我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、深海棲艦ヲ建造ス!

ヲ級side…

 

 

私は今、妖精さん達によって建てられた工廠の中にある、幾つも並んだ鋼鉄製の物置のような立方体の内1つの前にいる。それらには全てシャッターが付いており、シャッターの上には『建造』と書かれたプレートが付いており、プレートの下には赤と緑のランプが付いていた。今は赤のランプが点灯している。

 

 

『後10分程で建造出来るです!』

 

『深海棲艦の建造なんて初めてですよ!』

 

『まぁ、艦娘も建造した事ないですけどね!』

 

「……オ前達、深海棲艦カラ守レト条件出シタ割ニハ楽シソウダナ」

 

『『『『『そりゃ勿論♪』』』』』

 

 

妖精さん達は声を揃えて笑顔でそう言った。まぁ、彼女達の作る物の殆どは私が採って来たボーキサイトや鋼材が必要不可欠らしいからな。他の材料で代用しても動作しなかったり、爆発したらしい。何作ってたんだ?

しかし、そう言う私も内心凄くワクワクしている。『艦これ』で艦娘を建造した事はあるが、実際に彼女達に会える訳ではなかった。ましてや深海棲艦の建造なんて人生…はもう終わってたわ。艦生?初なのだから。

 

 

「念ノ為ニ建造出来ル前ニ離レテロヨ?建造サレタ深海棲艦ガ、オ前達ヲ襲ウ可能性ガアルカラナ」

 

『大丈夫ですよ。ちゃんと余った資材を使って盾作りましたし』

 

『そうだぞ!私も余った資材でチャンバラソード作ったから大丈夫なのです!』

 

『私は割り箸と輪ゴムで作った銃を持ってるから問題無いです』

 

「リーダー妖精ハ兎モ角、後ノ2人ハ何処ガ大丈夫カ本気デ分カラナインダガ!?」

 

 

なんで普通のサーベルや銃より遥かに弱いチャンバラソードと輪ゴム鉄砲でそこまで自信が持てるのか分からないよ!それにリーダー妖精の盾も妖精サイズなだけあって凄く小さいから深海棲艦の攻撃防げなくないか!?

というかよく見たら他の妖精さん達もまともな物持ってないな。ハサミや包丁はまだ分かるとして、なんでヨーヨーやけん玉を持ってんの?戦う道具ですらないじゃん。遊び道具じゃん。

私はドヤ顔で自分の武器?を見せてくる妖精さん達を見て思わず額を片手でパシンと叩いた。

 

 

「ハァ……取リ敢エズ、貴女達ハ私ノ後ロニイテ。怪我ヲサレタラ困ル」

 

『了解しました!全員、後退!』

 

『『『『『は〜〜〜い!』』』』』

 

 

リーダー妖精の号令によって私の後ろの方へみんな退がって行き、そこら辺に置かれていた木箱やドラム缶の陰に隠れ、顔だけ出してこちらを伺い始めた。最初からそうしとけば良かったじゃないか。

私は小さく溜め息を吐きながら立方体の側の壁に付いているカウントダウンクロックを見上げる。1〜4番まである内、1番のカウントダウンクロックを見ると、残り時間は5分を切っていた。どんな深海棲艦が建造されるのか楽しみに思ったが、ふと気になる事が出来た。

 

 

「ソウイエバ、“建造レシピ”ハドンナ感ジニシタンダ?」

 

 

実は私は深海棲艦の建造レシピなんて知らない為、今回の建造に必要な資材配分は全て妖精さん達に任せていたのだが、今日お昼ご飯を作ろうと思っていると1人の工廠娘がやって来て、『もう少しで深海棲艦が建造されます!』と教えてくれたから急いで工廠にやって来たのだ。

私がリーダー妖精に聞いてみると、彼女は胸を張って答えた。

 

 

『勿論!大物狙いで“戦艦レシピ”にしたです!』

 

「・・・・・今ナンテ言ッタ!!?

 

 

私の聞き間違いでなければ今“戦艦レシピ”って言ったか今!?深海棲艦の戦艦って言ったら私は《戦艦タ級》と《戦艦ル級》と《戦艦レ級》の3人と、姫級や鬼級の“戦艦型”でもたったの4人しか知らないんだが!?

