我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、深海鎮守府ニ帰投スル!

ヲ級side…

 

 

「レ〜レレ〜♪レ〜レレ〜♪」

 

「フンフフ〜ン♪フフン♪フフ〜ン♪」

 

 

メシウマシ島で海賊船を沈めた私達は、艤装を展開して海の上を約2日程航行している。レ級とホッポは海の上を航行するのが大好きな様で、私とチ級より前を鼻歌を歌いながら航行している。私はそんな2人の様子にホッコリしつつ、辺りに飛ばしている偵察機の視界を共有して周囲を索敵している。

別に海賊船に襲われない為ではない。寧ろ逆に海賊船を探しているといってもいい。理由はレ級とホッポの2人が、魚雷で海賊船を沈めたチ級を見て、自分達もやりたいと言い出したからだ。海賊船を沈めれば金目の物も手に入る為、私もそれを了承し、島に帰るまでに海賊船を見つけたら2人に任せる事にしたのだ。

 

 

「ドウデスカ?見付カリソウデスカ?」

 

「イイエ、全然見当たらナイワ」

 

 

隣で航行しているチ級に私はそう答えた。というか本当に船影すら見当たらないんだけど?いつもは食料調達の行きも帰りも海賊船に遭遇して挨拶代わりに

砲弾ぶち込まれるのになんでこっちから探したらこんなにも見付からないんだ?

 

 

「ソウイエバ、オ肉ハ、レ級達ニ任セテイタ分ガ買エテイマセンガ…ヨロシイノデスカ?」

 

「一応私とチ級デ買った分ガアル。マァ、足りなくなっタラまた別ノ島ニ買いに行ク……ヲ?」

 

 

チ級とそんな話をしていると、12時の方向に飛ばしていた偵察機が何かを見付けた。ようやく海賊船を発見したのかと思って視界を共有して確認したが、映ったものを見て私はガックリと肩を落とした。そんな私の様子を見てチ級が首を傾げた。

 

 

「ドウシマシタ?海賊船ヲ発見シタノデスカ?」

 

「イヤ、海賊船ではなかッタ。残念ながラ時間切れヨ」

 

「アァ〜〜ア。モウ島ノ近海カ〜…」

 

「ム〜……カイゾクセン、シズメタカッタ」

 

 

チ級は私の言葉に首を傾げていたが、正面から近付いてくるものを見て成る程と頷いた。鼻歌を歌っていたレ級達もそれに気付き、レ級はつまらなそうに両手を頭の後ろで組み、ホッポは可愛らしく頬をプク〜ッと膨らませた。

私が偵察機で見つけたものは、私達の方に近付いて来ている合計5人…いや、3人と2匹かな?兎に角、深海棲艦の艦隊だ。彼女達は私達の前で一旦停止すると、中央にいた深海棲艦が話し掛けて来た。

 

 

「オ帰リナサイ。食料ハ確保出来マシタ?」

 

 

最初に話し掛けて来たのは《戦艦ル級》。黒尽くめのスレンダーな女性の姿をしており、服装は黒いノースリーブの下に白い和服の様な物を着ている。黒髪ロングヘアーで、両手には戦艦の主砲が搭載されている巨大な盾の様なものを軽々と持っている。

 

 

「野菜や調味料なんカハ沢山買えタンダが、途中で海賊共が襲撃して来てナ。お肉ガ少しシカ買えなカッタ」

 

「エェ!?ジャ、ジャア!明日ノ焼肉パーティーハ、ドウナルッスカ!?」

 

「ソウッス!楽シミニシテタンスヨ!?」

 

 

今の語尾に「〜ッス!」と付いている見た目全く同じの2人は《重巡リ級》。黒いビキニ水着の様な露出度の高い服装をした黒髪ショートカットをした女性の姿で、両手を覆う様に艤装が装着されている。

実はこの子達の様に同じ姿をした艦が建造される事は今までに何度もある。リ級然り、ル級、チ級だって島には何人かいる。勿論ヲ級もだ。そのままでは見分けが全く付かなかった為、初めて建造された艦以外は見分けがつくように、艤装に番号を書いたり、首に番号が書かれたネックレスやチョーカーを付けてもらっている。イ級などの人型ではない艦には分かりやすい場所に番号が書かれている。

