我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、海軍カラ港ヲ防衛ス!

解放された人間達を乗せる軍艦が停泊させてあるマリージョアの港。その沖では現在、中間棲姫を中心とした深海棲艦達と三大将が率いる海兵達が激しい戦闘を行っていた。

海は海軍の大将の1人…大将青雉であるクザンの“ヒエヒエの実”の能力によって凍り付いており、砲手や非戦闘員以外の海兵達は自分の武器を手に凍った海に降り立ってマリージョアを目指している。

深海棲艦側は海が凍ってしまった事で、解放された人間達を乗せた軍艦を動かすのに戦艦クラスが何人か戦闘を離脱しているが、他の人型深海棲艦は氷を砕いて体を自由にして海軍を足止めし、駆逐艦や潜水艦達は海に潜って魚雷で氷ごと海軍の軍艦を吹き飛ばしていた。

 

 

ズドドドドドドォォォォン!!!

「キヒヒヒヒヒヒ♪ココカラ先ヘハ、行カセナイワヨ!!人間共!!」

 

「ッ!!おっとぉ!“アイス(ブロック)”【両棘矛(パルチザン)】!!」

 

 

腕部や腰部に接続された砲塔や機銃が目立つまるでハリネズミのような印象を与えてくる艤装を展開した南方棲戦姫は、狂った様な笑みを浮かべながら海軍大将“青雉”…クザンと戦っていた。南方棲戦姫は笑いながら砲弾の嵐をクザンに向けて放ち続けるが、クザンは人間離れした身体能力を駆使してそれを躱して自身が食べた“ヒエヒエの実”の能力で作り出した氷の両棘矛を6本程南方棲戦姫に放った。だが飛んで来た矛を今度は南方棲戦姫が砲撃で粉々にしてしまうため、彼女にはダメージは入っていない。

また砲撃で粉々にされた自分の矛を見て、クザンは面倒臭そうな顔をする。

 

 

「あらら、また全部落とされちまった。見た目は可愛らしいオープンねーちゃんなのに、ここまでやるかぁ……」

 

「キヒヒヒ♪諦メテ帰レバ、私ハ何モシナイワヨ?多分ダケド〜♪」

 

「いや〜こっちも仕事で来てるんでなぁ。早く嬢ちゃん達捕まえねぇと、アレだよ…ほら!……ん〜………忘れた。もういいや」

 

 

面倒臭そうに頭を掻くクザンだが、南方棲戦姫に対して一切警戒を怠らず、相手の挙動を観察していた。勿論それは南方棲戦姫も気付いており、彼女は今まで相手にして来た海賊や海兵よりも強いクザンを相手に戦っている事を楽しんでいた。

 

 

「キッヒヒ♪サァ、行クワヨ!!」

ズドドドドドドォォォォン!!!

 

「んま、やるしかねーよな!!“アイスBALL(ボール)”!!」

 

 

 

 

 

 

南方棲戦姫とクザンの2人が激しく戦っている一方で、少し離れたこの場所でも1人の深海棲艦と1人の大将が激しい戦闘を行なっていた。氷の足場にはあちこちに大穴が開き、度々爆発も起きている。

 

 

「“八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)”ぁ!!!」

 

「ッ!眩シイゾ!忌々シイ海軍メ!!沈ンデシマエ!!」

ドガァァァン!!ドガァァァン!!

 

 

頭上から飛来する光の弾丸をバリアで防ぎ、敵を睨みつけながら砲撃を行なっている彼女は《泊地棲姫(はくちせいき)》。白い肌に真紅の瞳を持ち、先端部が黒っぽくなっている白髪のロングヘアーをしており、腹部が開いた黒い水着の様な服装に両手には黒い手袋、頭部には姫級の特徴である黒い機械の様な角が生えていた。

艤装は展開されており、腰辺りからスカートの様に黒い装甲がのび、背後には砲身が長い単装砲がある。そして彼女の周囲には6機程の《浮遊要塞(ふゆうようさい)》と呼ばれる口が付いた白い球体状の物体が彼女を守る様に浮かび、口から対空機銃による弾丸を放っていた。

そんな彼女の弾幕を、海軍大将“黄猿”…ボルサリーノは自分が食べた“ピカピカの実”の能力で文字通り光速で躱しながらレーザーを放っていた。だがそのレーザーもバリアで防がれてしまう。

 

 

