For honor『始まりし9年戦争』 作:ペペロンチーノ伯爵
「…………ッ!!」
睨み合う二人から距離を取り、草木に隠れて様子を伺っていた峯月は、ある周囲の異変に気が付いた。
「守護者様!!周りを見てください!!!」
その異変を神風に伝えようと口を開いた時には既に、異変は神風を襲っていた。
民家の裏や陰、影岬の後ろから同時に伏兵が飛び出してくる。
伏兵には野党に混じって大蛇や野武士、剣聖までもが確認できた。
「分かっておる……!」
峯月の声に反応するよりも速く、神風は背後から斬り付けようとしてくる大蛇の攻撃を廻流で躱し、カウンターの一撃を喰らわせる。
だがすぐに神風はこの敵達がいつものような雑魚とは違う事に気が付く。
(……こやつら、息が合っている……反撃する隙を見せん)
敵は互いの攻撃のタイミングを理解しており、相方の邪魔にならないように攻撃を編み込んでくる。
故に神風は反撃に移れず、防御するしかない。
「っ…………だが……隙が無いなら……作ればよい」
防御していく中で神風は少しずつ、少しずつ準備を整える、そして遂に、右側から刺し込んで来た野武士の突きを見切り、パリィで弾き返す。
すると背後の剣聖が野武士への攻撃を阻止しようと大振りの振り落としを繰り出してくる。
ー『ディフレクト』ー
影岬にしてやったように、振り返りざまに攻撃を受け流し、剣聖に背を向けて逆手に刀を構える。
ー『迅雷』ー
「スゥゥゥゥゥ……!」
大きく息を吸い込み、いざ突き刺すその刹那、神風は腰を捻って迅雷の標的を大蛇に切り替えて刀を刺し込む。
「ゴッ……カヒュ……ッ!?」
「逃がさん…!」
あまりの出来事に距離を離そうとステップを踏んだ大蛇のガードを崩し、左肩から一文字に深く斬り込む。
「まずは一人……」
大蛇から刀を抜き、回避行動を取りながら次々と群れてくる雑兵を斬り殺して『戦技』を解放する。
戦技
レベル1
『森の呼吸』
森の呼吸、それは己の呼吸と興奮を自然の清流に染め流す彼が極めた戦技の一つである。
刀を振り返し、敵の攻撃を防御し、弾けば弾くほど神風の気力は回復し、一歩後ろに引いたときには既に気力は全回復しているだろう。
防御、そして回避行動により気力が回復していく神風の動きは止まらず、息一つ切れず、刀は舞い続ける。
「……ふんっ!」
雑兵を蹴散らし、剣聖の兜割りをパリィで弾き、それに合わせる野武士の攻撃を躱してその腹を切り裂く。
そして野武士が怯む間に神風は陰流の構えを取り、永遠と群がる雑兵の中でふんぞり返っている影岬を狙って駆け出す。
ー『陰流(上)スタンス』ー
影岬が陰流の間合いに入った瞬間、神風は身体をフワリと空中に放って靡かせ、空中で身を回転させながら刀を振り落とす。
この陰流(上)スタンスは、陰流を躱そうと回避行動をとった相手を追跡し、その回避技を逆に刈り取るための技だ。
(影岬ならば普通の陰流は躱されてしまうだろう……ならばそれを逆手に取るまでだ)
ーだが、影岬は神風のさらにその先を見ていた。
ー『ディフレクト』ー
「ッッー!」
「甘い!!」
鎖鎌の逆刃で陰流を受け流され、薄い煙幕で消えたと同時に神風の脇腹を裂き、背後に回られたすれ際で背中を斬り付けられる。
「ぬぅ……!」
裂かれた脇腹や斬られた背中の傷から流れ出る血は全く止まらない、これは影岬が事前に塗布していた毒液の効果だろうか、普通ならば固まるはずの出血が異常に流れ続けている。
「お前の動きは手に取るように分かる、腐れ縁とは言え、共に戦い、修行した仲だからか……」
「っ……」
脇腹の裂傷を手で押さえつけながら神風は自分を瞬く間に取り囲んだ敵達を睨み付ける。
影岬は既に遠く距離を取っており、陰流が届くギリギリの位置を保っていた。
「なるほど……そうか…………ならばそろそろ……」
「……?」
本気で行かねばならぬな。
神風は目の前の剣聖と左手前の野武士に視線を流し、直立したまま刀を逆手に持ち直す。
ー『影纏い』ー
刹那、神風が繰り出した高速の斬り上げを剣聖は俊敏な動きと反射神経で防御し、反撃に出ようと野太刀を振り上げた時、剣聖の左肩に謎の斬り込みが入り、血飛沫が舞った。
「ッー!?!?」
「なんだ!?」
「スゥー……フッ」
理解する間も与えず斬りかかる神風の攻撃を、剣聖は確かに防御し、弾き返しているはず。
だがその度に別の箇所が切り裂かれる。
その様子を見ていた影岬はあることに気が付いた、神風の刃が野太刀の刃身に触れた瞬間に剣聖の身体が斬られていることに。
(一体どういう事だ……?何が起きて……)
遠目からではそれしか分からないが、野武士はどうだろうか、先程から微動だにしない彼女は気付いていた、気付いた上で攻撃しない、いや、攻撃できないのだ。
「ッッ……」
(ダメだ……私にはどうすることも出来ない…!)