因みに目の前にいるル級には『4』と書かれたネックレス。リ級達にはそれぞれ『7』と『9』と書かれたチョーカーを付けている。イ級達には『12』と『13』とボディに書かれている。

というか、焼肉パーティーの事すっかり忘れてたな。明日だったんだ。

 

 

「………海賊共メ……今度会ッタラ、海ノ藻屑ニシテヤル」

 

ヲ!?カ、《カ級》!いたのカ!?」

 

 

突然私とル級の間からザバァ〜ッ!と浮上して来た《潜水カ級》に驚いた。彼女は潜水艦で、スキューバダイビングで使うレギュレーターを装備し、背中には司令塔の様な艤装を背負っている。海では常に肩から上しか海面には出さず、髪型はどことなく某テレビから出て来る幽霊みたいな髪型で、突然浮上して来ると私も結構ビビる。彼女の場合はレギュレーターに『6』と書かれている。

後、驚いた事に彼女…というか潜水艦のみんなは水中では何故か姿が消える(・・・)。分かりやすく言えば水中限定の透明化だ。多分普通の深海棲艦が潜水出来るから潜水艦専用の特殊能力的なものかなとは思っているが、詳しい事は彼女達自身も知らないらしい。

 

 

「オォ!カ級!ソレイイ考エッス!」

 

「私モ……楽シミダッタカラ」

 

「ナラ、早速哨戒ニ戻リマショウカ。ソレデハ ヲ級様、チ級、レ級、ホッポ様。我々ハコレデ…」

 

 

ル級達はそのまま哨戒を再開した。私は段々と小さくなって行く彼女達の背中を見ながら「あぁ、今日哨戒ルートに入った海賊は不運だな」と思ったりした。私は小さく彼女達に手を振ってからレ級達を連れて島に向かった。

 

 

 

 

 

 

3時間程するとやっと島が見えてきた。やっぱり一定距離近付かないと蜃気楼で島が見えないのは不思議だ。3ヶ月以上前までボロボロだった建物は全て妖精さん達によって建て直され、完全に『艦これ』のアニメで見た立派な鎮守府になっている。更に深海棲艦達と妖精さん達の話し合いによって、名前が《深海(しんかい)鎮守府(ちんじゅふ)》となっている。

 

 

「ヲ級オ姉チャン!私、オ腹空イタ!」

 

「ッ!ワタシモ!ワタシモ!」

 

 

艤装を解いて陸に上がると、レ級が手を挙げてお腹が空いたと騒ぎ出し、ホッポもレ級の真似をして片手を挙げてぴょんぴょんジャンプし出した。

うん、可愛いわこの子達。まだ夕食までかなり時間あるし、簡単なクッキーでも焼いてやろう。

 

 

「分かッタ。後でクッキーを焼イテやろう。それまデ外であs《ドガァァァン!!!》………エ?

 

 

レ級達に外で遊んで待っているよう言おうとしたら、突然食堂の方から爆発音が聞こえて来た。私やチ級、果てにはレ級やホッポも突然の事で体を硬直させ、ゆっくりと食堂の方を向いた。

あぁ、な〜〜んか嫌な予感がする!!というか、食堂で爆発起こすバカは現在この鎮守府には1人しかいない。

私達は互いに頷き合うと食堂に走り、中に入ってキッチンを目指した。キッチンに入ると、そこにはいつもの綺麗なキッチンの姿は跡形も無く、代わりに黒い煙を出したオーブンや燃えるコンロ、大破した冷蔵庫。更にはコンロがあった場所の壁には巨大な穴が開いていた。

 

 

「ケホッ!ケホッ!……全ク、危ナイワネ。機械ノ調子ガ悪カッタノカシラ?」

 

 