「おぉ〜なかなか面倒だねぇ〜?ここまでわっしの攻撃を受けて無傷でいられるとぉ、わっしの自信がなくなっちまいそうだよぉ」

 

「チッ!面倒ナ能力ダナ。シカシ、光ノ速度ノ割ニハ予想ヨリ遅イ……コレナラモウ少シ調整スレバ当タル」

 

「これでもそこそこスピードを出してるんだけどねぇ〜?そんな事を言われたのは初めてだよぉ〜」

 

 

泊地棲姫から見ると、ボルサリーノのスピードは確かに速いが『光の速度』とまではいかなかった。本来光の速度は1秒で地球を7周半する為、光の速度で攻撃してくるのなら泊地棲姫の目には見えない筈なのだが、ボルサリーノのレーザーも光の中を移動する技も確かに速いが泊地棲姫の目で追う事が出来た。

 

 

「それにしても悪魔の実の能力者だって聞いていたんだけどぉ……明らかに悪魔の実とは違う力だよねぇ?いったいその力はなんだ〜い?」

 

「人間の貴様ニ言ウ積リハ無イ!撃チ墜トシテヤル!!」

ガコン!…ドガァァァン!!

 

「お〜っとっと!今のは危なかったねぇ〜。“天岩戸(あまのいわと)”」

 

 

泊地棲姫の砲弾はボルサリーノのコートを掠め、ボルサリーノは足から太いレーザーを放った。レーザーは泊地棲姫のバリアに防がれたが、爆発によって泊地棲姫を中心に、凍った海の足場に大穴が開いた。

 

 

「これも防いじゃうのかいぃ〜?自信無くすねぇ〜…」

 

「惜シカッタナ……次ハ、当テルゾ!!」

 

 

 

 

 

 

「おんどりゃあ…!!そこを通さんかい!!」

 

「……通セト言ワレテ通ス敵ガイルカシラ?第1攻撃部隊、全機発艦!」

 

 

また一方で、こちらでは“マグマグの実”の能力で両腕をマグマに変えて怒鳴る海軍大将“赤犬”…サカズキと、体を3本の滑走路で取り囲み、背後に巨大な大口を開けた白い球体状の艤装を展開した中間棲姫の2名が、周囲の軍艦や海兵達を巻き込む程の戦闘を行なっていた。

中間棲姫の滑走路から発艦した口と角がある白い球体状の艦載機がサカズキの頭上に爆弾を投下し、サカズキは自分の両腕のマグマを放って落ちて来る爆弾を防ぎ切った。彼はシャボンディ諸島で深海棲艦を舐めて重傷を負っている為、以前の様に油断する事無く戦闘を続けている。

 

 

「……意外ダワ。マサカ全部防グナンテ。戦艦棲姫ヤ飛行場姫ノ話デハ、貴方ハ大シタ事無イト聞イテイタノダケド」

 

「あの時は油断しとっただけじゃ!!もう前みたいな事にはならん!!“流星火山(りゅうせいかざん)”!!」

 

 

サカズキは空に向けてマグマの塊を何十発も放ち、中間棲姫にマグマの拳の雨を降らせた。中間棲姫は降って来るマグマの雨を見ても臆する事無く滑走路から何十機もの艦載機を発艦させ、自分に当たりそうなものだけを全て撃ち墜とした。

そして中間棲姫がサカズキの方に視線を向けると、既にサカズキは中間棲姫に接近してマグマの拳を振り上げており、そのまま中間棲姫を殴りつけた。

だがそれは中間棲姫のバリアに防がれてしまい、サカズキは舌打ちしてもう1発打ち込もうとしたが、周囲を飛んでいた艦載機がサカズキに向けて機銃を掃射して来た為サカズキはバックステップで距離を取りこれを回避した。

 

 

「チッ!厄介な鳥じゃのう!!おどれ等、いったい何者じゃあ!?」

 

「……私達ハ深海棲艦。ソレ以上デモ、ソレ以下デモナイワ。サァ…何度デモ、沈ンデ行ケ」

 

「フン!沈むのはおどれの方じゃ!!“大噴火(だいふんか)”ァ!!」

 

 

サカズキは巨大なマグマの拳を中間棲姫に放ち、中間棲姫は新たに艦載機を発艦させ、現在発艦中の艦載機に指示をだしてサカズキに銃弾と爆弾の雨を降らせた。

 

 

 

 

 

 

ドガガガガガガァァァァン!!