私はドヤ顔でこっちを見るリーダー妖精の頭を掴んで目の前まで持ち上げた。

 

 

「オイ!コレハ初建造ナ上ニ、敵カモ知レナイ深海棲艦ノ建造ダゾ!?何“戦艦レシピ”デ建造シテルンダ!?」

 

『だ、大丈夫なのです!姫級や鬼級の建造は隣のドックでしか出来ないのです!』

 

ソレヲ差シ引イテモ大丈夫ジャネーンダヨ!!!

 

 

特にレ級が出て来たら不味い!リ級やタ級はまだ勝機はある可能性はあるが、姫級や鬼級並の強さを持つレ級に勝てる気がしない!今の私でもかなりの高スペックではあるが、私は空母ヲ級で相手は戦艦の誰か……力も火力も桁違いに高いと思う。

私がどうしようかと思考を巡らせていると、突然背後からブザーの様な音が聞こえ、工廠中に鳴り響いた。私の背後にはもうすぐ戦艦が建造されるドックがある。私は油の切れた機械の様にギギギと後ろを見る。そこには緑のランプが点灯した立方体…もといドックがあった。

………遅かったか。

 

 

(い、いやいや待てよ?別にレ級が建造されると決まった訳じゃない。タ級かル級の可能性だって十分にある。安心しろ、大丈夫だ。前世だって建造の運とか滅茶苦茶良かったんだからな。きっと大丈夫だ。問題ない………あれ?今私フラグ立てなかった?)

 

『それでは!シャッターを開きます!』

 

 

工廠娘の1人がスイッチを押すと、ゆっくりとドックのシャッターが上に上がっていった。私はゴクリと唾を飲み込んでステッキを構え、いつでも艦載機を飛ばせる様にした。そしてシャッターが上に登り切り、建造された深海棲艦の姿が現れた。

黒いレインコートの様な服を着用し、私に近い白い髪をした頭に服に付属したフードを被っている。首にはアフガンストールの様な物を巻き、胸から臍にかけては白い素肌が露出していて、黒いビキニの様な物が見える。背中には白いリュックサックの様な物を背負い、レインコートからは白い脚が伸びている。そして腰の後ろの辺りから白い蛇の様な尻尾が伸びており、尻尾の先は戦艦を模した深海棲艦特有の意匠が施されている。 全体的に幼い子供の様な容姿をしており、紫色の瞳を持った顔には笑顔が浮かんでいた。

ゆっくりとドックから出て来た彼女はゆっくりと右手を上げ、陸軍式の敬礼をした。私はその姿を見て冷や汗を流す。

彼女は戦艦でありながら姫級や鬼級に匹敵する力を持った小さくも強大な力を持った深海棲艦……。

 

 

「………レ♪

 

 

戦艦レ級である。

 

 

 

 

 

 

で、出たぁぁぁぁぁぁぁあ!!今1番建造されて欲しくなかった戦艦が建造されたぁぁぁぁぁ!!!!最悪だどうすんだコレ!?ヤバい!何がヤバいってもう色々ヤバい!!数分前の自分の顔面にドロップキックを叩き込みたい!!)

 

 

私は目の前にいる戦艦レ級を見ながら内心凄くパニックになっていた。戦艦レ級と言えば砲撃、爆撃、雷撃、夜戦、対艦、対空、対潜戦闘のどの局面においても高い能力を発揮するハイスペック戦艦だ。彼女と殺り合う事になったらflagship改で更に幾つかのオリジナル能力を持っている空母ヲ級の私でも妖精さんを守り切るどころか、私も生き残れるかどうかも分からない。

そんな私の心情を知らないで妖精さん達は初めての深海棲艦の建造成功に歓声を上げてはしゃぎ回っている。

あぁ、私もその中に入りたかったな(涙)。

 

 

「レ?……レ!」

 

(ッ!!来るか!!?)

 

 

レ級は辺りをキョロキョロ見回して私の姿を見つけると、浮かべていた笑みを更に深めた。私が砲撃に構えると、レ級は私の方にまっすぐ走って来た。私の予想よりも速く、レ級が建造されてかなりパニックになっていた事もあり、私はレ級の接近を許してしまった。私は目を固く閉じて襲って来るであろう衝撃と痛みを耐えようと身構えた。

 

 

ポスッ!

