我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、世界経済新聞社ニ取材ヲ求メラレル!

ヲ級side…

 

 

「………平和だネェ〜」

 

「ヘイワ〜♪」

 

「レレ〜♪」

 

 

私は今、ファールジン島に新しく造られた灯台のある突堤で、レ級とホッポと一緒に海に釣り糸を垂らしていた。ぶっちゃけ魚を捕まえるなら自分達で直接海に潜って捕まえる方が私達にとって遥かに捕まえ易いのだが、偶にはこうしてゆったりと釣りを楽しむのもなかなかいいものだ。

あのマリージョア襲撃から早くも2年の年月が経過した。あの事件は瞬く間に全世界へと知り渡り、海軍や世界政府は事件の主犯であるタイガーに2億3000万ベリーの懸賞金がかけられ、私達深海棲艦には普通の駆逐艦から姫級や鬼級までそれぞれ3億ずつ金額が上乗せされた。

特に他の深海棲艦達に指示を出している私は、どうやら世界政府や海軍共にボスだと認識された様で、今では他のヲ級達と同じ“深海軍師”という通り名から“深海総督”になり、懸賞金に至っては私だけ8億4500万ベリーにまで一気に上がってしまった。何故に?私よりもっと凶悪そうな深海棲艦が今も約2名私の隣で釣りしてんだけど?

 

 

「(まぁ、いいか)…さぁテ、今日は何ガ釣れるかナ?」

 

「私ハ滅茶苦茶大ッキイ魚釣ル!100mクライノヤツ!」

 

「クジラ!サメ!シーラカンス!」

 

「ウン、レ級は可能性ハあるけどコノ釣竿だとちょっと難しいカナ。後ホッポ?なんでその3匹ヲ選んだノ?」

 

 

クジラやサメはまだいいけど、シーラカンスってこの世界の海にいるのか?というかシーラカンスって食べられるっけ?

 

 

「ここに居たんですね。捜しましたよ」

 

 

私がシーラカンスは食べられるのか否かというとてもくだらない事を考えながら波に揺られる浮きを眺めていると、背後から声が掛かった。声のした方に顔を向けると、そこには若草色というのだろうか?そんな色の髪をした少し癖のあるロングヘアーの女性と、彼女より少し青っぽい色をしたミディアムボブの見た目12、3歳くらいの女の子が立っていた。

彼女達は2年前にマリージョアで解放された元奴隷の姉妹だ。この2年で殆どの元奴隷達を住んでいた島に返したのだが、彼女達の様に帰る場所をなんらかの理由で失っている者達は、タイガーとの話し合いの結果、私達が引き取る事になったんだ。ただ少し数が多かったので、占領した元海軍支部の近隣の島々に事情を話して、私達が海賊などから島を守る代わりに彼等を受け入れてもらった。この島にはだいたい3000人ちょっとかな?それぐらいの人が新しく暮らすようになった。今では島で暮らしていた元奴隷の住民達と仲良く生活している。

因みに今目の前にいる若草色の髪の女性は《モネ》。女の子の方は《シュガー》という。2人とも悪魔の実の能力者だ。モネは体を雪に変え、周囲に雪を降り積もらせ操る“ユキユキの実”の自然(ロギア)系能力者。そしてシュガーは触れた物を人だろうが動物だろうがなんでもオモチャに変えてしまう“ホビホビの実”の超人(パラミシア)系能力者だ。こう見えて実年齢はもっと上らしいのだが、女性に年齢を聞くのは流石に失礼なので知らない。

彼女達はこの島に来て1週間くらい経った頃に私の所に来て仲間にしてくれと頼み込んで来た。なんでも自分達を奴隷から解放してくれた私達に恩義を感じたんだとか。こちらとしては拒む理由もなかったので、彼女達には港湾棲姫の下でこの島の管理の仕事を手伝ってもらっている。

 

 

