海軍支部が同時に多数襲撃され、崩壊された事は新聞や号外によってたちまち世界中に知れ渡った。海軍はすぐさま襲撃者達全員に懸賞金を賭けようとしたのだが、ここで今までになかった問題が発生した。
深海棲艦達の殆どが、同じ顔をしているのだ。
これにはセンゴク元帥どころかあの“海軍の英雄”ガープですら写真を見て唖然とした。初めは同じ人物を撮影しただけだと思っていたが、1枚の写真に6人の全く姿が同じの深海棲艦達が写っているのを見て、センゴクは頭を抱えた。
このままでは手配書が完成しないと悟ったセンゴクは、写真に写る深海棲艦達を種類別に分けて懸賞金を懸け、シャボンディ諸島の事件の犯人と同じ種類に高額の懸賞金を懸け手配書を作った。
そして手配書を作成すると同時に、センゴク元帥は崩壊された海軍支部の近隣の海軍支部に深海棲艦達を出来るだけ優先して捕らえるよう命令した。
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離島棲鬼side…
ワタクシは離島棲鬼。深海棲艦の鬼級の1人ですの。そんなワタクシは現在、先日手に入れた海軍第18支部の湾岸の広場にテーブルと椅子を用意し、私の姉…姫級の離島棲姫姉様と一緒に、海を眺めながら紅茶を飲んでいますの。
離島棲姫姉様は本当にワタクシにそっくりで、鈎形の装備が所々に見え、両手やニーソックスの先端部分にも装備し、ボンネットを突き破って生えている角と背中の角はワタクシのものより長いですの。服装はワタクシと違って胸から上下に分離しているような服装で、肩部分と袖口にフリルが追加されていますの。
そして今姉様と見ている普段見慣れた海ですが、今はただ海だけを見てるだけではありませんの。
「敵船捕捉!撃テェ!!」
ドドドドォォォォォン!!!!!
ワタクシの部下の戦艦ル級の号令を聞いて駆逐艦から戦艦までの全深海棲艦達が沖にいる海軍の軍艦に向けて砲撃を開始しましたの。放たれた砲弾は風を切って目標に向かって飛んで行き、軍艦を次々と沈めて行っていますの。
今から10分程前、ワタクシと離島棲姫姉様がティータイムを過ごしていると丁度海軍が島を取り戻しに攻めて来たので、ワタクシ達の部下達に相手を任せて彼等が沈む様をゆっくり眺めながら紅茶を飲んでいますの。
あら、また沈みましたわね♪
「フフ♪懲リナイ子達……スグニ撤退スレバ被害ヲ最小限ニ抑エラレマスノニ」
「確カニソウデスワネ。コレダケ沈メレバ力ノ差ハ分カル筈ナノデスガ……マァ、ダカラコソ今ノ光景ヲ見レテイルノデスワ。……アラ?」
ワタクシが離島棲姫姉様と話をしていると、テーブルに上から紙の束が落ちて来ましたの。何事かと空を見上げると、水兵帽を被り、首から新聞の束を入れた赤いカバンをぶら下げているカモメが慌てた様子で飛び去って行くのが見えました。確かアレは《ニュースクー》とかいう新聞配達をするカモメですわね。部下達の砲撃に驚いて落として行ったのでしょうか?
ワタクシがその紙の束を拾い上げると、それは手配書の束でした。暇潰しにパラパラとめくっていると、面白い物を見つけましたの♪
ワタクシは手配書の束から2枚の手配書を抜き取ってテーブルに置き、離島棲姫姉様に見せましたの。
「姉様!姉様!コレヲ見テ欲シイデスノ!」
「ドウシマシタ離島棲鬼?………アラ?コレハ」
“黒鬼人形”離島棲姫 懸賞金1億2500万ベリー
“黒鬼人形の妹” 離島棲鬼 懸賞金1億2000万ベリー
それはワタクシ達の手配書でしたの!写真はおそらくワタクシ達が第18支部を襲撃した時のもの。なんだか有名人になったみたいでちょっと興奮しますの♪それは離島棲姫姉様も同じな様で、自分の手配書をマジマジと見つめていますの。
「良ク撮レテマスワ♪離島棲鬼モ美シク撮レテイマスワ♪」
「姉様コソ!コノ艦載機ニ指示ヲ出ス姿ハカッコイイデスノ♪」
ワタクシ達は互いに写真の良い所を言い合いましたの。ただ懸賞金が姉様より500万低いのは残念ですの。……まぁコレはその内上がるでしょう。
しかし“黒鬼人形”とはおそらくワタクシと離島棲姫姉様の通り名でしょうか?もう少し可愛いものが良かったですの……。
ワタクシがそんな風にちょっと自分の手配書の通り名を残念に思っていると、最後の軍艦が水底に沈みましたの。さて、次はいつ来るのでしょうか?
