我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、妖精さん達ト交渉ス!

ヲ級side…

 

 

『た…退却ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!

 

『『『『『わぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』』

 

エエェェェェェェ!!?

 

 

真ん中にいた妖精さんが叫ぶと、机の影やソファの下、箪笥の引き出し、シャンデリアの上などから沢山の妖精さん達が飛び出し、皆一斉にドアから逃げ出した。数は軽く30人はいそうだ。

 

 

「…アッ!待、待ッテ!!」

 

 

突然の事に驚いて反応が遅れたが、私は慌てて彼女達を追って廊下に出た。妖精さん達は思ったより足が速く、更に体が小さい為なかなか捕まらない。このままでは逃げられてしまいそうなので、私は手に持ったステッキを振って妖精さん達に向けた。

 

 

「第1攻撃部隊!全機発艦!彼女達ヲ外ヘ逃ガサナイデ!」

 

 

すると頭の艤装の口が開き、中から5機の艦載機が発艦した。艦載機は廊下を走る妖精さん達の上を通過して先回りした。それを見た先頭の妖精さんは急ブレーキを掛けたが、後ろにいた妖精さんは止まる事が出来ずに衝突し、その衝突した妖精さんに更に後ろにいた妖精さんが衝突する連鎖が起こり、妖精さん達はみんな転んでしまった。

私はようやく彼女達に追いつき、妖精さんの山の中から最初に叫んだ妖精さんを掘り出し、手の上に乗せた。妖精さんは目を回していたが、すぐに今の自分の状況を把握すると頭を抱えてプルプル震え始めた。例えるとアレだ、どっかの紅い館の吸血鬼お嬢様のカリスマガードみたいな感じ。

 

 

『ひえぇぇぇぇ!お助けなのですぅぅぅぅ!』

 

『あ!リーダーが捕まった!』

 

『リーダー!あなたの事は忘れません!』

 

『ねぇ?今どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?』

 

 

なんか他の妖精さん達が凄い事言ってる!最後の奴に至っては完全に煽ってるだろ!あ、私の手の上に乗っている妖精さんが泣きそうになってる!どうしよう、私子供どころか妖精さんのあやし方なんて知らないんだけど!?

 

 

「エット…コ、コレカラ良イ事アルト思ウゾ?」

 

『グスン…せめて言い切って下さいよ』

 

 

リーダーと呼ばれている妖精さんはどこからか取り出したハンカチで涙を拭きながらそう言った。それにしてもどこからどう見ても『艦これ』の妖精さんだよな?なんでこんな所にいるんだ?……いや、ここに来るまで手が長い人や足が長い人や普通の人の倍近い身長の大男とかがいた。もしかしたら妖精さんにそっくりな別の種族かもしれな……。

 

 

『うぅ…まさか深海棲艦に励まされるとは…』

 

「ハイ私ノ知ッテル妖精さんダワ…」

 

 

なんでこの世界にいるんだ?エラー娘の話ではここは【ONE PIECE】の世界の筈なんだろ?しかも深海棲艦を知っているって言っても、この世界には私以外に深海棲艦はいない筈だ。

私が首を傾げていると、いつの間にか全員立ち上がった妖精さん達の内の1人が隣にいた妖精さんと話し始めた。

 

 

『なんだか、私達の知ってる深海棲艦と違くないですか?』

 

『ふむ、確かにさっきから攻撃してこないな』

 

『深海棲艦って危ない艦娘じゃなかったか?』

 

『もしかして実は良い人です?』

 

 

どうやら彼女達は深海棲艦の事は知っているようだな。という事は彼女達は『艦これ』の世界からやって来たのだろうか?

