我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、奴隷解放ニ協力ス!

ヲ級side…

 

 

フォールジン島を無事占領した私達は、先ず始めに手分けして奴隷達の解放を行った。奴隷達の首には逃亡防止の為、触れたりしたら爆発する時限爆弾付きの首輪が付けられている。私達は首輪に触れないよう注意しながら1人、また1人と奴隷達を解放して行った。

奴隷達は最初こそ得体の知れない私達を恐れ、警戒していたのだが、奴隷から解放してあげると涙を流しながら喜び合っていた。それ程奴隷になるのが嫌だったのだろう。私だって首に爆弾つけられて無理矢理言うこと聞かされるのはゴメンだしな。

その後、私達深海棲艦は解放された人間達に食事を与え、妖精さん達に前以て作ってもらっていたテントを設置した。港湾棲姫は早く人間達を元いた場所に帰してあげたいと私に頼みこんで来たが、解放された人間達が予想より遥かに多い為、1人1人の故郷を聞き、それぞれの島に護衛付きで送り帰すのには時間が掛かる為、準備が出来るまではこの島で過ごして貰う事を説明したら、港湾棲姫は残念そうだったが了解してくれた。

そして占領してから2週間後、ようやく全体の約80%の人間達の故郷である島を聞き出す事が出来た。これなら後もう1週間経てば送り帰すことが出来るだろう。他の深海棲艦達も人間達と仲良くなり、今では互いに遊んだり、世間話したり、料理したりなどしている。

だがその間に問題が2つ発生した。1つは人間達を送り帰す為に使う船の数が少ない事だ。島には奴隷輸送用のガレオン船が5隻あったが、コレだけでは全ての奴隷達を送るのには時間が掛かる。まぁ、コレについては近隣を航行している海賊船を襲撃して奪って使用すればいい。問題はもう1つの方だ。

人間達の全体の約30%が、帰る場所を失っていたのだ

連れて来られた人間達の中には、攫われる際に家族を殺されたり、海賊をやっていて船を沈められたり、親や親族に売り払われた者もいる。中には幼過ぎて自分の住んでいた島の名前を知らない子供も大勢いた。

この人間達には申し訳ないが、今いるこの島を深海棲艦達と協力して開拓し、この島の住民として一から過ごして貰うという形で固まった。勿論私達も全多面協力する。

そして現在、私は何をしているのかと言うと………。

 

 

「……という訳で、俺1人では手が回り切らない可能性がある。そこでお前達にマリージョアの奴隷解放に協力してもらいたい」

 

何がいきなり来て『という訳で』だ分かり易く説明しろ

 

 

先程突然私達に訪ねて来た鯛の魚人…《フィッシャー・タイガー》にジト目で詳しい説明を要求していた。

 

 

 

 

 

 

「それデ?何故私達ニそんな話ヲ持ち掛けテ来タ?フィッシャー・タイガー」

 

 

私は目の前の椅子に座る鯛の魚人…フィッシャー・タイガーと名乗る巨体の男に質問した。今から1時間程前、私が人間達と何か不自由はないかなどの話をしていると、近海を巡航していた第4艦隊から島にまっすぐ接近している魚人を見つけたと連絡があり、連れて来てもらった。

敵か味方か、更には何の目的でこの島に接近して来るのか分からなかったが、取り敢えず本人が「お前達のリーダーと話がしたい」と攻撃の意思はないとばかりに両手を挙げながら要求して来た為、念の為に私が使っている仕事用のテントの中に港湾棲姫とリ級2人、外にタ級とリ級の戦艦達を待機させる事を条件に要求に応じた。

そして話の内容だが、分かり易く言うとマリージョアに行って天竜人の奴隷全員逃すから協力しろとのこと。

何故に?