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飛行場姫side…
「ヘェ〜?結構イイ町ダナ!気ニイッタ!」
私は今2日程前に襲撃して手に入れた海軍支部の目と鼻の先にあった島…確か《クビカリ島》ってチ級が言ってたな?その島の町に部下のリ級2人を連れて訪れている。若干並んでる店が武器屋とかが多い気がするけど、ちゃんと料理屋もあるから気にする事でもないな。
私が並んでる店をキョロキョロと見回していると、私の後ろを歩くリ級が話し掛けて来た。
「飛行場姫様、少シイイッスカ?」
「ドウシタ?何カ見ツケタノカ?」
「イエ、逆ッス。見ラレテルッス」
「アァ…前ニ2人、後ロニ3人。後は左右ニ2人ズツ。私達ガ町ニ上陸シテカラズット見テルナ」
私はバレない程度にチラッとこちらを見ている連中を見た。太刀を背負った男、銃を腰に下げた女、剣を2本腰に下げた中年男性…そんな連中が手に紙を数枚持ちながら私達を見ている。そして目は獲物を見つけた獣見たいだ。
私が適当に人気の無い場所に偶然を装って入って行くと、案の定人間達は私達を囲む様に姿を見せた。
「ちょいと待ちな。嬢ちゃん達…」
「イイヨ。サテ、オ前等ハ何者ダ?島ニ上陸シテカラズット見テタナ?」
私が話し掛けて来た太刀を背負った男にニヤリと笑いながら聞き返すと、人間達は苦虫を噛み潰した様な表情をしてから太刀を構えた。周りの人間達もそれぞれ自分の得物を構え、私達に向けた。
「気付いてやがったか!!俺達は賞金稼ぎだ!その首に懸けられた懸賞金をいただく!!」
「フフフ♪イイヨォ。何度デモ、沈メテアゲルカラサ♪」
「ッ!!調子に乗ってんじゃねぇ!!掛かれぇ!!!」
「「「「「うおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
私がニヤァァ♪と笑いながら挑発すると、人間達は青筋を浮かべて襲い掛かって来た。私はリ級達に手を出さないよう合図を送ってから拳を構えた。
〜10分後〜
「ハァ……思ッタヨリ歯応エガ無カッタナ。期待外レダ」
「マァ、ソウナルッスヨネェ?」
「ぐ……ぐぞぉ……」
艤装を展開するどころか拳1つで事足りてしまった。集積地棲姫に頼んで態々治安が悪くて強い人間がいそうな島の近くにある支部を教えてもらったのに、こんな連中だとなぁ……いや、もしかしたら強い人間がまだ私達の前に来ていないだけかも知れない!
私がそう思っていると、山積みにした人間達の荷物を漁っていたリ級達が何かの紙の束を手に、興奮した様子で戻って来た。
「飛行場姫様!コレ!コレ見テ下サイッス!!」
「飛行場姫様ト私達達ガ、手配書ニ載ッテルッス!」
「……ヘェ?面白ソウダナ。見セテクレ」
私はリ級から手配書を受け取り、その手配書を見てみた。そこには確かに私の写真と名前が書いてあった。ペラペラと巡って行けばリ級、ル級、チ級と、他の深海棲艦達の顔写真があった。
“白鬼”の飛行場姫 懸賞金2億1200万ベリー
“黒籠手”のリ級 懸賞金4200万ベリー
「オォ!2億ダッテサ!コレッテ凄インジャナイカ?」
「確カ、手配書ノ初期金額デ1億ヲ超エルノハ珍シイッテ聞イタッス!」
「凄イッス!……ア!他ノ皆ンナモ手配書ニ載ッテルッス!」
片方のリ級が手配書の束から何枚か抜き出し、私達に見せて来た。確かに私達深海棲艦の手配書だな。て事はこの人間達は賞金稼ぎって奴か?なら、このまま懸賞金を上げて行けば、いつか強い賞金稼ぎが私を倒しに来るかもしれないな♪
私は手配書を見ながら、これから先の事を想像して笑みを浮かべた。
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戦艦棲姫side…
「全主砲斉射!……撃テェ!!」
ドドドドォォォォォン!!!!