 

 

「私ハ別ニ危害ヲ加エル気ハ無イ。ソレヨリ深海棲艦ノ事ヲ知ッテイルノカ?私以外ニモ見タ事アルノカ?」

 

『え?い、いえ。私達は知識として深海棲艦や艦娘達を知っているだけで、今まで見た事は無いです』

 

「知識?ドウイウ事ダ?」

 

 

私が意味が分からず手の上に乗せた妖精さんに詳しく聞いてみると、妖精さんは少しずつではあるが教えてくれた。

彼女達はまだこの島に人が住んでいた頃に、気が付いたら色々な知識や技術を持ってこの島にいたらしい。最初は自分達で話し合った結果、この島の住民達と共存しようとした。だが、この島の住民達に彼女達の姿は見えず、更にはある日島の人々は島を捨てて海に出て行った。

理由は大きく分けて2つあり、1つはこの島が《記録指針(ログポース)》や永久指針(エターナルポース)の針を狂わせ、更に蜃気楼によって島が接近しないと見つからず、漁に出た人達が遭難するという事故が多発しまくった為、住みにくい環境だったから。

もう1つはある日を境に島のあちこちで食料が消えたり、誰も触っていないのに物が倒れたり動いたりするなどの怪奇現象(・・・・)が起きるようになったからである。

・・・・・・うん。

 

 

「1ツ目ハ兎モ角、2ツ目ハ完全ニ妖精さん達ガ原因ダロ?」

 

『『『『『確かにそうですけど!』』』』』

 

 

しかし、成る程な。私のエターナルポースの針が狂ったり、あの突然島が現れたりする現象は全部この島が原因だったのか。蜃気楼って確か島や水上の物が浮いて見えたり、逆さに見えたりするだけだったと思ったのだが…この世界の海ならそんな現象が起きても不思議じゃないな。

 

 

「ソレナラ、島ヲ出テ行ク住民達ニ、付イテ行ケバ良カッタンジャナイノカ?」

 

『それが出来たらここに居ねーです!』

 

『島から出ようとすると私達が最初に現れた場所にテレポートするです!』

 

『279回中、279回失敗したです!』

 

『そんな事よりお腹減ったです…』

 

 

ふむ、つまりこの島から妖精さん達は何故か出る事が出来ないという事か。というかもうそろそろ他の妖精さん達が飽きて来たのか、何人か遊び始めたな。

しかしそうか、お腹が空いたか。確かにもう日が暮れて来たからな……良し!

 

 

「私ハコレカラ夕食ヲ食ベルガ……一緒ニ食ベナイカ?」

 

『『『『『いいのですか!!?』』』』』

 

私の誘いを聞くと、妖精さん達がみんな揃ってキラキラした目で私に注目した。私が勿論だと頷くと、妖精さん達から歓声が上がった。この人数ならウォーターセブンで買ったみずみず肉で事足りるだろう。もし足りないようなら炒飯でも作ってあげよう。

私は出していた艦載機を回収し、妖精さん達を引き連れて外に出た。

 

 

 

 

 

 

『う、うめぇ!この肉うめぇ!』

 

『久しぶりのお肉です!』

 

『この炒飯うめぇです!お代わりを所望するです!』

 

「口ニ合ッテ良カッタ。ア、みずみず肉マダアルケド、食ベル?」

 

『『『『『いただきます!』』』』』

 

 

現在時刻、午後7時37分。私は現在、妖精さん達と一緒に夕飯を食べている。それにしてもよく食べるなぁ。しかもなんか、美味しそうに炒飯やみずみず肉をパクパク食べる姿を見てると心が和むわぁ♪

でも、あの小さな体のどこに食べた物が入ってるんだ?明らかに自分の体より多い量を食べまくってるんだけど。

私が美味しそうにみずみず肉を頬張る妖精さんを見ていると、リーダーと呼ばれていた妖精さんが話し掛けて来た。この子は他の子と違って真っ黒な作業着に黄色いヘルメットを着用しているから区別しやすい。『艦これ』の工廠娘の色違いだな。

 

 

『あの、ヲ級さん。この度は私達にご飯を下さいまして、ありがとうございます』

 

「気ニシナクテ良イ。私モ妖精さん達ヲ見レテ良カッタト思ッテル(だって可愛いし……)」

 

 

妖精さん…紛らわしいからリーダー妖精でいいか。リーダー妖精はペコリと下げていた頭を上げ、少し嬉しそうにしていた。話を聞いた限りだと、彼女達はこの島でずっと自給自足の生活をしていたらしい。ただ、食べてるものが哀れ過ぎた。昨日の晩御飯、タンポポの葉っぱのソテーだってよ。なんでも魚が釣れなかったらしい。お肉に至っては動物狩に行って逆に喰われそうになったらしい。

 

 

「ソウ言エバ、色々ナ知識ヲ持ッテルラシイナ。ドンナ知識ダ?」

 

『色々ですよ?建物の建築とか装備の開発とか……あ、後深海棲艦(・・・・)の建造とか…』

 

「待テ待テ待テ!!チョット待ッテ!!!

