我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、奴隷達ヲ解放ス!

偉大なる航路(グランドライン)前半のとある海、そこに地図には載っていないある島があった。その島の名は《フォールジン島》。通称“奴隷島”と呼ばれる、天竜人の命令で世界政府と海軍が公認し、隠している奴隷商人や人攫いなど達の島である。

この島では近海の島々から攫った人間達や、世界政府の役人や一部の海兵達に捕らえた海賊達などを集めて奴隷にし、各地のヒューマンショップに輸送しており、島にヒューマンショップがない人攫い達などはここで捕らえた者達を売っている。

普通ならば世界政府や海軍はこんな事を許してはいけないのだが、奴隷を買っている天竜人達の約90%が奴隷を増やし続ける為、世界政府にこの島の存在を隠し、海軍を使って守らせるよう命令したのである。

よってこの様な島は世界政府によって存在を隠され、今では偉大なる航路(グランドライン)前半の海のあちこちに同じ目的の島が出来た。更にこれ等の島は全て砲台や見張り台などを設置されて要塞と化し、一部の海兵達が守っている。

そして今日もまた、この島に船に乗せられた新しい奴隷にされる攫われた人間達が運ばれて来た。「家に帰してくれ!」と叫ぶ男性、「お母さんに会いたい!」と泣き叫ぶ少女、「一思いに殺せ!」と叫ぶ手錠を付けられた女海賊…様々な人間達が次々と島の施設の中に連れて行かれる。

その光景を砲台にいる海兵達が眺めていた。

 

「お〜お〜♪今日も沢山連れて来られたなぁ」

 

「連れて来られた奴は気の毒だなぁ。お!あのねーちゃんは天竜人が買いそうだな」

 

「おいおい、サボってないで仕事しろよ〜?じゃねーと遊ばせて(・・・・)もらえねーぞ」

 

 

連れて行かれる人達を眺めていた海兵達は「そうだな」と言いながら自分達の仕事場に戻った。その内の1人の海兵は砲台の近くに建てられた見張り台に登り、単眼鏡で海を監視し始めた。

 

 

「ハァ〜……どうせこの島は世界政府が存在を隠してんだから、誰も攻めて来ねーだろ〜に。見張りなんざ必要無いだろ。…………ん?」

 

 

深い溜め息を吐きながら海を眺めていると、遠くの方で点々と黒い物が海面に次々と現れ始めた。海兵は「なんだアレ?」と呟きながらそれ等が単眼鏡で見ていると、ようやくハッキリ見える距離まで近づいたのか、単眼鏡でそれ等の姿がハッキリと見えた。その中央の存在を見た瞬間、風を切る様な音が鳴り響き、少し離れた場所に設置されていた砲台が大爆発を起こした。それを見た海兵は慌てて見張り台に吊るされた鐘を鳴らした。

 

 

カン!!カン!!カン!!カン!!

敵襲ぅ〜〜!!敵襲ぅ〜〜!!

 

「何!?敵襲だと!?」

 

「ッ!?敵影発見!!あ、あんな遠くから攻撃したのか!?」

 

 

鐘の音を聞いた海兵達は慌てて各自の持ち場に着き、砲手は砲台を用意した。他の見張りの海兵達も敵の姿を確認し、敵までの距離に驚愕した。最初に敵を見つけた海兵は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら単眼鏡を覗いた。

 

 

「クソ!なんで……なんで“深海軍師”がこの島に……!?」

 

 

 

 

 

 

ヲ級side…

 

 

私は今、集積地棲姫の集めた情報で見つけたフォールジン島を港湾棲姫と一緒に部下の深海棲艦達を率いて襲撃している。

私の両隣では戦艦ル級と、同じ戦艦である《戦艦タ級》が艦砲射撃を行なっていた。

タ級は他の深海棲艦同様白い肌に腰まで伸びた白髪をしており、青く光る瞳を持っている。セーラー服とブルマの様に見える黒いパンツを着用し、黒いニーソックスに黒いブーツを装着している。艤装は左肩に黒い肩当てを装備し、白いマントを羽織っており、背中辺りから戦艦を模した深海棲艦特有の意匠が施されている尻尾の様なものが4本伸びている。彼女はかなり真面目で、深海棲艦の割には海軍より正義感が強い性格をしている者が多い。

そのため……。

 

 

ドドォォン!!ドドォォン!!

