我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、マリージョア ヲ脱出ス!

ヲ級side…

 

 

(ドォォォォン!ドゴォォォォン…!)

 

「………おいヲ級、ちゃんと港の仲間達には海軍の足止めを命じたんだろうな?」

 

 

遠くから港を防衛している深海棲艦達の砲撃音が鳴り響いているマリージョアのとある道路の真ん中で、隣に立つ奴隷達を解放し終えて合流したタイガーが私と同じ方向を見ながら険しい顔で聞いて来た。

私はそんな彼に今見ている方向から目を逸らさずに、どうしても引き攣ってしまう顔で勿論だと答えた。

 

 

「今鳴り響いテいる砲撃音ガ証拠ダ。海軍大将だろうガ億越え賞金首だろウト突破する事ハ困難……の筈なんだガナァ………」

 

「………そうか。なら、もう1つ聞いていいか?」

 

「………何ヲ聞きたいカは察しガ付くガ……なんダ?」

 

 

私が質問の内容を尋ねると、タイガーはゆったりと片手を上げて私達が見ている方向をまっすぐ指差した。彼が指を差す方には、犬の被り物を被って背中にデカデカと『正義』の2文字が書かれているコートを羽織り、何故か海苔煎餅の入った袋を片手にバリバリと煎餅を食べながら豪快に笑う大柄な1人の老人が道のど真ん中で仁王立ちしていた。

 

 

じゃあ、何故俺達の目の前(・・・)で、海軍中将“拳骨”のガープが爆笑しながら煎餅食ってんのか説明しろ……!!

 

「そんな事私ガ聞きたイ………」

 

ぶわはははははは!!お前さん、“深海軍師”じゃな!?実際に会うのは初めてじゃわい!!」

 

 

ガープはバリバリと煎餅を噛み砕きながら何がそんなに面白いのか笑い続けている。いやホントになんでここにお前がいるんだよ。港は今中間棲姫達が防衛している筈だろうが?

 

 

「いやぁ〜ここに来るのは大変じゃったわい!港はお前さん等に完全に封鎖されておったから、仕方なく“月歩(げっぽう)”で空からマリージョアに上陸したからのう!かなり上空を行っておったのに何故か気付かれて撃ち落とされそうになったから焦ったわい!!なかなかのスリルじゃったぞ!ぶわはははははははは!!!

 

「聞きたい事ヲ先に答えテくれて感謝するヨ……」

 

「とんでもない爺さんだな……」

 

 

いやホントに私もそう思う。港には対空戦闘に長けている防空棲姫や、艦載機を飛ばせる深海棲艦達が沢山いた筈なのだ。なのにこのお爺さんは特に大した怪我も負わずに私達の前までやって来た。多少汚れていたり服やコートの端が破れていたりはしているが、その程度だ。このお爺さん本当に人間なんだろうな?実はスーパーなサイ○爺さんだったりしないか?

 

 

「しかし、お前さん等はいったい何者なんじゃ?海の上を滑る様に進むわ、天竜人を殺害するわ、海軍支部を襲撃するわ、挙げ句の果てにはマリージョアをそこの魚人と協力して襲撃して奴隷達を解放するわ……それに全く同じ顔をした奴等も大勢いるし………ん?もしかして、お前さん等全員姉妹か!?」

 

「当たらずトも遠からずダ。しかし騒がしイ人間だナ……さっきかラ笑ったり、真剣な表情になッタり、不思議そうナ顔したリ、驚愕したリ」

 

「油断するなヲ級……あの人間は今までの人間達とは違うぞ」

 

「分かってイル。今も豪快ニ笑っているガ、隙が全く見当たらナイ。それに海軍支部ヲ幾つも落トしているト、自然ト海軍の情報ガ手に入ッテ来るかラ、あの人間の事モ知っていル」

 

 

知っているからこそ、油断は出来ない。この老兵は過去に何度もこの大海賊時代の幕を開けた“海賊王”《ゴール・D・ロジャー》と闘ったり、山をサンドバッグ代わりに粉砕したり、5億の賞金首である“錐”の《チンジャオ》と呼ばれていた男と闘って勝利しているなどの経歴を持っている。油断する方が無理があるのだ。

