普通の船より沢山の大砲を搭載し、船首には一際大きい大砲が付いている。黒い帆には骨の代わりに大砲が交差した髑髏のマークが赤色で描かれており、マストの先に付いた海賊旗にも同じマークが描かれている。殺る気満々な海賊船に乗っている彼等は《フレイム海賊団》。懸賞金3200万ベリーの海賊、通称“戦争屋”《ガンスキー・スミス》率いる海賊達である。
本来なら計5隻の船を持つそんな彼等だが、今はその数を2隻に減らし、皆焦った様子で甲板を走り回っていた。そんな時、後ろに付いていた彼等の仲間の船が大爆発して海に沈み始めた。
「ッ!?ガンスキー船長!とうとう残るは俺達の船だけに成りました!」
「畜生!!何ボサッとしてやがる!?撃てぇ!!撃ち殺せぇ!!」
炎を上げて沈んで行く仲間の船を見て叫んだ船員に片腕をガトリングガンになっている大柄な男…ガンスキー・スミスが怒鳴る。船員達はすぐに自分達の自慢の大砲を用意し、何故か船が見当たらない方向に向けて大砲を撃ちまくった。
「船長!!ダメです!敵が遠過ぎて砲弾が届きません!!」
「クソッ!!なんでこんな事に……」
ガンスキーは苦虫を噛み潰した様な顔で頭を抱えた。つい30分前まで自分達は次の島を目指して航海をしていた筈なのだ。だが見張りをしていた仲間の1人が
しかし的が小さ過ぎて砲弾は当たらず、次の弾を撃とうと準備を始めた時、仲間の船の内の1隻が突然大爆発を起こして沈んだのだ。ガンスキーは身の危険を感じて逃げる事にしたのだが、次々と船が沈んでいき、もう自分達が乗る船しか残っていなかった。
「ガンスキー船長!敵がいる方向から何か飛んできます!」
「何!?砲弾か!?」
「い、いえ。なんと言うか…黒い鳥の様な…」
「は!?鳥!!?」
望遠鏡を覗きながら報告する仲間の見る方向に目を向けると、段々黒い何かが飛んで来るのが見えた。アレはなんだと疑問に思っている内にそれ等はあっという間に船に接近し、銃弾を放って来た。ガンスキーの腕に付いたガトリングガンよりも早い連射速度で弾丸は放たれ、弾丸の雨は甲板にいた仲間達に襲い掛かった。
「ぎゃあああああ!!?」
「ぐわぁあ!!痛ぇ!!痛ぇよぉ!!」
次々と撃たれて倒れて行く仲間達に大きく舌打ちし、ガンスキーはガトリングガンを構えて上空を旋回している黒い鳥の様なものを撃ち墜とそうと銃弾を放った。しかしそれ等が速過ぎて狙いが定まらず、弾は当たる事はなかった。黒い鳥の様なものはそのまま敵がいた方向へ飛んで行った。
「クソが!!アレがあの野郎の《悪魔の実》の能力か?」
《悪魔の実》、別名“海の秘宝”と呼ばれる食べると何かしらの能力を手にする代わりに、海に嫌われて2度と泳げなくなる実の事である。悪魔の実には通常では有り得ない特殊な体質になる“
ガンスキーの予想では“超人系”だと予想しているのだが……。
(なんで悪魔の実の能力者が海の上を走ってやがる!!?)
「ッ!?ガンスキー船長!上!」
無事だった仲間の叫びに反応してガンスキーは真上を見上げた。そこにはさっきの黒い鳥の様なものが3匹飛んでおり、黒い何かを落とした。風を切る様な音を立てて落ちて来るそれがガンスキーの目の前に落ちた瞬間、ガンスキーの意識は途絶えた。
大爆発を起こして燃え盛るフレイム海賊団の海賊船を、遠くから1人の黒い大きな帽子を被った少女がマントを風に靡かせながら眺めていた。
★
ヲ級side…
私は燃えながら海に沈んで行く海賊船を眺めながら深い溜め息を吐いた。今月に入って5回目の海賊の襲撃だから仕方ないと思う。
私が空母ヲ級になってから早4ヶ月。この世界の生活にも慣れ、今は島を転々としながらお金を稼いでいた。島を出た時は無一文だったからね。
お金は今みたいに海賊船を沈め、海に沈んだ海賊船の残骸の中から金目の物を回収している。最初は人を殺す事を躊躇っていたが、慣れとは恐ろしいもので、今では敵には躊躇い無く攻撃出来る。
「ン、ゴ苦労様。戻ッテクレ」
私は先程の海賊船を爆撃させた深海棲艦の使っている先の尖った甲羅に目が付いた様な見た目をした艦載機を回収する。発艦する時はやっぱり頭の艤装の口が開いてそこから飛び立って行った。
あ、後砲撃も少し前に試したのだが、砲撃して飛び出した砲弾が私から少し離れたら実弾サイズに巨大化して飛んで行ったんだけどどうなってんの?
