……)

「まぁいい、すぐに此処から離れることだ、拙者はまだ用事がある」

 

「あの……貴方様はもしかして…………?」

 

「皆まで言うな、気付いたのならそれで留めておけ、口には出すな」

 

「は、はい…」

 

神風は刀を持ち直し、峯月を後ろに民家から外に出た刹那。

 

「むッ!!」

 

「ッッ!?!?」

 

視界の死角から高速で襲ってきたソレは鎖鎌、鋭利な裂刃が神風の頬を掠める、突如の事に困惑するのも束の間、四枚刃の手裏剣が飛来してくる。

手裏剣を刀の鍔で弾き落とし、攻撃された方向に向けて構えた。

 

(鎖鎌に…手裏剣…どれも忍が使う武具だな、つまり……)

「…………影岬か」

 

問い掛けた先から返事は無い、武器を持たぬ峯月を庇いながら周囲を警戒し、退こうとしたその時。

いつの間にか民家の中に忍び込んでいた影岬が鎖鎌を振りかざして神風の背後から襲いかかる。

 

「なッ!?守護者さまッー」

 

「もらったッ……! 」

 

「……………」

 

「ッ!!」

 

 

ー『ディフレクト』ー

 

 

影岬の攻撃を振り向き様にディフレクトで受け流し、背中を向けて逆手に構えた刀に力を振り絞って迅雷を放った。

脇から突き出された刃が影岬に命中する事は無く、影岬は素早いバク転で迅雷から逃れる。

 

「……危ないところだったぞ…神風」

 

「影岬……誇りを捨てたか?」

 

神風の問いを影岬は鼻で笑い飛ばす。

 

「誇りだと……?忍である俺に誇りを問うか神風?」

 

「拙者が聞いているのは忍としての誇りではない……なぜあのような輩どもを率いている?なぜ村を焼き、無実な民を殺す?刀千はお前を信じていた」

 

「刀千か、フン……主は同じであれ、志は俺と全くの正反対。それに既に死んだ者に何を思えと?そもそも、俺がこうなった原因は……」

 

影岬は鎖鎌を強く、より強く握りしめ、歯軋りを立てながら神風を指差す。

 

「貴様だ神風ぇ!!!」

 

「ッ……」

 

右手にある鎖鎌を手首で振り回し、身体を捻って神風の左肩に向けて投げつける。

神風は高速で飛ばされた鎖鎌を弾き返し、すぐさま距離を詰めて影岬に刀を振りかざす。

 

(ッ……フェイントか!)

 

振りかざした刀身を素早く構え直してフェイントを掛けた瞬間に次の攻撃を繰り出し、それも攻撃動作をフェイントして影岬の反撃を誘う。

 

 

ー『陰流』ー

 

 

フェイントざまに距離を離して陰流の構えを取る。

だが影岬は神風のムーブを潰そうとダブルステップで近付き、強烈な前蹴りを放つ。

影岬の前蹴りを寸で躱し、鍔で背中を押し殴り互いに距離を再び取って構え合う。

 

 

野党の長

道を棄てた忍

ー『影岬』ー

 

 

「貴様は帝の守護者でありながら、俺達を救わずに見棄てた!誇りを捨てたのは貴様だ神風」

 

 

導き手

帝の守護者・大蛇

ー『神風』ー

 

 

「救う……?お前は何かを勘違いしているな影岬」

 

 

神風は刀を構え、ゆっくりと深呼吸してから影岬に向き直す。

 

影岬は両手の鎖鎌に毒液を塗り込み、振り回しながら神風との間合いを見計らう。

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