彼の事は意思を持つ深海棲艦達全員に知れ渡っており、現在私とタイガーを守る様に艤装を展開した陣形を組んでいるリ級やル級達は真剣な表情でガープを観察していた。

彼女達の全ての砲口がガープに向けられても、ガープは臆するどころか私達の艤装を興味深げに観察している。

 

 

「ほぉ!!それがお前さん等の能力……いや、武器か?なんか格好良いのう!!」

 

「コ、コノ人間……砲口向ケラレテイルノニ、ナンデビビラナインッスカ!?艤装ヲ知ラナクモ、コレガ武器ダト察シハシテルンッスヨネ!?」

 

「当タリ前デショウ。相手ハ“海軍の英雄”ト呼バレル老兵ヨ?砲口向ケラレタグライデ臆スル事ハ無イワ」

 

 

まぁ確かに“海賊王”と闘って来た男が、見た目普通の大きさをしたバズーカ砲を徹底的に改造した様なものくらいでビビる訳ないよな。それどころかル級の構えている盾に砲が付いた見た目の艤装を見て心なしか目を輝かせている様な気がする。

 

 

「どうするヲ級?あの人間はかなり面倒だぞ…」

 

「………マリージョアの奴隷達は皆解放シテ、もうこの場所ニ用は無イ。無駄に燃料や弾薬ヲ消費してまで戦う必要は無いだロウ。どうにかシテ、港に向かってこの場所ヲ去ろウ」

 

「それもそうだが……どうやって振り切るつもりだ?あの人間がそう簡単に俺達を見逃すとは到底思えないぞ」

 

(そこが問題なんだよなぁ。いっそ残ってる艦載機の爆弾でこの辺り一帯を吹き飛ばして、その内に逃げるか?)

 

 

私がそんな事を考えていると、先程まで豪快に笑いながら煎餅を食べていたガープは笑うのを止め、真剣な表情を浮かべながらまっすぐ私を見た。

 

 

「さてと、お喋りはこのくらいにしておくかのう。儂はお前さん達を捕まえる為にここに来たんじゃが、実は個人的にお前さん達に聞きたい事がある」

 

「……聞きたい事?何ガ聞きたイ」

 

「お前さん達が儂等海軍の支部を襲撃した理由じゃ。海兵達や軍艦を沈めたのは身を守る為だと理解は出来るが、攻撃に参加しておらん海軍支部が襲撃されたのかが分からん」

 

 

ガープはそう言うとバリッ!と音を鳴らしながら煎餅を噛み砕いた。しかし襲撃した理由か……まぁ、言っても構わないな。別に隠す必要も無いし、言った所でこっちが困る事もないしな。

 

 

「マァ、簡単に言えバお前達海軍と世界政府に対する嫌がラせだナ」

 

「嫌がらせじゃと?」

 

 

顔をしかめながら聞き返して来るガープに私は小さく頷いて、話を続けた。

 

 

「お前達海軍や世界政府ハ、あの屑(天竜人)共ガ何ヲしてモ…例え人間ヲ殺してモ黙認するだろウ?それが非常に気に食わナイから襲撃しタ」

 

「天竜人か……確かに儂等は立場上、天竜人は護衛対象じゃ。天竜人が儂等の目の前で子供を殺そうが何をしようが、儂等は手を出す事は出来ん。実際、世間では天竜人はあまりいい印象はないしのう。じゃが無差別に海軍支部を襲撃する事もないじゃろう?中にはその支部のお陰で海賊の襲撃が無くなった場所もあるんじゃぞ」

 

 

ガープは拳を握り締め、少しだけ殺気を放ちながらそう言った。仲間が無差別に襲撃された事に怒りは抱いていたんだろうな。

 

 

「私達モ手当たり次第に支部ヲ襲撃している訳ではなイ。私達ガ襲撃した支部は全テ、裏で海賊ヤ犯罪組織などト繋がっテいるものばかりダゾ?」

 