防御しているはずの剣聖が一方的に斬られ続ける原理は非常に単純だが、実際に習得するのは神業に近い事である。
影纏い。
己の刃が敵の武器と触れ合い、弾かれたその瞬間、弾き返される力と勢い、そして脱力を全身に回して身体を捻り、最速の一閃を相手へと斬り込む不可視のカウンター技。
最速で繰り出される故に生み出された残像が神風の装備の色合いと合わさり、まるで神風の足元に広がる影からもう一人の大蛇が現れて斬られたかのように錯覚するのだ。
この影纏いは標的を途中で変えることも可能であり、野武士が攻撃出来ない理由はここにあった。
剣聖の攻撃を影纏いでカウンターした瞬間には既に神風は野武士を睨んでおり、いつでも攻撃する準備を整えている。
「ッ……!」
そして気が付いた時には既に剣聖は膝から崩れ落ち、倒れぬまま絶命していた。
その光景はあまりにも無惨で、ズタズタに引き裂かれた腕や千切かかった右足、切り開かれた喉は周りの雑兵の戦意を喪失させるには十分過ぎる光景だ。
「神風……貴様…………」
「他の者は動けんようだが……?」
「図に乗るな……それっ」
影岬は顎で神風の背後を差す。
振り返ると、そこには草影に隠れていたはずの峯月が影岬の守護鬼に捕らわれていた。
「峯月……!」
「ッ、申し訳ありません……足手まといを……」
「この者がどうなっても良いのか?さるときは武器を置け神風」
否、神風は武器を捨てなかった、視線を守護鬼に向けながら苦難を空中に投げ飛ばし、皆の視線を一瞬奪ってから素早く影岬のへと一直線に駆け出して刀を振り抜く。
「なんッ……クッ!」
「貴様を野放しには出来ぬ!」
「見捨てると言うのか…やはり貴様は……ふんっ、その女を殺してしまえ!!」
影岬は守護鬼に命令し、神風の攻撃を躱す。
刀を振り、影岬を斬ろうと進む神風は後ろを全く気にしなかった。
だが峯月の事を見捨てた訳ではない。
「…………ゴフ……お前……いつかッー……」
「ッ……なんだと!?」
「……間に合ったか」
峯月の首が守護鬼にへし折られる寸前、守護鬼の左腕が斬り飛ばされ、喉仏を薙刀の刃が貫いた。
「あ……姉様!」
倒れる守護鬼の横から現れたのは神風に雑兵の全滅を依頼した野武士、彩月だった。
「何かあればと思い駆けてみて正解でした、怪我はない峯月?」
「はい、私は大丈夫です。それよりもあの御方を!」
指差す峯月に彩月は首を横に振る。
彩月が視線を向けたのは周りの雑兵とそれに紛れる野武士や大蛇だ、影岬の渇に押されて勢いを取り戻しつつある彼等を野放しにしておくのは危険過ぎる。
「峯月っ」
「はい!」
「いつものように、二人でやりますよ」
「分かりました、姉様」
峯月は彩月の横に立った途端に顔付きが鋭くなり、立ち姿は野武士のそれだった、二人は互いに手の甲を合わせて一緒に雑兵の群衆へと突撃していった。
「む……?」
(何をするつもりだ?彩月の実力は見ただけで確かだと分かるが、峯月……彼女は戦えるのか?武器を持たぬ彼女が?彩月の足を引っ張るだけだぞ……)
「神風、お前あのもう一人の野武士が潜んでいたのを知って俺を狙ってきたな…?」
「んぅ…?ああ、その通り。拙者は始めから気付いていた」
「小癪な真似を…!」
「忍に言われてはおしまいだ」
神風と影岬がつばぜり合いを起こしているのを他所に、姉妹は敵衆の注意を引く。
姉妹の眼前に向かって歩いてきた大蛇の標的は武器を持たぬ峯月。
だがすぐにそんな安易な考えは斬り裂かれた。
刀を翻し、峯月へと斬り進んで来た大蛇は、瞬きの瞬間に峯月の隣にいた彩月の姿が消えた事に気が付き、こと切れてしまった。
大蛇の下半身を残して上半身が切り落とされる。
いつの間にか後ろに立っていた彩月が横薙ぎに切り捨て、蹴り飛ばしたのだ。
満ちた月の姉妹
双体の野武士
ー『
「行きますよ峯月?」
「はい、彩月姉様」
姉妹は異様な技を使う、いや、あれは技と言えるのだろうか。
彩月が峯月に薙刀を手渡し、正面の野武士に斬りかかる次の時、薙刀は峯月の手の中で回転して一切の無駄なくスルリと野武士の横に回った彩月に手渡された。
「斬る……!」
薙刀を大きく振りかぶり、野武士が振り向く寸前まで振るう力を止めなかったが、気が付けば既に彩月は薙刀を手放し、峯月が薙刀を受け取っていた。
「飛べ……!」
峯月が振るう薙刀は素早く、野武士は防御体制すら取れずに斬り飛ばされた。
「あの異様な技は一体なんだ……?野武士の技ではないぞ?」
「余所見とは舐められたものだ……神風!!」
「む……!」