 

 

「俺の事はタイガーでいい。何、お前達が天竜人を殺害し、この島にいた奴隷達を解放したと聞いてな。目的が奴隷解放なら協力して頂こうと思ったまでだ」

 

聞いタ(・・・)?この島ハ、世界政府が存在ヲ隠蔽した存在しなイ筈の島ダ。それヲ誰から聞いタ?」

 

「近海を泳いでいた魚達から話を聞いた。まぁ、この島の存在を知ったのもその時だったのだがな」

 

 

タイガーは少し顔を苦めながら説明した。成る程、魚か…確かにこの近海にも沢山の魚達が住んでいる。普通魚達と会話するのは私達深海棲艦でも不可能…だがそれが魚人や人魚ならば会話する事が出来るのにも納得出来る。

 

 

「便利ナ能力だナ。確かニ私達は奴隷解放も行なってイル。だが何故私達なんダ?そこは仲間ノ魚人などニ協力ヲ要請するンじゃないカ?」

 

「?だからこうしてお前達に協力を求めているのではないか」

 

「?ソレハ、ドウイウ意味デショウカ?」

 

 

タイガーの言葉に私達は疑問を抱き、港湾棲姫がコテンと首を傾げながら質問した。するとタイガーは何を言っているんだ?と言いたげな顔で私を指差した。

 

 

「俺も初めて見るんだが、そこのお前……クラゲの魚人(・・・・・・)だろう?」

 

誰がクラゲの魚人ダ!!!貴様絶対私ノ頭の艤装ヲ見て判断したナ!!?

 

 

確かに私の頭の艤装はクラゲに見えなくもないけど!!断じてクラゲの魚人ではない!!おい!何故そんな「嘘だろ!?」と言いたげで私を見るんだ!?港湾棲姫も必死に我慢している様だが目を逸らして口元を手で隠してプルプル震えてるから殆ど効果無いぞ!!リ級達に至っては爆笑するんじゃない!!今日の晩御飯はお前達だけピーマン100%サラダにするぞ!?

 

 

「う、嘘を付くな!!魚人でも人魚でもないなら、何故海の中で息が出来る!?力も人間の女の物ではないだろう!!」

 

嘘じゃナイ!!そもそもソレなら私以外ノ子達も海の中ヤ上でも活動出来テいるダロウ!!」

 

「俺だって全ての魚を知っている訳じゃない!!俺の知らない魚の魚人の可能性があるだろう!!!」

 

「………でもクラゲはないだろウ!!」

 

「アハハハハ!!イ、今納得シカケタッスヨネ!?」

 

「ク、クラゲ…プッ!アハハハハ!!」

 

貴様等水底ニ沈めてやろうカ!!?

 

「「スンマセンッシタァ!!!

 

 

爆笑していたリ級達は見事な土下座を見せて謝って来た。よし、お前達は謝ったから今晩の夕食はピーマンの串焼きにしてやろう。私の砲撃と爆撃を食らうよりはマシだろう。

 

 

「な、ならお前達は何だ!?魚人でもないのなら、何故海中で活動出来る!?クラゲの魚人でもないなら何故そんな頭をしている!!?」

 

いい加減にしなイト塩焼きにしテそこらヲ飛ぶカモメの餌ニするゾ貴様ァ!!

 

 

まだ私の艤装をクラゲと言う目の前の魚人に私は自分でも驚く程の怒鳴り声を上げた。このままではまともに会話が出来ないため、一度深呼吸して気持ちを落ち着かせる。やがてタイガーの方も落ち着き、港湾棲姫とリ級達も笑いが収まった。

 

 

「ハァ…ハァ……サテ、私達が何カだったナ?」

 

「あ、あぁ。魚人でもないのなら、お前達は何者なんだ?何故奴隷解放などしている?」

 

「私達ハ深海棲艦…マァ、分かり易ク言えバ沈んだ船ノ魂が人の姿ニなったものダ。奴隷解放は私ノ隣に座ッテいる港湾棲姫ノ考えダ。私達はそれヲ手伝っテいル」

 

「そ、そうだったのか……実はk「私ハ断じてクラゲの魚人ではナイ!!!」す…済まん」

 

 

タイガーはちょっと引き気味だが謝ってきた。どれだけ私をクラゲの魚人にしたいんだ?