私が変わり果てたキッチンに唖然としていると、瓦礫の山から1人の深海棲艦が出て来た。

姫級の特徴である白い肌に紅い瞳を持った彼女はホッポと同じ姫級の《南方棲戦姫(なんぽうせいせんき)》。炎の様なエフェクトで髪をツインテールに纏め、腕には鉤爪、脚には片足だけ鎧の様な物を装着しているが、服装はリ級よりも遥かに露出度が高い。街を歩けばお巡りさんに逮捕される程高い。

私は彼女の姿を確認すると、無言のまま落ちていたフライパンを拾い上げ、彼女に歩み寄る。そしてフライパンを振り上げ、埃などを払っている南方棲戦姫に向かって……。

 

 

何してンダこのバカ露出狂ガァァァァ!!!

 

ゴカァ〜〜〜ン!!!!

イ〝ッ!タァァァァァ〜〜〜イ!!!!

 

 

フライパンの形が彼女の頭の形になるくらいの力で振り下ろした。フライパンから鳴ってはいけない様な鈍い音が鳴り響き、南方棲戦姫は頭を押さえて地面を転がり回った。私はフライパンを投げ捨てて転がり回る彼女の頭をガシッと掴み、そのまま持ち上げて手に力を込める。

 

 

ナァ?私言ったヨナ?お前ハ絶対にキッチンに入るナッテ。私ノ記憶違いカ?ンン?

 

メキメキメキメキメキメキ……

イダダダダダダ!!チョ!ゴメン!ゴメンナサイ!謝ルカラ離シテェェェェェェ!!!」

 

 

南方棲戦姫は私の手をペシペシと叩いてギブアップの合図をしているが、もうしばらくは緩めるつもりはない。何故なら…彼女がキッチンをこんなにしたのは今月入ってもう4回目だからだ!!

何故かは不明だが、彼女は料理が出来ない。それはもう私も手の打ちようがない程だ。キャベツの千切りをさせると火花が散って包丁が折れる。キッチンの蛇口をひねれば水道管が破裂する。コンロを点けると大爆発が起きるなどもはや呪われてるんじゃないのかと思う程料理が出来ないのだ。

だから彼女にはキッチンに入らないようきつく言っておいたのに……それをこの子はまたぁぁぁぁぁあ!!

 

 

「チョ!ヲ級様、落チ着イテ下サイ!南方棲戦姫様ガ死ニソウニナッテマスヨ!?」

 

「レレ!?ヤバイ!南方棲戦姫ガ白目剥イテルヨ!?」

 

『なんか食堂爆発しましたけど何かありました?……って、どういう状況です?』

 

 

1時間後、私は気を失った南方棲戦姫を彼女の部屋に放り込み、妖精さん達にキッチンを直してもらった。

 

 

 

 

 

 

ここは、シャボンディ諸島の近くに位置する島、《マリンフォード》。そこにある世界中の『正義』の戦力の最高峰、海軍本部のとある一室にて、1人の老兵が報告書を読みながら難しい顔をしていた。

 

 

「白い肌の少女達か……俄かには信じ難い話だ」

 

 

アフロ頭に眼鏡を掛けた彼の名は《センゴク》。海軍本部の元帥である。彼は今、先日起こったメシウマシ島で起きた海賊襲撃事件の報告書を読んでいた。最初はスラスラと読んでいたが、『海賊達は白い肌の少女達によって壊滅した』という文に目が止まった。

勿論これはヲ級達の事である。実はあそこには何人か逃げ遅れた住民達がおり、偶々ヲ級達がベネットを倒したり、船を沈めるのを目撃していたのである。

 

 

「目撃情報によれば少女達は4人。内2人はまだ小さな子供。そんな子達が億越えの賞金首を討ち取るとは………最近海賊達が消息を絶っている事にも関係しているのか?」

 

 

センゴクは報告書を読みながら最近多数の名のある海賊達が行方不明になっている事と関係しているのかと考えた。実際、その行方不明になっている海賊達は全てヲ級達に手を出して返り討ちに遭い、沈んで行った海賊達である。

 

 

「う〜む……警戒はしておくか」

 

 

センゴクはその報告書を仕舞い、机の上に山の様にある書類を整理する為に手を動かした。


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