「モネとシュガーじゃないカ。どうかしたのカ?」

 

「ア、シュガー。イッショニ、サカナ ツル?」

 

「私はやらないわよ。それよりもヲ級。貴女にお客さんよ」

 

「私に客?この島ニ辿り着ける者となるト……タイガー達カ?」

 

 

タイガーは奴隷達を解放したその年に、知り合いや元奴隷だった魚人達を集めて《タイヨウの海賊団》を結成したらしい。本人曰く、『行き場のない脱走した魚人奴隷達の受け皿としてこの海賊団を結成した』とのこと。一応彼とは一緒にマリージョアを襲撃した仲なので、全深海棲艦に彼等が私に会いたいと言って来たらこの島に誘導せよと命じている。だから私に客が来るとなると彼等以外にいないのだが、モネは首を横に振った。

・・・・・え?違うの?

 

 

「タイガー達じゃないのカ?」

 

「えぇ…巡航中のリ級達の艦隊が、“新聞屋”を名乗る鳥が乗った船を発見したんですが……その鳥が貴女に取材をさせてくれと言ってリ級に抱き付いているそうで…」

 

ハ!?鳥!?

 

 

“新聞屋”を名乗る鳥が船に乗ってリ級に抱き付いて私に取材をさせてくれと言っている?………ごめんなんか私の頭の中で物凄く意味不明な光景が浮かび上がってるんだけど、ホントにどういう事だ?

 

 

「……取り敢えズちょっとリ級に連絡しテみるカ。今日の巡航担当ハ124番だったな」

 

 

私は釣竿が海に落ちないよう固定して、リ級に連絡を取ってみた。

 

 

「こちら空母ヲ級改flagship。私ヲ取材したいト言ってイル鳥がいるトいうのは事実カ?」

 

『ソウナンッスヨ。コレドウスルッスカ?今ココデ沈メル事モ出来ルッスケド……』

 

「“新聞屋”ト名乗っているそうだガ……その鳥ノ名前ハ?」

 

『ア、イキナリ喋リ出シタンデ聞イテナカッタッス。……チョットアンタ!名前ハナンテ言ッス?………オーケー!分カッタッス。鳥ノ名前ハ、《モルガンズ》ッテ言ウラシイッス!』

 

 

モルガンズ……確か《世界経済新聞社》の社長がそんな名前だったな。なんでも新聞のネタの為なら自分の命を懸ける男だとかなんとか……そんな男なら確かに取材に来たと聞いても納得出来るな。この島は世間的には存在しない島ではあるが、その存在を隠している世界政府と繋がりがある世界経済新聞社の社長なら、この島に来る事も可能だしな。

 

 

「………マァ、別に新聞ニ載せられテモ今更だしナ。彼ヲ私の所に連れテ来てくレ。場所は《フライハイト》の個室デ」

 

『了解ッス!!』

 

 

リ級はそう言うと通信を切った。フライハイトとはこの島で元料理人だった者が作ったレストランだ。他にも色々個人で店をやっている者も最近増えてきているが、話し合いならフライハイトには個室があるからこっちの方が向いている。

 

 

「ジャ、私ハこれからフライハイトに行って来ル。ホッポとレ級は釣りヲ楽しむとイイ」

 

「「ハ〜〜イ!!」」

 

「ア、後シュガー。ちょっと来てくレ」

 

「?何よ……?」

 

 

シュガーは訝しげな表情で私を見ながらも、私の近くに歩いて来た。私は固定していた釣竿を持ち、彼女に手渡した。

 

 

「後宜しク」

 

 

私は釣竿を手渡されてポカンとしているシュガーを置いて、フライハイトに向かって走った。背後からシュガーの困惑した声が聞こえて来る。

 

 

「……はぁ!?ちょっと何勝手に決めてんのよ!!」

 

「レ!!シュガー!引イテル!引イテル!」

 