「……………エ?アレ?」

 

「レ〜♪レレ〜〜♪」

 

 

思ったより弱い衝撃と、子供に抱き着かれる様な感触を不思議に思い、閉じていた目を開けて自分のお腹辺りを見下ろした。そこには私の体に抱き着いてスリスリと顔を擦り付けるレ級の姿があった。声もなんとなく親に甘える子供の様な感じで、彼女の腰辺りから伸びる尻尾も嬉しそうにフリフリと揺れていた。

 

 

「レ……レ級?」

 

「!レレッ♪」

 

 

少しの間驚いて硬直していたが、今の自分の状況が理解出来ると次第に落ち着いていった。おそるおそるレ級の名前を呼んでみると、レ級は私に抱き着いたまま顔を上げ、花が咲いた様な笑顔を浮かべた。何この娘可愛い♡

 

 

『おぉ!随分と懐かれてますねヲ級さん!』

 

『まるで姉妹の様なのです!ヲ級お姉ちゃんなのです!』

 

『思ったより可愛いですね〜♡ヲ級さんの妹なのです♪』

 

「オ前等ソノ装備ハドッカラ出シタンダ?」

 

 

妖精さん達は先程いた場所から工廠の出入り口まで退がり、おそらく鋼鉄製の盾やバリケードを作ってその隙間からこちらを覗いていた。取り敢えずなんか腹が立ったから今日の晩御飯に出す予定だったすき焼きを私とレ級だけにして妖精さん達は白ご飯とキノコの串焼きにしよう。

 

 

「レ?レレェ〜〜〜♪」

 

『『『『『ヒィ!!!』』』』』

 

「ア!コラ、ダメダゾ レ級。妖精さん達ハ食ベ物ジャナイゾ。食ベチャダメダ」

 

「レ?レェ〜..........」

 

 

妖精さん達の姿を見つけると、レ級は尻尾の先にある口で食べようとした為、私はレ級に注意した。レ級はショボ〜ンとした様子で尻尾を戻した。ちょっと可哀想に思えたので頭を優しく撫でてやると、レ級は目を輝かせて上機嫌になって「レ♪レ♪レ♪」と歌?いだした。しかし、先程から『レ』としか喋っていないのだが、言葉はこれから覚えられるのだろうか?

私が疑問に思っていると、どこからか『クゥ〜…』と可愛らしい腹の虫が聞こえて来た。反射的に妖精さん達の方を見たが、彼女達は首を左右に振っていた。私でもなかった為、工廠のみんなの視線はレ級に向かった。レ級はお腹を押さえて「レェ〜…」と言っており、初見でもお腹が空いているのだと理解出来た。

そういえば、まだ私達もお昼まだだったな。

 

 

「レ級、コレカラ一緒ニオ昼ゴ飯ヲ食ベナイカ?」

 

「レ!?レレレ〜〜〜♪♪」

 

 

私が膝を曲げて彼女の視線に合わせてそう聞くと、レ級は嬉しそうに笑顔を浮かべて万歳をした。私はレ級と手を繋ぎ、妖精さん達を連れてリフォームされた妖精さん達と初めて会った建物(後で気付いたが、見た目は完璧にアニメ『艦これ』の呉鎮守府)に入って行った。この中に簡易的なキッチンがあるのだ。

 

 

 

 

 

 

「出来タゾ。ホラ、食ベテミロ」

 

「レ?」

 

 

私はレ級の前にカレーとスプーンと水の入ったコップを置いた。今日は前世で言う金曜日なので、カレーにした。海軍カレーってヤツだ。レ級は最初はカレーを見て不思議そうな顔をして私とカレーを交互に見た。レ級の隣では小さいお皿に盛ったカレーを美味しそうに食べている妖精さん達がいる。

私も手を合わせて「いただきます」と言ってスプーンを使ってカレーを食べ始めると、レ級は私を真似て手を合わせてからスプーンを握ると、カレーを掬って一気にパクッ!と口の中に入れた。

 

 

「ッ!?レレ〜♪」

 

「ドウダ?美味シイカ?」

 

「レ♪」

 

 

レ級は美味しそうにカレーをパクパクと食べ続け、あっと言う間に完食した。ただレ級はまだ足りなかった様で、カレーの無くなったお皿を悲しそうに見つめていた。私はクスリと笑って彼女のお皿を持ってカレーのお代わりを入れた。レ級はそれを見てまた嬉しそうな顔になった。そして私も自分のカレーを食べ終え、お皿を片付けようと席を立つと、レ級がマントをギュッと握って私を見上げて何か言いたそうにしていた。

 

 

「?ドウシタンダ?レ級」

 

「レ…レォ……ヲ…キュウ…オ、オネ…オ姉チャン!」

 

「ファ!!?」

 

『『『『『ヲ級お姉ちゃん!!?』』』』』

 

 

報告。今日私はレ級という妹が出来た様です。

……なんでお姉ちゃん!!?


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