「撃テェェ!!人間ヲ攫イ、奴隷ニシテイル連中ヲ殲滅セヨ!!」

 

「「「「オォォォォ!!!」」」」」

 

「やっぱりコウなったカ…」

 

 

タ級達はル級達も少し距離を開ける程の勢いで砲撃しまくっている。でもちゃんと奴隷達がいる施設に着弾させていないからちゃんと理性はある様だな。

私が苦笑いを浮かべながら彼女達を眺めていると、後方で待機していた私ではない普通の空母ヲ級が近寄って来た。

 

 

「ヲ!ヲヲ、ヲッヲヲ!」

 

「そうカ。港湾棲姫ハ無事上陸したカ」

 

 

今回は戦艦と空母で島の砲台などを破壊する私の部隊と、島に上陸して奴隷達を解放する港湾棲姫の部隊で別れて行動している。因みに深海棲艦の中には彼女の様に話す事が出来ない者達も沢山いる。だけど何故か何が言いたいのか理解出来るんだよなぁ…なんでだ?

まぁ、取り敢えず次の行動に移るか。

 

 

「各方角に偵察機ヲ発艦。海軍の軍艦ガ接近していタラ、速やカニ撃沈せヨ」

 

「ヲ!」

 

 

ヲ級はビシッと敬礼してから仲間達に指示を伝えに戻って行った。

さて、これから忙しくなりそうだな。

 

 

 

 

 

 

港湾棲姫side…

 

 

私は港湾棲姫。今私は集積地棲姫さんが見付けて下さったフォールジン島という島に上陸しています。私は戦闘はあまり好きではないのですが、この島には攫われたりして無理矢理奴隷にされる人間達がいらっしゃる様なので、そんな事を言っている場合ではありません。

私達が上陸すると、島にある施設の中から沢山の武器を持った人間達が攻撃して来ましたが、私が展開したバリアに弾かれました。どうやらこの島にはヲ級さん達が戦った海軍大将という人物はいない様です。

攻撃が効かないと分かっても銃を撃ち続ける人間達に向かって砲撃すると、人間達は簡単に吹き飛ばされました。因みに私の艤装は玉座の様な形をしており、右側にレ級さんの尻尾に似た滑走路、左側にクレーンの付いた砲台、そして背後に燃料タンクのようなものが装着しています。

 

 

「私達ハ深海棲艦デス。無駄ナ抵抗ハ止メ、速ヤカニ降伏シ、奴隷達ヲ解放シテ下サイ」

 

「う、うるせぇ!!誰が商品を捨てる様な真似するかよ!この島は天竜人が必要としている島だ!逆にテメェ等が俺達に捕まりやがれ!お前なら高値で売れる!!」

 

「そうだそうだ!お前等だったら、上手く行けば億は行きそうだぜ!」

 

 

私は出来るだけ戦闘を避けるために降伏を命じましたが、彼等は言う事を聞きはしませんでした。再び攻撃を開始した彼等を見て私は深い溜め息を吐いてしまいました。

彼等の会話を聞く度に怒りを感じる。私は確かに戦闘は好まず、出来る事なら敵も殺さない様にしたいのですが、彼等にはそんな感情は浮かばず、殺意しか感じません。

 

 

「……ソウデスカ。ナラ、仕方有リマセン。諦メマショウ」

 

「へ…へへ♪そーか!諦めるか!ならとっとと首輪を…」

 

「貴方達ヲ全員水底ニ沈メテカラ、奴隷達ヲ解放シマス。……全艦、砲撃用意!目標、正面ノ敵兵!放テェ!!」

ドドドドドォォォォォォン!!!!