「え?えぇ!?ちょ、ちょっとこれどうすればいいの!?」

 

「わ、私に聞かれても!私も釣りなんてやった事ないし…!」

 

「シュガー。ガンバッテ!」

 

 

仲が良さそうで何よりだ。

 

 

 

 

 

 

「おぉ〜!!噂通りの白い肌!蒼い炎の様な片目!黒い生き物の様な大きな帽子!!君が“深海総督”のヲ級だね!?会えて光栄だ!私は世界経済新聞社のモルガンズという者だ」

 

「ア、アァ……私は空母ヲ級改flagshipダ。ヨロシク」

 

 

フライハイトの店の奥にある個室にて、私は港湾棲姫と一緒に、シルクハットを被った鳥の着ぐるみの様な見た目の人物…世界経済新聞社の社長、モルガンズと握手を交わした。

しかし驚いたな……本当に鳥の様だ。

 

 

「私ハ、港湾棲姫トイイマス。初メマシテ」

 

「なんと!君があの“鬼子母神”か!?手配書では写真入手失敗で顔は載っていなかったが……まさか、こんなにも美しいとは!これは、ビッグ・ニュース!!」

 

 

そう言いながらカメラ(見た目はデカいカタツムリ)を取り出して港湾棲姫を撮影する。港湾棲姫は写真を撮られるのは慣れていないのか、モルガンズの勢いにオロオロしている。

……“鬼子母神”か、なんか納得出来る。

 

 

「……お前、取材しに来たんジャないのカ?写真ヲ撮るだけなら私ハ釣りヲしに戻るゾ」

 

「ハッ!そうだった!」

 

 

モルガンズは椅子に座りなおすと、鞄からメモ帳とペンを両手…いや両翼?で器用に取り出すと、私達の方を向いた。

 

 

「では改めて…この度は取材に応じてもらい、感謝する」

 

「気にすル事は無イ。それデ?何ヲ聞きたいんダ?言えるものだけデいいナラ、答えよウ」

 

「それだけでも十分だ!君達は今や世界中の人々が注目しているが、今まで誰も海軍を相手に圧勝する君達を取材しようという強者は私の所にはいなかったからね」

 

 

そんなに注目されているのか……そういえばマリージョアを襲撃して2〜3週間程した頃から別の島へ食料の買い出しに出掛けた時によく視線を感じるが、それが原因か?

 

 

「さて、先ずは1つ目の質問だ。ズバリ!君達は何者なんだ?私は今まであらゆる種族達を見て来たが、君達の様に海の上を立ったり、同じ顔をした者達が沢山いる種族は見た事がない」

 

「私達は深海棲艦。簡単ニ言えば沈んだ船ノ魂が人の姿ニなったものダ。元が船だかラ海の上に立てるシ、同じ艦種ならそっくリな見た目の者が生まれル。どうやって生まれルカ、元はなんの船だったかハ悪いが答えられなイ」

 

「ッ!?つまり君達は船が人間になった種族なのか!?今まで海軍や世界政府は何かの悪魔の実の能力者ではないかと推測していたが……これはビッグ・ニュース!!」

 

 

モルガンズは物凄い勢いでメモ帳にペンを走らせる。流石は新聞記者、ペンを走らせるスピードが速い。残像で手が3本くらいに見えないかアレ?

 

 

「これは凄いぞ!この取材は、今までにない素晴らしい新聞が書ける気がする!!次の質問に移るぞ!!」

 

 

それから約1時間。数え切れない程の質問をするモルガンズに、私と港湾棲姫は交代しながら答えて行った。中には話せないものもあって答えられないと言ったが、彼は気にした様子もなく次の質問に移って行った。取材を終えると彼は島に出来た町を撮影しに行き、しばらくすると乗って来た船に乗って帰って行った。

そして翌日、ニュース・クーが運んで来た新聞には早くも私達の事が載っていた。あの人仕事早いな!?


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