異世界に侍よ、来たれり!   作:マシンクーガー

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第一話:森の主

深く美しい森の中、光は周辺を漂う人魂らしき発光体に目をやる。

 

「この森にも人魂がウヨウヨいるとは……でも、何か違う。」

 

光はスカウターで浮遊している発光体を調べる。

 

 

LV:4【ウィンドスプライト】

 

HP:14

 

オケアノスの生命エネルギーである「マナ」が濃い場所に、自然に生じる存在。これを生命と呼ぶべきか否かについては、識者の間でも見解が分かれている。「(ファイア)」「(ウォーター)」「(ウィンド)」「(アース)」「(ライトニング)」「(アイス)」のそれぞれの属性に分かれていおり、対象者に攻撃や、支援、属性付与をする事も出来る。

 

 

スカウターに表示されている名前や特徴を知る事に、光は真剣に考える。

 

「このスプライトと言うのは拙者の様な有機生命体に効果付与も与えられるのか。だとすると、これからの戦闘で危機的状況になったらこのスプライトの支援を使うことになる。さらに攻撃魔法時に威力も増す……便利だな。」

 

光が感心していると、スプライト達に異変が起きる。風邪を巻き起こしたり、水を噴き出したり、雷撃を放っていた。

 

「これは……怒っているのか?だが何故?」

 

光はスカウターでスプライトのステータスを確認する。スプライトの名前の横に[怒り]と言う状態が追加されており、光は考える。

 

「怒り……ここまで、怒るとなると……?」

 

その時、森の奥から叫び声と唸り声が響く。

 

「この声……」

 

光は自身のスキルである[聴覚]を発動し、周囲の声を見聞する。

 

《取り押さえろ!》

 

《そっちへ誘導させるんだ!》

 

《覚悟しろ!主さんがよ!!》

 

声の主は複数もいて、一人の男性の言葉に“主”と言う言葉に疑問を抱く。

 

「(主……と言うことはこの“森の主”となると、さっきのスプライトが怒ったのはその主が倒されそうになっていると……待てよ!?)」

 

光はある事に気がつく。森の主となると、このスプライト達はどうなる?主を失った森や動物達は?……つまり、主が生け捕りや討伐になった場合、この美しき北の森の生命エネルギーは失われ、木々や花々が枯れ、水は干上がり、生き物は死に至る。かつて旧世の主君であり冷酷かつな織田信長様なら、静かに見守っているだろう…。だとすると、彼らの目的は……良くある神の如く獣の力を使った“何か”と言う事になる。

光は急いで声のする方へと向かう。

 

 

まさにその頃、光が向かっている矢先にある小さな湖 複数の兵隊や魔術師達がある森の主こと《神獣》を生け捕りしようとしていた。白く体毛で覆われた巨躯、逞しい四肢、二つの蹄、天まで螺旋状に捻れた巨角を持つ巨大な大鹿が暴れまわっていた。

北の森の主である大鹿【聖なる大鹿(セイントエルク)】は生け捕りしようとするエリシュオン王国との対立している大国家【ケントュリア帝国】の兵隊に囲まれていた。

 

「手こずらせやがって!」

 

「狙うのは本体そのものだ!雷撃魔法と睡眠魔法を使え!」

 

帝国魔術師部隊は後方に待機していた奴隷達に命令する。

 

「オラァッ!!とっとと強化魔法を付与しろ!!」

 

こき使われている奴隷の殆どが魔力に強い若い男女の人間族や森妖精族(エルフ)の女性達ばかりであった。奴隷達は苦痛を味わいながら、帝国魔術師達に強化魔法を発動する。強化魔法により、[状態異常効果]、[魔法攻撃力増強]、[物理防御増強]、[雷属性強化]が付与された。帝国魔術師達は雷魔法を放つ。

 

「ライトニンググローブ!!」

 

「トールハンマー!」

 

「ライトニングバースト!」

 

電気の球、雷神の鉄槌、巨大な雷がセイントエルクに降りかかったその時、森から光が瞬足スキルで飛び出し、マジックバッグから「天照 兜」、「面具」、「天照 胴」、「天照 板袖」、「天照 筒籠手」、「天照 板佩楯」、「天照 脛当」、“愛刀 時雨”を装備し、セイントエルクの前に立つ。さらに、強化魔法[絶対結界 LV:9]、[魔法防御力:LV10]、[肉体強化]、そして……。

 

「“凰雅新陰流 紅時雨”!!」

 

光は放ってきた雷属性魔法の攻撃を愛刀 時雨を大きく振り払い、雷魔法の電気を紅時雨の花弁に変えた。

 

「何だ!?」

 

帝国兵や帝国魔術師達も目を疑う。極大魔法の三つである雷魔法が全て、美しき花弁へと変わった事に。舞い落ちる紅時雨の花弁、水面に立つ光は愛刀を構え、セイントエルクを守ろうとする。

 

「貴様!何者だ!?」

 

「……名乗るほどでもない、只の“武士”でござる。」

 

「武士?……まぁ良い、貴様には我々の捕獲任務を邪魔をした。ケントュリア帝国憲法第6条“任務に阻害するものは直ちに排除する”!」

 