 

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!?」」」」」

 

 

私の号令で、背後に並んでいた私の部下達が奴隷達がいると教えられた建物に被害が出ないようにしながら砲撃し、敵を吹き飛ばしました。

私は砲撃によって荒れ、先程まで私達の前にいた敵が血を流して転がる道を進み、敵の殲滅を部下に命じて奴隷達がいる建物に1人で入りました。

中に入るとまだ生きている人間がバズーカ砲を撃ち込んできましたが、私はその砲弾を片手で受け止め、そのまま握り潰した。潰れた砲弾だった物を床に落として撃った人間を睨み付けると、彼等は小さく悲鳴を上げて後退った。

 

 

「……私ノ邪魔ヲ……スルナァ!!

 

「ヒィ!!ひ、怯むな!撃て撃t《ドゴッ!!》ガハッ!!?」

 

「く、来るな!来るんじゃねぇ!!《バキッ!!》グギャッ!!?」

 

 

彼等はバズーカ砲や銃を構えましたが、私は動き易くする為艤装を収納し、向けられる銃口を気にする事なく接近し、殴り、蹴り、投げ飛ばしながら先に進みました。

そのまましばらく進み続けていると、鉄製の巨大な扉を見つけました。鍵が掛かっているようで、押しても引いても動きません。なので仕方なく私は扉から少し離れ、拳を握り締め……。

 

 

ハァ!!!

バゴンッ!!!!

 

 

扉を突き破りました。中に入るとそこには沢山の檻があり、その中には沢山の人間達が震えながら私を見つめています。どうやらこの部屋が目的地の様ですね。

私は早く人間達を解放する為に鍵を探そうとしたのですが、檻の陰からまるで生き物の様に太いロープが伸びて来て、私をグルグル巻きにしました。

 

 

「コレハ……?」

 

「俺様の能力によって生み出された鋼鉄製(・・・)のロープさ。待ちくたびれたぜ?侵入者」

 

 

私が首を傾げていると、檻の陰から1人のカウボーイの様な服装をした小太りの男が出て来ました。掌から直接このロープが伸びているところを見ると、どうやら彼は悪魔の実の能力者のようですね。

 

 

「初めまして、深海棲艦殿ぉ?俺様の名はウッディル。“ナワナワの実”の縄人間だ。俺は触れた物をロープにし、自在に操る事が出来る。それはさっきも言った通り鋼鉄で出来ている。もう逃げられねーぜ」

 

 

どうやら正解のようですが、何故聞いてもいないのにペラペラと自分の情報を喋ったのでしょうか?取り敢えず鍵の在り処を聞いてみますか。

 

 

「……檻ト、奴隷達ノ首輪ノ鍵ハ、何処デスカ?」

 

「鍵ぃ?クククッ♪なんだ、お前奴隷共を解放する為に態々攻めて来やがったのか?可愛い顔して馬鹿な女だなぁ。鍵なら俺が持ってるぜ?ま、渡す訳ねーがな!クハハハハ♪」

 

 

ウッディルと名乗る彼は懐から鍵の束を取り出して目の前でプラプラと笑いながら私に見せつけました。この場合、普通ならば相手がなんらかの脱出方法を持っていると考えて喋らなかったり、嘘の情報を流すのが決まりなのですが……彼はそれ程の自信や実力を持っていて、知った上で喋っているのでしょうか?

まぁ、取り敢えず鍵の在り処は分かりました。私はすぐに体に力を入れてロープを引き千切り、鍵を奪いに掛かりました。

 

 

「な!?こ、鋼鉄製のロープだぞ!?化け物かよ!!」

 

「アンナ物デ私ハ捕ラエラレマセン。鍵ハ頂キマス!」

 

「ヒィ!?ス、“鋼鉄の縄(ステール・ロープ)”!!」

 

「無駄デス!!」

 

 

再び迫って来た鋼鉄のロープを鉤爪で斬り裂き、目を見開くウッディルの頭を掴んでそのまま頭から床に叩きつけました。ドゴン!!と重く響く音と共に床にスプーンでくり抜いたようなクレーターが出来上がり、ウッディルはそのまま動かなくなりました。

私は彼から鍵を取り上げ、奴隷達を解放して行くと、先程まで戦闘を黙って見ていた檻の中の人々が大きな歓声を上げ、涙を流しながら喜び合ってくれました。

そして部屋にある全ての奴隷達を解放する頃には、既に島は私達深海棲艦が占領していました。

流石はヲ級さんですね♪


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