「な、なんじゃと!?それは本当か!?」

 

 

私が発した言葉に反応して、ガープは驚きの表情をした。だが実際私達が襲撃した海軍支部は全て裏で海賊と繋がっていたり、島の住民達から法外な税金を巻き上げていたりと、好き勝手にやっていた連中がいた場所だ。海軍本部へ定期的に提出されていた報告書は全て偽造されたものらしいので、彼が知らないのも無理はないだろう。

私達の場合は集積地棲姫が調べてくれたから分かったんだが……実を言うと彼女がどうやって調べたのか私は勿論、深海棲艦全員が知らない。明らかに普通なら絶対に知られる事の無い情報をいつの間にか入手しているんだけど、どうやって入手したのかは全く教えてくれないんだよね。

 

 

「本当ダ。私達の仲間ニ情報収集能力に長けてイル者がいてナ。実際襲撃後その支部を調べてみるト、海賊とノ裏取引、違法ドラックの売買、法外な税金ノ巻き上げなどなド……マァ、信じるかどうカは自由だガ」

 

「成る程のう……そうじゃったのか」

 

私が言うのモなんだガ信じルの早くないカ!?

 

 

ビックリする程簡単に信じたな!?いや嘘じゃないから別に構わないんだけど、仮にも敵である私の言葉を簡単に信じるのは流石にどうなの!?ほら!リ級やル級、更にはタイガーまで目を見開いて驚いてるよ!!

 

 

「儂だって長い間海兵として色んな奴等を見てきたからのう。お前さんが嘘を言っとるかどうかぐらい分かるわい」

 

「いやそれデも少しハ疑うとカするべきだト思うぞ!?」

 

「なんじゃ、嘘なのか?」

 

「エ?…いヤ、本当だけド……」

 

「なら大丈夫じゃろう!ぶわはははははは!!

 

 

ガープはそう言うと再び豪快に笑い出した。今まで色んな海兵達と戦って来たが、こんなにも自由過ぎる海兵は見た事ないかも知れない。

私が呆れ顔でガープを見ていると、クイクイと誰かに私のマントを引っ張られた。私がそっちを向くと、今までずっと一言も喋っていなかったレ級がまるで新しい玩具を見付けた時の子供の様な表情を浮かべながら私を笑顔で見上げていた。

 

 

「ヲ級オ姉チャン!アノ人間、沈メテモイイ!?」

 

「ダメ。あの人間ハ一応不正などは行っテいない海兵ダ。沈めチャいけなイ」

 

 

多分さっきガープが放った殺気に反応したな?この子はホッポよりもずっと好戦的だから仕方ないとは思うが、今回は相手もかなりの実力者なので、下手をすればレ級が怪我をしてしまうかもしれない。だから今回は諦めてもらおう。

 

 

「戦いたいナラ鎮守府に戻れバ私が好きなダケ付き合ッテあげル。だから今回ハ諦めテクレ」

 

「エェ〜……デモ…」

 

「帰ったラお前の大好きナ ハンバーグを作ってあげルゾ?」

 

「レ!?ホント!?」

 

 

一瞬物凄く不満そうにほっぺを膨らませたレ級だったが、大好きなハンバーグを作ってあげると言ったら目をキラキラさせた。私が「本当ダ」と言いながら頷くと彼女は両手を上げて万歳しながら喜んだ。

 

 

「レレ〜〜♪ハンバーグ!ハンバーグ!」

 

「お前は本当にハンバーグが大好キだナ。サテ、そう言う事だカラ私達はこれデ失礼すルゾ」

 

「えぇぇ〜……儂は別に戦っても構わんのじゃが…」

 

「何故お前がそんナに残念そうニシてるんだヨ……」

 

 

その後、私達は色々あったがなんとかマリージョアを脱出する事に成功した。ん?ガープはどうしたって?ガープは私が艦載機を全て飛ばして足止めして振り切った。

………殆ど破壊されちゃったけどね。帰ったら妖精さん達に新しく艦載機を作ってもらわないとなぁ…。

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