私の部下のル級達が遠くに見える海賊船の船団に向けて一斉に砲撃した。海軍第13支部を僅か1時間で崩壊させた私達は、艦隊の一部を島の守護の為待機させ、残りの艦隊を引き連れて近海を航行中の海賊船を沈めている。今も10隻程の船団を気付かれないように数千メートル離れた場所から砲撃し、7隻を水底に沈めた。
しかし今回の海賊船は奇妙だな。気の所為でなければあの船首…
「マァ、沈メル事ニ違イハ無イ。サッサト水底ニ沈ムトイイ!」
ドドドォォォォォン!!!ドドドォォォォォン!!!
私の艤装から放たれた6発の砲弾は風を切る様な音を出しながら海賊船に向かって飛んで行き、砲弾を目視出来なくなってから数秒遅れて先頭を航行する海賊船に命中、轟沈させた。
「流石ハ戦艦棲姫ダナ。全弾命中ヲ確認シタ」
隣に立っていた私の姉上…《
姉上の艤装は私の艤装より遥かに凶暴性に溢れており、首と両腕には黒い枷が嵌められている。砲撃の威力も私より段違いで、先程も砲弾2発で1番大きな海賊船を吹き飛ばしていた。私の憧れる自慢の姉だ。
「イイエ、姉上ニ比ベレバ、私ナド…」
「フフ♪アリガトウ。ダガソウ自分ヲ卑下スルナ。私ノ妹ナラバ、堂々トシテイレバイイ」
「〜〜〜ッ!!ハ、ハイ!!」///
姉上は私の頭を撫でながらそう言ってくれた。少し恥ずかしいが、姉上は撫でるのが上手いので断れない。
姉上はしばらく私の頭を撫でた後、海賊船が全船破壊したのを確認し、部下達を物資などの回収を命じた。結果、まだ沈み切っていない船の残骸からは丁寧に包装されたクッキーや煎餅などのお菓子の入った木箱多数と、食料や金銀財宝、そして私達が載っているという手配書の束を部下達が回収して来た。
お菓子の入った木箱が何故海賊船に入っていたのか少し気になったが、それよりも私達の手配書とやらに興味があった。拾って来たチ級から手配書を受け取ると、そこには確かに我々深海棲艦の手配書があり、私と姉上の手配書もあった。
“双頭魔人”戦艦水鬼 懸賞金1億8700万ベリー
“巨兵”戦艦棲姫 懸賞金2億2200万ベリー
「ナ、何故姉上ヨリ私ガ懸賞金ガ高ク…!?」
「フム…オソラク シャボンディ諸島デノ事件ニ戦艦棲姫ガ居タカラダロウナ。2億カ…凄イジャナイカ」
姉上は笑いながらそう言って下さったが、普通私よりも姉上の方が懸賞金上だと思うんだがな。
「ソレデ?我々ノ中デ1番懸賞金ガ高イノハ誰ダ?」
「チョット待ッテ下サイ………アリマシタ」
私は手配書の中から最も高額な懸賞金の手配書を抜き出し、姉上に渡した。姉上は手配書を見ると、すぐ納得したと言わんばかりに頷いた。私もその手配書の人物と金額には納得した。
そういえば、彼女は港湾棲姫の手伝いをすると言っていたな。今頃どこの海を進んでいるのだろうか?
“深海軍師”ヲ級 懸賞金3億8400万ベリー