帝国兵達は鞘から剣を抜刀し、光に振り下ろしてきた。しかし、光はそんな素振りに手加減をした。帝国の剣を促すかのように払いのけ、柄で相手の腹部めがけて強打する。次に帝国兵が光目掛けて剣を振り下ろそうとしたが、光の剣術が逸早く動き、帝国兵の剣を一刀両断した。

 

「な、何ぃぃぃぃっ!?」

 

剣がいとも容易く折れた事に驚き、光に鎧ごと貫通され、倒れる。

 

「ば、バケモノ!!」

 

残っている帝国兵は震えながら剣を構える。しかし、光の放つオーラと威圧に恐怖していた。

 

「どうした?……さっきまでの威勢は何処へ行った?」

 

震える帝国兵に呆れを感じた光は肉眼では見えない速さで帝国兵の腕を切断した。

 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!腕がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

悲鳴をあげる帝国兵。魔術師達が構えようとしたその時、セイントエルクが魔術師達目掛けて突撃してきた。

 

《うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!》

 

吹き飛ばされる魔術師達。唸り声を上げるセイントエルクと修羅の如く威圧を放つ光に帝国兵達は怯える。

 

「撤退!撤退しろ!」

 

帝国の一人が何らかの装置を取り出す。すると上空から黒い飛空艇が飛来し、転送紋章を発動する。光は飛空艇の暴風に吹き飛ばされかけるが、セイントエルクの巨体が光を守る。

奴隷達を飛空艇に乗せた帝国兵達は直様北の森を離れていくのであった。

光は近くを浮遊していたウィンドスプライトの力を借り、回復魔法である[ハイヒーリング]を発動し、セイントエルクの治療をしていた。

 

『恐れないのですか?私を…』

 

「恐れないさ。拙者の先祖が住んでいた森にも、貴方のような神獣はいましたからね。」

 

『そうですか。若い人間、名は何と申す?』

 

「拙者は人間じゃない……かつて太陽の女神を崇めていた“長寿族”と言う者だ。寿命が数百年以上生きる化け物なんて、人間じゃない…」

 

『貴方には何か……迷いがありますね?』

 

「……はい。拙者の故郷は“ある怪物”と“怪物を操る悪しき陰陽師”によって、壊滅しました。父と母、弟と村のみんなを失い、路頭に迷っていた拙者を拾い救ってくれたのが……いずれ東の国を天下統一する筈の主君であった。すみません…いきなり主君の話をしてしまって。」

 

『良いのです』

 

「その後、拙者が主君に使えて二年後の事です。怪物を操る陰陽師が再び現れ、人々を食い殺していたのです。私と主君や他の将軍達が兵隊達を連れ、怪物と陰陽師の討伐に乗り出しました。陰陽師の狙いは国は愚か、世界を我が物にしようとしていた…多勢に無勢、怪物を殺せば、仲間に取り憑き、怪物へと変えていく。そのせいで多くの犠牲者が増え続け、行く末にようやく陰陽師を主君が斬り殺し、拙者と友人と共に怪物を殺し、拙者の一族の力で塚に封印しました。」

 

『……辛かったのですね。』

 

「はい、問題はそこなのです。帝国兵が連れていたあの奴隷……あれを見ていると、陰陽師が連れていた巫女達に似ており、奴らのやり方が陰陽師に似ていました。」

 

『そうだったのですか。ケントュリア帝国とその陰陽師の行為が似て……。』

 

「怒りが込み上がったのです。話し相手が貴方で良かったです。」

 

『いえいえ、貴方が私の味方で良かったです。何か一つ、お礼をしたいのです。手を出してください。』

 

セイントエルクは頭部から翡翠色の水晶を光に渡す。

 

『この水晶を貴方にあげます。いつ如何なる所でも私を召喚する事ができます。』

 

「ありがとうございます。」

 

『この獣道を真っ直ぐ通りなさい、そこを通れば、貴方が行きたがっているエルシュオン王国が見えてきます。』

 

「…最後に主様に話しておく事があります。」

 

『?』

 

「先の話で、怪物の力は“殺せば、他者に取り憑き、怪物へと変えていく”お聞きになられましたね?」

 

『はい……』

 

光はマジックバッグからある巻物を取り出し、セイントエルクに見せる。絵巻に描かれているそれを見たセイントエルクは身も心を震わせる。

 

「これは……我が一族や東の国の者ですら知っている凶暴な怪物の名です。我が一族を滅ぼした怪物……その名は。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“牛鬼”……頭が牛のような鬼、体が猛虎の模様を持つ蜘蛛の怪物。そして他にも牛鬼を上回る異形な “怪鬼” 達もいる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵巻に描かれている怪鬼……四足を持つ、翼を持つ、鳥を模す、蜘蛛を模す、他にも様々な形状を持つ怪鬼達がいる事。

 

『正に……恐ろしく悍ましい怪物ですね。』

 

「はい……奴の力は神や霊刀の力でないと封印することしかできません。幸にも、この大地にいない事に安心です。」

 

『……勇敢なる冒険者に幸福を。』

 

セイントエルクは森を去る光に祈り、幸福を願うのであった。北の森を抜けた光は日が昇る空を見上げる。

 

「良い天気だ。」

 

空を見上げ光は大地を見る。広大な平原の真ん中に忽然と姿を現した王国。

 

「あれが、エリュシオン王国…」

 

光は王国へ目指し、走るのであった。

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