私が少し殺気を込めながらタイガーを睨み続けていると、今まで笑いを堪える以外何も喋らなかった港湾棲姫が口を開いた。

 

 

「ヲ級サン……私ハ、出来レバ彼ニ協力シタイノデスガ。ヨロシイデショウカ?」

 

「ン?……マァ、今更『天竜人ニ手を出しタラ面倒にナルからダメ』なんテ言わないガ。私達を魚人ト思っテ協力ヲ持ち掛ケタお前ハどうなんダ?」

 

 

私はテーブルの向かい側に座るフィッシャー・タイガーに視線を向ける。彼は私達が魚人や人魚だと思って協力を要請した。だが私達が魚人や人魚ではないと知った彼はどう思うのか疑問だった。

タイガーは腕を組んで難しい顔をしたまま目を閉じていたが、しばらく重い時間が続いた後、彼は私と港湾棲姫を順に見て、口を開いた。

 

 

「………1つだけ聞きたい。…お前達は、魚人をどう思う?」

 

 

タイガーは真剣な顔でそんな質問をして来た。私や港湾棲姫は何故その質問をして来たのか分からなかったが、彼の表情を見て思った事をそのまま答える事にした。

 

 

「………そうだナ。私は魚人ハ魚人だと思ウ。私達からすれバ、人間は人間、魚人ハ魚人、巨人ハ巨人……どれも同ジこの世界ニ住む住民だからナ」

 

 

私の答えに港湾棲姫やリ級達も黙って頷いた。それを聞いたタイガーは「そうか…」と頷いた。私は彼が小さく笑った様な気がした。

 

 

「いきなりこんな質問をして済まないな。では改めて、奴隷解放の協力。お願い出来ないだろうか?」

 

「……分かっタ。私達深海棲艦はその奴隷解放ニ協力しよウ」

 

 

私はそれに応じ、リ級達にマリージョア近海にいる手の空いた姫級、鬼級の深海棲艦達に、手の空いている艦隊を連れて深海鎮守府に集結せよと連絡するよう命じた。

後日、私と港湾棲姫、タイガーの3人はフォールジン島を部下達に任せて一度深海鎮守府に向かった。

 

 

 

 

 

 

フィッシャー・タイガーにマリージョアの奴隷解放の協力を要請されてから2週間が経過した。

今回の奴隷解放に参加するのは私を含め、港湾棲姫、北方棲姫、中間棲姫、集積地棲姫、防空棲姫、南方棲戦姫、離島棲鬼、空母水鬼、その他3名の姫級を含めた旗艦。

そしてそれぞれが指揮をする戦艦レ級を含めた戦艦、雷巡、重巡、軽巡、潜水艦、駆逐艦、空母が混合した大艦隊だ。

正直言って過剰戦力にも程があるかもしれないが、今回はマリージョアという天竜人が住む場所に奴隷解放の為に襲撃する。そうなると、大勢の海軍や世界政府の連中が守っている場所から解放された奴隷達を守りながら連れ出すという事になる。

マリージョアでそんな騒ぎが起きれば必ず海軍本部から大将達…もしかしたら元帥もやってくる可能性がある。赤犬は意外と楽に倒せたが、アレはおそらく完全にこちらの情報が無い上に、相手が油断していたからだ。次はそう簡単に倒せはしないだろう。

そして、私達は解放された人間達や多種族達を護衛する事にもなっている。だからこそ念を入れてこれだけの戦力にした。因みにタイガーとは別行動になるのだが、最初に私が建造した戦艦レ級を旗艦としたル級2、リ級3の艦隊が護衛として連れて行ってもらう事になった。

そして今日、私達深海棲艦は、マリージョアに向けて深海鎮守府を出港した。


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