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」」

 

ドゴォォォン!!ドゴォォォン!!

「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」」

 

 

大将“赤犬”、“青雉”、“黄猿”の3名が激しい戦闘を行なっている一方で、他の海兵達は港を目指して進行していたのだが、人型深海棲艦達の妨害によって近付く事すら叶っていなかった。

更に普通の人型深海棲艦達だけならまだ良かったが、深海棲艦側には北方棲姫と離島棲鬼、そして北方棲姫の姉的立場にある《北方水姫(ほっぽうすいき)》と、見た目は北方棲姫と同い年ぐらいの容姿をした《潜水新棲姫(せんすいしんせいき)》の4人がいる為、海軍側は強さを知らない為分かっていないが、寧ろ大将達よりも危険な状況に陥っていた。

因みに北方水姫は白い肌と髪に青く光る目をしており、茨模様の丈の高いミトラのような冠を被っている。艤装は胸元には深海棲艦に特有の『歯』の意匠があり、上から白いマントを羽織ってサイハイブーツを履いている。背後からは巨大なマニピュレータが2本伸び、その上に三連装砲塔が付いており、両腕の籠手に似た艤装には鋭い爪が付いている。

そして潜水新棲姫は白いワンピースを着た深海棲艦特有の白いロングヘアーの幼女のような姿をしており、頭頂部から二本の長いアホ毛が飛び出している。クジラを模したような黒い艤装に下半身を収め、両手に二本の魚雷を抱ち、先端に浮き輪を結んだロープを袈裟懸けにしており、彼女の両脇には一体ずつ駆逐イ級の様な見た目をした取り巻き(?)がいる。

 

 

カエレ!!

ドガァァァンッ!!

 

「アナタタチ…ハ、…トオサナイ…!!」

 

 

 

ドゴゴゴォォォォォォン!!!

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

 

「なんだこのチビ共!?クソ強ぇ!!」

 

 

北方棲姫は艦載機と艤装による砲撃で海兵達を吹き飛ばし、潜水新棲姫は魚雷を見た目とは似つかない力で投げて同じく海兵達を吹き飛ばしていた。彼女達は普段進んで戦闘を行う性格ではないのだが、今回はヲ級に「この港ヲ皆と守り切ったラ、美味しイお菓子ヲ作ってあげヨウ」と言われている為、全力で港を防衛していた。

そんな2人を北方水姫と離島棲鬼の2名は港で解放された人間達を軍艦に誘導しながら眺めていた。

 

 

「アラアラ、フフフ♪アノ子達ッタラ。張リ切ッテイマスネェ♪」

 

「ヲ級ノ作ルオ菓子ハ絶品デスカラ、分カラナクモアリマセンノ。……ア!コラ!喧嘩シテハイケマセンノ!!」

 

 

北方水姫は頬に手を当てながら楽しそうに笑い、離島棲鬼は何故か喧嘩を始めた手長族と足長族の2人に注意する。既に凍り付いた軍艦は氷を砕いて航行可能となっており、海も離脱航路の部分だけ氷は破壊されていて、満員になった軍艦2隻は深海棲艦の護衛の下港を出港しており、もうすぐ3隻目も満員になる所だ。

 

 

「サァサァ、順番ニ乗ッテ下サイネェ〜………アラ?」

 

「覚悟ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

北方水姫が笑顔で人間達を誘導していると、刀を持ったボロボロの姿の海兵が1人飛んで来て、彼女に斬り掛かった。どうやら奇跡的に深海棲艦の防衛ラインを抜けてきた様だ。

だが北方水姫はチラッと視線を向けるとすぐに艤装を操作して2本のマニピュレータに搭載されている三連装砲塔を彼に向け、砲撃した。

 

ドドドドドドォォォォォォン!!!

「ぐぎゃぱぁぁぁぁぁ!!?」

 

「全ク、オ痛ハイケマセンヨォ?サテ、喧嘩ヲシテイル方々ガイル様デスガ……何方デショウ?」

 

「「すいませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

(((((こ、こえ〜〜………)))))

 

 

北方水姫が何故か恐ろしく感じる笑顔を見て、喧嘩をしていた2名は見事な土下座を披露し、人間達は彼女の笑顔を見て絶対に彼女に逆らってはならないと思った。

港の防衛については、問題なさそうである。


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