二人の動きに見魅っていた神風は懐に入ってきた影岬に視線を向ける。
「影岬……」
「…………?」
神風の腹を引き裂こうと影岬の刃が肌に触れた瞬間。
影岬の視界から神風が消える。
…………お主では拙者は倒せぬ…………
ー『黒輝りの神風』ー
刹那、この暖かい季節に合わない冷たい風が影岬の全身を包む。
そして同時に、影岬の左腕が宙を舞った。
ー『軌跡』ー
目を見開き、放心したまま左腕を見つめる影岬は背後の神風に気付かなかった。
振りかぶる神風の刃は弧炎を纏い、上下左右、縦横無尽に影岬を滅多斬り、最後に残った右腕を斬り弾く。
「お前は拙者が見捨てたと言っていたが……拙者の役目は導く事だけだ……」
「…………ッ……アァ……」
影岬は後ろを振り返りながら地面に倒れ込む。
「オレ……は……カフ……貴様を………ウ…ァ…………っ」
絶命し、仰向けのまま天空を眺める影岬の横にしゃがみ、神風はその目をそっと閉じてやる。
「悲痛を叫び、苦しみながら死ぬ必要はない……」
立ち上がって影岬に背を向け、刀の血を払って左手に納刀する。
神風が彩月達の方を見ると、既に戦いは終わっていた。
「守護者さま……ご無事で」
「……守護者は止めろ、名で呼べ」
「……神風さま」
村の野党は全て死んだか逃げた………だが村は救われなかった。
騒動が起きた時に残っていた野党が生き残った村人を全員殺したのだ。
「……拙者は行かなくては。亜由様が待っておる」
一ヶ所に集められて惨殺された村人の山を呆然と眺める二人を横目に、神風は踵を返して村を離れようとしたが、その手を彩月が握る。
「……なんだ?」
「神風…殿……村が……私達の……里が……」
声が震えている、きっと泣いているのだろう。
「……それがどうした?」
「ここの……山菜売りの夜嶺は時々………採れたてだと言って………無償で芋を譲ってくれて…………」
「……………」
「酒造屋の富士は……毎日のように……私達姉妹にどぶろくを造って……それで………」
「………………」
「母上は…………母上は…………村の皆守りなさいと…………私達に……ずっと……ずっと…………それなのに…………」
遂に峯月は崩れ落ち、親しかった者の名を呼びながら泣き叫び、彩月は背中を見せる神風の右腕を両手で握り締めながら啜り泣く声を大きくさせる。
「守れなかった……救えなかった…………村を守ってくれて……ありがとうと……言ってくれた童子達も……村のみなも……恩返し…………したくて…………わたし……」
「…………………」
「もう……どうしていいか…………これから何を生き甲斐にして……生きていけば……いいのか…………分からない……もう…………死んでしまっても……」
「ならば死ねばいいだろう」
「っ…………!」
神風は彩月の手を払い除ける。
「全てを失い、奪われたから死にたいのだろう?ならば好きに死ぬがいい、お前の思うがままに、勝手に死ね。妹と一緒に心中でもするか?泣きながらその命を散らせるがいい」
「………………っ」
彼の冷酷な言葉は彩月の折れ掛けた心を完全にへし折った。
「この世には常に死が蔓延している。それに堪えられないと言うなら止めはしない、拙者は誰も救わぬ、俺は……お前を助けない」
神風は一切振り返る事欠く、彩月と峯月を置いてその場を後にする。
そんな神風の背中を見送っていた峯月は涙を拭い、ボソリと呟いた。
「神風様…………帝の守護者…………貴方は……何を見てきたのですか……」
神風専用
ー戦技・ムーブセットの紹介ー
戦技
レベル1
『森の呼吸』
敵プレイヤーの攻撃を防御、パリィ、回避、ディフレクトした際にスタミナを20%即座に回復させる。
尚、消耗状態または異常状態では回復しない。
スタンス
ー『影纏い』ー(無限チェーン)
敵プレイヤーに弱攻撃を防御されたと同時に同方向以外に防御スタンスを向けることで素早く弱攻撃を繰り返す事が可能。フィニッシュムーブは『阻止不能上強攻撃(キャンセル不能)』12ダメージ固定。(F15)
ー『黒輝りの神風』ー
敵プレイヤーの攻撃に合わせて範囲攻撃を使用することで発動可能、敵プレイヤーから受けるダメージを50%軽減させて残り50%をダメージとして反映し、軽減した50%のダメージを敵プレイヤーに反射させる。
尚、元の攻撃力は10ダメージであり、阻止不能攻撃にも発動可能。(F5)
ムーブセット
ー『軌跡』ー(無限チェーン)
どのチェーンからも発動可能、阻止不能強攻撃を同方向以外であればスタミナの限り何度でも攻撃し続ける。
キャンセル可能(キャンセル後発動可能)、25ダメージ、(F18)