「サテ、早速金目ノ物ヲ回収スルカ」
私は艦載機を全て回収したのを確認すると、私は先程の海賊船から金目の物を回収する為に海に潜って行った。
うん、やっぱり不思議な感覚だ。ゴーグルも酸素ボンベも付けていないのに海の中で息も出来るし、深い所でも昼間の様に……とまでは行かないが、曇りの日程度の明るさで見える。それに深海棲艦だからかなんとなく心地良く感じる。
(お!あったあった。さて、今回はいくらあるかな?)
かなり深い所に海賊船の残骸は沈んでいた。船長室に大体の海賊は金貨やら金庫やらを置いている。私は船長室らしき場所を見つけ、中に入った。
(ふむ…今回は金庫が1つか。まぁ、いいか)
私は自分と同じくらいの大きさの金庫を持ち上げて海上へと浮上した。この体って意外に力持ちなんだよな。海面に出た所で金庫の扉をこじ開けて中身を確認。
・・・・う〜〜〜ん。
(札束が20個…金庫の大きさの割に滅茶苦茶少ない。金欠だったのかな?)
取り敢えず中身は全部頭の艤装の口の中に放り込む。コレ、何故か口に入る大きさの物なら沢山入れられるんだよね。出したい時はそれをイメージしながら帽子に手を突っ込むと出てくるのだ。
「良シ、次ノ島ヲ目指スカ。……フム、コッチダナ」
私はシャボンディ諸島の《
★
「・・・ドウシヨウ。完全ニ迷ッタ」
数時間前の自分の顔面に1000ポンド爆弾をぶつけてやりたい。何が「コレがあれば確実に次の島まで迷わずに進む事が出来る」だこの野郎。さっきから針がグルグル回りまくってるわ。
私は深い溜め息を吐いて辺りを見回す。どの方角を見ても海しか見えず、島影すら見えない。30分程前に次の島…海図によるとシャボンディ諸島と呼ばれる島に向かっている途中、突然エターナルポースの針がグルグル回り始め、次に進む航路が分からなくなってしまったのだ。
「ア!電探ヲ使エバ、ナントカナラナイカ?」
電探とは簡単に言えばレーダーの事である。正直言ってエターナルポースがダメならコレに頼る以外には運に任せて進むしかない。私は集中しやすいように目を閉じて電探を使用した。すると今いる場所から7時の方向に反応があった。反応した数は3つ。全く動かない事を見るにどこかに停泊した船だろう。
私は目を開き、電探を使用しながら反応がある方へ向かった。しばらく反応のする方向へ進んでいると、突然先程まで島影すら見えなかった海の上にそこそこ大きな島が出現した為驚いて足を止めた。
緑豊かな島だが、港らしき場所があり、そこには3隻のガレオン船が停泊していた。アレが電探で探知出来た船だな?
「シカシ、本当ニ突然現レタナ。ドウイウ原理ナノダロウカ?」
物凄く気になる所ではあるが、流石に30分も変な海域をグルグルしてたら体力的にではなく精神的に疲れた。私は取り敢えず島に上陸する為にゆっくり進み始めた。
★
「ウッソダロオイ……」
島に無事上陸出来た私だが、そこで島の異変に気付いた。なんというか、建物がボロボロなのだ。もう何十年も使われていない様な建物に、今にも沈んでしまいそうなガレオン船。それにさっきから電探で捜索しているが、人の反応が全くしない。おそらくここは捨てられた無人島なのだろう。
(しかし参ったな。この様子だとお金を持っていてもなんの役にも立たない。エターナルポースは未だにグルグル回っている。……仕方がない。今日は野宿にするか)
艦載機を使えば簡単に魚も捕まえられるし、海に入ればボーキサイトや燃料も確保出来るしな。そうと決まれば寝床の確保だな。
私はボロボロになっている建物の中でもレンガで出来たそこまでボロくない2階建て建物の中に入った。中は誰も住んでいないからか埃だらけで、玄関の扉も開けようとすると扉ごとバキッ!と取れてしまった。私悪くないよ?
とにかく1番マシそうな部屋を探して建物内を散策した。10分程すると2階にソファや机が置いてある応接室の様な場所を見つけた。
「コノ部屋ニスルカ……ン?」
ソファの上の埃を払おうとすると、妙なものを見つけた。ソファの上の埃に所々足跡の様な跡があるのだ。最初はネズミか何かだと思ったが、少しおかしい。まるで
(となるとこの島小人でもいるのか?足跡はつい最近ついた様だし……取り敢えず少し休むか。晩御飯は確かウォーターセブンで買ったみずみず肉があったはずだし)
私はソファの埃を払って腰を下ろした。再びエターナルポースを見るが、やはりまだ針はグルグル回っている。この島が針を狂わせているのだろうか?さっきも突然島が現れたから可能性はあるな。なんとなく天井を見ながら思考を巡らせていると、ガタン!と何かが床に落ちた様な音がし、反射的に音がした方向を見た。
『『『あっ……』』』
「・・・・ハ?」
私は予想外の光景にそんな声が出てしまった。私の視線の先には本棚があり、床に落ちた古い本があった。おそらくコレが落ちた音だろう。だが問題はそこではない。本があったであろう場所にニ頭身程のデフォルメされた少女の姿をした小人…