 

 

今普通の妖精さんなら絶対有り得ない事聞いたんですけど!?深海棲艦の建造って言ったよな今!!

 

 

「深海棲艦ノ建造ダト!?オ前達カラ見テ深海棲艦ハ、危ナイ艦娘ッテ言ッテタダロウ!!」

 

『だから建造しなかったんですよ。それに建造に必要な設備も資材もありませんし』

 

「逆ニ言エバソノ2ツガアレバ建造出来ルノカ!?」

 

 

うっそだろオイ!じぁあ何か?私が設備と資材を用意すれば深海棲艦が建造出来るのか?……ヤバい、滅茶苦茶気になる!

それに今まで1人旅だったから、仲間が欲しいと思っていたからな。………良し!

 

 

「仲間ノ深海棲艦ニハ一度会ッテミタイナ。…資材ナドハ私ガ集メルカラ、一度建造シテミテクレナイカ?」

 

『………なら、条件があるです』

 

 

かなり難しい顔をしながら考え込んだリーダー妖精は、他の妖精さん達を集めてコソコソ話し出した。しばらく話し合った後、リーダー妖精と妖精さん達

 

 

『1つ、建造する為に必要な資材はヲ級さんが用意する事。設備については資材をくれれば私達で作るです。必要な資材はボーキや鋼材、燃料などです。

2つ、私達に食料を提供するです。保存庫とか作りますので日持ちのする食べ物がいいです。出来ればお肉がいいです。

3つ、もし建造した深海棲艦が攻撃してきた時は貴女が私達を守るです。私達の知識通りなら、ヲ級さんは別ですが、深海棲艦は基本人類の敵のはずなので』

 

「フム………」

 

 

1つ目は問題ない。ボーキサイトや鋼材は海に潜れば幾らでも取ってこれる。資材を持って来れば設備は妖精さん達が作ってくれるらしいのでそこは助かる。

2つ目も問題ない。ぶっちゃけ昨日の晩御飯の話を聞いた時から定期的に食料を持ってこようと思っていたからな。お金はそこら辺の海賊を沈めればいい。

問題は3つ目の条件だ。いくら改flagshipとはいえ私は空母ヲ級だ。1発目の建造で《姫級(ひめきゅう)》が出て来たら勝てるか分からない。

 

 

「………分カッタ。ソノ条件ヲ飲モウ。ドノ道貴女達ニハ定期的ニ食料ヲ提供シヨウト思ッテイタカラ」

 

『マジですか!!良し!やりましたよヤロー共!食料確保です!』

 

『おー!流石リーダー!』

 

『建造か…フッ。腕がなるです』

 

『お肉祭りじゃ〜〜♪』

 

 

私が条件を飲むと妖精さん達は歓声を上げた。今日はもう遅い為、明日私が資材を海に潜って採取して来て、その資材を使ってリーダー妖精を中心とする工廠娘達が建造に必要な設備を作り、その後また資材を取って来て建造する事になった。

 

 

 

 

 

 

私が妖精さん達と出会って早1週間経過した。この1週間、私はひたすら海に潜って資材を採取して工廠娘達に渡した。工廠娘達は資材を受け取ると、あっという間に工廠を港に建設した。工廠娘の技術力は凄いものだった。工廠を造る映像を早送りで観ているような感じだったからな。

後、5日目辺りから気付いたのだが、ボーキサイトや鋼材なんかは一度採取すると、数日すれば新しく生成される様だ。前世でふと深海棲艦は無尽蔵に出てくるが、資材とか不足しないのだろうか?と疑問に思った事があったが、こういう原理になっていたなら納得出来る。

そして今日、私は妖精さん達と一緒に新しく造られた工廠に来ていた。御察しの通り、今日はいよいよ深海棲艦が建造されるのである。


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